所属する人数が十人を超えるような中型以上のクランでは、そのほとんどがクランハウスとして大きな宿泊施設を私有している。
所属メンバーの稼ぎや私財をたっぷり注ぎ込まれたクランハウスは、ある種クランのステータスとして扱われる。
それぞれのクランハウスは、それぞれのクランの特色に合わせるような、『家』以外の機能を有していることが多い。例えば、魔物を生きたまま調べるための檻や、ウチにもある魔物の解体部屋なんかもそうだ。鉄を溶かす炉があるクランハウスも存在する。
そしてウチのクランハウスは、おっきな邸宅に金級冒険者を含むメンバーが惜しみなく資源を注ぎ込んできた。
その結果、そこらの貴族の家でも見ないような、高度で便利な施設を備えた、高級宿泊施設となっているのである。
とはいっても、内装は素朴なんだけどね。普通のレンガ造りの壁の裏側に、最先端の配管技術が使われているとかなんとか。
それから、他の家同様に、我がクランハウスにも水道が通っている。市のそばを流れる川や井戸を水源として、上水道から綺麗な水が流れてくる。排水溝にながした水は、市内の下水道を通り、川の下流に流されている。
この上下水道が揃った都市は珍しく、テレトイ市の発展と衛生面の管理に著しく貢献しているみたい。
ちなみに詳しい構造はわからない。蛇口を捻れば水が出る。それでいい。下水道には流してはいけないもの(魔物の血とか、一部の薬は制限は強い)があるから、そこは注意だけど。
そして私がクラン設備の高度さと、水道の恩恵を最も感じるのは、そう。
備えられた個室の中に入り、内カギをかける。
「よいしょっと……」
スカートをたくし上げつつ、下着を下ろし、中にある白い筒──便器に腰掛ける。
“葦と楔”には、あの水洗式のトイレがあるのだ。私も数年前まで見たことも聞いたこともなかったシロモノである。これは市内でも珍しい設備だ。
ふと、股間に生理用品が張り付いていたので、剥がして丸めておく。流石にもうムラムラは落ち着いていたので、さらりと乾燥していた。
便器の中で用を足す。
「ふうっ。…………」
これが本当に素晴らしい設備なのだ。便器の中の汚物は、レバーを倒せば水が流れ、洗浄される。汚物を溜める事がないので、トイレなのにニオイが少ない。
個室はキッチリとした防音壁で覆われ、周囲を気にせずに落ち着いて用を足せる。
野外で股間に感じる肌寒い風や、魔物の鳴き声で慌てて服を着直すなんてこともない。ボロい板切れの隙間で身を隠し、孤児院のマナーがなってない男児を警戒する必要もない。
……比較対象がおかしいかもしれない。幼い頃の私は結構悲惨な環境にあったし、クランハウスも初めはボロっちい小屋だった。
ここは私含む、みんなの頑張りで手に入れた素敵な場所なのだ。
しょろろろろ、と便器を叩く水音がする。出し切って、隠部を清潔な布で軽く拭う。
私の場合は魔法で綺麗にしてもいいけどね。さきほどガルペズに叱られたばかりだし、ちょっとずつ気にしてみよう。
さらりとした感触に、ついホッとしてしまう。
一息つき、便器の中を確認してみる。やや濃い目の黄色。
夕食の焼肉屋さんでも水をあまり飲まなかったせいで、いつもより濃くなっちゃったのかな。
いや、それにその。……昼間すっごい、変態的な行為に勤しんでしまったことの方が、原因としては大きいかもしれない。
まあ最悪でも脱水程度、それで悪くなるようなヤワな体ではないので、この後ちゃんと水を飲んでおけば大丈夫だろう。
スッキリしたので便器からお尻を持ち上げようとしたけど、もう一度腰掛ける。忘れるところだった。
トイレは、
だから、
軽く開く程度だった足を、大きく割る。スカートを脇で挟んだまま、両手で陰唇を開き、ぐいぐいと便器の穴に尻たぶを押し付ける。
便器の中は、特に変わったこともなく、
もっと女性器を突き出した方が
ごぽごぽと、下水からなにかが逆流してきたような音が聞こえても、私には
もちろん、視界には扉と手の甲しか映っていない。自分の股の下で、何かが波打ち、澱み、肉の塊へと変化していても、
準備は整ったので、出していこう。片手で陰唇を広げて、膣に力を入れる。
