「――こうしていると、まるで二人で脱出に成功した後みたいね」
アビゲイルは言った。
夜、彼女は僕の作った熟成肉の燻製を食べ終えた後も、焚き火の前でお茶を飲み、ゆっくり夜空を眺めて
「空なんて二度と見られないと思ってた。ここは私が街で生活していた時より、ずっと気分がいい。自然と一緒に暮らすってこういうことなのね」
フォートで生活している人間は、基本的にフォートから出ない。だからなのか、彼女の目にはこんな原始的な生活が眩しく映っているのかも知れない。
キョッキョ、キョキョキョ……と、ホトトギスの声が聞こえる。
その奥にはガゲボゲッ、ガゲボゲッ! という気味の悪い声が――魔獣の声だ。
ここは人間の領地とエイリアンの領地の曖昧な境界にある。従って野犬やクマなどのおなじみの野生動物はもちろんのこと、〈魔獣〉と呼ばれるエイリアン基準の野生動物も出る。夜に出歩くと危険なんだ。
魔獣はエイリアンの
そんなことしないで、内地に避難すればいいんじゃないかとも思うんだけど、やっぱり住み慣れた地を離れるというのは、とても難しいことらしい。少しでも可能性があれば故郷に縋ろうとする。人間のサガなのかな?
中央の連中はそうやってコロニーを守ろうとする人々の希望を煽るように、銃器のなどの支援はするけれど、その本心はフォート外の衛星コロニーを緩衝地帯として使いたいだけだ。本気でコロニーを防衛するつもりはない。土着の民兵を育成して対抗させよう程度にしか考えていない。事実、コロニーのためにストロングホールドから支援部隊が出動したなんて話、聞いたことがない。
だから先日のリプリー三機は驚いた。アースピントの内偵は、あのエイリアンの街に食い込んでいるのだろう。エイリアン側に内通者がいるとしか思えない。そうでないとあのカウンターはあり得ない。
まぁなんにせよ、内地だって、そんなにいいところとは限らないということさ。
重税に倹約。暮らしぶりは内地の方が貧しくもある。
フォートはそんな内地からの支援で比較的、潤ってはいるけれど、そのかわり、いつエイリアン達に殺されてもおかしくない生活だ。どこに行っても同じ。なら、住み慣れた故郷でコロニーを作って最後まで自由に、って考えるのも頷ける。
アビゲイルに釣られて夜空を見上げた。満月がぽっかりと浮いた夜だった。
これが拠点で過ごす最後の夜。僕らは脱出計画を決めた。
僕は頭が弱いから、覚えていられるのか心配だったけど、どうも彼女と密に会話するようになってから脳味噌の調子が良い。大丈夫そうだ。
後はエイリアンの街に戻り、アビゲイルが考えた通りに動けばいい。
「――ところで、昼間のことなんだけど」
移動中の食料として作った燻製ハムを包んでいる僕に、彼女が声をかけてきた。
「森からクマが出てきたじゃない? ジェヴォーダンなら簡単に殺せたのに、どうして殺さなかったの?」
少し考えてから地面にカリカリ、文字を刻んでいく。
『僕らの食料は十分ある。お腹も減っていない。もし襲われても僕は絶対に負けない。あのクマは冬眠前で腹が減っていただけだ。魚くらい片手間で捕まえられる。くれてやっても痛くも痒くもない。だから魚をくれてやった。それでおしまい』
僕が書いた文字を、アビゲイルはじっと見つめていた。
ブッチャーは命令されれば誰でも殺す。
でも抑えきれない攻撃衝動を覚える時は、性欲が限界の時、攻撃された時、あるいはお腹がどうしようもなく減った時くらい。まったくもって野獣。僕はちょっと特殊で、そこに復讐心を刺激された時も加わる。
でも獣というものは、満たされてさえいれば大人しいものだ。
クマだってそうだ。彼らには野生の衝動があるだけで、欲しいものを与えてさえやれば、あえて命の危険を犯して襲い掛かったりはしない。相手が自分よりも明らかな弱者であっても、無闇に手を出したりしない。
彼らには人間のような底なしの欲望というものがない。人間は地上で最も凶暴な生き物なんだ。凶暴さ故に発展し、凶暴さ故にいつも苦しんでいる。罪深いね。
だから、僕という獣が生まれた。
――悪いことをするとジェヴォーダンが来るぞ――
「――ねぇ、ジェヴォーダン。私達はもう運命共同体。パートナーよ」
突然、アビゲイルがそんなことを言ってきた。
「あなたが欲しいものは、私が与えてあげる。私が危ない時に、あなたが守ってくれる。助けて、助けられる。そうやって、お互いを支え合う」
僕はカリカリ、手を動かす。
『僕らは美女と野獣だ』
野獣は呪いを解くために美女を利用し、美女は野獣の財や権力を得るために彼の呪いを解く。これはそういうお話だ。
「あはっ――そうねっ!」
どう伝わったのかは知らないけど、アビゲイルは
