「――
耳元で呼び掛けられる声と、両肩にかかる重みに、烈の意識は呼び戻される。
ぱかりと目を開くと、真正面にぼんやりと見える輪郭の中に、灰茶色の長髪と眉を吊り上げたタレ目を認めた。
「…ぁ月……さ…」
「烈…! 無事か!?」
首を絞められ、仰向けのまま失神していた烈は、直後に到着した
気がついた烈の瞳が動いたのを見、葉月は深く息を吐き出し、脱力した。
「…良かった…戸が開いてるみたいだったから気になったんだけど、玄関のベル鳴らしても出なかったから…、悪いなと思ったけど、入って来て正解だった…」
「…俺……」
「何があった…? 気を失ってたようだけど」
問いかけながら、葉月は烈の身体を起こし、そばにあった座布団を何枚か背当てにしてやる。
烈は徐々にクリアになっていく頭を巡らせ、首に手を触れる。
「…
「!? 蒼矢がここに来てたのか!?」
「…会わなかった、すか…?」
「会ってない。玄関ですれ違っても無いよ。…いつ居たの?」
「……ん…」
どれだけの時間、自分が気を失っていたのか見当がつかず、烈は眉を寄せる。
いまだ混濁する意識の中で辿れた記憶に呼び鈴の音が残っていて、あれが葉月が鳴らしたものだとすると、ほんの数十秒しか経っていないようにも感じられた。
…蒼矢は…どこへ行ったんだ…?
うつろ気な面持ちでしきりに首元を触る仕草を目で追い、葉月ははたと気づいて烈の首へ注視する。
浅黒い肌と顎の影で判りにくかったが、帯状の赤い痣がうっすらと残っていた。
「!! まさかそれ、蒼矢に…!?」
「…あぁ。葉月さんが来る…多分少し前に来て、…ちょっとあって。結局
「他に、何かされたことは?」
「…ほか…」
葉月に問われ、思考を続けようとした烈の脳裏に、先程の蒼矢の面差しと肢体が浮かび上がってきた。
するとすぐに自分の中心が反応したが、今はそんな場合じゃないと理性をフル回転させて、なんとか押し留める。
「……や、なんも…されてないっす。少なくとも、何か傷つけられたとかは無いです。…首だけ」
「…そうか…」
「葉月さん…、蒼矢が…あいつの様子が、…おかしかったです」
そう呟くように漏らす烈へ、葉月は緊迫した面持ちのまま頷いた。
葉月は、少しずつ頭がはっきりしてきた烈へ、昨日『転異空間』へ転送してから今に至るまでのあらましを伝えた。
「ごめん、もっと早くに言っておけば良かったね…」
「いや、俺もだいぶ油断してました。…蒼矢はどういう状態なんすかね?」
「…わからない。僕も戦闘状況を聞き出したくらいで、彼とはろくに会話できてないんだ。…ただ…今となっては、彼が言ってたその情報でさえも、正しいものか判断出来なくなってしまった」
「さっき一瞬、あいつの声の中に別のものが混じってた時があったんです。…別の奴が喋ってるみたいな気がした」
「それは、
「…蒼矢が…、[
烈の眼に怒りの感情が帯び、拳が硬く握り込まれる。
豹変していく彼の面様を見守りながら、葉月は落ち着いた口調で続けた。
「――とにかく、あまりゆっくりしていられない状況だ。早く蒼矢を見つけ出さないと…[侵略者]の意のままだとしたら、どこで何をしでかすかわからない。彼に干渉した理由は見えないけど、『現実世界』に害をなそうとしていることは確かだ」
「そっすね。…」
葉月の言に、烈は同意しつつも、再び記憶と思考を巡らせる。
――残念だ、
…[侵略者]と接触してない俺がセイバーだとわかって襲った…
…蒼矢を使って、
「…葉月さん、[侵略者]の目的は『
「…僕ら…?」
「蒼矢をきっかけに俺たちを囲い込んで、無力化する。…あわよくば、蒼矢と同じように手駒にする。…『
「……!」
烈の鋭い視線を受け止めた葉月は、目を見開かせ表情を凍らせた後、我に返ったように瞳を揺らす。
「…確かに…、接触したにしても苡月が無事だったのは、そういうことか…!?」
「興味が無かった。苡月は『セイバー』じゃないから、標的にはならなかった。ってことすかね…」
そして、彼らは核心へ辿り着く。
「…葉月さんや
「…
ふたりは、同時に息を飲んだ。