「やぁ、
「
居間へ入ってきた彼らへ手を挙げて挨拶すると、陽は顔をしかめて腹をさすってみせた。
「…月兄っ…」
「わかってるよ。何を出そうかな、…何かあったかな?」
その空腹を訴える一目瞭然な仕草を見、葉月は少し噴き出すと、人数分の緑茶を盆に載せて歩み寄る弟・
「…今日お下げしたご供物は?」
「ああ…そうだね、それにしようか。苡月、用意してくれる?」
「うん、わかった」
「林檎と柿がいいかな。実が固いから、包丁を入れてから皮を剥くんだよ。柿は剥くと表面が滑るから、ゆっくり慎重にね」
「はい」
丸テーブルへ湯呑みを並べて置くと、苡月は再びキッチンへ消えていく。
兄に注意されているとは口にしていたものの、やはり極甘な扱いを受けているようだと、陽は少し顔をにやつかせつつも苡月の置かれている環境に内で安心していた。
稽古着をまとめたトートバッグを隅に置き、陽の隣に腰を落とした蒼矢の前に、葉月は湯呑みを差し出した。
「蒼矢も食べてってね。小腹空いてるでしょ」
「はい、頂きます」
「蒼兄、ここんとこよく通ってるんだな、稽古。前まで隔週くらいだったじゃん?」
「…! ああ。最近は大学が早く終わることも多くて…」
「授業終わった後って、図書館に寄って勉強してるんじゃなかった? 個別で補講受けてる日もあるっても言ってなかったっけか?」
「っ! そう、なんだけど」
自然な空気感で質問責めにしてくる陽へ、表情に戸惑いを露出し返答に詰まる彼をフォローするかのように、葉月がお茶を飲みながら口を挟む。
「まぁ、良いことじゃない。もちろん学生の内は学業第一だけど、僕としてはまだまだ教えたいこと沢山あるし、そもそも月謝で頂いてるから、一日でも多く通ってくれた方がコスパも良いし。…ね?」
「…」
「…そうだなー。確かに勉強さえなんとかなってれば、稽古してる方がメリットしかねぇもんな。しかも蒼兄なら、勉強しなくても十分頭良いし!」
話が一旦区切られたところで、おやつの準備を済ませた苡月が戻ってくる。
「うぉーっ、うまそっ」
山盛りの果物の器を差し出された途端、陽は目を輝かせながらフォークを手に取る。
「…蒼矢君もどうぞ」
「ありがとう。…しばらく見ない間に、しっかりしてきたね」
「! …いえっ…」
「その袴姿も、君に良く似合ってる」
「…! っ……」
微笑む蒼矢に優しく声を掛けられ、苡月は頬を染めながら手元の盆へうつむく。