※この作品はR-18です。

星に願いを   作:霧里

8 / 23
着せ替え ゆりかちゃん


【挿絵表示】



甘えん坊1

分かった事がある。

 

まず、一番心配だったのは、お母さん達にマロンをどう説明するかって所。

だったんだけど、別にどうにもならなかった。

 

驚くかと思えばそうでもなく。

やっぱり、私の頭がおかしくなったのかと思えばそれも違う。

 

ネコのカリカリは何処へやら。

翌朝、二人で恐る恐るリビングに降りていくと「おはよう、ゆりか、マロン」なんて朝の挨拶と一緒に、マロンの分まで私達と同じ朝食が用意されていた。

 

ちょっと怖い。

 

まだ夢だって疑う訳でもないんだけど、いつのまにか日常がすり替わってしまったみたいで、叶ってしまったお願い事に、ついていけない部分は大きかった。

 

それに、マロンのアレも、気づけば無くなっちゃってるし。

まぁ、マロンが人になっている事以上に不思議なことはないのだから、無いなら無いでも良いんだけど、アレだけの体験をした後だと、やっぱり、ちょっと、寂しいかなって思わなくもない。

 

そんな、大きな変化もそこそこに、数日が過ぎると、やっぱりなれてくるものだ。

他に変わった事といえば、ベットに座る機会が増えたくらい。

ネコの時は良かったんだけど、私が椅子に座っていると、マロンがつまらそうにするんだから仕方がない。

 

多分、彼女にとって、体が人になったことの一番の不便はそこだったんだろう。

 

ネコの時の感覚が抜けていないのか、隙を見せればすぐに引っ付こうとしてくるマロン。リビングでテレビを見ていた時なんか、そのまま私の膝の上に座ってくるもんだから、あんまりにも可愛くって思わず抱きしめてしまった。

 

「甘えんぼ」

 

そう言った瞬間に、頬を染めたマロンの顔が忘れられない。

それで意地を張ったのか、その日からしばらく、私に近づこうともしなかった。

 

「ケンカでもしたの?」

 

お母さんにまで言われるくらい、傍から見てもあからさまだったんだろう。

 

「マロン、おいで?」

「ふんっ…」

 

名前を呼んでもそっぽを向かれ。こっちから抱きつきにいっても逃げられる。

さては反抗期だな? とも思えば、だんだんと楽しくなってきて、逃げるマロンをこっちから追いかけ回してしまっていた。

 

「どっちが甘えん坊なんだよ…」

「あはっ。やっぱり気にしてんだ? この間からだったもんね? 私にくっついてこなくなったの?」

 

その内に観念したのか。ようやく逃げるのを止めたと思えば、今度は生意気にも悪態を付いてくる始末。

 

「ごめんね? マロン」

「なんで、ゆりかが謝るのさ…。逃げてたのはボクなのに」

「うん。だからごめんね? 私も、マロンとくっついてるの好きだから、逃げられるのはちょっと寂しい」

「…ゆりかの甘えんぼ」

「そうだよ?」

「なんだよ…そんなハッキリ。ボクの方がバカみたいじゃん…」

 

小さく息を吐いた後、マロンの体から力が抜けていく。

それで仲直り。いや、そもそもケンカですら無かっただろうけど。

それからはまた、いつものように。いや、いつも以上にか、マロンは私にくっついてくるようになっていた。

 

ー

 

「もうっ、マロンっ。なんで起こしてくれなかったのっ!!」

 

夏休みも終わり、学校が始まって、少し油断をしてしまった。

鳴らない目覚まし時計。起こしてくれないマロン。久しぶりの朝寝坊にドタバタとしながら、部屋の中をひっくり返す勢いで支度を済ませていく。

 

「起こしたよ。6時に一回。7時に一回。30分にもう一回…」

「まだ寝てたでしょっ。ちゃんと起こしてよっ!」

「はぁ…」

 

真っ当な抗議のはずなのに、何故かマロンには盛大な溜息を吐かれてしまった。

言いたい事はある。けれど、そんな余裕は全然なかった。学校まで走って、間に合うかどうかの瀬戸際だ。

 

「お母さんもっ、なんで起こしてくれなかったのっ!」

 

挨拶もそこそこに、リビングに駆け込んだ私は お母さんにまで不満の声を上げる。

 

