※この作品はR-18です。

洗脳と触手、若き女性冒険者の苦難   作:笹にとろん

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17 振り返っても卑猥ばかり

 ──しばし、日が経ち。

 私が変わるき(・)っ(・)か(・)け(・)の魔物を倒したのが九日前。

 はじめて性行為をしたのが、七日前。

 ケルレンスくんの告白をフったのが六日前。

 

 およそ一週間の間、表面上はいつも通りの日常を過ごした。

 仕事の日には魔物を駆除し、困っている人を助け、荷馬車や商人を護衛したり。休日には遊んだり、息抜きに魔物を駆除したり。

 クランメンバーとの団欒。装備の点検。魔物の解体。日々の食事、睡眠、家事。

 

 そこは変わらない。今更変えられない、私の生活だ。

 

 だから、私の変化は、合間合間の新しい日(・)常(・)に顕れていた。

 

 ***

 

 例えば五日前は。

 人気のない岩場で、私は丸出しのお尻を突き出し、大岩に手をついていた。

 そして、私に覆い被さるように、腰を振る大男が一人。

 

 ぱん、ぱん、っとせわしなく肉と肉がぶつかり合う。

 

「あン♡っ、あんっ♡、ああっ♡、イク、イク♡♡」

「うおお、アーサ、こんな野外で誘いやがって……しかも、こんな俺に初めてを捧げてくれるなんて……! うっ、で、出る!」

「あ、ああああっ♡♡……ふぅ、んぁ……♡」

「う、おお。搾り取られる……」

 

 “葦と楔”の仲間、銅級冒険者ドギリフさんは筋骨隆々の大柄な中年男性だ。ちなみに、かつては殺人と強盗を犯した上で、顔と名前を変えてテレトイ市に逃げおおせた悪党だったらしい。

 そんな彼も、“葦と楔”に入ってからは慎ましく生活していたようだった。

 なお、過去形だ。

 

「お前と出会って、見守るべく足を洗った……そしてお前のせいで、また道を踏み外す。はは、コレが運命ってやつなのかもな」

「はぁ……はぁ……気持ちよかった……」

「初めてとは、とても思えねぇぜ。膜破れてただろ、痛くねぇか?」

「う、ん♡ ありがと、大丈夫……♡♡」

 

 ごつごつとした手のひらで、接合部をそっとなぞられる。絶頂直後の陰唇が、ふるりと甘く痺れる。

 ドギリフさんの角ばった指先には、精液と愛液、少量の血が付いていた。

 

「……なあ、仕事終わりまでには時間あるだろ。市に戻る前に──」

「……ドギリフさん。もう一回、シよっか♡♡」

「へへ、悪いな」

 

 がっしりと肩から上体を掴まれて上体を逸らされる。

 まだまだ硬さを失っていない肉棒の、膣に当たる角度が変わった。さっきと違うところを圧された膣が、甘い蜜を吐き出す。

 岩に手が届かなくなったので、両腕を後ろに回して男の腰に手を当てる。

 

「あっ♡、この角度すき♡ 良い、んあぁあっっ♡♡」

 

 そのまま、何度も上下に揺さぶられ、たくさん中に射精された。

 

 

 

 ***

 

 例えば、三日前にも。

 

 がちゃ、と扉を開ける。キザっぽい感じのサラサラした金髪と、目鼻筋の整った顔がにこやかに私を迎える。

 

「おや、アーサくんじゃあないか。わざわざワタクシの部屋を訪ねるとは、珍しいですね」

「うん。アソルートさんに頼みたいことがあって」

「ほう。……アーサくん、しかしその要件の前に。そういう扇状的な格好は、クランハウス内でも刺激が強いから控え────」

 

 ────部屋の隅に追い詰められたアソルートさんは、どこか怯えたような顔で私を見つめる。

 

「待て、やめろ。ワタクシは────そんなことをしない」

「処女にやるのは、気が引けるってこと?」

「ちが、ち……待て、初めてだと……なおさら! そんな願いは受け入れられ──」

 

 有無を言わさず。私は服を脱ぎ去っていく。

 

「【身体強化】」

「おい、やめっ……!? な、なぜワタクシに強化を!?」

「だって。強姦じゃなくて──」

 

 和姦なら、いいでしょ────? 

