少々手こずり申したが
軌道を修正したでござる。
くぱあもあるでござるよ!
手当たり次第に散らかした寝室をもっと散らかしている間に夜がきた。
鉄格子を填めた一つだけの窓から真っ黒な空と真っ青な月が見える。
江戸切子の瑠璃色を白色ライトで透かしたような丸い月はそこに浮かんでるだけなのに、ここは異世界なんだぞと私に対して主張してるみたいだ。もう八年も見上げているのに、この光景はいまだに現実感が無い。
羽毛だらけなベッドの上に全裸のままベタ座りしてそれを眺めていたら、私の背後で扉が開いてまた閉じた。そんな音が聞こえた。
「これはまた……派手に暴れたものだな」
いつも通りの国王の声。
高級家具をいくつ壊そうが品質が良い布団を何枚引き裂いて台無しにしようが全然気にしない、いつも通りの口調。
色男を地で行く穏やかで低い声が、私のすぐ後ろに立つ。
「こちらを向きなさい、ユキネ」
「…………」
男の傲慢極まる命令にうなだれ、無言で従う。
ゆっくりと頭で振り返り肩と足を動かし体の正面を男に向けて顔を上げる。
目が合った途端、バスローブ姿の男の顔が少しだけ強張った。
「……何があった?」
「…………何か……あったとしても、アナタには関係ありません」
「お前は私の寵姫だ。お前の全部が私の物。私に隠し事をするのは許さない。正直に答えなさい、ユキネ。私がいない間にここで何があった?」
「…………」
「ユキネ」
……………………はっ。
見事に引っ掛かったね、国王陛下。
アナタは独占欲もプライドも高い自己中男。本当は自分の所有物に自分以外の爪痕を残すのは嫌なんだよね?
知ってたよ、私。他の男達に私を抱かせてる間ずっと、男達を殺したいって顔で遠くから睨んでたこと。そのくせ滾らせた陰茎でズボンをパンパンに張り上げていたことも。
だから、いつもなら見せない顔を見せてやれば絶対気にすると思った。
どう?
儚げに見える? 頼りなく見える? 不安を抱えて淋しそうに泣いてるか弱い女に見える? 寄り掛かれる誰かや何かを求めてる非力な女に見える?
そうでしょうね。
私には頼れる物なんてない。すがれる誰かもいない。
アナタ以外には。
…………なーんてな。
んなワケねえだろバーカ。演技だよ演技。
会話の主導権をいただく為のな。
「…………魔王が、私に接触してきました」
「!? 魔王が!?」
「頭の中に声が聴こえて……私に、……こちらへ来いと……」
「な……っ」
「私をここから解放してやる。花嫁として迎えいれてやると、そう……」
「バカな! 何故魔王がユキネを!?」
「わかりません。でも、私が嫌だと拒んだら、なら、この国も……ティティも滅ぼしてやると言って……そこで声が、消えました」
「……魔王ごときが……っ! ふざけたことを!」
魔王ごとき、ね。
自分達の都合で異世界から拐った女を矢面に立たせてる卑怯者の分際で、よく言えたものだ。
偉そうに見下すんなら自分の力だけで討伐してこいよ。相手は女一人だぞ。
まあ無理だよね。暴力と数圧しで囲い込んだ女一人にマウント取るのがアナタの精一杯なんでしょう? 猿山の大将さん。
ほんと、どうしようもないクズ。
「……陛下。どうか私を、勇者ティティの元へ行かせてください」
「駄目だ。魔王がお前を狙っているのなら、城の外には二度と出さない。シンゴの出番は今日限りで終わりだ。勇者ティティには別の者を同伴させる」
「魔王は、声だけとはいえこの部屋に張られた結界を越えて接触してきました。王国で最も優秀な結界師の結界を越えてきたんです。この城は安全ではありません。私は、魔王を討伐する為にも、魔王から自分を護る為にも、勇者ティティの元へ行きたいのです」
