『――ラブラブなんだね~』
今日は一人で僕の牢獄まで来てくれたリディア。彼女はタイターニアからの伝言を僕に話し、最後にそんなピンクな感想を言った。
『そう。僕と嬢はらぶらぶ』
僕も否定しない。堂々と自慢していく。リディアはけたけたと笑っていた。
タイターニアからの伝言は「私は元気、次に会えるのが待ち遠しい」だった。素直に嬉しい。僕はリディアに「
『あの
そうなんだよ。リディアは分かってる。
彼女はきっと、元々どこかのお姫様なんじゃないかと、僕は勝手に妄想している。だって囚われのお姫様が、僕の汚い肉棒を美味しそうにしゃぶって飲ザーおねだりしているなんて、思い返すだけで心拍数が上がる。
『あ、それでさ。今日、君の彼女と話している時に、後ろからトゥルヤルさんに話しかけられたんだ』
『トゥルヤルさんって?』
『ティリエルのお兄さん』
あのエルフ男、トゥルヤルって言うのか。
『トゥルヤルさんが独房棟にいるなんて思わなかったから、私びっくりしちゃって。言い訳考えるの上手くいかなかったかも。一応、フェリスが心配で、護衛である君の身辺調査をしていた、みたいなこと言ったんだけど、後で考えたらすごい不自然だったかなーって』
『トゥルヤルは何か言っていた?』
『あまりあのブッチャーには近づくなって。……トゥルヤルさんって、ちょっと怖いんだよね。何かされたってわけじゃないんだけど、オルランドさんの側近で、危ない裏の仕事もしてるって噂があるんだ』
『オルランドさん?』
『うん。オークの将軍だよ……そっか、ジェヴォーダンは知らないよね。ここフェイムバウムは三人の将で
……急に名前がたくさん出てきて覚えきれない!
街の名前がフェイムバウム。オーク将校がオルランド。悪魔将校がダンタリオン。あと変態狐女がフェニキア。
『この前フェニキアさんに聞いたんだけど、ジェヴォーダンはダンタリオンさんとフェニキアさんに気に入られているみたい。オルランドさんは警戒を解いてないけど、君の有益性は認めてるって。すごいね、ジェヴォーダン』
僕って、実は上位の面子に近い位置にいたってことか。
真面目に仕事に打ち込んでいたら、いつの間にか固定ファンが付いていた、みたいな満足感ある。やったぜ。
『トゥルヤルは、僕がティリエルにしたことで怒っているのかな?』
『? ジェヴォーダン、ティリエルに何かしたの?』
これは内緒だけど、と前置きして、僕は以前ティリエルを全身スペルマまみれになるまで辱めた話をした。
『――んぇええ⁉ そんなことが……。だからティリエルは君を見るたびに顔を青くさせてたのか……』
はぁ~と、得心した風に頷いたリディア。
『……あり得るかもね。トゥルヤルさんって、シスコンらしいから。ティリエルはそんなお兄さんに過保護にされるのが苦手で、束縛気味にされて嫌がってるから、距離を置きたがってるんだよ。だから直接はトゥルヤルさんに話してないかもだけど、オルランドさん経由では聞いてる可能性があるね』
シスコンかよ……。
もっと、こう……エルフの
『僕の事でトゥルヤルに何か嫌がらせを受けたら、僕のところに来るといいよ。リディア、他にも困ったことがあったら僕に任せて。暴力で良ければ解決するから』
リディアにも僕の有用性と頼もしさをアピール。彼女は『う、うん』と苦笑いして、『ジェヴォーダンが言うと冗談に聞こえないんだよね』と言った。
冗談じゃないんだけど、上手く伝わらなかった。
『それでさ、ジェヴォーダン。今度一緒に旅行に行こうよ!』
唐突な旅行のお誘い。
まさかのリディアと二人っきりのデート? ついに温泉宿を舞台にギャル対ブッチャーが実現する日が来るのか。胸熱。
『なんかさ、私がアビゲイルを外に連れ出すのって、制度的にすごく面倒くさいみたいなんだ。それで、ほら、前にジェヴォーダンが遠征でアビゲイルを連れて行ったって言ってたじゃん? それで思いついたの』
そっちか。残念。
『今度フェリスがミフォーシスに行く用事があるから、そこに君が護衛として同行。私が友達として付き添えば、アビゲイルも連れて行けるでしょ? ……あ、ミフォーシスは私達の星のことね』
異世界か……どんなところなんだろう。
外に出たら、アビゲイルも機嫌良くなるかも知れないな。最近つっけんどんなのは、ちょっとストレスが溜まっているからなんだ。きっと。
『いいよ』
相手はブッチャーなんだから、問答無用で連れ出せばいいのに。わざわざお伺いを立てに来るなんて……好き。
『やったーっ! じゃあ、フェリスにも言っておくね! ところで――』
リディアは笑顔でガッツポーズを決めてから、僕の牢獄を見渡して不思議そうに続ける。
『今日は女の子いないの?』
僕に休息日はない。暇さえあれば種馬として捕虜の女に種付けしないといけないんだ。でも今日の牢獄は静かだった。
僕も具体的な事情は知らないけど、こういうことはたまにある。女の身体の具合とか、エイリアン側の都合とか、いろいろあるんだと思う。
『今日は一人なんだ。たまにある。静かで変な感じ』
一人で素っ裸で突っ立っているのは、さすがに気まずく、今日は紙袋とエプロンを装着して部屋の隅でぼーっと考えに耽っていたところだ。
『ふーん……じゃあさ、デートしよっか』
まじ?
『今日さ、フェリスがその旅行の準備で遊べないし、学校も休みで暇だったんだよね。ジェヴォーダンはどっか行ってみたいところある? 連れて行ってあげるよ』
まじまじ? ぜひ君の部屋に。
『――あ、でもエッチなことは駄目ね。フェリスがいないところで勝手にそんなことして、嫌われたくないから』
ぐぬぬぬ……。
無意識に僕の喉が鳴った。それを見たリディアがくすりと笑った。
特にすることもないので、リディアとデートした。
行き先はなんと、演劇鑑賞だ。リディアは芸術関係に
最前列に席を取った結果、ブッチャーがステージの眼前に鎮座することになった。
初めこそ演者がみんな驚いていたけど、すぐに何事もなかったかのように演技が続いたのが面白かった。彼らもプロだな。シンパシーを感じる。
ちなみに、僕はエイリアンの言葉が一ミクロンも分からないので、ぜんっぜん面白くなかった。リディア曰く、勇者と魔王の話だったそうだ。魔法を演出で使っているのかピカピカと派手で、絵的には人間の劇よりよっぽど面白そうであっただけに残念。
まぁでも、ギャルに連れられて街を歩くのはどこか高揚した気分になれた。フェリスに連れ回されるのとは違って、会話が成立しているのも良い。
『一日でこんなにたくさん話をしたの、初めてだ。楽しいな』
僕の指を引っ張って歩いていたリディアが、僕の何気ないひと言に振り返った時の顔が印象深い。
街の造りを説明してもらえたのも僕的には大満足だった。
雑貨店やランジェリーショップもすごく興味深いけど、やっぱり武器屋が好き。元兵士だもの。
これでこの街フェイムバウムを襲うときには、武器に困らずに済みそうだ。
僕はリディアとオープンカフェでお茶をしながら、心の中でほくそ笑――チーズケーキ美味い!