 

 ***

 

 ──だん、だん、だん。肉と骨がぶつかり合う音が響く。

 

「──ふざけっ……ふざけるなよっ……」

「ぎ、あ゛っ♡、こひゅーっ♡、ひゅ──……♡♡」

 

 馬乗りになったアソルートさんに、両手で首を絞められる。視界がチカチカする。何人もの女性を喰ってきた剛直でぞりぞりと膣壁を磨き上られると、体中から火花が散るような快楽に襲われる。

 

「ワタクシが、どれだけ……どれだけ苦労して、我慢していると、思っているんだ!!」

「かはぁっ、──ゔぁっ♡、ごめ♡ごめんね♡、ぎっ……きもち、い……っ♡」

「くそ、この……どこまでもワタクシを……」

 

 赤く腫れた乳首を摘まれる。ぷっくらと勃起以上に赤く膨らんでいるのは、アソルートさんの愛撫によるものだ。

 

 乱暴に、しかし絶妙な手加減で、乳房を揃えて垂直に引っ張られる。強い痛みの中に、最大限の快楽があった。

 

 そのまま手綱を引かれた馬に乗るように、腰からぐらぐらと接合部が揺らされる。

 さっきから私の弱点がバレている。ぞわぞわと、膣の中ほどが集中的に突かれている。正常位で上から見下ろされてるから、私の快楽に蕩けた顔を見られっぱなしだ。

 内側から外に抜けるように、男根が反りかえる。あまりの快楽に絶頂し、体が痙攣して動かなくなる。

 

「はぁっ、はぁっ、くそっ、ふざけてる、なんだこの強化魔法の出力……」

「あへぇっ♡、ほぉ♡、ご、ごれぇ゛♡、自分でやるより、すご…………♡♡」

「……おい。自慰の頻度はどれくらいだ」

「毎日……♡」

「まったく、成人済みの処女は……拗らせたやつが、多いな」

「……毎日、じゅ、十回くらい♡??」

「はぁっ!? 時間無いだろ、どうやっているんだ」

「わかんな、わがんなあ゛ぁ♡、まんこに、オ(・)モ(・)チ(・)ャ(・)挿しっぱなしにしてる、んだっけ……? お、起きたら毎朝、シてるよ、はぁ♡」

「……」

 

 呼吸を必死に整えようとするけど、喘ぎ声が止まらない。ず──っと、肉棒で私のまんこを攻められっぱなしだ。

 気を抜くと絶頂しそうだ。それを堪えようとしても、今度は逃げ場のない快感で呂律が回らなくなる。

 

「はぁっ、はぁっ♡」

「アーサ」

 

 呼びかけられて、ぼう、とアソルートさんの顔を見上げる。

 何か、タガが外れた顔をしているような。

 

「ふぅっ♡、うぅ♡、なに、アソルートさん」

「ココのことはな──」

「おぅう゛ッッ♡♡♡!?!?!?」

 

 既に男根が突き刺さっている膣に、無理矢理に彼の指が捩じ込まれる。

 ぬっち、ぬっちと、ぎこちない動きで、指先で膣を掻き回されると、すでに何度も射精された精液と愛液が滲むように溢れた。

 

「『まんこ』、じゃなくて、『おまんこ』、と言うんだ。わかったか、優等生の変態女……」

「う゛っぇぁ♡♡♡、わがっ♡わがりまじだ♡♡おまんこ、おまんこぎもぢいいっ♡♡」

 

 処女膜の痕跡は粘液に混ざって、血は見当たらない。とっくに私の──おまんこは、性欲と粘液が融け合い、ぐずぐずに熟れている。

 

 指が引き抜かれる。ねばついた白い分泌液が糸を引く。

 即座に、男性器による抽挿が再開する。また、速いペース。

 

「う゛っ♡ う゛っ♡ う゛っ♡」

「こんだけやっても、まだぎゅうぎゅうに締め付けてくるな」

「ぅう゛♡、ふっ♡」

「アーサ。お前が悪いんだからな。お前のせいで、ワタクシが乱れるんだ……!」

「んぁっ♡、ああ♡、イグ、おまんこいくぅ♡」

 

 腰を振られ、射精される。腰を振り、絶頂する。

 

 その日は夕方まで、お互いが、お互いの熱の中に融けていった。

 

 

 

 ***

 

 例えば、昨日。

 

 

 槍使いの後輩、オランくんは年の割に背格好が大きい。具体的には、並んで立つと私の目線に彼の首元がある。

 でも、いまは随分と体格が小さく感じる。私の部屋で二人きり、胴体に跨って年下の少年を見下ろせば、よく焼けた皮膚が赤くなる。

 あれよあれよと言いくるめてしまったけど、もうお互い素っ裸なんだから、覚悟を決めて欲しい。

 

「アーサ、ちゃん……ほ、ほんとに俺と、してくれるの……」

「ふふ、ふぅーっ♡ じゃなきゃ、何するつもりだと思ってるの?」

「い、いや……殺されんのかなって」

「あはは! そんなに怯えなくていいから……。コッチだって、もうその気でしょ?」

「ううっ」

 