「っ……だが」
「お願いします、陛下。勇者ティティはシンゴに依存しかけています。男の魔法使いシンゴとして女勇者ティティのそばにいることこそが、私にとって一番安全なのです。私は魔王に嫁ぎたくなんかない。あんな……あんな得体が知れない化物に侍るくらいなら、私っ……、私は……っ」
「ユキネ」
瞼を強く閉じて震わせた肩を縮め、寄せた胸の前で両手を握り、うつむいて唇を噛む。
冗談でも言いたくない言葉を舌の付け根まで一生懸命押し上げる。
ああ、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
「私は、……私はアナタを……! 陛下を……選びますっ……! ラっ……、……ライオ、ネル、……さまっ!」
この男は、私が自分を嫌っていると知ってる。
知っていてわかっていてその上で私を征服しようとしてる。
だから、目を開いて持ち上げた顔は素の私だ。
アナタなんか嫌い。アナタなんか選びたくない。アナタの名前なんか呼びたくもない。
なのに大っ嫌いな男に自分から犯されなきゃいけない。選ばなきゃいけない。呼ばなきゃいけない。
屈辱で歪む顔。嫌悪感で流れる涙。すがって堪るかと握る手。心から嫌だと引き攣って震える声。
素の私で、反吐が出そうな嘘を吐き捨てる。
「勇者ティティが無事に魔王を討伐したら、……ら、ライオネル様、の……っ、つっ……、妻に、なると! ここで誓いますっ! だから今は、私をシンゴとして、勇者ティティの元へ行かせてください! 討伐を成し終えたら必ず、必ず……っライオネル様の元へっ、必ず、帰って、きます……から……っ!」
「ユキネ……」
私を見下ろす男の顔が呆然としてる。
驚いてるようにも感動してるようにも見えるところが胸糞悪い。
私がこんなにも嫌がって泣いているのに、この男は私に名前を呼ばれたことを喜んでいるのだろう。私が妻になると言ったことで舞い上がっているのだろう。
どういう育ち方をしたらここまで相手を蔑ろにできるんだ。気持ち悪い。
本当に同じ人間なのか。人間の形をした別の何かなんじゃないのか。気色悪い。
「私を、行かせてください、ライオネル様。行かせてくれるなら私……ライオネル様の言うこと、なんでも聞きます……。お許しをいただけるまで何度でも何日でも、ご奉仕……しますから……!」
「!」
爪痕がくっきり残る両手を伸ばして男の腰にしがみつく。固く張り詰めた陰茎がバスローブ越しに私の頬に当たる。
脅しに屈した私が自分から犯されてるところを妄想して準備万端になってるってわけか。ご丁寧に脱がせやすい布一枚で来やがって。
つくづく救いようがないヘンタイだな。
死ねばいいのに。
私を城から出した後で食中毒とか事故とか起こして勝手に死ねばいいのに。
「ライオネル様、どうか私を」
「…………もうよい」
「え」
顔で陰茎を擦りながら見上げた私の腕を掴んで引き剥がした男が、私から逃げるように後ずさった。
「……ライオネル様?」
「お前の誓いは受け取った。お前は私の名前を呼び、私に心を捧げると誓った。私の元に帰ってくると誓った。それ以上は、今は、良い」
「……………………は?」
劣情を堪えるかのような真っ赤な顔であさっての方を向き、自分の手で額を押さえながら深く長い息を吐く。
…………なんだそれ。
ここは、このまま私を押し倒して気が済むまで犯し尽くす流れじゃないのか。私が自分から男に体を開いて満足させたら魔王討伐の旅を続行しても良いって、そういう話だろう?
