(……暗い)
漆黒の闇。上下左右が全くわからず、どこまでも続いているように見える闇。そんな闇の中に自分がいることを自覚する。
(……熱い)
数メートル先に突如点った紅蓮の炎。それは力の具現というか、象徴というか、抽象的なイメージというか。とにかく俺――
(……この夢見るの、何度目だっけ?)
もはや面倒になって数えるのをやめた俺だが、ぶっちゃけ4月頃から毎夜見ている夢なので、数自体はすぐにわかる……いや、昼寝した時にも見てたからやっぱよくわからん。まぁ数なんかどうでもいいんだが。
(……クッソ熱い)
そんなことを考えていると、目の前にまで来ていた炎が勢いよく俺を包み込む。この炎、夢のくせして妙にリアルな熱感だから、いつも目覚めると寝汗がヤバいことになってるのマジで勘弁してほしい。
(……さて、どうしようか?)
この炎は“魔法”を使うための力……冗談ではなく事実である。
これを見る前まではアニメや漫画に出てくるようなド派手な魔法――とまではいかなかったが、確かに魔法が使えていた。しかしこれを見るようになってからは力が増幅された感じがして、『使えば確実に暴走して周りを傷つけてしまう』という確信がある。だから使えない。
急に増幅した理由――というか、そもそも俺が普通ではない力を持っている理由には一応、見当がある……おそらくは俺がガキの頃に巻き込まれたとある事件をきっかけに、なぜか俺に取り憑いてる“魔王”とやらが何か関係してると思う。
(……魔王、か)
力が発現した時に思い浮かんだ言葉――それが魔王。どういうことかはわからないが、俺の中には魔王が宿っている。しかし今は眠っている状態で、その間はなぜかそいつの力を安全に行使することができていた……正直これまで『特に不自由なく使えてるのはおかしいよな』なんて思ってたが、ついに魔王が目覚めかけているということなんだろう。そのせいで力が溢れそうになってるって感じ……なん、だよな?こういうことを考えるたびに『なんか違う気がする』って違和感を覚えるんだよなぁ。
(……そろそろ、苦しくなってきたな)
表面のみならず、内側まで焼かれ血液が沸騰していくような感覚。最初の頃は思考の余裕もなくなぜか動かない体でもがいていたが、今では苦しみながらも頭では冷静に思考ができるようになってしまった。しかしそれも困難になってくると――
******
「っ……」
――俺は、目を覚ます。
ゆっくりと体を起こし、軽く伸びをする。
「……ハァ」
やっぱあんま疲れが取れてないな。それに寝間着は寝汗で気持ち悪いことになってる。というか、ベッドまでもが寝汗で湿ってた。
「うへぇ、パンツまで濡れてやがる……今日は全部着替えるか。シーツは……朝飯食ってから換えよ」
時刻は6時40分、今日は6月の平日。学生である俺は学院に行くため、制服に着替えることにした。
******
「おはよう」
着替えを済ませてリビング・ダイニングに行き、ソファに座ってテレビを見ていた母親――
「おはよう李空。今日も暑くなりそうよ」
「だろうな。ホント嫌になる」
「……今日も機嫌悪いわね。また炎の夢を見たの?」
「ああ」
「見るようになったの、4月頃からだっけ?長いこと続くわねぇ」
「いつまで続くんだろうな……ハァ」
母さんには前に1度うなされてるところを目撃されてしまってるので、夢のことは詳しく話してある。
「今もまだ魔法は使えそうにないのよね?」
「ああ、使えば間違いなく暴走する。下手すりゃこれ、魔王に意識を乗っ取られる前兆かもしれない……それほど乱用してないつもりだったけど、力を使いすぎたのかもな」
「こんなことになるなら、あんたに無理させなかったのに……ごめんなさいね」
「いいよ。俺もこうなるまでわかんなかったし、無理してたわけでもないしな」
俺に宿る魔王の力のことは家族全員が知っている。その理由は、俺が初めて魔王の力を発現させた時にみんな近くにいたからだ。余談だが、
「そんなことより、朝ごはん食べていい?」
「ええ、さっさと食べちゃいなさい」
母さんはいつも朝早くに家を出る父さんのために朝食を作っているのだが、その時に俺たちの分も一緒に作ってくれている。さらに俺が起きそうな時間を予測して合わせてるのか、テーブルの上にはいつもおかずが温かい状態で用意されている。共働きだってのに、本当にありがたい。
「いただきます」
ご飯をよそって席に着き、手を合わせる。
今日のおかずは鮭と味噌汁。日本のド定番な朝食だ。
「もぐもぐ……ん~♪今日もうめぇ」
「あんたって、毎度本当に美味しそうにご飯食べるわねぇ。作ってる身としては嬉しいけど、ちょっとオーバーじゃない?」
「別にいいだろ。飯食う時間は幸せなんだから」
[さて、それではお待ちかねの今日の運勢を発表しちゃいましょう!]