 胸板に手を置き、腰を引き延ばすように腰を反らす。私の尻たぶが男性器を撫で、オランくんの目が快楽に歪む。

 

「ていうか、ナマでいいのか……? こういうの詳しくねえんだけど、出す前に抜いても妊娠することはあるんだろ?」

「う~ん、私も初(・)め(・)て(・)だ(・)か(・)ら(・)わからないけど……デキたらちゃんと産むから、安心していいよ」

「い、いやそれはちょっと、責任ってもんが……!」

「大(・)丈(・)夫(・)だ(・)か(・)ら(・)。はい、わらひおうひいれえ(私の口みてね)……」

「──……────ああ、そうだな。なんかあったらアーサちゃんに任せるぜ!」

「よーし! じゃあ、いっぱい楽しもうね!」

 

 よーし、年下の男の子だし、実は私も結構経験豊富になってきたし。

 がんばってリードするぞ。彼も童貞らしいし、すっごく気持ちよくして良い思い出にしてあげないとね。

 

「ふーっ♡、ふーっ、しっかり支えててね……♡」

「お、おうっ。よろしくお願いします、だぜ……うぉ、ぉ」

「ん、んん~~ッ♡」

 

 腰を浮かし、陰唇に亀頭をあてがう。

 にゅぷにゅぷと、私の膣口が呑み込んでいき、ぶつりと結合部から血が垂れる……────。

 

 

 ***

 

 

 ────。

 …………? ────! 

 肉のぶつかり合いが骨に響き、思考が頭に戻ってくる。

 いつの間にか、上下関係が変わっていた。

 

「お、おおおオ゛!!?? う゛あ゛っ♡、がはっ゛♡♡!!」

「はあっ、はっ!! まだでる、アーサちゃん、これすげ、うおおおっ!!」

「あ゛──゛っ、ああ゛♡!!?? いぎっ、ま゛っッ♡♡!?!?」

 

 

 オランくんの股の下、私はくの字に折りたたまれ、ベッドに押し付けた背骨で彼の杭打ちを受け止めている。

 視線と性器がそれぞれ垂直に向かい合う体位で、私の脚は彼の脇に挟まれているから、身動きが取れない。

 肩に置かれていた彼の手に、ぎゅっと力が入る。膣に噴き出した精液で内側が満たされていく。

 

「すっ、げえ~~……これが、女の人の身体か……」

「うぁ♡、はぁ、はぁ、うへぇ…………」

「──うっ、まだ勃ってきた。ごめんアーサちゃん、もう一回」

「はぁっ、まっ、またぁ!? もう五回、めェッ♡♡!?」

 

 敏感になったおまんこが、男根で素早く一往復。分泌液で濡れた太もも同士がべっちゃりとぶつかる。

 ぐりぐり押し付けられたおちんぽに、下半身が意志とは無関係に屈服し、きゅうっと締め付けて奉仕してしまう。

 

「あ゛っ! だ、だめぇ♡バカになる、あたまおかしくなる、こんなの絶対はじめてじゃない♡♡♡」

「はあっ、ふー! ごめんアーサちゃん、初めてのセックス、全然加減がわかんなくて」

「い、良いっていう動かないで……ぃっ♡!? だからぁ♡とま、とまってぇ……」

「俺、おれ! 我慢もできねえ!!」

「あ゛あぁっ♡♡!? いひぃ゛、おまんこがぁ♡♡めくれ、んんあっ」

 

 ──あとは、ひたすら体を貪られただけなので、省略。

 

 年頃の冒険者の男の子の性力を侮ってはいけない、というのは誰かの言葉だったか。

 遠慮なし、避妊なしの連続杭打ち種漬けセックスを味わいつくし。その日の仕事は、性器にたっぷりとオランくんの精子が溜まった状態で済ました。掻き出すのも悪いしね。

 

 ──こんな、日もあったり。

 

 

 ***

 

 というわけで、この一週間ほど。

 

 セックスをしなかった日は、無(・)い(・)。

 ケルレンスくんに始まり。クランの男性メンバー、計十一人。

 

 全て疑似処女喪失セックス。どんどんセックスもこなれてきたし。経験豊富な人たちには色々教えこまれた。淫語とか、体位とか、こっそり男の人を誘う合図の出し方とか。最近潮を吹くコツもわかって来た。

 

 今の所、致した相手全員に秘密を守らせるようにお願いをし、こ(・)っ(・)そ(・)り(・)虹(・)色(・)の(・)瞳(・)も(・)見(・)せ(・)て(・)い(・)る(・)ので、私が非処女であることは誰にもバレていない。

 ……はずだ。──何を見せたんだっけ? 