「起こしてたでしょ? マロンが」

「だーかーらーっ! あぁっ、もういいっ。行ってきますっ」

「パンくらい齧ってきなさい」

「はーいっ!」

 

言いたいことが伝わらない。

起こしたって言うなら、ちゃんと私が起きるまでやって欲しい。

 

そんな もやもやを動力源に変えて、つま先に靴を引っ掛けたまま、ゆりかは玄関を飛び出した。

 

ー

 

「行ってらっしゃい、ゆりか」

「とっ、行ってきますっ、マロン」

 

玄関を飛び出したゆりかは、マロンの声に足を止めると、振り返って笑顔を見せた。つま先で靴を叩いて、なんとか足を収めると、駆け出した背中はすぐに曲がり角の向こうに消えていってしまう。

 

「マロンも毎朝大変ね?」

「ん。まぁ、いつものことだし…。ほんと、寝坊助は治らないよね」

「ご飯。一緒に食べたかったなら、もうちょっと早くおこしてあげないと?」

「別に…そんなんじゃないし」

「温め直そうか?」

 

慌てるゆりかを見送った後、困った顔をした母親に声を掛けられた。

そこに嫌味はない。むしろ、親心さえ滲ませていて、その心情には察するものがある。

 

「いいよ、手間でしょ…。その、いつもありがと」

「なに、急に?」

 

リビングに戻る途中。すれ違いざま呟いたボクの言葉に、きょとんとした視線が返ってくる。

 

意味なんかない。

 

ただ、言える時に言っとこうかと思っただけだ。

唐突に始まったこの生活が、唐突に終わることを思えば心残りは少ない方がいい。

 

別にって、そんな一言も返さないまま、返事の代わりに首輪の鈴を鳴らしたマロンは、そのまま柔らかい何かに包まれていた。

 

「ちょっ!? なにっ、離してよっ!」

「こっちこそ。ゆりかの事、いつもありがとうね」

 

ぎゅっと、母親に抱きしめられる。

 

単純な体格差か。逃げ出そうにも力は強く、中々に振り払えない。

ジタバタと藻掻いては見ても、ネコだった時みたいに器用にはいかず、されるがまま頭を撫で回されてしまう。

 

「逃げないの。たまにはお母さんとも仲良くしてくれても良いじゃない?」

「仲良く…って、バカじゃないの…」

「なに? お母さん、変なこと言った?」

 

ゆりかが変な言い方をするものだから、他意のない言葉が、別の意味も聞こえてしまい、頬が熱くなってしまう。

 

「何でも無いっ。いいから離してって、子供じゃないんだからっ!」

「お母さんにとっては、マロンも子供みたいなものなんだけどなぁ?」

「ふかーっ!!」

「あははっ。はいはい、怒らない怒らない。ご飯でしょ? ちゃんと温め直すから、ちょっとまってて」

「むぅぅ…」

 

なんか、手玉に取られたみたいで悔しい。

ボクが怒って見せたくらいじゃ気にもとめず。だからって、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる母親のことを、嫌いになれる訳もなかった。

 

それから二人で、ゆっくりと朝ごはんを食べた後。

ネコの手も借りたいという母親に付き合う形で、家事を手伝っていた。

 

朝ごはんの片付けをして、部屋の掃除。洗濯機から服を引っ張り出して、庭に干す。それも一段落すれば、昼食の準備と…。こうして見れば、人の一日も中々に忙しない。

 

「それじゃ、お母さん出かけてくるけど、マロンもくる?」

「ボクはいいよ。留守番してるから、行ってらっしゃい」

「ええー。たまには お母さんともデートしてよ?」

「何がデートだよ。年甲斐も無いんだから」

「やだ、マロンったら。ゆりかと同い年に見えるとか、流石に恥ずかしいわ」

「え、いや、いってな…わっ、ぷっ」

 

ゆりかに輪をかけたくらいに、普段は優しい母親なんだけど。

ボクや ゆりかが やんちゃをすると、いつにも増して優しくなる。

 

怒ってるようにはまるで見えないのに、それがどうにも恐ろしい。

 

ネコ可愛がりって言葉通りに、抱きしめられて、撫で回されて。

ネコだった時にでさえ、逃げ出したくなる程の圧力だったのに、人の身で受けとめるには、あまりに重たい愛情表現だ。

 

「ごめんなさい」と、言った所でもう遅い。

「怒ってなんか無いんだけどな?」って、謝ることすら許してもらえず。

母親が満足するまで、ボクは可愛がられ続けることしか出来なかった。

 

仕方がない。

 

こんな、突然人の体を貰ったからって、ボクは飼い猫の身分だし。

学校にいって、勉強をして、すくすく育つのが、ゆりかの役目であるように。

ボクも家族に可愛がられるのが役目みたいな所はある。

 

デート。たまには付き合ったほうが良いのかな…。

 

浮気を心配した所で意味はないんだろうけど。

ちょっとだけ、ゆりかにヤキモチを焼いて欲しいような気になる自分もいた。

 

ー

 

「はぁ…退屈」

 

ネコの時はどうしてたっけ?

