バイバイと、こっそり小さく手を振った僕の視線の先。
そこには、バンザイで謝意を示してから、カサカサと路地の影に溶けていく二号君の後ろ姿が。
アビゲイルのアドバイスは的中した。僕があの後すぐに街に連れ出されると、二号君は歯の裏をコツコツと叩き始めた。そこで僕は周囲の目を盗んで、こうして彼を送り出したというわけ。
アビゲイルは凄いな。蜘蛛を外に連れて行くなんて、全然思いつかなかった。そろそろ強制的に引っ張り出して牢屋の隅に
そのエリートが、僕の肉棒で我を忘れてよがる
パリッとした服を着ているアビゲイルの姿しか見たことがない男ども。
そんな連中を牢獄の外に立たせ、あんな風に僕の馬なみに咥え込んで、大声を上げて泣き叫び、身体をくねらせるアビゲイルの
男どものオナニーは許してあげるんだ。
僕のザーメンまみれで感じ続けるアビゲイル。その姿を見て格子の向こうでシコる男達。すると彼女は、何十、何百もの欲望の眼差しに視姦されて感度が上がり、また悦びの声を張り上げるに違いない。百の視線で、百倍の感度。でも僕以外の男は格子が邪魔でアビゲイルには手を出せない。あらゆるポーズで犯されて喘ぐ彼女の痴態を鑑賞し続けることしかできない男どもは、しかし悔しがりつつも手を止められない。格子近くの床はもう精液だらけ。止まらない男どもの熱い息遣い。そしてついにアビゲイルも、そうやってオカズにされる自分の魅力に徐々に酔い始めるんだ。自分は百の男が同時にひれ伏す女子力の持ち主。みんなそんなに私を犯したいの? そんな背徳的な満足感に浸るアビゲイルを容赦なく襲うのは僕の剛直による絶倫レイプ。アビゲイルが失神するまでこの羞恥プレイは続く。やがて次に彼女が目を覚ました時、彼女の脳裏に焼き付いているのは僕の逞しいペニスとザーメンの記憶だけ。あの快楽は、僕の肉棒が与えてくれたものだったんだという誤った
はっ⁉
――いかんいかん。今おっ勃てるとロリコン扱いされる。僕はロリコンじゃない。僕は全年齢イケる。
僕の視線の先には、てくてくと歩く狐っ子。
ここはエイリアンの街中。僕は彼女について道を歩いていた。
相も変わらず言葉が分からないから詳細は不明だけど、指示によると、僕は狐っ子のお
紙袋の下で小さな嘆息が漏れた。
狐っ子は、いつかの時ほど僕を怖がってはいなかった。当然、道行く人は僕を見て一歩引くわけだけど、彼女は僕を先導して鼻息荒く
狐っ子はベレー帽の下に狐の耳があって、狐の尻尾があり、瞳孔が縦に割れている。それ以外は人間の女の子そのものだった。年の頃、中学生か高校生くらいだろうか。目はくりっとしていて、笑うと愛嬌があり、とにかくぶっかけてみたい。
でも大丈夫。昨日アビゲイルに搾り取られたばかりだから、今日は一日ぜんぜん平気そうだ。彼女を存分に抱くと、ブッチャーの底なしの性欲がコントロールしやすくなる。そんな特別な効能があった。
ところで狐っ子の屋敷を出てから結構歩いたけど、どこまで行くんだろ?
