※この作品はR-18です。

ガイアセイバーズ6 -妖艶の糸繰り人形-   作:独楽 悠

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第11話_傷心に触れる柔肌_02

「4年半、ずっと好きだった。もう俺は十分待った…お前にとって、俺は何だ? …今ここで、お前の答えを聞かせろ。蒼矢(ソウヤ)」

「……っ…」

 

影斗(エイト)にそう問われ、真っ直ぐ見つめてくる彼の瞳から逃げるように、蒼矢は視線を外す。

 

「蒼矢」

 

呼び掛けに、蒼矢は困惑した面持ちから上目遣いで影斗を見返した。

 

「…今すぐ、じゃないといけませんか…?」

 

おずおずと漏れる言葉に、影斗はため息をつく。

 

「俺はもう、充分お前に考える時間をやってる」

「……」

 

急かされるものの、口をつぐんでしまう彼を見つめ、影斗は努めて柔らかな口調で低く呟く。

 

「…"男だから"って理由で断っちまってもいいんだぞ」

 

考え方次第では、悪手ともとれる一言だった。しかしその実、影斗にとっては保険(・・)のようなものだった。

もはやそれが理由でもいい。

そう思って、あえて伝えた。

 

蒼矢は逡巡するように目を伏せ、沈黙した後、再び影斗を見つめた。

 

「…すみません。先輩の気持ちには…、…応えられません」

 

蒼矢(ソウヤ)は影斗(エイト)の読み通り(・・・・)、性別を理由に拒否してくることはなかった。

影斗は返答を受けても黙ったまま彼を見返す。無言で促され、蒼矢はわずかに頬を染めながら、視線は外さずに続けた。

 

「先輩は…俺にとって見上げる人で、導いてくれる人で…先輩と関ってきたこの数年間で、俺の中でそういう人だって、固まってしまっているんです。…それ以外の存在として見ることはできません」

 

影斗の中に初めて、落胆の感情が降りていく。

自分が過去下してきたいくつもの判断の過ちに、悔しさが込み上げてくる。

 

「先輩がいつも気遣って下さったり、…愛情を注いで下さったりするのも、すごく感じてます。自分には勿体無いくらいで、本当に感謝しています。…でも、だから…俺は先輩と同じくらい、先輩に思いを返せる自信がありません。きっとこれからも、先輩からの愛情に甘えてしまうだけになる。…俺はそれが嫌だし、…苦しいんです」

 

影斗は頬に触れていた手を首筋へと移し、シャツの中へ滑り込ませる。

 

「…っ」

 

肌を這うその感触に、蒼矢の身体がぴくりと揺れる。

手のひらから伝わる熱に目を細める面差しを、影斗は表情を変えずにじっと見下ろす。

 

「俺からの一方的でもいい。傍に居てくれるだけでいい。…だったら?」

「……、…すみません」

 

しかし、その少し強引に続けた口説き文句にも、蒼矢は首を横に振った。

 

「…」

 

影斗は息を吐き出しながら、蒼矢から手を離す。

被さっていた身体を外していく影斗を追うように、蒼矢は身を起こした。

 

「でも先輩は、俺にとってかけがえのない人です。…唯一の人なんです。…それだけは…」

「…わかった。ありがとな」

 

焦った風に、思いを振り絞って訴える蒼矢へ、影斗はそう短く応えるだけだった。

 

「…帰っか」

「……」

 

そう声を掛けられ立ち上がったものの、蒼矢はうつむいたまま歩き出せない。

 

「おら、行くぞ」

「…、…っ先輩、」

「謝んなよ」

 

零れかけた言葉を止められ、思わず見上げた蒼矢を、振り向いた影斗は静かに、鋭さを込めた視線で見やっていた。

 

「謝んな。お前の口から謝罪はもう聞きたくねぇ。…こっちが惨めになるだけだ」

「…っ……」

 

そして少しずつ歪んでいく面差しに、落ち着いた声色で続けた。

 

「お前とはしばらく会わねぇ。…俺がいいって言うまで連絡してくんな」

 

 

――

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