私は運動神経抜群なのだ。昨日まではいざ知らず、昼間の過激な自慰のおかげか、なんとなく膣の筋肉の動かし方が分かるようになっていた。
「うーっ……ふ──ぅ……」
深く呼吸し、いきむ。膣壁を擦りながら、奥から大きな丸い粒が移動する。
と同時に、ぬたり、という音が
「ふぅ、ふぅ、……はぁっ、はぁっ」
ぬっちゃ、ぬっちゃと。聞こえない音にリズムを合わせて、息が荒くなる。
膣の中の丸い粒は、もうすぐ出口へと差し掛かる頃だった。しかし粒から伸びるヒモ状の部分のせいで、膣奥への刺激は続いている。認識外の愛撫は激しさを増し、私は絶頂に近づく。
一瞬小さな痛みが走る。やはり私の処女膜が再生していたため、内側から再び膜が破られたのだ。破瓜の血が流れれば、さらに潤滑が増す。
最後の障壁も破られ、じゅぽん、という感触とともに、勢いよく粒を
「あぁ♡ひぃっ♡ひぃんっ♡」
変な声を我慢できないまま、わたしは絶頂した。膣口のフチを丹念にしゃぶられる新鮮な刺激で、頭がくらくらする。上体を支えていられず、ドアから滑らせた手が床についてしまう。
膣の痙攣をヒダが優しく舐めてくれたとしても、わたしには認識できていなかった。
でも、絶頂の心地よさと、膣中の寂しさは、余すことなく受け止めていた。
「……♡♡──……っっ……♡」
体全身に力が入らない。わたしの思考が、まとまらない。
膣に残っていたヒモ状の部分が、激しくのたうちまわり、わたしの膣から這い出ていく。追い討ちの刺激に、再び絶頂。
「あっ……─────────♡」
空気が変わる。今度は体を鷲掴みにするように、便器から溢れて肉塊が大きく膨れ上がる。
触手が伸びる。骨盤をとっかかりに腰を掴まれ、ぐい、とされるがままに浮き上がれば、狭い個室の中で不恰好な逆立ちをさせられる。膝から先が力無く揺れ、つま先が扉を擦る。
ふと、わたしは、これまで認識できていなかった事が、認識できるようになっている、と分かった。
何故そうなっているのかは、考えたらすぐ分かった。
指先一つ動かせない。
顔の表情すら変わらない。
魔法も使えない。
触手から、得体の知れない液体が滴っているのがわかる。
これは、
「…………♡♡──っ」
物理的にも、快楽的にも、体が降りてこない。いまだにヒダが優しいマッサージを繰り返し、わたしの隠部は切ない悲鳴をあげ、震え続けている。
孔の周りをなぞるように、しっとりと。外から中へ肉を掻き集めるように、ねとねとと、ヒダが動き回る。そこに隠核を揉み込むような動きが、重なる。
「ひゅ。…………──♡♡」
刺激を与えるために腰が揺らされ、折り曲げられたわたしの肺から漏れた空気の音だ。
どれだけイき狂っても、わたしは善がり声ひとつ出せない。
ぐんっ、と腰が引き上げられる。手が地面を失い、だらんと宙吊りになる。
目の前の便器から、肉の樹が生えている。
その幹の中心に、銀色と虹色を混ぜ合わせたような、妖しく光る一つ目が埋まっている。
直感的に、知る。
今まで微かに出来ていた、魔力抵抗が出来なくなる。
もうわたしは、
目線が合う。
光と光が絡み合う。
わたしには、
わたしは、わたしのやるべきことを知った。
くるりと床に降ろされ、着地する。身体中の触手が離れていく。拘束は解かれ、体の自由
虹色の目玉を中心に、肉の連なりが幹からせりだす。肉の枝の先端には、わたしを、わたしのカラダを見つめる目玉が。
迷うことなく、幹に抱きつく。
肉の枝にまんこを当てがい、男性器のような形状の魔物を呑み込む。向こう側も枝をくねらせ、先端が女性器に侵入する。
──そのままじっと、魔物が這い進み、わたしの体の中に戻るのを、待つ。
工程はゆっくりと、静かに終わった。ずるり、と幹から生えた枝が千切れ、膣からはみ出した部分も、うごめきながらわたしの中に収まった。
前かがみで確認すれば、膣の中には蠢く赤黒い肉塊がみっちりと詰まっていて、中身に押し出された小陰唇が拡がっていた。
はしたないので、膣口にきゅっと力をかけたら、肉塊は奥に引っ込んでくれる。指先で大陰唇を合わせれば、陰裂がぴっちり閉じた。
