日が暮れ、薄闇を秋の虫が静かに鳴り響く中、明かりの灯らないその外観を見上げる。
「……留守か…?」
蒼矢と幼馴染である
玄関側からは蒼矢の自室に据え付けられた窓は見えず、人が邸内にいるかどうかは、あまり見慣れていない葉月にとっては全く見当がつかない。
「…」
沈黙する邸宅を前に、葉月は先ほどようやく口を開いた弟・
――…左胸に…模様みたいなのがあって…、聞いたら、"烙印"だって…――
…長年知人相手――いや、両親にさえも隠し通してきているだろう『刻印』を、簡単に明かした。
…誤魔化すにしても、ただのボディペイントだと言ってしまえば済むのに…、"烙印"だと、わざわざ不安心を煽るように教えた。
他になにか言われなかったかと問うたら、苡月は再び泣き出してしまい、
…気になりはするけど…『刻印』の件だけでも充分だ…
[異界のもの]と戦う『ガイアセイバーズ』である彼らの肌には、セイバーの証としての『刻印』が、それぞれが持つ属性を冠する形で刻まれている。
苡月が蒼矢の左胸に見た水滴の紋様と同じように、葉月には背中の肩甲骨に挟まれたところに深緑色の葉の形を模した刻印が、陽にも下腹部に黄色い太陽の形を模したものが、それぞれ刻まれている。それらはセイバーの役目を終えるまで、消えることは無い。
よって、セイバーの力を身に宿してから役目を終えるまでのおよそ7~10年の間、彼らは刻印と共に生きることを強いられることになる。刺青と混同されるため、なるべく人目につかないよう隠して生活する者がほとんどだ。
つまり『刻印』は、
…なによりも…、生真面目で、セイバーに対して人一倍強い責任と使命を持っている
「……」
葉月は今一度、着物の合わせからスマホを取り出し、通話履歴を指で動かし始めた。