※この作品はR-18です。

屠殺鬼   作:赤だし滑子

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プロの仕事

 舌をシュビッと伸ばす。

 

 隠れていた一人の足に巻き付いた舌。そのままグイッと引き寄せた。

 

 目抜き帽で顔を隠していて表情はよく見えないけど、その下からは動揺の気配が伝わってきた。目抜き仲間だね、僕たち。なんて……いてて……撃つなよ。

 

 床の上を滑りながらも、見事な反応でサブマシンガンを撃ってきた侵入者。

 

 足を引っ張って寄せたから、僕から一番近い君の急所はというと――残念ながらここだ。

 

 引き寄せた侵入者の股ぐらをブッチャーの大きな手で掴んだ。

 

「ひっ」

 

 サブマシンガンの乱射が止まった。彼が竦(すく)み上がったのが分かった。

 

 手の中でちくわと玉こんにゃくがふたつ、コリコリとすり合わされる感触があった。容赦なく握りつぶす。

 

「――――――――ッッッ‼」

 

 海老反りになって硬直した男。それを確認して立ち上がる。

 

 偶然なのか、男が最後っ屁をくれたのか。彼のサブマシンガンが火を噴いて僕の舌を撃ち抜いた。

 

 痛い。ベロが千切れたじゃないか。さすがに舌に皮膚ほどの耐久力はない。

 

 それで僕が怯むと見做(みな)したのだろう。隠れていた最後の一人が、僕の脇を走り抜けようと身を屈めて駆け出していた。

 

 狐っ子を狙っているな。

 

 でもそれは許さない。僕は仕事をやり遂げる。プロだから。

 

 身体を一回転しながら、ブッチャーナイフを背中から抜きざまに水平に薙(な)いだ。

 

 ブァンッ! という音と共に、水袋を切ったような手応えがあった。

 

 すり抜けようとしていた侵入者は、腕ごと輪切りになって床に沈んだ。

 

 ピクピクと足元で動かなくなっていた男からサブマシンガンを取り上げ、変態狐女と格闘していた二人の内、一人を撃ち殺す。

 

 二対一で拮抗していた戦況だ。もう侵入者に勝ち目はない。

 

 狐女は残った一人の足をあっさりと切り飛ばし、踵落としでとどめを刺した。

 

 あの女、踵落として人間を真っ二つにしたぞ。ケプラースーツごと。狐女の評価をひとつ上方修正しておこう。

 

 ついでにショーツは白の透けソング、と。心のメモに書き足した。スカートにソングで格闘するなんて、見せる気満々。しかも白だなんて……すごく分かってる。やっぱり変態だ。

 

 すぐに部屋に静寂が来た。

 

 変態狐女が狐っ子に声をかける。狐っ子はその声にうんうんと頷いていた。二人とも無事そうだ。

 

 狐女はそのまま、狐っ子を庇ってしばらく周囲を油断なく警戒していたけど、もう追撃はないはずだ。タンゴは少数編成だから、そんなに何重にも波状攻撃はできない。

 

 僕は部屋にまき散らされた、タンゴチームだった血肉を眺めながら、ぼんやりした過去の記憶を辿っていた。

 

 タンゴチームはフォックスチーム同様、危険な任務で捨て駒的に使われている。でも同情心はない。タンゴはその分お給料がいいんだ。残される家族への手当ても厚い。曲がりなりにもエリートコースだからね。彼らは必要な時だけ出撃する一撃必殺の部隊。

 

 常に激戦区に投入されて、碌(ろく)な報酬ももらえず、冷や飯を食わされているフォックスとは違う。タンゴへの仲間意識なんて皆無だ。

 

 それにしてもハラガヘッタ。

 

 部屋に充満した鉄臭い匂いが、僕のリビドーを否応なく高めた。

 

 部屋中美味しそうなご飯だらけだ。まるでホテルの立食パーティー会場のような。どこに行ってもバラエティ豊かな新鮮な幸(さち)ばかり。手を伸ばせばすぐに飲み物のおかわりが。ここはまさに食のエンターテイメント。ブッチャーの目にはそう映る。

 

「○§〆※▽▼★●#●……」

 

 僕がムラムラとつまみ食いの欲求と戦っていると、変態狐女が僕に何かを言いながら近づいてきた。彼女の視線は僕――の息子に注がれている。

 

 血と肉の匂いでエレクチオンしてしまっており、さらに身体を勢いよく回転させたりしたものだから、エプロンがずれて丸見えになっていた。

 

 ガン見。ちょっと気恥ずかしい。でも漲(みなぎ)る。ビクビク。

 

 狐女は僕の前まで来ると、ようやく視線を上げて僕の身体をペタペタ。千切れた舌を確認。

 

 彼女、近くで見ると美人さんだ。色っぽいって言えばいいのかな。切れ目が素敵。格闘で汗ばんだうなじから立ち上る熱気と、香水に隠れた独特な獣じみた体臭も相まって、余計僕の暴れん棒が盛り上がってしまう。ビキビキ。

 

 彼女もそれに気が付いたようだ。変態狐女の視線の先には、カウパー液を漏らして臨戦態勢の銃口が。

 

 ゴクリ、生唾を飲む狐女。

 

 狐っ子に配慮したのか、彼女は狐っ子の視線から僕の息子を隠すようにササッと立ち位置を変えた。

 

 やっぱり彼女は狐っ子の保護者なのかな。

 

 でも意味ないよ。その子は前に、僕とソバージュの子の合体シーンを大スクリーン最前列で見てるから。潮しぶきまで顔にかかっちゃって。ああいうのって4Dシアターっていうのかな。

 

 僕のブッチャーランスも、血管の浮き出し具合まで含めて鮮明に記憶に焼き付いてると思う。狐っ子も瞬きせずガン見だったしね。男根から目が離せなくなるなんて、変態の血筋で間違いない。

 

 変態が嫌いって言ってるわけじゃないんだよ? だって僕も変態だから。むしろ仲間意識が芽生えちゃう。今晩どう?

