双方微動だにせず、沈黙を守ったまま相手の出方をうかがっていた。
その実、オニキスの体力は限界を迎えていた。
度重なるアズライトからの氷撃で、戦闘スーツは全身が割け、隙間から見える肌は擦傷と凍傷に
追撃を防げず、身体の自由が利かないまま落とされ、地に叩きつけられた節々に激痛が走っていた。
その上で、残る力の全てを使い、今までのセイバー人生で経験が無いほどの濃い毒霧を噴出した。
倒れそうな身体をこらえ、あがりそうな息を抑え、オニキスはアズライトを睨み上げる。
「!!」
アズライトが先に動く。
氷柱の切っ先をまっすぐオニキスへ向け、急降下する。
高速で迫る彼を、『暗虚』を前で交差させ、オニキスは迎え撃つ。
轟音と共に地表が剥がれる勢いで激突したふたりは、互いの霧を混ざり合わせながら装具で押し合う。
すぐさま暗虚の爪に霜が降り、手甲を伝い、両腕へと広がっていく。
「…っの野郎…!!」
オニキスは身体能力のみでじわじわと押し返し、鉤爪で氷柱の刀身を掴むと、剣先を逸らせてアズライトへ近寄っていく。
得物を捕らえられたアズライトはその手元を一瞥した後、オニキスへ視線を戻し、目を見開いた。
瞬間アズライトを纏う氷気が膨れ上がり、オニキスの毒霧を上空へ吹き飛ばしていく。
紫黒色の霧が空中へ散りぢりにかき消え、辺り一帯が凍てつく薄青の霧に満たされる。
「っ…まじでクソ強ぇな、お前…。…俺らにメイン張らせて、上手いこと隠しやがってたな…畜生が…っ…」
息を白くしながら、オニキスは悪態を
霜は氷の結晶へ変わり、腕を覆い、音をたてながら身体へと伝っていく。
「オニキス!! 駄目だ、離れろっ…!!!」
少しずつ凍り付いていくオニキスの姿に、サルファーは向かいたい気持ちを懸命に抑えながら、遠くから喚く。
サルファーの制止を無視するように、オニキスは凍らされながらも少しずつアズライトへ近付いていく。
「…お前の実力は、痛いほど解った。実際今、全身痛ぇしな。もう体の感覚ほぼねぇよ…」
アズライトは鼻先まで辿り着いた彼を、青白い面差しの中から冷たい瞳で見やっていた。
「もう、俺の負けでいいよ。いいから…、そろそろ終わりにしようぜ」
顔中に霜が降り、オニキスは青く染まった唇を震わせながら、いつもの調子で語りかける。
「なぁ、蒼矢…」
オニキスの瞳がうつろになり、足許がぐらついていく。