※この作品はR-18です。

屠殺鬼   作:赤だし滑子

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鉄の連帯感

 アビゲイルは唇が白くなるほど強く噛んで、股下に視線を落とした。

 

 そこには僕の赤熱する息子がいる。彼女を二度にわたって完全敗北させた相手だ。

 

 しかしすぐに彼女は、意を決したように僕の肩に手をかけて立ち上がり、ガチガチのブッチャーランスの上に自(みずか)ら跨がってきた。

 

「――ふっ――ふっ――ふっ――ふっ――」

 

 息が震えて、もの凄く緊張している様子だ。

 

 それはそうだろう。対面座位で挿入するのを、あれだけ怖がっていたのに。

 

 かつて自分を幾度となく串刺しにした禍々しい武器の上で、無防備に大股を開いて、鋭い切っ先を自分の最も敏感な部位に当てがってる。

 

「……ん……ン、ぐンンッ! ン゛~~~~~ッ‼ ン゛~~~~~ッ‼」

 

 アビゲイルは目をぎゅっと閉じて腰を落とし始めた。

 

 彼女の喉が自然と上に反って、綺麗に浮いた首筋に汗が滴った。

 

 僕の意思とは関係なく、女性の下の口に飲み込まれていくという初めての感覚。ヌルヌル、プリッとザラッとしていて、すごく気持ちが良い。

 

 しかも相手はアビゲイルだ。男なら誰もが恋い焦がれる美女が、自分で挿入(い)れているというシーンには、嬢のディープスロートとためを張る満足感があった。

 

 ブッチャーのモノを、自ら迎え入れる女が存在するとは思わなかった。

 

「――ッッ‼ ……ぐ、ぅっ……ぅぅ――フ~~~ッ……フ~~~ッ‼」

 

 また僕の肩に噛みついてきた。でもこれは無意識の内にといった感じだ。

 

 彼女は愛咬(あいこう)の癖がある。

 

 リミット近くなると、何かを噛んで気を保つ性質(たち)のようだ。エクスタシーが高まると舌が頭を出すのも、そのせいだったんだ。可愛いね。

 

 至近距離で見た彼女の顔は紅潮し、焦点は遠く、鼻息が荒い。僕に噛みついたまま、わけが分からなくなってそうだ。

 

 深く入りすぎないように、手で尻を支えてサポートしてあげる。

 

 そうしている内に、アビゲイルは気丈にも自ら膣の奥までブッチャーランスを咥え込んでしまった。

 

 僕の肩を口でモグモグ。

 

 ――ワタシ、ウゴク、タスケル、ジェヴォーダン――

 

 そういうことか。彼女、僕の身体がまだおかしくなっていて、上手く動かせないって思ってるんだ。さっき僕が彼女の上でゆっくり動いていたのは、その影響もあったと判断したのかも。

 

 たしかに、さっきは普段とは比べものにならないくらいゆっくり、じっくりアビゲイルの膣内(なか)を味わい尽くしていた。

 

 実際は、激しくストロークさせるよりも、ゆっくりと貪欲に嬲(なぶ)る方が、君のいやらしい肉壺を堪能できるという事に気が付いたからなんだけど。

 

 アビゲイルが僕の両肩に手を当てて、ぐっぐっと押してくる。

 

 マジか……この子、僕に騎乗位する気だ。どうしよう。

 

 ブッチャーが捕虜のなすがままになる姿を見せるのは、まずい気がする。

 

 僕の立場もまずいけど、アビゲイルが危険分子と見なされる恐れがある。だってブッチャーを乗りこなす女なんて、ヤバいでしょ。常識的に考えて。

 

 そんな僕の理性をぐいぐい押してくるのが、アビゲイルの色気だ。

 

 少し屈んだ姿勢で重力に引かれて垂れている乳は、それでも綺麗な形を保ったままだ。ほんのり朱に染まった柔肌。少し潰れた臍(へそ)。抗いがたい引力を放つ腰のくびれ。その中心に消えた僕のペニス。身体の流麗な稜線に垂れかかる長い金髪。はぁはぁと熱い息をつく美貌。悦(よろこ)びに濁り始めている瞳。

 

 この扇状的な女体が、どういう風に僕の上で踊るのか見てみたい。

 

 逡巡して、仰向きに寝転んだ。

 

 彼女を下から責め立てる様子を演じてみることにした。

 

 片手で彼女の腰を掴み、もう片手で下から乳房を捏(こ)ね上げ、黝い舌を彼女の首に巻き付ける。

 

 アビゲイルは首を取られたことを気にもせず、僕の上で動き始めた。

 

 僕の身体はドラム缶より太いから、彼女は僕のお腹に両手を突いて、半立ちに近い姿勢を取れた。

 

