第1R、セット!
ready……ファイッ!
(ッッカアアーーーン!)
男の指先が私の右肩から二の腕をつつ……となぞる。
肌が触れ合うかどうかのところを滑り下りては這い上がる。
男の足も、絡めた私の足を撫で上げるようにゆっくりと膝を上下する。
男の唇は私の顔中にキスの雨を降らせ、時々甘えるように頬ずりした。
鬱陶しい。
性的な誘惑にも刺激にもならない、ただただ鬱陶しいばかりのじゃれつき。
野良猫にすり寄られたほうが何十倍も嬉しいし気持ち良い。
せっかく潤わせた体が、うんざりしながら天蓋を眺めてる間に乾いてしまった。気分が冷めると体も寒い。
これで気持ち良くなるとか何の冗談だ。
「……覚えているか、ユキネ。私とお前が出会った時のことを」
額にキスした男が、輪郭をはっきり残す距離で私の目を覗き込む。
王冠を乗せる習慣のせいかアップバングになってる薄い紫の光沢がある銀色の短く硬い前髪、水色の細い吊り目を縁取る長い睫毛、長方形に整った高い鼻。
北欧系北方人みたいに淡い色素のきめ細やかな肌、ぎりぎりミドル世代かシニア世代に類するであろう外見。
モミアゲも髭も丁寧に剃毛処理されていて、若い女が見れば爽やか系のイケオジと騒ぎそうだ。
見飽きた顔のドアップに心底吐き気がする。
「《旅の途中に立ち寄った村で観光している賢者》を装う私に、お前は挨拶をした。こんにちはと。人当たり良く微笑みながらも警戒を隠し切れていない目で私の首元を見て、頭を下げて挨拶をした」
だからなんだ。
今そんな話をしてなんになる。
鬱陶しい。
さっさとやる事ヤって離せクズ。
「あの時のお前はツヤの無い黒髪を雑に短く切り捨て、顔や腕を泥や埃で汚し、家畜糞堆肥の刺激臭を胸が悪くなるほどに漂わせ、ダブついた男物の服で形良く豊かな胸と括れた腰を誤魔化そうとしていたな。今思えば、男の欲望から身を守る為にわざとみすぼらしい格好をしていたのだろう。私も一瞬は眉をしかめた」
ああ、そう。
私は村の人達以外とは目を合わさないようにしてたからアナタの表情なんか知らなかったけど。
嫌悪感を持ってたんなら、そのまま興味を持たずに舌打ちでもしながら黙って消えてくれれば良かったのに。
「だがお前は、私が作り笑いで挨拶を返した途端この黒い瞳を丸め、持っていた野菜入りのカゴを私に押し付けて猛然と走り去った」
男の唇が近寄ってきて、私の目尻に触れる。
私の右肩から二の腕、二の腕から肘、肘から手首へ、輪郭を確かめるように、くすぐるようにじわじわと伝い下りた男の左手が、私の指先を掬い上げて顔の前に運び、爪の先にキスをした。
小指から親指まで一本一本丁寧に。
「突然の奇行に驚いて立ち尽くす私に、やはり猛然と走ってきたお前は、息を荒げながらカップ一杯の水を躊躇いがちに差し出した。私の声が掠れている、水分を補給したほうが良いと言って、見ず知らずの男を警戒しながらも貴重な飲み水を笑顔で、そして無償で分け与えた。それで分かった。お前こそが噂に聞く《異なる世界から来た解析魔法の使い手》なのだと」
余計な事をした。
医者なんていない小さな村だったからよそ者に病で倒れられても迷惑だし、万が一村の人達に伝染るような病だったら私が嫌だし、なにより村の人達が私にしてくれた事だったから、私もそうしただけ。
それがこの世界ではどれだけ稀少な善意だったか、私はまだ十分に理解してなかったから。
飲み水が貴重な資源である事も解析魔法が私の安全を脅かす物だって事も、村の人達がちゃんと教えてくれてたのに。
アナタに無理矢理思い知らされるまで自覚が足りてなかったから。
ほんとに余計な事をして道を踏み外した。
分かっていたら、誰がアナタなんかに。
「私はお前がどんな人間なのかを知る為に政の大半を宰相と王太子に預け、近くの街で宿を取って村に通った。朝の寝惚け顔、昼の真面目に働く顔、夜の疲れて眠そうな顔。お前が村の者に見せる人懐っこい笑顔、軽快な仕草、明るく親しげな話し方。見つめ続けたそのどれもが、私には見せない物だった。半月もの間、毎日お前に挨拶をしても。世間話を持ち掛けても。水の礼に土産を持参しても。お前は私を警戒し強張った笑顔で挨拶する以外、ただの一度も自分から話し掛けてはくれなかった」
「……っ」
