※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ6 -妖艶の糸繰り人形-   作:独楽 悠

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第10話_妖しの訪ね人_04

「――烈(レツ)、…烈!!」

 

耳元で呼び掛けられる声と、両肩にかかる重みに、烈の意識は呼び戻される。

ぱかりと目を開くと、真正面にぼんやりと見える輪郭の中に、灰茶色の長髪と眉を吊り上げたタレ目を認めた。

 

「…ぁ月……さ…」

「烈…! 無事か!?」

 

首を絞められ、仰向けのまま失神していた烈は、直後に到着した葉月(ハヅキ)により息を吹き返した。

気がついた烈の瞳が動いたのを見、葉月は深く息を吐き出し、脱力した。

 

「…良かった…戸が開いてるみたいだったから気になったんだけど、玄関のベル鳴らしても出なかったから…、悪いなと思ったけど、入って来て正解だった…」

「…俺……」

「何があった…? 気を失ってたようだけど」

 

問いかけながら、葉月は烈の身体を起こし、そばにあった座布団を何枚か背当てにしてやる。

烈は徐々にクリアになっていく頭を巡らせ、首に手を触れる。

 

「…蒼矢(ソウヤ)、が…」

「!? 蒼矢がここに来てたのか!?」

「…会わなかった、すか…?」

「会ってない。玄関ですれ違っても無いよ。…いつ居たの?」

「……ん…」

 

どれだけの時間、自分が気を失っていたのか見当がつかず、烈は眉を寄せる。

いまだ混濁する意識の中で辿れた記憶に呼び鈴の音が残っていて、あれが葉月が鳴らしたものだとすると、ほんの数十秒しか経っていないようにも感じられた。

 

…蒼矢は…どこへ行ったんだ…?

 

うつろ気な面持ちでしきりに首元を触る仕草を目で追い、葉月ははたと気づいて烈の首へ注視する。

浅黒い肌と顎の影で判りにくかったが、帯状の赤い痣がうっすらと残っていた。

 

「!! まさかそれ、蒼矢に…!?」

「…あぁ。葉月さんが来る…多分少し前に来て、…ちょっとあって。結局こう(・・)なりました」

「他に、何かされたことは?」

「…ほか…」

 

葉月に問われ、思考を続けようとした烈の脳裏に、先程の蒼矢の面差しと肢体が浮かび上がってきた。

するとすぐに自分の中心が反応したが、今はそんな場合じゃないと理性をフル回転させて、なんとか押し留める。

 

「……や、なんも…されてないっす。少なくとも、何か傷つけられたとかは無いです。…首だけ」

「…そうか…」

「葉月さん…、蒼矢が…あいつの様子が、…おかしかったです」

 

そう呟くように漏らす烈へ、葉月は緊迫した面持ちのまま頷いた。

 

葉月は、少しずつ頭がはっきりしてきた烈へ、昨日『転異空間』へ転送してから今に至るまでのあらましを伝えた。

 

「ごめん、もっと早くに言っておけば良かったね…」

「いや、俺もだいぶ油断してました。…蒼矢はどういう状態なんすかね?」

「…わからない。僕も戦闘状況を聞き出したくらいで、彼とはろくに会話できてないんだ。…ただ…今となっては、彼が言ってたその情報でさえも、正しいものか判断出来なくなってしまった」

「さっき一瞬、あいつの声の中に別のものが混じってた時があったんです。…別の奴が喋ってるみたいな気がした」

「それは、苡月(イツキ)も言ってたよ。…操られてる、憑依されている。いずれにしても、おそらく精神をコントロールされてしまってる…と思う」

「…蒼矢が…、[異界のもの(奴ら)]に…!」

 

烈の眼に怒りの感情が帯び、拳が硬く握り込まれる。

豹変していく彼の面様を見守りながら、葉月は落ち着いた口調で続けた。

 

「――とにかく、あまりゆっくりしていられない状況だ。早く蒼矢を見つけ出さないと…[侵略者]の意のままだとしたら、どこで何をしでかすかわからない。彼に干渉した理由は見えないけど、『現実世界』に害をなそうとしていることは確かだ」

「そっすね。…」

 

葉月の言に、烈は同意しつつも、再び記憶と思考を巡らせる。

 

――残念だ、ロードナイト(・・・・・・)――

 

…[侵略者]と接触してない俺がセイバーだとわかって襲った…

…蒼矢を使って、ロードナイト(俺)を引き入れようとした…?

 

「…葉月さん、[侵略者]の目的は『現実世界(こっち)』ってよりは、『セイバー(俺ら)』なのかもしれねぇ」

「…僕ら…?」

「蒼矢をきっかけに俺たちを囲い込んで、無力化する。…あわよくば、蒼矢と同じように手駒にする。…『守護者(セイバー)』さえ押さえちまえば、[侵略者(奴ら)]にとって現実世界(ここ)の障害は無くなる」

「……!」

 

烈の鋭い視線を受け止めた葉月は、目を見開かせ表情を凍らせた後、我に返ったように瞳を揺らす。

 

「…確かに…、接触したにしても苡月が無事だったのは、そういうことか…!?」

「興味が無かった。苡月は『セイバー』じゃないから、標的にはならなかった。ってことすかね…」

 

そして、彼らは核心へ辿り着く。

 

「…葉月さんや陽(アキラ)を狙わずにまず俺に来たのは、俺が[侵略者(奴)]と直接当たってないから、…もしくは」

「…主戦力(・・・)だから」

 

ふたりは、同時に息を飲んだ。

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