なんで堪える。
「ラ」
「ユキネ。私はお前を慰み者にしたいんじゃない。お前が欲しいだけだ。私はお前の全部が欲しいんだ。だから、お前が私の元に留まると誓ってくれるなら、私に時間をくれるなら、今までのように力づくで押さえ付けたりはしない。そんな風に嫌々媚びなくて良い」
「…………」
「信じられないか? ……そうだろうな。私はいつだってお前を縛り付ける方法しか選んでこなかった。お前の意思を捩じ伏せて閉じ込めてきた。しかし、私に強引な手段を選ばせているのはお前だ。お前が逃げることしか考えていないから、私は捕まえておくことしかできない。お前は異なる世界から来た女。一度逃してしまったら二度と手に入らない稀有な宝。逃してやることなど、どうしてもできなかった」
苦笑う男が額から外した手を私の頬に添える。
疑わしげに見上げる私を熱っぽく切ない表情で見下ろしてくる。
「ユキネ。私の寵姫。お前が私から逃げないと誓うなら、私はお前の願いを何一つ取り零さず全部叶えてやろう。村の者も勇者ティティも解放し庇護してやろう。今後は誰にも乱暴な真似はさせない。お前にもこれ以上の乱暴はしない。私から逃げない限りは、決して」
「…………うそ」
嘘だ。
この自己中が、強姦魔がこんなことを言うはずがない。
私を縛って強姦して薬漬けにして輪姦させて興奮する下種が、こんなことを言うはずがない。
今度は何を企んでるんだ。
「嘘ではない。私は最初からずっとお前と向き合いたかった。自由を奪って痛め付けるのではなく一人の人間として語り合い、時間を掛けて認め合い、愛して、願わくば愛されて、そんな関係になってからとろかすように甘く優しく抱いてやりたかった。抱き合いたかったんだ」
「うそよ。どうして、そんな嘘を」
「愛してる。お前を愛しているんだ、ユキネ。叶うなら村で出会ったあの瞬間からやり直したいが……きっと、何度やり直せたとしてもここに戻ってくるのだろうな。お前は一度たりとも私を見ようとも知ろうともしなかったから」
腰を屈めた男が私にキスをした。
いつもの無理矢理押し入って呼吸を奪い尽くそうとするキスじゃない。皮膚が触れ合うだけの軽くて柔らかいキス。
遠慮がちな吐息が顔を掠めて離れていく。
身勝手で汚い欲望を溜め込んでいるはずの体を私から遠ざける。
「月に一度の報告もこれで終わりだ。魔王討伐を成すまでは戻らなくて良い。ただし、討伐を成したら速やかに帰ってきなさい。勇者ティティでも他の誰でもなく、私の元に」
男が笑う。
蛇か鷹かと思っていた鋭い目を垂れ下げ唇の端を上げ、今まで見たことがないくらい嬉しそうに微笑む。
なんだよ、それは。
なんで今更。
「……そんな言葉……信じられません」
「! ユキっ……うぶ!?」
私は片足を立て、離れていく男の腕を掴んで力任せに引き寄せた。
つまずく格好でベッドに乗り上がった男の肩に抱き着いてキスを押し付ける。
驚いて開いた男の口内に舌を捩じ込み唾液を絡め、逃げ惑う男の舌を追いかけて暴れ回る。
「ユっん……ん、んむ、ユキ、ネ、……ふっ、んうっ……」
「んちゅ、ライ……んっ、ライオネル、様……ライオ、ネル……ん、ふっ……んぷ、あふ……」
「ユ、っ……っ!?」
男の手が私の腕を引き剥がそうとした。
それをかわした私の右手がバスローブの合わせを開いて陰茎を掴む。前屈みな男の体がビクンと跳ねた。
「ユキネ、なにを!? や、やめっ、ユキネ、やめなさい! そんなことはもうしなくても、っうあ……、くぅう……うっ!」
私の首元に頭を預けた男が、私の手の動きに合わせて悩ましげに腰を揺らして呻く。
物分かりが良いような言葉を並べていた男の陰茎は、私の手から逃げられない程度に強く、それでいて痛みは与えない絶妙な力加減で陰嚢を掠めながら根元と亀頭の間を二度三度往復しただけで、見事にカウパーまみれになった。
ぬめりと刺激で熱と質量を増した竿がグチョグチョとだらしなく鳴き、淫らな歓喜に打ち震える。