男が私の手のひらを上向きにして頬を擦り寄せ、母指球にキスをした。
そのまま手首に、肘の内側に軽く吸い付き、私に体重を掛けないように身を乗り出しながら、ちろりと出した赤い舌先で右側の脇の下をくすぐる。
思いがけないくすぐったさで、驚いた体が微かに震えた。
「お前は異なる世界から来た女。他者を、見慣れない男を警戒するのは仕方ない。むしろそうであるべきだと納得したし、身を守る術を心得ているその聡さに感心してもいた。強力な後ろ盾を持たない女のお前が村の人間ではない私に付け入る隙を見せようとしないのは、普通に考えれば正しい判断だった」
舌先でつつくように脇の下をくすぐっている間、私の腕を離した男の手のひらが私の腰を撫で回し、脇腹から右胸に這い上がり、円を描くように乳房の頂へと登って下りてを繰り返した。
決して皮膚を引っ張らない、輪郭に添えているだけの力加減で、飽きもせず何度も何回も。
「だが、偵察期間が残り二日となった朝。直前まで村の男と談笑していたお前が、私の姿を遠目に見てさりげなく男の背後に隠れた時。男がお前を庇いながら私を睨んだ時。私の中に怒りと焦りが生じた。何故私から逃げる。その男はお前の何なのかと」
家主だよ。
この世界で一番最初に私に話し掛けて飲み水を分けてくれた、とても親切な人だった。
得体が知れない私を村に置いてやろうとみんなに提言し説得してくれた、勇気ある強い人だった。
そんな事、半月も私のストーカーをしてたんだからとっくに知ってたはずだ。
アナタに勘繰られる謂れはないと無言で睨む私に、顔を上げた男がふっと息を吐いた。
「男とお前の関係は当然調べて分かっていた。それまでにも何度か一緒にいるところを見ていたしな。それでも、男を間に挟んで私と距離を置こうとするお前が許せなかった。私からお前を隠そうとする男が許せなかった」
「許すとか許さないとか、アナタにそんな権利はっ……!?」
話している最中も私の右半身を撫でていた男の手のひらが何度目かに私の乳頭を掠めて下から上へ通りすぎた瞬間、そこから下半身に向かってピリッと鋭い衝撃が走った。
下腹部をキュンと締める刺激の後、冷めた体をお湯に浸した時のようなぞわぞわ感が腰から全身に拡がる。
「……なん、で?」
今、感じた?
媚薬を仕込まれていない素の私が、肌を触ってるだけの手に感じた?
まさか。
「私がもうすぐ旅を再開すると言ったら、お前達は揃って安堵していたな。そんな反応も私には許せなかった。私を避けるばかりか、いなくなる事を喜ぶお前が憎らしかった」
「勝手な事をぅっ!? やっ……、なんで!?」
男の手のひらが通りすぎる度に乳頭が少しずつ硬く立ち上がり、男の指を引っ掛ける。その分、下腹部への刺激が強くなっていく。
気のせいじゃない。
体が性的に昂っている。
意識してしまった途端、鬱陶しいと思っていた男の手の動きが、耳たぶを食んで舐める男の唇が、太股を擦り上げる男の足が、私の鼓動を速めて熱を押し上げ、肌を敏感にしていく。
どうして。
女の芽を摘まれたわけでも膣を弄られているわけでもないのに、なんでこんな。
「決定的だったのは、最後になるなら手土産を持たせようと男に向かって笑うお前の横顔だった。警戒する必要が無くなったと肩の力を抜いた、心からの笑顔。それに笑顔で応える男。その光景を見て気付いた。出会った日、お前が私に水を差し出したあの時から、私はお前に心を奪われていた。解析魔法の使い手としてではなく、一人の女としてのお前に好意を抱いていた。だからこそ王太子に椅子を預けてまでお前を直に見続けていたのだと。他の誰かではなく、私に笑い掛けて欲しいのだと」
「っ、権力を笠に着て拉致した上、村を焼くなんて脅迫するような人間に、笑えるわけな、あっ……!」
男が私の鎖骨から顎にかけてを唇でなぞり、下唇をペロリと舐めた。
たったそれだけなのにお腹の奥で熱が溜まっていく。足の付け根に溶け出す寸前の湿り気を感じる。
「なんっ、なんで! なんでえっ……!?」
意味がわからない。
ただ撫でられていただけなのに。
鬱陶しいとしか思ってなかったのに。
男の欲望に従順な体は、一度感じ始めたら止まってくれない。冷めてくれない。