残された目の前の大樹は、役目を終えたように便器の中に吸い込まれていく。肉片ひとつ残さず、萎むように流れていく。変化した赤い水が、下水道の中に消えていった。
床に落ちたスカートと下着を拾い上げ、衣服の乱れや汚れを直していく。
「【清浄】」
下着からはぬちゃっとした感触があるが、気にしない。
最後にレバーを倒し、空っぽの便器を流しておく。
鍵を開け、個室の外に出て、扉を閉じる。
そして、隣の扉の前に立つ。
我がクランハウスの水洗式トイレは、一箇所ごとに、複数部屋が配置されている。
──隣の個室に、カギが掛かっている。
トイレの個室は防音加工されているけど、銀級の知覚能力なら、壁越しでも多少盗み聞きできる。
もちろん、金級冒険者であるアーサ・エレグベッドとて、壁を越えて気配を知覚できる。さっきから隣の個室で
あの肉塊は動きの激しさに反して、実は静かに動いていた。隣人の知覚能力からして、わたしの声と、粘液の湿った響き、水の音だけが聞こえたことだろう。それはつまり。
この扉の向こうには、
個室の中以外、周囲に人の気配はない。近寄ってくる人もいなさそうだ。
「【解錠】」
魔力を込めて呟けば、鍵からガチリと音が鳴る。扉の向こうから驚愕した気配を感じる。
それはそうだろう。あの無垢で善良な少女のアーサ・エレグベッドが自慰をしていて、しかもそれを盗み聞きさせた上で、さらに私的で犯罪的な魔法の使い方をするなど。
扉を開けて個室の中に体を滑らせる。カギをかけ、遮音魔法を張り、冷たい視線を目の前の人物に注ぐ。
剥き出しの股座には、左手に包まれた男性器が勃起していた。本人の感じる恐怖と困惑とは裏腹に、興奮と羞恥の極致にぴくぴくと震えている。
いやこれから脅すんだけど。
「トイレ、しなくていいの?」
「あっ……アーサさん、その……」
「びっくりしたよね。
「なぁっ……!? ど、どうしてそんなところまで……!」
ふむ。どうやらバレてないと思っていたらしい。ケルレンスくんごときが一を聞き取れるなら、わたしは百を知ることができるのだ。
彼は視線をあちこちに彷徨わせて、自分の膨れ上がった部分に目を止めると、ガバッ! と両手で覆い隠してしまった。俯いているけど、耳が真っ赤だから照れているのは丸わかりである。
「それで聞き耳立てて、わたしと一緒に、
「そっ……そんなっ……あ、アーサさんがっ」
「ん? 自慰って言ってもいいけど、君ぐらいの若い子ならこっちの言葉のほうがわかりやすいでしょ?」
「ちっちがっ……そんな気遣い、いらないです!」
顔を真っ赤に染め、ケルレンスくんが吠える。怒りと混乱に掻き回されて、必死な表情だ。
わたしはどうだろうか。頬をなぞる。
────口角をあげ、わたしは嗤っていた。
「それでわたしにバレているなんて考えがつかないくらい、必死にしこってたんだ。ねえ、どんなやり方してたの?」
「やめて……やめてください……」
「ねえ、気になるな。左手で握ってたよね? いつもそうなの?」
「勘弁してください……!! アーサさん、ぼ、ぼくは」
「そうだ。盗み聞きして、
「…………ごめんなさい……ゆ、ゆるしてください……!!」
「──じゃあ、答え合わせしてみようよ」
「……はっ???」
ポケットから取り出した、白い布きれを投げ渡す。ケルレンスくんのお腹と両手の隙間にぶつかって止まると、彼はびくりと怯えた。
「それ、わたしの生理用品ね」
ケルレンスくんはさらに怯えたようだったが、布切れを落とすことはなかった。
「明日の夜、わたしの部屋まで返しにきてね。じゃなきゃ、
「あ……」
彼が絶望したような表情を浮かべる。追い詰められ、逃げ場を失う、被捕食者の顔つきだ。
不思議と、ぞくり、わたしの胸が高鳴った。
遮音魔法を迷彩魔法へと切り替え、鍵を外して外に出る。
下半身丸出しのケルレンスくんは扉を開けられたことで身を竦ませていたが、ちゃんと誰もいないことを確認してからやってるので、安心して欲しい。
「誰にも知られず、ひとりで来て。ね……♡」
茫然とこちらを見つめる彼にそう言い残して、扉を閉じる。
やるべきことも、やりたいこともある。
ああ。明日が楽しみでしかたない。
歩を進めるわたしのふとともの上で、つう、と透明な液体が滴り、消えた。