今日も飯が食える喜びを噛み締めていると、テレビで星座占いのコーナーが始まった。
「あんた何座だっけ?」
「やぎ座」
1位から順に発表される。ふたご座、しし座、いて座、みずがめ座――
「おひつじ座は7位か。注意散漫になりがち。落とし物には注意してください、ですって……あら、これって」
「言うな。わかってる」
この番組の占いコーナーは1位、2〜6位、7〜11位、12位と発表されていく。7位のおひつじ座が映るテレビにはやぎ座の名前がどこにもない。1位、2〜6位にもなかった。つまり……
[ごめんなさい。12位はやぎ座のあなた。面倒事に巻き込まれて心や体の調子が崩れちゃうかも。くじけそうになっても諦めず、自信を持ちましょう!]
「これ以上崩れんのかよ。めんどくせぇ」
「ま、頑張んなさい。ていうかあんた、こういうのあまり信じないでしょ」
「ゲン担ぎ程度には信じとくってレベル。母さんもだろ?」
「確かにそうね。まぁ私の場合は、玄関から出て3歩くらいで忘れちゃうけど……さてと、占い終わったしそろそろ出ようかな」
そう言って母さんはソファから立ち上がる。いつもこの時間帯になると母さんは家を出るのだが、占いコーナーを見たあとに家を出ると駅に着くのがちょうどいい時間になるかららしい。
「じゃあ李空、自信持っていきなさいよ?」
「そっちこそ、落とし物には注意しろよ?特に御守り、今は作れないんだから絶対に失くすなよ」
「はーい。あっ、洗濯機はいつも通り回してるから干すのよろしく。それと天音のこともお願いね。あの子、放っておいたらお昼過ぎても起きないんだから」
「わかってる」
「なら安心。それじゃあ今度こそ、いってきます」
「いってらっしゃい」
******
「……あいつ、まだ起きてこないな」
手早く朝食を終えて洗濯物を干す最中、いまだに現れないあいつのことを思い出す。あいつというのは……
「ふぁっ、ああぁぁ~~……っ。おはよー」
たった今、大きな欠伸をしながら挨拶してきた我が妹――
「おはよう、天音。昨日は何時に寝たんだ?」
「んー…………2時頃にはお布団に入った、と思う?」
「ゲームしすぎだろ。満足いくまでしおってからに」
「仕方ないじゃん。そうしないと寝るに寝られないんだから……くぁぅ、ねむねむ」
まぁ、気持ちはわからんでもない。がしかし、それで睡眠時間を削るのはなぁ……ってかこいつ、制服に着替えてすらねぇ。
「さっさと顔洗って着替えてこい。遅刻したら俺がどやされる」
「うーい。あ、今日のおかず何?」
「鮭と味噌汁。ご飯いるよな?」
「いる、けど。んー……卵焼きも欲しい」
「……仕方ねぇな」
「やったー♪」
洗濯物はもうほとんど干し終えてるし、ここで断ると口論にまで発展して遅刻のおそれが出てくる。そこまで苦でもないし、作ってやるとしよう。
******
家を出て少し経った頃。
「あづ~い……お兄、扇子出して~」
「持ってきてねぇよ。まだ6月だぞ。これからもっと暑くなるってのに、今から出してたら来月がつらいっての」
「うぇ~……もう帰りたい」
「アホ。さっきも言ったろ、俺がどやされる」
俺はボヤき続ける天音の手を引きながら登校している。さすがに学院の生徒の姿が見え始めたら手を離すが、こうでもしないと夏場の天音は外に出たがらないのだ。まぁ冬場でも『寒いから』って言って外に出たがらないから、ほぼ年中手を繋ぎながら登校していることになる……改めて考えると、俺も結構天音に甘いよな。
「かわいそうなお兄。いつもそういうところで損してる」
「そう思うんなら直してくれ」
「それは難しいかなー。でもそんなお兄でも大丈夫!私みたいな可愛い妹がいる時点で、人生勝ち組だよ♪」
「はいはい、そうだなー」
「ちょっとー、適当に返すのはやめてよね」