「――あなたの魔法は解けるのかしら――」という彼女の小さな呟きが、カップの隙間から漏れ聞こえてきた。
解けないと思うよ。解きたいとも思わない。
僕は最後、きっと誰かに殺される。そうならなければ世界が滅ぶ。それ以外の結末はあり得ない。
でもそれまでは……暴れ続けるんだ。
僕はジェヴォーダンの獣だから――。
アビゲイルは先に洞穴に戻った。
僕が旅の準備を終えて、火の片付けなどをしてから中に戻ると、彼女は枯葉布団の中で横になっていた。
「明日から移動でしょう……?」
そうだね、でも僕が
僕が腰を下ろすと、代わりに彼女がガサガサと枯葉ベッドから出てきた。
裸だ。
天井から
彼女は本当に人間なのだろうか。
そこには月の使者とも言うべき空想的な美があった。
そんな彼女の美が、あたかも鏡のように僕の不浄を映し出す。
月とすっぽんならぬ、月とブッチャーだ。
……アビゲイルを見ていると自己嫌悪に陥る。
僕だって、自慢じゃないけど人間の頃はそれなりに容姿は整っていたはずなんだ。
今はどうだ。
この感情は怒りでも、憤りでもない。
あの高きところにある美を引きずり下ろして、僕と同じ汚濁に沈めて
そんな
僕は……。
「私の裸……見ているだけでいいの?」
アビゲイルが、いつのまにか僕の前に立っていた。彼女の綺麗に割れた
「――あなたのものよ」
彼女は僕の頭をさすり、お腹を僕の顔に押し当てた。
抵抗できずに、彼女の柔らかな腹に顔を埋める。
艶やかな温もりと匂いが、僕の脳幹を強く突いた。
シュルシュルと舌を伸ばして、彼女の股ぐらを
「――んっ! あ……はぁ……♡」
以前、嬢の頭を舌でさすった時に舌の可能性を感じて以来、地道な努力を重ね続けた結果、僕の舌はいよいよ、こういった性技にも応用が利くようになっていた。性なる獣への道をまっしぐらに進んでいる感がある。
割れ目に沿って舌先を這わせ、ビラビラを押し開いて、くぼんだ膣口を舐め上げる。
「んん……んぁ……♡」
長くて太い舌で秘裂全体を圧迫し、陰核ごと押し潰して刺激を与え続ける。
クリだけをくすぐるとか、まだちょっとそういう細かい作業は無理だけど、もう女のエクスタシーを誘うには十分な動きができているようだった。
「ああん……ひぅ、ん♡ ……はぁ……ああ……んぁ……♡」
アビゲイルは僕の頭を両手で抱えて快感に耐えていた。
視線を上げると、きつく目を閉じて薄笑いに悦びを乗せた顔があった。ゾクゾクするほど妖艶な表情だった。
そんな彼女の反応を楽しみながらクンニを続けていたら、彼女がギッと何かを噛み潰したように表情を歪ませた。僕の頭に体重をかけて身体を膠着させたのが分かった。
「ん……ぐ……ん゛ん゛ん゛――ッ!」
頭の上に乗ったおっぱいの柔和な弾力が気持ちいい。オーガズムの震えがその脂肪の奥から伝わってくる。
僕の舌に、だらだらと熱くて甘い女の蜜が零れてくるのが分かった。
「――ふぃ⁉ ああん……――もうっ!」
楽しくなってきた僕が、さらにクンニを続行しようとすると、彼女は頬を膨らませて僕の舌を押しのけた。エプロンをずらして僕の逸物を取り出す。
アビゲイルに押されるがままに仰向けになった。すかさず彼女が跨がってくる。
ブッチャーランスを上に向けて、自ら飲み込もうとすれば、彼女は半分立ち上がった姿勢になる必要があった。
両脚が作る三角形の頂点に、片手で僕の先端をあてがい、その姿勢のまま見せつけるようにクチュクチュと馴染ませていくアビゲイル。その目は情欲に燃えている。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
頬を朱に染めた彼女は、無意識にといった風に口を少し開いてあぐあぐと動かしていた。慣れたような手つきとは裏腹に、それなりに緊張している様子だ。
僕が舌をズルズルと伸ばしてその唇をベロリと舐めると、彼女は肉厚なベロをカプリと咥え、意を決して腰を下ろし始めた。
「んっ……~~~~~~~ッ‼」
アビゲイルが首を反らせて、僕の赤黒い灼熱棒を飲み込んでいく。熱い膣肉が上からヌルヌルとペニスを伝い落ちてくる
本当に、よく入っていくなと感心する。串刺しという表現がぴったりだ。
「んぷぁ……はぁ……ぁぁ……」
第一段階まで入り切って、アビゲイルが動きを止めた。彼女の口から黝い舌がドロリと落ちた。
荒い呼吸で弾む魅惑の乳房を下から捏ね回したくて、両手を手を伸ばした。
アビゲイルはそんな僕の手に細指を絡ませ、組み合わせ握り締めた。
彼女の奥の扉を押し開いた感覚があった。
眉根をギュッと寄せた彼女の呼吸が加速し、腰が下に落ちていく。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ――あ、あ゛あ゛あ゛~~~~~~~ッ……」
