ダンバインビルドファイターズ ―ナビ少女よ、つかめ!! オーラの光を!!― 作:星龜
3年前―。
フグカンパニーを開業してから、半年ほどが過ぎた。
今だ、入ってくる依頼は近距離輸送か、近距離輸送の護衛ばかりだった。
報酬も少なく、正直、依頼をこなしても、まったく儲けになっていなかった…。
それでも、社員たる海娘達は不平不満を言わず、黙々と依頼をこなしていった。
一応、フグカンパニーは海娘を5人を抱える、規模だけなら中規模クラスの海運会社なのだが、会社の知名度の低さは如何ともしがたく、大きな仕事は、なかなかまわってこない…。
もっとも、開業して半年ほどなんだから、会社の知名度が
低いのは当たり前なのだが…
しかし、会社の経営資金や海娘達への給料等を考えると、そろそろ、ここいらあたりで、それなりに儲けになる仕事の依頼がないと困る。
そんな時だった。
忘れもしない
あの依頼
がきたのは…。
◇
その日、僕は頭を抱えていた…。
近距離輸送の護衛の依頼を受けたのだが…
報酬よりも支出の方が多く、赤字になってしまった
のだ…。
さすがに、開業して半年で赤字はマズい…。
(くそっ…!!
他にもっとマシな依頼はないのか…!?)
と、僕はタブレットで、入っている依頼を見てみる。
すると…
「社長。
今の依頼、何?」
と言う、僕の左隣で一緒に依頼を見ていた千代。
「どれだ?」
と、画面を戻していく僕。
「あ、それ☆」
と言う千代。
「何だ…これ?」
と、その依頼を見て、首を傾げる僕。
ダンプラバトル
リノクニカップ開催
ダンプラバトルアリーナ【リノクニ】にて、ダンプラバトル大会【リノクニカップ】開催!!
優勝賞金は500000!!
数十年前に発見された、反粒子同士の結合によって生成され、プラスチックに反応して流体化する特性を有した、謎の粒子物質
プラフスキー粒子
その、プラフスキー粒子の特性を利用し、TVアニメ【機動戦士ガンダム】シリーズのプラモデル
ガンプラ
を使用した、対戦型ゲームバトル
ガンプラバトル
が、全世界に流行した―。
ダンプラバトルとは、ガンプラではなくTVアニメ【聖戦士ダンバイン】シリーズのプラモデル
ダンプラ
を使用した、対戦型ゲームバトルだ。
ようするに
ダンバインのプラモデルを使ったガンプラバトル
なわけだ…。
しかし解せない…。
なぜ、海運業である我が社に、こんな依頼が来るのか…?
どうせ、あらかた、この【リノクニカップ】とやらの宣伝のために、手当たり次第、メールを送信したのだろう。
「こんなの、僕達には関係無いよ…。」
と、僕はこの依頼を無視しようとしたが…
「えぇ〜★
やろうよ、ダンプラバトル☆」
と、ノリノリな千代。
「何だぁ?
千代…
お前、ダンプラバトルやったことあるのか?」
と訊くと
「無いよ☆」
と
笑顔で即答しやがる
千代…。
「じゃ、何で、そんなにノリノリなんだよ?」
と訊くと
「この前、動画で見たの☆」
と言う千代。
詳しく訊くと、動画検索していて、偶然、見つけてしまい、その迫力にハマったようなのだ。
「社長もダンプラバトルやるの?」
と千代に訊かれ
「いや。
ガンプラバトルの方は、昔やってたよ。」
と言う僕。
「えぇ〜★
ガンプラバトルなんて、つまらないよぉ〜★
社長もやろうよ、ダンプラバトルゥ〜★」
と、僕を揺する千代。
「何言ってんだよ?
ガンプラバトルもダンプラバトルも、使っているプラモが違うだけじゃないか。」
と僕が言ったら
「ぜんぜん違うよぉ〜★」
と言う千代。
これは、僕の推測にすぎないのだが、海洋生物の遺伝子を持つ海娘にとって、兵器然した
海娘達にガンプラバトルを嫌悪する者が多いのは、それが理由だと思う―。
僕も、かつてはガンプラバトルをしていたのだが…
大成しなかった…。
(しかし…。)
と、あらためて依頼…
いや、宣伝を見てみる…。
優勝賞金500000って…
どんな大会だよ?