体に染み込んでくるような男の手の熱を感じて体が震える。腰が揺れる。心臓が早鐘を打って呼吸を乱す。
「お前は私を避けていた。だから強引な手段で城に連れてきた。それでもまだ、お前を縛り付けて犯そうとは思ってもいなかった。とにかく城に、宮殿に置いて、そこからは時間を掛けて向き合えたらと考えていたんだ。お前が何度も何度も脱走しなければ。私から逃げようとしなければ」
男の中指が乳輪を撫でる。
乳頭には触らないように、くるくるとイタズラっぽく。
強い刺激が無くなった代わりにぞわぞわ感が拡がっていく。秘部が物欲しげに蠢く。
無意識に膝を擦り合わせかけた両足が、男の足に邪魔されて居心地悪そうに布団を蹴る。
「い、いきなりベッドルームに連れ込まれて、湯浴みなんかさせられたら、誰だって逃げるに、決まっ……ん、う……っ」
「そうだな。よく知らない相手にベッドルームへ案内されれば身の危険を感じるのは当然だろう。それがお前達の物差しだ。しかし私にとっての宮殿は生活領域。お前達に置き換えれば自宅であり、私は自宅に客人を招いた感覚だった。
「そ、そんなの、私に分かるわけな、ひうんっ!」
乳輪を撫でていた指が、乳頭を爪の先でピンッと弾いた。痛みによく似た刺激が腰を叩いて胸を反らせる。
私の頭を支えていた男の右腕が布団と背中の間にできた隙間に下りて腰を抱き寄せ、左手が胸を撫で回してから腰を伝い下りて私の右足の太股を擦る。
「言葉が足りなかった事は認める。お前を宮殿に囲い込んでしまえば村の男にはどうこうできないと、そこでとりあえず安心したかったんだ。まさかお前が移動魔法で国中を逃げ回るとは思わなかった」
「や……、あうっ……く……」
男の舌がぴちゃぴちゃ音を立てて私の乳輪を舐める。わざと多めに垂らした唾液が乳房から脇へ流れ落ちていく。
その感触すら神経の弱い部分をくすぐっているようで、私にイヤイヤと首を振らせた。
持ち上げた右手の甲で自分の唇を押さえ、両目を固く閉じて、迫り来る官能の波をやり過ごそうとする。
「お前は本気で私を拒み逃げ出した。念の為だとあらかじめ追跡魔法を掛けておかなければ、私は二度とお前を見つけられなかったかもしれない。焦燥に掻き立てられるまま連れ戻して安堵して、警備を見直してもまた逃げ出して連れ戻して安堵して……もう、我慢の限界だった。お前は私を見ない。お前の黒い瞳に私を映させるには、名実を以て縛り付ける他に方法が無いと思った」
「っ、う……っふう、んっ」
男の右手が私の臀部をやわやわと揉み、左手が恥丘の辺りで陰毛を撫でる。
男の唇が下乳に吸い付き、リップ音と一緒に離れてはまた吸い付く。
「…………どうすれば……良かったのだろうな」
「あ」
陰毛の先端を滑った男の手のひらが陰部を包み込んだ。
一瞬芽を摘まれると期待に揺れた腰は、けれど手のひらの熱以外には何も与えられず。
私は瞼を開き、動こうとしない男の左手を見下ろして、苦笑う男と目が合った。
「お前には関係無いと思うだろうが、私は一国を束ねる王だ。国土と国民を守る責任がある。やらねばならぬ事も多い。椅子を預けてばかりもいられず、限られた時間の中で責務を果たしながらお前の心を得るには、こうする他にどうすれば良かったのか。私には考えるだけの余裕が無くて分からなかった。今も、分からない」
「…………」
何も言わない私に男が物憂げに睫毛を伏せて、は……っ、と熱っぽく息を吐き、私の陰唇を開かないように手のひら全体を使って陰部を揺すり始める。
「……どのような形で迎えたにせよ、今のお前は私の寵姫。これからも手放しはしないし誰にも渡さない。だが、今まで一度も優しくしてやれなかった事だけは本当に、すまなかった」
「……ん、……ふあっ……」
緩やかで大きな動きは、性感への刺激というより肩や腰に施すマッサージと似ている。
だけど筋肉を解す時の痛みは無くて。
表面を軽く押す程度の力加減は、直接的な刺激を求めて脈打つ女の芽に物足りなさを感じさせた。
『手のひらなんかじゃ、イヤ』
『指先で触って、摘まんで、擦って』
『グリグリ転がして押し潰して引っ張って噛み付いて吸い付いて舐め回して、手酷くイジメテ』
『そして、アナタを』
「…………────────っ!?」
…………何を。
私は今、何を考えた?