「お前とこの手の問答すると疲れるんだよ。暑いってのに疲れさせんな」
最近は25℃を超える暑さになることが多く、もちろん今日も暑い。それでも歩いて通学しているのは、2人とも家から一番近いところに進学したからだ。
「あーあ、早く夏休みにならないかなー。そしたら毎晩ゲーム三昧なのに」
「夏休みか……今年はどうすっかなー」
「去年は海に行ったんだっけ?」
「ああ。海って誰かに誘われたら行くけど、自分から行きたいとは思わないんだよなー」
なんだかんだ俺も天音と同じでインドア寄りだから、何か用事でもない限り進んで外に出ようとはあまり思わないタイプの人間なのである。
「ところで、ゲームって今は何やってんだ?」
「まぁ、いろいろとね。最近だと……第六感覚ってわかる?」
「あれか。俺もちょくちょくやってる」
第六感覚――それは、
「他は?」
「他だと、マルチプレイで知らない仲間と殺し殺されの銃撃戦を繰り広げるFPSとか」
「知らない仲間って……お前、人見知りなのにボイチャしてんの?」
「するわけないじゃん。野良で潜ってる。してたら煽りにブチギレそう」
野良は野良で連携とれなくてストレス溜まりそうだが……って、そうだ。
「煽りといえば、お前は昔から俺とのゲーム対決で勝つと煽りまくってきたの思い出したわ。ありゃ確かにブチギレそうになる」
よくやってたのは、様々な作品のキャラクター達が残機を削り合って戦う“スラブラ”という格ゲーだったはず。
「いや、『ブチギレそうになる』じゃなくて『ブチギレてた』の間違いでしょ。そっからなんでか急にプレイに一切の無駄がなくなって、最終的には負け越しちゃうことが多かったんだけど……覚えてないの?」
「んー……」
天音に言われて、昔を思い返してみるも……全く思い出せん。
「ざぁこ♡ざぁこ♡開始1分で妹に残機2つ奪われるとか恥ずかしくないのぉ?」
「完っ全に思い出したわ。つーか、お前の話聞いてると結構殺伐としてんなぁ。ほのぼのしたヤツとかはしないの――あー、そういやお前エロゲしてんだっけ」
「…………なんで知ってんの?」
「俺がやろうと思ってたゲーム、お前からもらったPCに痕跡が残ってた」
インストールしようとしたらすでにレジストリに存在しててびっくりした。あれ、完全に男向けだったんだが。
「うっそマジ?ちゃんと消したはずなのに……」
「消し方が甘かったな。ちゃんとアンインストールの手順踏まないとダメだぞ」
「何それ……?つーか妹のお下がりでエロゲプレイしてんじゃねーよ」
「別にいいだろ」
今はもう俺のなんだし。
******
その後。学院生の姿が見えるようになったから手を離し、ほどなくして俺たち兄妹が通う
「天音ちゃん。おはよう」
「おはよう、彩ちゃん」
すると、亜麻色のロングヘアをルーズサイドテールにしている女の子が天音に挨拶してきた。
「……友達か」
「うん」
「えっと……?」
「初めまして。天音の兄、2−Cの谷風李空です。妹と仲良くしてくれてありがとな」
「あっ、お兄さんでしたか。
少し緊張した様子で自己紹介してくる三国さん……うん、いい子そうだな。緊張してるのは、突然の上級生との出会いのせいだろう……決して、俺の目つきが悪くて怖いからとかではないはずだ。たまに言われるけど、今回はそうじゃないと思いたい。人見知りな天音の貴重な友人なんだから、俺も彼女を丁重に扱わなくては。
「いい子そうで安心した。これからも天音のこと、よろしくね」
「え?……あ、は、はい。もちろんです」
「ちょっ、親みたいなこと言わないでよお兄。彩ちゃん、早く教室行こ。ここ暑いし」
「あ、うん。そうだね。それでは失礼します、谷風先輩」
丁寧に頭を下げ、足早に去っていく天音を追いかける三国さん……いやぁ、まさか天音にあんなまともな友人がいたとはな。すごく安心した。