しかし、もし、この【リノクニカップ】に出場し、優勝すれば、赤字はどうにか解消できる…。
もちろん
優勝すればの話
だが…。
しかし、優勝できなくても、出場することに、会社に何のデメリットも無い。
優勝賞金に目がくらんで、出場してみてもいいかもしれない…。
「よし…☆
みんなと相談してみよう…☆」
と僕が言うと
「うんっ☆」
と、千代は満面の笑みを浮かべた―。
【リノクニカップ】出場について、社員達に相談したが…
社員達の満場一致
で【リノクニカップ】出場が決まった…。
「私達がいれば、百人力だチョキ〜☆」
と言う、赤いショートヘアの社員は、アカガニの海娘・桃子。
「優勝して、賞金50万を手に入れましょう☆」
と言う、青いポニーテールの社員は、イソギンチャクの海娘・塚原 葵。
「私もがんばる…☆」
と言う、緑のツインテールの社員は、ドジョウボラの海娘・トート。
社員全員、やる気十分…
…なのは嬉しいのだが…
「みんな…
ダンプラバトル、やったことないでしょ?」
と僕が言うと、社員全員、声をそろえて
「「ありません☆」」
と答えやがった…。
さらに、ダンプラバトルの経験以前に、ここにはダンプラが無い。
厳密には、僕が昔買った、HG ビルバインがあるだけだ。
まぁ、これは
今から買いに行けば解決する問題
だ。
「ダンプラが無いんじゃ、話にならない。
買いに行こうか…☆」
…というわけで、僕が運転するワゴンに乗って、市街地にある家電量販店
ヂョーシン富士山シティ店
に、ダンプラを買いに行くのだった―。
◇
ヂョーシンに到着し、玩具売場に向かう―。
「あの…
社長…。」
と、僕に声をかける千代。
僕は
千代が何を訊こうとしているのか察した
ので
「千代…
その質問はNGだ★」
と、千代を制した。
「ゑっ!?」
と、僕に『その質問はNG』と言われて、驚く千代。
千代が僕に訊こうとしたのは
『どうして家電量販店で玩具を売っているの?』
だったに違いない。
しかし、実際は…
◆
[千代]
「社長…
購入費用だけど…
まさか
会社の経費
じゃないよね…?」
◆
…ということを、千代は訊こうとしていた…
…なんてことは、僕は知る由もなかった…。
◇
玩具売場に来ると、社員達はガンプラには目もくれず、ダンプラコーナーに向かう。
「けっこう、種類があるんだね…☆」
と驚く千代。
ガンプラに比べれば、はるかに種類は少ないが、しかし、旧キットとHGシリーズを合わせたら、全てのオーラバトラーがキット化されている。
「同じ物がありますが…?」
と、桜が2つのダンバインのプラモデルを僕に見せる。
「右手に持っている方は、昔発売された旧キット。
左手に持っている方は、リニューアルされたHGシリーズだ。」
と、桜に教える僕。
「何か違うのですか?」
と訊いてくる桜に
「リニューアルとはいっても、全くの別物だね。
あと、旧キットの方は、組み立てるのに接着剤がいるんだ。」
と、桜に教える僕。
「私は、コレにするチョキ〜☆」
と、桃子が持ってきたのは、旧キットのドラムロ。
「赤くて、カワイイチョキ〜☆」
と笑う桃子。
(カワイイ…のか…?)
と、首を傾げる僕…。
たしかに、見ようによっては、かわいく見えなくもないが…。
やはり、人間と海娘とは、若干、感性が異なるようだ…。
「私は、コレかな☆」
と、葵が選んだのは、HG ライネック。
「私はコレで…。」
と、トートが選んだのは、旧キットのボゾン。
「私はコレで…。」
と、桜が選んだのは、旧キットのゲド。
「私はコレ☆」
と、千代が選んだのは、HG ダンバイン。
あとは、塗料も買って、僕達はヂョーシンを後にした―。