「愛してる」
「…………」
また身を乗り出してきた男が、息を詰めて硬直した私の陰部を左手で揺すりながら、屹立している私の乳頭に自分の胸を押し付けてのし掛かる。
臀部から離した右手で私の頬を撫で、伸ばした舌で唇をつつくように舐める。
「愛してる、ユキネ。お前を愛している」
「…………そ……」
うざったいくらいに聞き慣れた言葉。
恐怖心がマヒするまで刻み込まれ覚え込まされた男の体温と臭い。
性行為中の癖まで知り尽くしたと思っていた男の体が、全然知らない触り方をする。
汚れを知らない蕾を淡く開いていくように。
あるいは温かく包み込むように。
「…………うそ……」
知ってる。
「ユキネ」
「……いや」
輪郭をなぞるだけ。肌に触れるだけ。
私は、この行為の意味を知ってる。
「ユキネ」
「いや……。やだ……っ」
これは、想いを伝え乞う者同士の、労り合い。
互いを認め合い、受け入れる為の、愛撫。
私は今、それを。
死ねば良いとまで思う男にされているそれを、私は。
「ユキネ」
『そして、アナタを…………私に頂戴』
「やっ……! やだやだやだやだ! いやだああああ──っ!」
「ユキネ」
「やめて離して触らないで! 私にそんな事しないで! やるならいつもみたいに乱暴にしてよ! 犯して壊して気が済んだらゴミクズみたいに放り出して! こんなの嫌! こんなのやだあああっ!」
「ユキネ……」
「早く! 我慢しないで早く挿れて! 私のナカを滅茶苦茶に傷付けて思う存分出しなさいよ! 私は解析魔法を使える便利な道具で、都合が良い性欲の捌け口なんでしょう!? 欲だけ満たせればそれで良いんでしょう!? こんな手の込んだ嘘なんか要らない! 私は……っ」
「ユキネ」
涙を散らして頭を振り回す。
がむしゃらに腕を振り上げる。
足をジタバタと動かして抵抗する。
その全部を、男の体が易々と抑え込んだ。
「やめない。お前がどれだけ泣いて懇願してもやめないし、乱暴な抱き方もしない。お前が本心で私を求め、自分から受け入れてくれるまで。絶対にやめてやらない」
「ひっ……いやっ、やだ、やだ! やだああっ!」
私の陰部を揺する左手が、乳房を持ち上げるように擦る右手が、首筋を這う濡れた唇が、私の抵抗力を削いでいく。
下腹部に溜まっていた熱が、ぴたりと閉じている筈の陰唇から溢れ出して股間を濡らす。
男の手に絡んで音を立て始めたそれが、私の体の芯を痙攣のように震わせる。
「やめて、やめてよおっ!」
「ユキネ。お前は私の言葉を信じないと言った。私の行動こそが何よりの証明だと。ならば私は行動に言葉を添えて証明しよう。愛している、ユキネ。仮にお前が解析魔法の使い手でなかったとしても、私はお前を愛し、お前に愛されたいと願っただろう」
「いやっ、だ! やめて聞きたくない、触らないで! いや! いやっ、いやああ……っ!」
左耳の穴に男の舌が入ってくる。
濡れた音と感触が背筋をゾクゾクさせて、股を濡らす粘った体液を増やそうとする。
「……気持ち良いか? ユキネ」
良いわけあるか。
やめて。やめろ。
離して。もうやめろ。
気色悪い。気持ち悪い。
「ああ、なんと美しい……。清廉でありながら淫らで美しい、私のユキネ。朝日が昇るまでゆっくりと、脳が溶けるほどにじっくりと教え込んでやろう。私がどれだけお前を愛し……憎んでいるのかを」
男が私の耳元で笑う。
全身に汗が吹き出す。
「あっ、うあ、あ……っ、やだ、やだやだやだや、あ、うや、あ、いっ、いあ、いああっ──……!」
気持ち良くなんかない。
絶対に気持ち良くなんかないのに。
男は手足や唇のスローペースを些かも乱す事なく、乳頭や女の芽を摘みもせず、膣に至っては指の腹さえ掠りもせずに、お遊びのようなじゃれつきだけで私の体を解かして……イカせた。
第1R、終了~~ッ!
(カンカンカンカンカーーン!)
まずは国王陛下が先手を取った!
女の魔法使い、圧倒的に不利!
ここからどう巻き返していくのか!?
それとも快楽に飲まれてアへ顔一直線か!?
拙者的にはなんでも良いから早くズボズボが見たいでござる!にゅるじゅぽパチュパチュが見たいでござるーっ!
次回、国王VS女の魔法使い、第2Rへ突入!