 

 ……んー、それにしても、その位置に立つのは危ない。

 

 君たちの命の危機は、まだ去っていないんだよ?

 

 おもむろに、手に持っていたブッチャーナイフを振り上げた。

 

 それを見た狐女がギョッと目を見張った。

 

 バギャァンッという衝撃音が部屋に響いたのはその直後だった。

 

 狙撃だ。勘だったけど、間一髪。ブッチャーナイフで防げた。

 

 狙撃兵が、ターゲットが一直線に並ぶ千載一遇の瞬間(チャンス)を見逃すはずがない。

 

 先ほど僕が撃たれた時に見た光の角度に鑑(かんが)みて、今の狐女が立っている位置は狐っ子と射線が揃っている。そういう位置だった。

 

 すかさず足元に転がっていた侵入者の頭を掴んで、その胸に足をかけた。彼はまだ生きていたけど、生殖器を潰されて息もたえだえ。何か言っていたけど無視して大根でも引っこ抜くように力を込める。

 

 バリボリ音を立てながら、男の頭は抜けた。ついでに背骨も引き抜けた。大根っていうか、白いゴボウだね。

 

 背骨を手早くブッチャーナイフにぶつけて落とし、大きく振りかぶった一球を投じる。

 

 ボッと空気を押しのけながら夜空をすっ飛んでいった男の頭部。

 

 これ、僕がよく使う遠距離攻撃手段なんだ。効果はてきめん。二、三人ならまとめて殺せる威力が出るし、狙いを外しても敵の戦意を著しく削ぐという追加効果がある。

 

 さすがにこれが狙撃兵に当たるとは思えないけど、もう撃ってはこないだろう。まさか狙撃が防がれるとは思っていなかったろうし、まさかまさかカウンターで仲間の頭が飛んでくるとも思っていなかったはずだ。動揺すれば正確な狙撃はできない。

 

 これで、とりあえず退(しりぞ)けたと考えていいだろう。お仕事完了。

 

 見たか、これがプロの仕事だ。

 

 いそいそとエプロンの位置を正し、窓の外を窺い、周囲の安全を確認してから視線を部屋に戻す。

 

 僕と目が合った変態狐女は、腕を組んでふーんと不敵に笑った。

 

 なにその表情? どういう意味なの?

 

 そんな彼女の後ろから、狐っ子がおずおずと歩み出してくる。こっちも怪我はなさそうだ。

 

 いい仕事だったと思うんだけど、ボーナスないのかな。そんなことを考えていると、狐っ子が恐る恐る僕の千切れたベロに手を伸ばしてくる。

 

 何をする気なのかと僕が見守っている中、彼女の手が白く輝き始め、やがて僕のベロの先端が真っ白いボリュームのある光に飲み込まれた。

 

 なんだか温かい。

 

 光は徐々に収まった。

 

 その下から現れたベロは元通りになっていた。じくじくする痛みも、つゆと消えていた。

 

 なんと……この狐っ子は回復魔法が使えるのか。しかも僕が今まで見たことのある、どの回復魔法よりも再生が早かった。

 

 ブッチャーの頑丈さは呆れるほどだけど、怪我をすれば痛い。特にベロは敏感で、怪我をすると痛みが長引く。そして痛みはブッチャーの凶暴性を呼び覚ます。

 

 だから僕は、回復魔法係さんが来るまでの時間、ベロ切断の痛みを堪(こら)え、ブッチャーの本能と格闘し続けなければいけないところだったんだ。

 

 それは、舟を漕いで眠気と格闘する時と似ていて、かなり危ういし、うっかりがあり得る。治してもらえたのは凄く嬉しい。

 

「★◎〓▲□?」

 

 見上げてくる狐っ子が何かを言っている。ごめんね。何言ってるのか分からないんだ。だからお礼に舐めてあげよう。ペロリ。

 

 僕が伸ばした黝(あおぐろ)い舌に、顎(あご)、唇、鼻、瞼(まぶた)、おでこと、まとめて舐め上げられた狐っ子は、たたらを踏んで後じさり、目をパチパチと瞬(しばたた)かせていた。

 

 狐っ子のビックリ顔に、たらーりと垂れる僕の唾液。

 

 しまった。ついうっかり……後で狐女に怒られそ。

 

 結局、僕が施設に戻れたのは翌日の昼。色々と調査などがあったからだ。

 

 僕の仕事ぶりにも調査が入ったみたいだったけど、お咎め無しだった。

 

 報酬も、とくに無しだった。

 

 分かってた。ただ働きには慣れてる。

 

 牢獄に戻ったら女がいた。

 

 最近ローテーションに入った、黒髪長髪の子だ。

 

 この子、見た目は大人しいけど結構好きものなんだよね。挿入すると射精(だ)す前から必死に僕に抱きついて腰を振り始めるんだ。だから僕も好き。

 

 長い禁欲期間に加え、血肉の匂いと戦闘でMAX昂(たかぶ)ぶっているから、彼女の今のおずおずした感じと、その先に隠された秘密がとても魅力的に見える――。

 

 この後めちゃくちゃ凌辱(セックス)した。

 

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