「は……我満なんか、しないで、ライオネル。欲望のままに私を抱いて犯して滅茶苦茶にして。いつもそうしているでしょう? この卑しい肉の棒で、嫌がる私の穴を無理矢理貫いて押し拡げて、泣いて拒む私のナカを一晩中掻き回して、乳房を揉みしだき固く尖った乳頭を舐めしゃぶりながら、立ち上がる気力が尽きるまで子宮にたっぷりと精子を注ぎ込めば良い。果てた後は精液と愛液でぐちゃぐちゃに濡れた私の性器に指と舌を挿れて掻いてねぶって吸って出してまた挿れて、涙と唾液と汗でベタついた私の痴態を思う存分視姦して。そうして満足してから、ティティの元へ行く私を見送って。戻ってこなければ村を焼くと……ティティに刺客を放って死ぬまで追い掛け回すと脅してから、私を行かせて」
「く、っぅ、う……、やめっ……やめ、あ、ユキネ、やめなさあっ、あ、あっ!」
「そうじゃなきゃ、信じない。アナタの言葉なんか絶対に信じない!」
「ぅあ、あっ、あっ、ユキ、ユキネ! ユキネ──……っ!」
汗ばむ男が苦しげに喘ぎ、艶かしい悲鳴を上げて反り返った体を痙攣させ、布団に向けて射精する。
竿がビクンビクンと跳ね、精液を飛ばすごとに少しずつ萎んでいく。
垂れ下がる陰茎を離してバスローブから引き抜いた右手には、男から出た体液と臭いがベッタリまとわりついていた。
「……ほら。ライオネルの体は私を求めてる。私の体を汚したくて踏みにじりたくて仕方ないって言ってる。私を騙そうとしても無駄よ。私はアナタの言葉を信じない。アナタの行動こそが何よりの証明。さあ私を陵辱して、ライオネル」
はっ、はっと荒い呼吸を肩で整えながら男が私を見る。
私は布団に両手を突く男の目の前で濡れた手をわざとらしく舐め上げ、M字に開いた足の真ん中で乾いてる陰唇を開いて見せた。
「は、…………あ、んっ、……ん」
膣に沈んでいく中指。反対の手は乳頭を摘まんでしごく。
浅いところを軽く出し入れさせただけであっという間に潤った陰部が鼻につく甘ったるい臭いを放ち始める。男が眉間にしわを寄せる。
「ユキ、ネ……」
「ね……はやく、来て……。私をイカせて……」
私の指が私の体の熱を上げる。
死ぬほど嫌いな男を受け入れる為に私を緩く拡げていく。
シンゴに抱かれるティティの肢体を思い描けば、この行為も愉悦に変わる。ティティの愛らしい矯声が私の体を疼かせる。
「あ、は……」
「やめなさい、ユキネ」
男が喉を鳴らして私に近寄り、私の両手を持ち上げて、自慰を止めた。
「……どうして」
せっかく気持ち良くなりかけていたのに。
非難の目を向ける私に、男が首を振る。
「戻ってくると誓ったお前を乱暴には扱わない。私から逃げない限りは決して。だが、私の欲が満たされるまで安心できないというなら、私はお前を抱こう。朝日が昇るまで何度でも。お前がやめてくれと泣いて懇願してもやめてやらない」
「なら、早くシて。私を縛り付けて犯して」
「犯さない。お前が私以外の誰かで誤魔化すのではなく、本心から私が欲しいと乞い願うまで、お前の体を解きほぐす」
「なっ……に」
私の手を離した男が、私の頭を庇いながら私の背中を布団に沈める。
男自身も体の重心を右半身に寄せ、右腕を枕にして私の頭を支えながら足を絡め、左手で私の唇をさわさわと撫でる。
「すまなかった、ユキネ。お前は誰からもこんな風に抱かれたことはないだろう。今から私が教えてやる。媚薬を使わずとも気持ち良くなれる、本物のまぐわいというものを」
「…………媚薬を、使わない?」
「使わない。お前を絶頂の果てに導くのは、私だ」
男が私に触れるだけのキスをする。
頬を撫で、耳たぶを弄り、じゃれつくように顔をすり合わせる。
鬱陶しい。
これで気持ち良くなれるとか、ありえない。
そう思って鼻で笑い、男の好きにさせたことを、私は死にたくなるほど後悔するハメになる。
次回、国王と魔法使いのおせっせバトル開幕!
たらしこみ作戦を決行した女の魔法使いは、未知の快楽に溺れて主導権を明け渡してしまうのか!?
拙者、心をウキウキ、下半身をズキズキさせながら書くでござる!
ハッスルハッスル!
いやあ~それにしても、男の魔法使いが混じるならもっとオ〇ン〇ンとかオ〇〇コとかぐぷぐぷヌポヌポぐじゅぐじゅパチュパチュ言って欲しいのでござるが、女の魔法使いはなかなか言わぬですなあ。
…………チッ。