※この作品はR-18です。

屠殺鬼   作:赤だし滑子

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怪物降臨

 僕は狐っ子フェリスの護衛を命令されているけど、他のエイリアンの女を襲うなっていう指示は受けてないんだよね。犯っちゃおうかな。

 

 そんな屁理屈を思い立ったのは、フェリスのお守りを務めて十日ほど経った頃だった。ストレスのせいだろう。

 

 このボディガード任務は、はたしていつまで続くのか。

 

 前回の防衛は明確な敵がいたから、終わりも見えていたわけだけど、よく考えると今回はまったく目的が見えない。僕はいったい何故ゆえに彼女のお守りをやらされているのか。まさかこれ、ずっと続くの?

 

 一応、毎日夜には施設に帰してもらえるから、何とか続けられそうなんだけど、とはいえ……とはいえだ。

 

 昼間たっぷりと時間をかけてリビドーを圧縮された状態で女の前に放り出されるものだから、彼女達の負担が計り知れないんだ。

 

 また次の日の朝には僕は出勤なので、彼女達への責め苦はひと晩で済む。その一方で、逆に終わりが見えていることで僕の責めが激しくなっている側面がある。

 

 朝が近づいた時に、僕は一番激しく彼女達を抱く。

 

 学校に行きたくない。でも行かなくちゃ。行く前にせめてもう一発。まるで社畜の心境だ。最後は時間に追い立てられるように連続で。射精する時間すら勿体ない。射精(だ)しながらも名残惜しくズンズン、ビュルビュル。彼女達も普段とは違う僕の抱き方にヒィヒィ、もう堪忍(かんにん)して。

 

 これまでは朝から晩まで女とまぐわって、合間にカリカリを食べて、暇になったら戯(たわむ)れにエイリアンを食べて独房送りになる。そんな退廃的な生活をしていたのに、急に規則正しい生活を強いられているのも良くない。せめて段階を踏んで欲しい。社会復帰キッつ……。

 

 しかも勤務先が僕にとってストレスフル。男なら嬉しい職場かも知れないけど、僕は屠殺鬼(ブッチャー)だ。犯し、殺し、食らうのが本領の怪物。そんなのを女子校に入れるなよな……。

 

 あの変態狐女の指示だろうけど、あいつ世間を知らな過ぎだろう。やっぱり一回、手酷く凌辱されないと分からないのかも。なんなら僕がその教育係を買って出る。

 

 さて、それで今。

 

 僕の目の前で繰り広げられる状況。正直手に余る。

 

 先ほどフェリスがトイレに入ってから、すぐに慌てて出てきて「ジボダン!」と僕を中に引き込んだ。何事かと。

 

 するとそこには例のドラゴンお嬢様を初めとした女の子数名と、彼女達に囲まれる形で巨乳の女の子が一人。裸で局部を隠し、半べそで立っていた。桃色のミドルロングの上から一本角が生えているのと、下半身が全部タコの足なのが印象的な彼女。いや、これはすげぇ……。

 

 十中八九、虐め現場だと思われる。

 

 つまり、僕が止めろってこと?

 

 どうやってさ。僕、喋れないっていうのに。こうやって立って威圧するか、あるいは実力行使しかないんだよ。

 

 僕がずかずかとトイレに入ってきた衝撃で、今はみんなフリーズしているけど、これ以上は何もできないから、あとはフェリスが頑張ってね。

 

 ところで、ここ何日もフェリスに付き従ってこの女子校を観察してみて、分かったことがある。

 

 まずエイリアンの女の子達は、同性同士でもキャッキャうふふ。見られてたって構わない。性におおらかな子が多い。これがもし共学だったら、いったいどうなってしまうのか。貞操観念崩壊と言って過言ではない。

 

 この前は、フェリスと一緒に、いわゆる理科準備室的な場所に入ったら、部屋の中で骨みたいな何かを介して結合している子達がいた。

 

 エイリアンの張り型は骨なのか……。感心した僕と、顔真っ赤なフェリスが見守る前でも行為を続けていたのが印象的。羨ましいことだ。

 

 さらに、彼女達はこうして誰かを虐(しいた)げることも、当たり前のように平気な顔でやる。誰も制止しない。種族によるみたいだけど、全体的に実力主義社会みたいな印象を受ける。いじめられる方が悪い、と。このドラゴンお嬢様はいじめっ子タイプだ。強そうだもんね。

 

 ちなみに、ドラゴンお嬢様が荒くれグループ。褐色娘が享楽(きょうらく)的なグループ。エルフ娘がツンと気取った優等生グループの代表的な立場っぽい。

 

 フェリス、ドラゴンお嬢様、褐色娘、エルフ娘と、綺麗に四つの派閥に別れている。

 

 結論として、僕が思うには、フェリスはエイリアン基準では相当大人しい部類に入っている。いじめられっ子タイプなんだ。

 

 性に興味はあるけど恥ずかしい。暴力反対。みんな仲良く。そういった大人しい種族のグループの中心に彼女はいるみたいだけど、いかんせん弱い。

 

 他の三グループに対抗できず、時々こうやっていじめられたり、からかわれたりしている。あの巨乳タコ足の子はフェリスのグループなのかも知れない……あぁ、タコ足が気になり過ぎる。どういう種族なの……?

 

 そこで僕。ということっぽい。

 

 フェリスに危害が加えられないように。かつ、彼女の実力行使要員として。

 

 ということは、このお守り任務――。

 

 彼女が卒業するまで永久に続くってことだ。

 

 目の前が暗くなった。

 

 フェリスが僕を背にして何かを言っている。校庭での僕のパフォーマンスが効いたのか、ドラゴンお嬢様もフェリスに対して、やや遠慮がちだ。

 

 でも徐々にヒートアップしてきたのか、一歩、二歩とドラゴンお嬢様が踏み出してくる。

 

 後じさるフェリス。

 

 彼女のふさふさの尻尾が僕のエプロンに触れた。

 

 そこで僕はぴんと来た。

 

 僕にとってまったく面白くない、この任務から早々に解任してもらう最適解。

 

 素知らぬふりで、フェリスの背中をこっそりお腹で押した。

 

「あっ」

 

「あっ」

 

 フェリスは前につんのめってドラゴンお嬢様に倒れ込み、彼女を押してしまう形となった。

 

 一瞬抱き合って呆けていたドラゴンお嬢様だけど、すぐに表情をイラッと歪ませて腕を上げた。指先に鋭い竜の爪が光っている。

 

 彼女が手を振り下したのと、僕が腕を差し挟んだのは同時だった。

 

 宙を舞う赤い水滴。

 

 僕の腕が浅く切り裂かれ、ブッチャーの血液がトイレ中に飛び散った。

 

 ドラゴンお嬢様の手の軌道は張り手だったけど、僕が腕を無理やりねじ込んだせいで、それは引っ掻きに変わった。

 

 愕然とその様子を見つめる女生徒たち。当のドラゴンお嬢様も、やべっ……みたいな引きつり顔。フェリスに至っては顔面蒼白だ。

 

 ――よし。フェリスに、手を上げたな? 

 

 ブッチャーの図太い怒声を、喉の奥から吠え散らかす。

 

 その悍(おぞ)ましい声音は校舎を震わせ、世界が忌むべき怪物の降臨を学校全体に知らしめた。

 

 その場の全員が竦(すく)み上がる中、背中にかけていた巨大なブッチャーナイフを抜いた。

 

「きゃああああああああああああッ!」

 

 誰のものとも知れない悲鳴が上がった。

 

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