 

 とはいえそろそろ、カンのいい人にはバレるとは思う。連日連夜日中もセックスオナニー漬けで、流石に日常が歪んできた。

 いざとなれば私には隠密魔法がある上に、な(・)ぜ(・)か(・)ど(・)れ(・)だ(・)け(・)性(・)的(・)に(・)興(・)奮(・)し(・)て(・)も(・)、(・)私(・)は(・)平(・)常(・)を(・)装(・)え(・)る(・)とはいえ、相手の男性陣はそういうわけでもない。秘密を守るようにお願いはしてあるけど、いつかは処女を回復できることが露呈するだろう。

 

 もしバレたら、それなりの言い訳をしなくちゃいけないかもだけど……。

 ま、今だけのお楽しみを優先ってことで。

 

 そういえば、十一人は全員、私のおかげで改心できた旨を話してくれた。

 特に、性犯罪絡みの数名は、その私を犯すことには強い忌避感を覚えてくれたみたいだけど。

 

「ま、最後にはみんな気持ちいいし、楽しかったからいいよね」

 

 回想おしまい。仕事の準備もできたので、部屋を出て、静かな廊下を歩く。

 ──突き当たりの階段前に、人影がある。

 

「ガルペズ、こんにちは。誰か待ってるの?」

「待っていた、訳ではないが」

 

 木の影が立ち上がったような長身、陰鬱な雰囲気の事務担当員。銀級冒険者、ガルペズだ。

 

「ああ、いや……お前に話がある」

「何か用? これから、街道に沿って魔物駆除のソロ依頼があるんだけど」

「──なら、手短に済ませる。【覆い、包め。消音(サイレンス)】」

 

 短い詠唱と共に消音魔法が発動する。既に周囲に人耳は無いけど、そうするほど人に聞かせられないことなんだろうか。

 

「────お前の……不純性行為について、やめろとは言わん」

「ほにゃぁぁっっ!?!?!?!?」

 

 ななななななになんでバレてる????? 

 

「いあいいあやいや…………あ……気のせいじゃない?」

「………………」

「ぐ」

 

 いつにも増して陰鬱な目線と、無言の圧力に押し負ける。

 

 まあ、うん。いつかバレる、バレるとは思っただけど。

 よりによって親代わりの古株メンバーの中でも、トップクラスに気まずい相手にバレてしまうとは。

 ……いや、ガルペズの立場なら、グラナダとペトリファイにまで報告したんじゃなかろうか。

 

 顔に血が集まる。

 大人の人に恥ずかしいことがバレるの、めちゃ辛い。

 

「アーサ。フランと会えなくなったからといって、奴の真似をするのはよせ」

「え? あ、あ〜〜ー……」

 

 なる、ほど。

 フランはかなり性に奔放なタチだった。自他ともに認める性豪で、あちこちの男娼を買い漁ってるとか、一晩を共にした男性冒険者は数知れず、とか。

 傷心の私が母親代わりの影を追っていると、彼は勘違いしているのか。

 

 誤魔化しが効いてよかった、と思っておこう。

 ──フランの死を言(・)い(・)訳(・)に(・)使(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ことには大した感情も挟まず、私は納得する。

 

「フランの趣味もあるだろうが、アレは奴の体質にも関わっていた習慣だ。人間のお前が無理に寄せようとするな。──奴も、お前に……そんな真似をして欲しくは、ないだろう」

「そっ、か……。フラン………………」

 

 ひとまず彼の勘違いに合わせて、表情と声色を作る。こういう演技は苦手だけど、なんだか最近はこういうのも得意になってきた。

 

 それに実際のところ、フランも、目の前のガルペズも、私を育ててくれた大事な人たちだ。

 確かに、彼らをいたずらに傷つけたくはない。

 

「相手には十分気を配れ。フランにすら不和を広げないようにする慎みはあった。クランメンバーには手を出さず、妻帯者には常に一歩引く」

「へ、へえ……」

「お前なら致命的な事態は回避できると信じてるが、トラブルが起こる前に、俺でもペトリファイでも相談しろ。仲裁してやる」

 

 まあ、この前の説教の延長なんだろう。『全てを話す必要はない』、『お前の助けにならない奴なんていない』、か。

 

「お前とて一人の大人だ。自分の行動には責任を取れるようにしておけ」

「う、正論。すみませんでした……」

「……それと、お前には、先に伝えておく。フランはじき、遠方の家族の事情で急いで市を離れた──という事になる」

「そ、っか。うん……。わかったよ」

 

