その時分、
彼は、母と二人で切り盛りしているこの小さな酒屋の三代目で、いつもは主に商品の仕入れと取引先への納品・御用聞きと、専ら外仕事だが、今日は母親が夕方から町内会の会合に出席する用があり、配達から早くに戻って店へ入り、一人で閉店処理という名の留守居を任されていた。
「……よし、過不足無し!」
電卓をコイントレーの上に放り、本日の売上金を茶箪笥の金庫へしまうと、頭に結んでいた手拭いをほどいて居間の畳に大の字になった。
「あぁ…腹減った。母ちゃん早く帰って来ねぇかなー…」
しょぼくれた表情で母ならぬ夕飯を待つ彼のズボンのポケットから、着信音が鳴る。
「…葉月さん? お疲れっす。昨日は『
『ううん、烈も仕事毎日お疲れ様』
「うっす。そっちも無事終わったみたいで良かった」
烈も葉月たちと同じく『ガイアセイバー』で、
『ごめんね、夜遅くに。まだ仕事中かな?』
「いや、丁度今終わったとこっす! 大丈夫ですよ、何かありました?」
寝転がりながら通話を続けていると、少し間を置いた後、やや重苦しいトーンの葉月の声が聞こえてきた。
『今…蒼矢、家に来てたりしないかな?』
「えっ? いや…来てないっすよ」
『…そっか…、そうだよね…』
あまり予想してなかった内容の問いかけに、少し面食らった烈が途切れとぎれにそう答えると、葉月は電話口でも判るくらい落胆した。
「…どうしたんすか?」
『実はね――』
そう葉月が言いかけた時、烈の頭の上で玄関の呼び鈴が鳴る。
「! ごめん葉月さん、来客みたい。今日母ちゃん出掛けてて、俺今家にひとりで。ちょっと出てきていいすか?」
『あっ…うん、わかった。大丈夫』
「すんません、すぐ済ませるんで! 保留にしときますねっ」
スマホを保留にしてこたつテーブルに置き、家の玄関へ向かう。
そして、引き戸を開けた向こうに立っていた人物に、目を丸くした。
「……蒼矢…!?」