第1話_新しい風_01
ちらほらと紅葉が見られ始め、外気に少しずつ肌寒さを帯びるようになって来た頃。
都心の住宅地の合間にぽつんと鎮座する
こぢんまりとしていながらもやはり厳かで、
「
ついで、境内全域に響くようなよく通る声が届くと、本殿近くを竹箒で掃いていた少年が、少し飛び上がりながら声のした方へ振り向いた。
姿より先に声で自己主張してみせた訪問者は、橙色のカラーラインが入ったロードバイクを担ぎながら石段を上がり、箒を片手に小走りで近寄ってくる少年へ手を振った。
「よーっす! おつとめご苦労!」
「
「おうよ、顔見えなくっても俺だってわかるだろー?」
"陽"と呼ばれた少年・
その彼から先ほど"苡月"と呼ばれた少年・
「どうだ? もう
「ううん。こういう掃除だけならなんとかなるけど…社務のお手伝いとか祭祀の作法とか、色々難しいよ。お兄ちゃんに毎日注意されてる」
苡月はそう、少し眉を下げながら自分の胸元へ視線を落とした。
白衣に濃い緑の袴姿は、少し色の薄い灰茶色の髪と調和が取れ、足元のスニーカーは見習い身分の彼の初々しさを表しているようだった。
「まぁ誰しも最初はそんなもんよ。髪も切ったことだし、新天地で生まれ変わったつもりでやれよ!」
「…うん」
少し前、遠方から生家である
ほどなくしてこの神社の宮司である兄の手によりカットされ、前髪も襟足もすっきりと見える姿になっていた。
「これからまだやることあんの?」
「本殿廻りの掃き掃除で終わりだよ、今日は神事が入ってないから。…待ってて」
そう言うと、苡月は竹箒を拾って用具倉庫へ入り、もう片方の手にちりとりを持って本殿の方へぱたぱたと駆けていく。積んでいた落ち葉をちりとりへ集め、ひとつふたつこぼしながら焼却ボックスへ落とすと、再び駆け足で戻ってくる。
その仕草を目で追いながら、陽は満足気な表情を浮かべていた。