そんなことを考えながら、猫じゃらしに釣られる猫になった気分で、目の前で揺れるきつね色の尻尾と、その先で跳ねる小さなお尻を眺めながら歩いた。
ふと、変な音が耳に入ってきた。
んん……? なんだ、このブモーッていう音。すごくほっとする。
あ、ミノタウロス店長。
ここは精肉店の前だった。店長が道を歩く僕を見つけて声をかけてきたようだ。狐っ子と親しげに話をしている。店長ってば顔が広い。
ミノタウロス店長は僕にも何かを話しかけ、手に草を握らせると笑いながら店に戻っていった。
ほんとにこの草……もぐもぐ。
でも正体不明のこれ、ねばねばして、独特な臭みと香ばしさが広がって、食べつけるとなんだか美味しいんだよね。元気になる。息子も。
そうしてしばらく街を練り歩くと、やがて僕たちの前に大きな施設が現れた。
おおよそ、僕が入ってはいけなさそうな雰囲気の建物だ。
狐っ子は迷いなくその門を潜った。
僕が躊躇して門の外で立ち止まっていると、彼女が何かを言いながら戻ってきて、僕の指を掴んで中に引きずり込んだ。
門を潜ると広い庭があり、その奥に鎮座するのは赤い外壁の大きな建物。
これだけだと何の場所か分からないけど、門を潜る人の多さ。そしてその人種。
僕の人生経験に照らし合わせても、この場所は推測しやすい。つまり――。
「あああああああああああああああ!」
大きな声が聞こえた。見れば――ああ、
彼女は愕然と僕を指差して震えていた。
元気? あの時、素股でイケたのかな? それだけ聞きたい。
あっという間に人だかりができた。みんな
そりゃそうだ。思うに、ブッチャーがいてはいけない場所だここ。
何かを言い合っている狐っ子とエルフ娘。
すると、ざわつく人混みの中から歩み出してくる人影があった。
一人は褐色娘だ。黒髪ショートで見た目はほぼ人間。ただし、元気そうに口を開けると小さな牙が覗く。そして凄く衣服の面積が少ない。ホットパンツが印象的な、健康的で良い身体をしている。うっすらと浮いた腹筋が良いね。ゴクリ。
もう一人はフリフリな服装のお嬢様風味だ。でも顔つきは
間違いない。あのお嬢様は、竜人だ。
鳥やトカゲは総排出
衆人環視の中、四人は僕の前であーだこーだ。
すると狐っ子がおもむろに、後ろ手にツンツンと僕を
次いで、その指をビシィッとお嬢様方に向かって突き出した。
「◇#□●★っ!」
しーん。動かない僕。
気まずい沈黙の中、狐っ子が僕を振り返って恥ずかしそうにぷんぷん。僕の指を掴んで前に引き出した。
ビビって後じさる三人。フフンと鼻を鳴らして
……虎の威を借る狐、ならぬ、ブッチャーの威を借る狐。
どうやら狐っ子が今日、妙なテンションになって、るんるん気分で僕を連れ出したのは、これが楽しみだったっぽい。
――
ドンッという衝撃を感じた。見ると、ドラゴンお嬢様が僕の太ももをヤクザキックしていた。
何すんの? ブッチャーにそんな事すると、凄く危ないよ? ほら、エルフ娘も褐色娘も口に手を当てて青ざめてるじゃん。しかも結構威力あった。さすがは竜人。
彼女は僕に恐れを抱くそぶりを見せず、堂々と至近距離まで近寄って、狐っ子に食ってかかっている。両手を胸の前に上げて、ちょっと分が悪そうな狐っ子。
さらにもう一発。ドラゴンお嬢様が、今度は正面から足の裏を打ちつけてくる。
エプロン越しでも結構痛てぇ……。お腹がズンッてなった。相手がブッチャーだからと思って手加減なしだな?
……僕のヤクザキックなら、君の内臓シェイクしてトマトジュースにできちゃうよ? そんなに血反吐を吐きたいのかな?
無言で蹴飛ばした。
ドラゴンお嬢様の、後ろの立木を。
ゴパァッという音を残して、幹が弾け飛んだ。
ベキベキと倒れる太い木。揺れる地面。舞い上がる砂塵。唖然となる一同。
いち早く再起動した狐っ子が、僕のエプロンを押して、えいっえいっと後ろに下がらせようとする。
僕のご主人様として、ちょっと判断が遅いな。僕がその気ならあの子死んでたよ? 僕のこと、好きなように使ってもらって構わないけど、取り扱いには気をつけてね? 爆発物扱いでよろしく。
騒然となる群衆を追い立てる誰か。
憤然と牙を剥くドラゴンお嬢様の背中を押すエルフ娘。狐っ子も褐色娘に声をかけられ、一緒に歩いて行った。
狐っ子が、施設に入る直前に僕を手招きした。
……入って、いいのかなぁ?
僕の予想が正しければ、ここは学校だ。
しかもここ、女子校じゃないの?
ブッチャーというセックスモンスターを、一番踏み込ませてはいけない施設。
学園パニックホラーの足音が聞こえる。