 僕も乳を下から押し上げてやり、乳首を弄んで彼女のエクスタシーを後押してあげれば、アビゲイルの動きはどんどんと大胆になっていく。

 

「――はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はんんぁ、んぁ、んぁ! あぁッ‼」

 

 彼女の動きには弾力があった。

 

 髪を振り乱して喘ぐアビゲイル。

 

 首に僕の舌が巻き付いているものだから、まるで僕専用の性奴隷(ペット)になったみたいだ。女を供物として孕ませるのとは違う、別種のエロスがあった。

 

「あぁっ! あぁっ! あぁっ! あぁっ! うぁ、うっ……うん……ッ! ぁあああッ‼ ぁあああッ‼ ぁあああッ‼ ぁあああッ‼ ぁあああッ‼」

 

 自分で良いポイントを見つけたのか、やがて同じ動作と同じ喘ぎを繰り返すようになった。

 

 徐々にその動きが速まっていく。腰だけ別の生き物みたい。

 

 僕が鑑賞する先で、アビゲイルは唇を強く噛むと、目をギューッと瞑(つむ)り、大きく全身をムチのようにしならせてピタリと膠着した。

 

「――ぐぅっ……は……はっ……はっ……はぁ……ぁぁぁ――――」

 

 脱力したアビゲイルが、小さな悲鳴を零しながら僕の上に倒れ込んでくる。

 

 僕は射精することも忘れて、そんな芸術的な動きに見入っていた。

 

 やがて僕の胸に顔を埋(うず)めながらキューキュー、ヌルヌルと何度もしゃぶり上げる彼女の魅惑の蠕動(ぜんどう)に誘われて、思い出したように精を吐いた。吐かされたと言ってもいい。

 

「⁉ んっ、あっ、ああっ⁉ ぁぁ――はぁっ……い゛っ……ぅぅ……!」

 

 背中を丸めて拳を作り、再びオーガズムを迎えたアビゲイル。そうして浮いた乳房に、腋から一粒の汗が垂れ、やがてそれが横乳を伝ってポタリと乳首から落ちた。

 

 彼女は長い吐精の間中、ずっとそのまま姿勢を硬直させていたけど、やがて僕が首の締め付けを緩めると同時に、事切れたように僕の上に倒れ伏した。

 

 すごい。

 

 僕の素直な感想だった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……あん、れろ……はぁ……ピチャ……」

 

 ――モット、スル、?――

 

 繋がったまま僕の上で目を閉じて呼吸に喘いでいたアビゲイルは、ペロペロと僕の乳首を舐めながら、膣の締め付けでそんなことを聞いてきた。

 

 僕への一途(いちず)なへつらい。

 

 あれだけ嫌がっていた座位に跨がってくる心境の変化。

 

 ブッチャーを誘惑する、これほどの豹変。

 

 彼女の中でいったい何があったのかを考える。

 

 この女は……。

 

 この女は、本気で僕を手懐ける気なんだ。

 

 男なら誰しもが憧れる肢体を、この醜い怪物に余すことなく明け渡し、僕というケダモノを全力で手玉に取る気だ。

 

 醜悪なブッチャーを籠絡(ろうらく)しようとする女。

 

 この世で最も不気味な化け物の中に、一縷(いちる)の望みを見出して、プライドも何もかも、かなぐり捨てて吹っ切れた。そうとしか思えない。

 

 彼女は二度も僕にむごたらしく凌辱され、己の尊厳を徹底的に踏みにじられてもなお、諦めず、屠殺鬼(ブッチャー)に全てを捧げて未来を掴み取ろうとしている。

 

 想像を超えた芯の太さ。

 

 そんな女の強(したた)かさを垣間見た僕の胸を満たしたのは、心強さだった。

 

 ただでさえ腹をくくった女はタフだ。ましてや彼女のような、しぶとい女が自らの命運をかけて僕に協力してくれるなら――。

 

 アビゲイルなら本当に僕の助けになる。

 

 この酷い境遇を打破するパートナーになり得る。

 

 そんな小さな希望が僕の中で芽生えた。

 

 優しく彼女の首を舌でキュッキュッと締めて、おねだりしてみる。

 

 ――モウイチド――

 

 ――イイヨ――

 

 アビゲイルは気怠そうに僕の上で身体を起こし、今度はその艶(つや)やかな女体の凹凸を、僕の醜肉にこすり付けるように動き始めた。

 

 僕のスペルマたっぷりの膣で、ゆっくりとジュップジュップとしごかれる。

 

「――ぅっ、はぁ、あむ……はむ……ピチャ……ピチャ……」

 

 ザラつく舌で僕の胸を丹念に舐め上げながら、僕の気味の悪い腹に柔肌をこすり合わせるアビゲイル。

 