自分の意思とは関係なく、陰茎の付け根に柔らかい女の股ぐらが押し付けられるという未知の体験に、僕は胸中で歓声を上げた。
「ふーっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ――」
アビゲイルが長い金髪をバサリと払い上げた。
下から彫刻のような裸体が姿を現した。
僕を見下ろす濡れた瞳が、薄闇の中でなまめかしく輝く。
「ふぅぅ……ぁぁ……♡ 見て……ジェヴォーダン…… ♡ 私……もう、あなたを……簡単に、受け入れて、あげられるの……ッ♡」
得も言われぬ快楽と共に、甘い言葉が脳に染み込んでくる。
――私があなたの理解者。
――私だけが、あなたを助けてあげられる。
――私を見て。
――私を信じて。
アビゲイルは魔女だ。
それは彼女の呪文だったに違いない。
魔女が僕の上で踊り始めた。心奪われるほど妖しい舞いだった。
彼女が背中を反らせて果てるたびに、僕も彼女の肉が与えてくれる淫らな蠕動の中で存分に精を解き放った。
僕のセックスは、如何にして獣慾を注ぎ込むのかではなく、如何にして彼女の
アビゲイルは、白い激憤で子宮の奥を強打されるたびに、
「――ッ! ぷはぁあ……ああん♡ はぁ……ぁむ……んれぁぁ♡ んはぁ♡」
上の口からも下の口からもダラダラと体液を流して、なお止まない魔女の踊り。
「あ゛――ッ‼ だめッ♡ ぁぁ……はぁ……はん……くっ……んんッ!」
彼女が僕の上で跳ねるたびに、珠のような汗と金髪が宙を舞った。
「……はぁ、はぁ、ぁぁ……♡ ……いっしょ……いっ、しょにぃ……♡ ぁぁ、ぁぁん♡ でるぅ……でるのぉ……でる……? でる、のぉ? はぁ♡ きてぇ……ぁぁ……だめ……まだ……いっ……しょ♡ はん……んぁあ‼」
僕の緊張を感じ取ったアビゲイルが腰使いを速めた。
それは的確に僕の弱点を突いたストロークで、陰嚢の付け根から裏筋を沿って、鈴口までをいっぺんに嬲り上げる極上の快感だった。
舌と喉を使ったとしても、直腸でも感じることのできない、みっちりと肉の詰まった女性器だけがなし得る、雄の精を吸い上げるためだけに女性の進化が行き着いた愛撫の形。
コリ、コリっと子宮口が何度もカリ裏を引っかき回し、そのたびにペニスから指先に走り抜ける痺れが走る。アビゲイルが繰り出すそんな官能の連続に、寝そべっていた僕の首が思わず浮いた。
すぐにアビゲイルが僕の肩を押して、騎乗位をキープする。
「あんぅ……きもち、ぃ? ……あ゛あ゛……きもちぃぃの♡ 私もぉ……あぁん♡ んん♡ んん♡ んん♡ んん♡ んん♡」
僕の視線の先には無防備に差し出され、たぷんたぷんと宙を揺れ回る乳房が。そこに舌を絡ませる。
谷間の汗を舐め取り、こね回してから、円周に巻き付け、絞り上げる。
「だん……め゛ぇ‼ あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ それ! だめぇ……ッ、あ゛あ゛ッ‼」
アビゲイルは喘ぎ声を加速させ、僕の上で同じ運動を繰り返す。
その運動に合わせて、舌の腹を乳首に押し付けてこすり上げる。
同時に、淫らな動きを生み出す尻肉を両手で捏ねる。
僕らはついに、二人で最高のエクスタシーに浸れる究極の律動を突き止めた。
焦点のぼやけた目で喘ぎ悶えるだけの人形となったアビゲイル。
「あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ あ゛あ゛ッ♡ いっ……♡ ぐっ……いっぐ……ッ‼」
彼女の身体がガクガクと震えだし、僕の上に倒れ込んできた。
それでもなお、彼女の腰の動きだけは止まらない。
「い゛、ま♡ き、て♡ きてぇ♡ いまぁ♡ はや、くぅ……んあ゛ぁ⁉」
お望み通り、アビゲイルの腰に腕を回し、背中を抱いて締め上げた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛――――ッッッ♡」
同時にピタリとひとつになった僕らは、彼女の悶悦の悲鳴の中で共に果てた。
「はっ――はっ――はっ――はっ――はっ――」
ゼリー状の液体がビュルビュルと尿道を駆け抜けていくたびに、アビゲイルの呼吸が止まるのが分かった。そんな獣の性交を最後の一滴まで繰り返す。
「はっ――はっ――はっ――はぁ……はぁ……んあ゛あ゛⁉」
僕はまた、彼女を拘束したまま下から腰を送り始めた。
アビゲイルは僕の胸に縋りつき、涙と涎を零しながらも綺麗な啼き声を洞穴に響かせ続けた。
僕は彼女が与えてくれる心地よい魔法の中で、繰り返し、繰り返し彼女の
僕らの奇妙で