そんなことを考えながら、俺も教室に向かった。
――――――
「少し目つきが悪くて怖そうだったけど、いいお兄さんだね。天音ちゃん」
「……まぁね。なんだかんだワタシのワガママ聞いてくれるし」
「それに、仲良さそうに手を繋いでたしね?」
「別に仲良くは――ってぇ!みっ、見てたの!?」
「ふふっ♪」
******
教室に入ると、中では冷たい空気が流れていた。6月中旬はエアコンの使用許可が出る。先に登校したクラスメイトがつけたんだろう。
体がいい感じに冷やされていくのを感じながら自分の席に向かう。するとそこでは、1年の頃から仲良くさせてもらっている女子3人組がいつも通り談笑していた。
「おいっすー、お三方」
「あ、谷風クン。おはよーっす」
「よーっす」
「よすよす~」
挨拶の順番で3人を紹介。
毛先から数cmほどが薄ピンク色になっている群青色の癖っ毛髪をツインテールにしている
サイドテールの茶髪に橙色のインナーカラーが入っている
ロングヘアのシルバーグレーで癖っ毛髪な
この3人とは入学してすぐに繋がりが生まれたんだが、特に小雲雀さんとは妙に波長が合うというか……最初に仲良くなったのも小雲雀さんだったな。
「小雲雀さん、髪染めたんだな。裾カラーってヤツだっけか」
「おー、さっすが谷風クン。ちゃんとすぐ言ってくれる。チカはアタシが言うまで何も言ってくれなかったんだよねー。アタシゃ悲しいよ」
「だから言うタイミング逃してただけだってば……で、谷風クン。自分から指摘したんだから感想言ってやんな」
あ、これ以上の追求が面倒になって俺に無理やり投げた。まぁいいけど。
「んー……うん、似合ってる。月並みな感想しか出なくてごめん」
「ううん、ありがとっ♪」
ニコニコ嬉しそうに笑う小雲雀さん。うん、可愛い。
「今日も元気だな」
「うん!暑くなってきて、いよいよ夏が近づいてきたーって感じするし!」
「近づいてきたってことは、そろそろ夏休みだぁね」
「夏休みは思いっきり遊ぶのもいいけど、クーラーつけた部屋でゴロゴロするのもいいねぇ」
「確かにあと1ヶ月くらいで夏休みだが……その前にテストがあるぞ」
「「oh……」」
テストという単語で木下さんと白石さんがうなだれる。
「思い出したくないことを……」
「せっかくの夏休みを追試や補習で潰されたら悲しすぎるから、ちゃんとしないとね」
「2人は成績いいほうだから羨ましい」
「授業で習った内容しか出ないんだから大丈夫だって」
「また勉強会するか?去年の2学期末にやったヤツ」
誘われた時は驚いたが、俺も1年の1学期末はそこそこ良い点数取ってたほうだったし納得した……まぁ、小雲雀さんほどじゃないんだがな。
「そんなこともあったねぇ。たしかあの時って、アタシが『2人の面倒見るの手伝ってー!』みたいなこと言ったんだっけ」
「そうそう。急な話でびっくりしたけど、結果2人とも補習回避してくれたからよかったよ」
「アタシにとってもいい勉強になったし、あの時は谷風クンがいてくれて本当に助かっちゃった」
「いやいや……あれ?小雲雀さんに関しては俺ノータッチじゃなかったっけ」
実は小雲雀さん、学院内を飛び越えて全国でもトップレベルの成績を収めてるすごい人なのだ。前に『秘訣的なモノでもあるのか?』と訊いてみたことがあるんだが……
――――――
「教科書に載ってないことはテストに出ないじゃん?で、教科書に載ってることは大体、授業で説明がある。だからアタシは“授業に集中して取り組む”ようにしてるけど……秘訣ってこんな感じ?」
――――――
……とのことだった。だから家での復習は多少の確認程度で済んでるらしい。改めて考えても、すごいなこの子。
「アタシ、教えるの下手みたいだからさ。谷風クンの教え方はすごく勉強になったよ」
「あぁ、そういう……で、どうするんだ?今年も勉強会するか?」
