腹ごしらえが終わると、年少組ふたりは連れ立って社務所へ諸用を済ませに向かい、残った
お互い黙ったまま手を動かす中、ぽつりと葉月が漏らす。
「――ごめんね。なんだか見透かしたような真似をしてしまって」
手を止め、強張った面を向ける蒼矢へ、葉月は変わらず微笑んでいた。
「
「…!」
「僕が勝手に気付いてしまっただけ。…彼から相談されたとかではないから…それだけは信じて欲しい」
棒立ちになり、うつむいてしまった蒼矢の肩に、葉月は優しく手を置く。
「稽古も、君の気が紛れるのならいくらでも通ったらいい。…僕は君たちのことに、そういう形でしか手助けしてあげられないから」
「…葉月さん、俺…、影斗先輩を傷つけてしまったんです」
「彼がそう言ったの?」
「…しばらく会わないって言われました」
「それは、影斗の気持ちの問題じゃないか? …ひとりで考える時間を作りたいんだよ」
葉月は優しく言葉をかけ続けるが、蒼矢は首を横に振る。
「ずっと待たせてしまっていたんです。先輩と出会ってから、色々気遣ってくれてたことも、…優しくしてくれたことも、今思えばそれとわかる瞬間はたくさんあったのに…考えようともしてこなかった」
「君のことを想ってたからこそ、待っていてくれたんだろう? 思いやりを向けていたことも含めて、君が気付いてくれることを望んでのことなら、そこには彼の私情しかない。…君が気に病むことはないんだ」
「でも…気付いたうえで、結局俺は先輩に応えられなかった。俺が返した一言で、先輩の今までの思いを全て無かったことにしてしまったんです」
「…断ったんだね」
葉月の言葉に、蒼矢は答えることは出来なかったが、足許へと伏せる面差しを隠す前髪が、微かに揺れた。
「…先輩の望む答えを返すのが、知らずに想われてた俺の責任だとも考えました。でも…、本心からでない返事をしても、誠意の無さを先輩にすぐ気付かれてしまうでしょう。…どちらにせよ傷つけてしまうなら、せめて自分に正直でいたいと思ったんです」
「……」
「いまだに、後悔しかない。…自分が恨めしいほどに」
真面目で実直な彼の苦悩する姿に、葉月は静かに聞きに徹しながら、その華奢な肩をさする。
と、葉月の手のひらにぎくりと僅かな振動が伝わってきた。
「…!」
「……こんな時に…っ…!」
拳を握り込み、硬く目をつぶって眉を寄せる蒼矢の悲愴な面差しに、葉月は胸が潰れそうになる。
「蒼矢…、今日はいい。場所だけ教えてもらえれば――」
「…いえ、行きます。私情で責務を放る訳にはいきません」
そう言いながら顔をあげた蒼矢は、今時分まで表出していた感情を全て内へ押し込み、静かでいて意志のこもった眼差しを葉月へ注いでいた。
「…そうか、…わかった」
受け止めた葉月には、そう応えるしか選択肢が残されていなかった。