『どうして断ってくれなかったの?』
『リディアの機嫌を損ねたくなかったから。平気だよ、僕の前でなら、そんなに危険なことはしないから』
『あの子、テレパス遣いでしょう? 考えを読まれたらお
『そこまでの力は無いみたいだよ。僕の考えがバレてないから』
『それは危険だからジェヴォーダンには使っていないだけ、っていう可能性があるでしょう。私相手なら好き勝手してくるわよ』
『それは、ありえるけど……そもそも、君が余計なこと言うから』
『あんなこと言われて、黙っていられないじゃない』
リディアが帰った翌日から、タイミング良くアビゲイルが来た。
僕らは出会って五秒で濃密セックス・コミュニケーションに励み始めたわけなんだけれども、昨日のことで、ちょっとした口論になっている。
アビゲイルは、僕がリディアを止めなかったことに、大層ご立腹な様子。
でも僕としても、あれ以上の対応策はなかったわけで。
そもそもの発端はアビゲイルが調子に乗ったからなわけで。
『アビゲイルはアースピントなのに、あの言動は
『ジェヴォーダンが何の相談もなしに連れてくるから』
僕がアビゲイルの白い尻をペチペチ指で叩いて、アビゲイルが僕の肩に噛みつく基本スタイルだ。
指でモールスを打つのにも慣れてきた。今となってはノー・ルックでメールを送るような熟練度で、指も二本使って会話ペースを上げている。
『ポテチ食べられるんだね』
『……』
ギクリと身体を硬直させたアビゲイル。
『僕、味のないドッグフードばっかりなんだけど』
『……ジェヴォーダンは好きな時にお肉食べられるんでしょう? ミノタウロス店長のまかないで』
『アビゲイルだって肉くらい食べられるんじゃないの、あの調子だと。羨ましいね。ずるいよ。僕、ポテチ好きなんだ』
『ジェヴォーダンだって外に行けば、あんな可愛い女の子とエッチなことして遊べるの、ずるい』
『アビゲイルも僕以外の格好いい男と遊びたいの?』
『絶対に嫌。それ卑怯よ』
それにしてもアビゲイル、今日はすごく聞き分けがない。わがままだ。噛みつく力も強いし、鼻息荒くちょっと頬まで膨らんでる。すごく可愛い。
彼女はお話をしてストレスを解消している節があるから、仕方なく僕も付き合ってるけど、いい加減ちょっと疲れてきた。フェリスの依存対象を、僕からリディアに切り替えるミッションについて策を授けて欲しいのに、もうかれこれ、この話題で半日くらい経ってるよ。
『嬢から新しい虫を預かってる』
僕はそう言って、パカッと口を開けた。
隠し球の四号君だ。四号君はまだ口の中で、ピクリともしないので少し心配になっていたところだ。
僕の口内を急に見せつけられたアビゲイルの膣が、例のごとくキュッと締まる。
これ、最近の楽しみのひとつ。
ちなみに、タイターニアの名前はアビゲイルには内緒だ。これは僕とタイターニアだけの秘密。打ち明ける必要も無い。
『……びっくりするから、口を開ける前にちょっと時間を空けて』
ほら。やっぱり今日はトゲトゲしてる。
『今回は何?』
僕の問いに、アビゲイルは少し目を細めてから、僕の鎖骨を噛み噛み。
『……芋虫? ……すごく、毒々しい模様の。四匹くらい』
芋虫か。なるほど。芋虫ね。どおりでカサカサ感がないと思った。はぁ……。
『……ねぇ、ジェヴォーダン。その嬢の事なんだけど』
僕がアビゲイルを壁に押し付けて、立ちバックでゆっくり腰を振っていると、アビゲイルが胸を揉む僕の指を
『エイリアン達には、他者を支配する力を持った特別な個体がいるっていう噂があるの。遠くの都市では、そんな力を持ったエイリアンにフォートが短期間にふたつも落とされたって話があるわ。随分と昔の話だったと思うけど』
へぇ。そりゃすごい。
洗脳された兵士が内部から破壊工作を始めたら、門も開いちゃうし、虎の子の重砲も停止して、そりゃあもう、どうしようもないからね。
『虫を支配して使役する彼女は、そういった存在じゃないかと思うの』
アビゲイルの背筋を舐め上げた。「ん……」という甘い声が漏れた。
