次の日の早朝、明るむ景色の中に本来の薄灰色の外観を取り戻す大学学生寮近くの駐車場へ、一台のミニバンが滑り込む。
夜間の終わらない喧騒さから変わり、さすがに閑散とした空気感をたたえる建物の一室へ、ぱたぱたと早足の駆ける音が近付く。
勝手知ったる者らしく、短い間隔で軽いノックをし、部屋の主から反応を返される前にドアを開けた。
「――
息を切らし、緊迫した面持ちで自分を見つめる
「…んだよ。
不機嫌さを隠しもしない彼の姿に一旦安堵したのか、葉月は胸に手を当てながら息をつくと、部屋へ入ってドアを閉める。
そして眉を寄せ、いつもの彼らしくもなく表情に苛立ちと憤りをにじませた。
「留守電入れたのにすぐ返してくれないし、やっと連絡くれたと思ったらひと言、ふた言しか言わないで切るし…、どれだけ心配したか…!」
「必要最低限の情報はくれてやっただろ」
硬い床で節々を痛めたか、少し顔を歪めながら身体を起こし、影斗は長い脚を葉月の足元へ投げ出す。
そんな様子の彼へ、葉月は以前険しい面差しを向けていた。
「怪我は?」
「ねぇよ」
「何かされたりは? 危害を加えられかけたとか」
「俺がそんな下手こくかよ」
吐き捨てるように返し、影斗はぎろりと葉月を睨む。
「…なんだ? "あれ"は」
「…留守電に残した通りだよ。まだ何も判ってないけど、
そう、予測段階の解答を返すにとどまった葉月は彼の足元へしゃがみ、再び息をついた。
「とにかく無事で、本当に良かったよ…こっちは
「……ふぅん」
「手をこまねいている間に、また見失って。あては無かったけど…おそらく次は
「
「…顛末が知りたい。どうやって無事"彼"をやり過ごしたんだ?」
問い質す葉月から目をそらし、影斗は横端へと視線を流す。
それに導かれるように葉月も視線を移していき、彼の後方にある物に気付くと目を剥いた。
「……これ!?」
「…そ、酒」
フローリングに直置きされたウォッカの瓶を見つめ、葉月の目線が戻ってくる。
「…飲ませたってこと?」
「口移しでな。…
「……」
「…二十歳祝いだぁなんて、調子こいて飲ませる前に判って良かったな」
目を白黒させながら聞き入る葉月へ、影斗はそう言いながら少しおどけた顔をしてみせた。
感心するように頷いて、葉月は更に問う。
「…それで、蒼矢は寝てたんじゃなかったの?」
「しばらくな。でもそのうち起きて出てったぜ。…こっちが起きてるのも気付いてたな、多分」
「…」
投げやり気味に答える影斗を見、少し気持ちが落ち着いてきた葉月は、フローリングへ尻をつき、姿勢を崩した。
「…悪かった、責めるような口になってしまって。蒼矢の件は深刻ではあるけど、君が今抱えてる気持ちも理解できるつもりだよ」
「――いや」
葉月の声掛けを、影斗は長く息をつきながらも切る。
「あれとこれとは別だな、切り替える。逃がしちまった借りは返すぜ」
「…!」
葉月は一瞬顔をほころばせるが、すぐに神妙な面持ちへ落とす。
「…助かるよ。本当に手掛かりが何も無いんだ。彼の行方も、[侵略者]の手から解放する方法も」
「[
落ち込む葉月を目の端で見つつ影斗は立ち上がり、乱れた頭に手櫛を入れながら身支度を整え始めた。
「見当つかねぇ奴を追っても仕方ねぇ。狙いが『
「…了解」