「本当にヤバいと感じたらお願いします」
「去年といえば、8月に海行ったよね。この4人で」
「あー、行ったねぇ」
「楽しかったけど、大変でもあったな」
男避けのために誘われた形だったんだが、その男避けの役目がマジで大変だった。だってトイレや買い出しのために少し離れると、毎度その間に3人がナンパされてたから……8月の海、正直ナメてたわ。
「あの時は大変お世話になりました」
「これまで特にナンパされたことはなかったけど、毎度クルミが視線集めまくるから念のため……くらいの感覚だったのに」
「谷風クンが離れるたびに、思ったよかナンパ来たよね。特にクルミへの数がヤバかった」
「そうそう。毎度それに気づいた谷風クンが急いで戻ってきて、相手をひと睨みで追い返す」
「相手が数の暴力で来ても全部返り討ち」
「あれは痺れたわ」
「その手のことは何度言われても照れるからやめてくれ……ところで、だ。小雲雀さん」
「ん、何?」
「そろそろ鞄置かせてくれ」
「え?……ああっ、ごめんね!」
小雲雀さんが慌てて腰かけていた俺の席から離れる。ふー、やっと置ける。
「なんか位置がちょうどよくて、ついまたやっちゃってたよー。ホントごめんね?」
「いや、別に怒ってるわけじゃないから謝らなくても」
「クルミってばいつもだよねー、それ」
「まぁ、いつも気づいてて一切指摘しないウチらもウチらなんだけどさ」
あ、やっぱ2人は気づいてたのか。
「ちょっ、気づいてたんなら早く言ってよ!」
「いやだって、そんな目立つケツしてて、自分で気づかないとは思わないじゃん?」
「んぐ……ってかケツってゆーな!お尻でいいじゃん!」
「いや、クルミのは“お尻”ってよりも“ケツっ!”って感じなんだよねぇ」
「わかるわかる。ねー谷風クン?」
「知るか。つーか俺に聞くな。返答に困る」
なんか会話が怪しくなってきたので、一旦会話の輪から離れる。
「ふぅ……」
「よう、谷風。おはよう」
「ん?あぁ、井上か。おはよう」
正直クラスメイトの中で一番仲がいいのは彼女たちだと思ってるが、男友達も少ないがちゃんといる。井上は男友達の中で一番仲がいい奴だ。
「相変わらずあの3人と仲良しだなぁ。羨ましい」
「まぁ1年以上も素直に友達やってりゃ、あんくらい仲良くなれるさ。つーかあの3人、特に小雲雀さんは別け隔てないだろ」
「それでも男と一緒に遊びに行ったなんて話は聞いたことない。なのにお前、去年は一緒に海に行ったって……お前どうなってんの?」
「男避けだぞ」
「それくらい信頼されてたんだな。たった数ヶ月で」
「………」
言われてみれば、確かに珍しい話だな。俺なんか特別なことしたっけ?
「それにお前、今日は彼女と一緒に登校してたよな?」
「彼女ぉ?んなもんいないが」
「嘘つけ。俺はばっちり見たぞ。髪が薄紫色の女の子と一緒に学院に来たところをよぉ!」
薄紫……ってか今日一緒に登校の時点で、あいつしかいなかったな。
「あいつは妹だ」
「え、お前妹いたの?」
「ああ、たまに一緒に登校してる。母さんに頼まれててな」
嘘、実際は毎日一緒だ。しかしそれを言うと『お前シスコンかー?』とからかわれるのが目に見えてるから言わない。一緒に登校してるのは天音のサボり防止のためだ。
つーか別に妹だけじゃねぇし。俺は身内大好き人間なだけだし……誰かに言う気も、態度に出す気もないけど。特に天音には絶対に言わない。言ったらあいつ調子にのるからな。
「はーいみなさん、席に着いてください。朝のホームルームを始めます」
「っと、席に着かなきゃ。そんじゃ」
「おう、またな」
クラス担任の
――さぁ、今日もいつも通りの日常が始まる。
李空が原作前から魔王の力で魔法を使えていた理由&それが例の人たちに観測されなかった理由は、作中でちゃんと明かします。