『あなたも、支配の対象に入っているのかも』
アビゲイルの言葉に、僕の動きが止まった。
彼女の弾力のある尻を両手でがっちりと掴み、揉みしだく。僕がそうやってブッチャーランスを子宮の入り口に突きつけると、彼女が身体を緊張させたのが分かった。
『嬢が僕を洗脳して、利用しているってこと?』
僕の問いに、アビゲイルは恐る恐る小さく頷いた。
『私は会ったことがないし、まだ分からないけど……気をつけて』
アビゲイルは分かってない。
支配されていたら、こんな自主的活動ができるわけがないじゃないか。
僕とタイターニアは、目に見えない……そう、愛に近い絆で繋がっているんだ。時々僕の考えを理解しているような節があるけど、それは愛の成せる
「……ジェヴォーダン……」
囁き声が聞こえた。
僕が黙考している間、いつのまにかアビゲイルが勝手に僕の息子を抜いて、僕に向き直って抱きついていた。
「私を信じて」
……アビゲイルの言葉には不思議な力がある。
どういうわけかこの醜い肉を貫通して、中にひそむ僕の心に突き刺さる。
気をつけるべきは、彼女だ。
彼女は人間。素性の知れないスパイだ。
警告を込めて彼女の胸を強めに押し潰して
『僕が虫だって、言いたいの?』
アビゲイルが僕の顔を見上げた。
彼女の目は恐怖に彩られて――いない。
『ちがう。そうじゃない』
彼女は僕の胸に顔を押し付けて口づけた。
『私は人間。とりたてて何の能力もない、あなたの鼻息で吹いて飛ぶような無力な存在。私はあなたを一方的に利用したりしないし、支配も束縛もしない。弱いから、できないのよ。だからこそ、あなたの真のパートナーになり得る』
そうだ。君はただの慰みもの。僕のような気味の悪い怪物に縋るしかない、無力な女。憐れむのは僕であって、君じゃない。
お仕置きが必要だ。立場を、分らせてやらなければ。
……。
ヌプッという感触と共に、僕の息子がじんわり温かくなった。アビゲイルが立ったまま自分で
彼女のそんな行動に抵抗する気になれない。
「ん――んん……はぁ……♡」
『ジェヴォーダン! やっほー!』
リディアの声だ。
僕が振り返ると、格子の外に端末を持ったリディアがいた。フェリスも一緒だ。
ここにフェリスが来るのは初めてじゃないかな? 珍しい。
『へばったフリを――』
僕は慌ててアビゲイルから逸物を引き抜き、彼女を床に転がした。彼女も大人しく顔を伏せて倒れ込む。
彼女を残してノシノシと二人に歩み寄る。
格子を挟んで向かう合う僕とリディア達。
『リディア。また来てくれたの?』
『うん。ほら、アビゲイルを借りるって約束!』
早いよ。昨日の今日じゃん。さすがの行動力。若いだけある。
『フェリスも一緒は珍しいね、どうしたの?』
『アビゲイルの話をしたら、フェリスも見てみたいってさ。……ちょうどいるね。ほら見てよ、フェリスー。あのザーメンまみれでぶっ倒れてる亜人がアビゲイル』
リディアが指差すと、フェリスが初めてAV撮影を見たとでも言わんばかりの顔で、わーっと口に手を当てていた。
『あの亜人に馬鹿にされたんだよ、私! ……あの金髪の亜人、アビゲイルはジェヴォーダンの大切な人なんだって。いいの、フェリス⁉』
アビゲイルを見るフェリスの瞳に、ほのかな炎が見えた。
ヤバい……この、大切な人、っていうフレーズは封印した方が良さそう。アビゲイルの敵をこの先もどんどん増やしていく予感がする。
『彼女は僕の自慢の作品なんだ。大切な人ならフェリスだよ。僕はフェリスの騎士なんだから』
ブンブン。フェリスの尻尾が振れた。
口ばっかりの悪い男になった気分だけど、これでよし。
『今日はもうアビゲイルが限界だから、リディアには貸せないよ。僕もこれからお肉屋さんに行かないといけない』
これは本当。いつものパターンだと、今日はこの後バイトなんだ。
給料は草しかもらえないけど、良い環境で労働をすると気分も良くなるから、僕の密かな息抜きでもある。
『えー、そっかぁ……残念』
がっくり肩を落としたリディア。かわりにフェリスが前に出た。