 ……きっと、私が『見送る』ことはできないのだろう。

 大丈夫。悲しいけど、もう納得はできている。

 

「最後に──────…………」

「?」

 

 間が空く。彼にしては珍しく、次の言葉を言うべきか逡巡しているようだ。

 

「……俺個人の意見としては、深い関係を持つ相手をやたらと増やすのは……やめておくべきだ」

「……どうして?」

「それは……。お前も、相(・)手(・)の(・)す(・)べ(・)て(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)訳(・)で(・)は(・)な(・)い(・)だろう」

 

 ──ああ、なるほど。ピンときた。

 

「“葦と楔”のクランメンバーは、ほ(・)と(・)ん(・)ど(・)が(・)犯(・)罪(・)者(・)だ(・)か(・)ら(・)?(・)」

「────」

 

 一瞬、ガルペズの表情に驚愕の色が混ざる。

 すぐに元の仏頂面に戻ったけど、狼狽したときの雰囲気は残ったままだった。何かを問おうとして、錆びついたように口が動いていない。

 

「──大丈夫だよ、ガルペズ。私、ちゃんとここが、みんなのことが好きで、誰一人嫌ってなんかいないよ」

「…………何を、知った」

「みんなのこと、信じてるから、私からはみんなに何も聞かない。もしも過去が迫ってきて、あるいは悪心が戻ってしまっても、私が明るい場所に連れ戻す」

「…………」

「家族が助けの手を求めていたら……どうするか、ガ(・)ル(・)ペ(・)ズ(・)は(・)私(・)の(・)こ(・)と(・)、(・)知(・)っ(・)て(・)る(・)で(・)し(・)ょ(・)?」

「────ハァ。そう……だ、な。これまでも、そういう性質だったな、お前は」

「そうだよ。だから安心して!」

「ああ、──わかったさ」

 

 私がこのクランの秘密に気づいたことで、ガルペズには不安を募らせちゃったけど。もう、雰囲気は和らいだ。

 たぶん、これで大丈夫。私の決意は、きっと伝わった。

 

「じゃあ、私そろそろ行くから」

「ああ……気をつけてな」

 

 仕事に向かう階段を下り始めて、ふと振り返る。

 ガルペズ。三十台にしては枯れた雰囲気の男と目が合う。

 

 ────かつて王国内で『主人殺しの罪』に問われていた、元執事だという。

 いつも、思っていた。粗野の言葉遣いの中に、彼の細やかな心配りを感じる。

 詳しい話は、ケルレンスくんでも分からないと言っていた。

 彼はいつも陰ながら、私を、みんなを助けてくれる。

 

 もし彼が罪に問われたとき、『助けてくれ』と言ってくれるだろうか? 

 あまり、想像できなかった。

 

「──ガルペズ。助けてほしいことが、明かしたいことがあるなら、言ってね。私、どんな事情でも大丈夫だから」

「……ああ、わかった。頼るさ」

「ならセックスしたくなったら遠慮なく誘ってね。じゃ!」」

「ああ。──はぁっ!? おい────!!」

 

 階段の手すりから飛び降りると、罵声と説教は消音魔法に遮られて届かなくなった。

 

 振り切るように駆け出し、扉を開けて、通りを駆け抜ける。

 ここからは、いつもの元気な美少女モードだ。

 

「さあ! 仕事に行こう!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 街道を一人で歩きながら魔物を駆除してまわる。ノルマの距離に沸いていた魔物を駆除し終え、そろそろ仕事時間の終わりを意識し始めたころ、そいつと出逢った。

 

 がさがさと茂みから白い影が現れる。

 腰のベルトに佩いた長剣の柄に手を置き、目の前の魔物を見据える。

 

「今日はこいつでおしまいかな」

「ぎっ…………しししぎぎ…………ぎぎ……」

 

 大きさ四メートル程の魔物。

 例えるなら、六脚のネコ、だろうか。

 丸い頭には目が二つあり、耳や鼻、口のような部分もあり、比較的生物的な造形。白くツルツルした皮膚が全身に張り付いていて、丸まった背筋からはトゲが七本ほど飛び出している。

 尻尾らしいものは見当たらない。

 六本の脚はそれぞれ獣のように折れ曲がり、胴体を支えている。

 

「……ぎぎっ!」

 

 魔物が大きく開いた口で威嚇し、ふわりと跳びかかってくる。

 動きを注視し、居合によるカウンターを狙う。

 

 ──虹(・)色(・)の両目が、私を見──────────。

 

 

 

 

 くらり、と。

 意識が、回転する────────────。

 

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