 少し浮いて垂れた乳が、僕の胸の上で汗と体液越しに滑った。彼女の勃起した乳首がこちょこちょと僕の腹と胸をくすぐっている。

 

 そんな行為を続けるアビゲイルの顔に、嫌悪感がない。

 

 眉はひそめているけど、目は情欲に澱(よど)んでいて、口から漏れる「んん……んん……」という声音には発情の興奮がはっきりと聞こえている。それが、彼女が本気で僕とのセックスに挑んでいる何よりの証拠だった。

 

 僕の胸にじんと染みてくるものがあった。

 

 その感情の正体がなんなのか、僕には分からなかった。

 

 ――ボクモ、デタイ、ロウヤ――

 

 ゆったりとしたアビゲイルとの会話の途中、僕は迂闊(うかつ)にも本音を漏らしてしまった。

 

 彼女の目が一瞬だけ、強く輝いたのが見えた。

 

 アビゲイルの動きと呼吸が加速する。

 

「はぁ、はぁ、はむ、チュッ、れろ、チュッ、チュッ――」

 

 ――デヨウ、イッショ、シタガウ、イッショ、デヨウ――

 

 アビゲイルは僕の身体にキスするリズムで情熱的に答えた。

 

 彼女は僕に本気を見せた。

 

 だから僕も本気で彼女に向き合う。

 

 アビゲイルは僕を何が何でも利用しようとするだろう。スパイだもの。

 

 でもそれでいい。

 

 そうこなくては。

 

 その方が彼女はやる気になる。

 

 でも、どんなに策を弄(ろう)しようとも、最後には僕の力が全てを圧倒する。

 

 エイリアン達も、アビゲイルも、分かってないんだ。

 

 僕に宿るブッチャーの真なる力を。

 

 頭クルクルパーが操るF1カーと、ベテランドライバーが操るF1カーにどれほどの違いが出ると思う?

 

 彼らは阿呆が操るF1カーしか知らない。

 

 その誤解が僕の切り札だ。

 

 僕に自由を与えたその時、破滅が始る――。

 

 アビゲイルが、僕の縛(いまし)めを解く鍵だ――。

 

 僕とアビゲイルは粘膜に飽き足らず、全身をくまなく使って会話し続けた。

 

 お互いの監禁場所、普段の時間の過ごし方から、食事内容に至るまで。本当は脱出方法について話し合わないといけないのに、不思議とすぐに会話は雑談に流れてしまった。

 

 なんにせよ、こんなに話をしたのはブッチャーになってから初めてだ。

 

 彼女は娼婦もかくやという痴態(ちたい)を見せて僕を満足させ続けた。

 

 僕の腕の中で身悶えする。その合間合間で、あらゆる手段で僕に言語を送ってくる。お得意の愛咬(あいこう)で。啄(ついば)むようなキスで。しゃぶる時の舌のすり上げで。膣のヒクつきで。時には喘ぎのリズムさえ応用した。

 

 僕も応えた。乳を潰し、尻肉を押す。乳首を弄(もてあそ)び、何度も突き上げる。彼女を貫いたままビクつかせて、拘束に見せかけて舌で首を優しく絞める。

 

 その結果は、求めて求められる濃厚なセックスだった。

 

 魂を焦がすかのごとき情交。

 

 燃え上がる淫欲の中で、僕は夢中になってアビゲイルに注ぎ続けた。彼女もそのたびに汗まみれになって目一杯身体を反らし、僕にしがみつくことで応えた。

 

 僕の無尽蔵に湧き出すブッチャーの性欲は、たった半日で収まった。

 

 裏切られ、忘れ去られたアビゲイル。

 

 怪物の狂気に閉じ込められ、存在すら認識されていない僕。

 

 そんな似た者同士が認め合えたような気分になれたからなのか、精神的な満足感が肉体の飢えを凌駕したのも知れなかった。

 

 彼女はきっと利己的だ。

 

 内心では僕のことを目も背けたくなる悍(おぞ)ましい化け物だって思っている。そこには同情も友情も愛情もない。

 

 騙されるものか。彼女は腐ってもスパイだ。僕を嵌(は)めた連中の手先なんだ。

 

 でも、外に出たいという一点において僕らは信じ合える。

 

 僕の勝手な思い込みだけど、その目的が果たされるまでは、僕とアビゲイルはお互いを慰め合いながら、列車の連結器のごとき鉄の連帯感で繋がっていられる。

 

 今日、彼女が見せた勇気から、僕はそう確信した。

 

 ――メダツ、アブナイ、オトナシク――

 

 最後にそう伝えてアビゲイルを帰した。

 

 彼女はいつも通り悦びに打ちひしがれて、ぐったりと放心状態で連れて行かれたけど、その顔にはどこか安堵の色が浮かんでいたように、僕には見えた。

 

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