 

日がな一日。日向ぼっこして、お昼寝して。ゆりかが帰ってくるまでは、ほとんど寝てるようなものだった。

 

母親を見送った後。ゆりかの部屋に戻ったマロンは、ベットに体を預けてゴロゴロと転がっていた。

 

ネコの時と比べて一日が長くなったような気がする。

 

退屈しのぎに部屋の絵本を漁ってみても、一体何が面白いのか分からない。

気になる所と言えば、やたらに過激なシーンが多いなって印象で、もしやそれ目的なのでは? と、ゆりかの将来がちょっと不安になる。

あんまり度が過ぎるようなら、母親にも相談したほうが良いのかも知れない。

 

「はぁ…ゆりか、まだかなぁ」

 

盗み見た時計はまだまだ昼下がり。

ゆりかが帰ってくるまで、もう2・3時間は待たされそうで、それも、まっすぐに帰ってきてくれればだ。友達と何処かに立ち寄ってたり、お喋りに花を咲かせていたりした日には、もっと遅くなるんだろう。

 

「デート行けばよかったな…」

 

今更ながらにちょっと後悔だ。

 

人の体になって、考えられることが増えた分だけ、余計な時間を持て余す事も増えてきた。ゴロゴロしてれば一日が終わっていたんだから、ネコの時の気楽さが少し恋しくなる。

 

「まぁ…良いや」

 

寝よう。そう決めた。

変に起きてるから余計な事を考えるんであって、ネコ特有の寝付きの良さは、今のボクにだって残っていた。

 

布団を被り、ベットの上で丸くなって、そしたらほら…。

 

寝れる訳がない。

 

だって、布団から ゆりかの匂いがする。

二人では手狭なベットも、一人で寝るには広すぎた。

 

寂しい。

 

一度感じた寂寥感は、すぐにボクの胸を埋め尽くし、ベットのシーツを握りしめてしまう。

 

「ゆりか。はぁ、んっ、ぁ…」

 

胸がドキドキした。

 

股間がムズムズとしてくる。

 

ずっと我慢してたけど。一人になるとやっぱりダメだ。

ゆりかの事を考えてる内に、だんだん収まりがつかなくなってくると、こうやって、また、大きくなってきて。

 

普段どうなってるか分かんないくせに、エッチな事考えると、急に出てきてさ。

 

頼めば、受け入れてくれるかな?

 

嫌がられたりしないかな?

 

エッチなことばっかり考えてるって、そんな風に思われたくはない。

でも、ゆりかと一緒になりたいと思う気持ちは、日に日に強くなっていくばかり。このままじゃ、頭がどうにかなってしまいそうで、溢れる気持ちのまま彼女を押し倒さないとも限らない。

 

「やだよ…そんなの」

 

腹の底に溜まった獣欲が吠える。

それを、そのまま開放するのは、きっと気持ちがいいのも分かる。

 

怒られはしないんだろう。嫌われるのだって多分ない。

 

ボクの事をちゃんと好きって言ってくれたんだから、ボクだってちゃんとしなくちゃいけないのに。どうしてこんなに、ゆりかに甘えてしまいたくなるのか。

 

「くっ…あ、ぅぁ…」

 

こんなのが、あるからダメなのか?

そもそも、人になったのが間違いなのか?

 

股間に膨らんだ違和感に触れただけで、ビリっとした甘い快感が伝ってくる。

 

だとしても、だからって。

 

今更、元に戻してくれなんて願えなかった。

ふって湧いた幸運を、捨てられる勇気がボクにはない。

 

ゆりかのことを疑ってるんじゃないんだ。

純粋に女の子の体になったって、ネコの体に戻ったって、今まで通りちゃんと愛してくれるのは分かってる。

 

けど、だけど…。

 

「ゆりか…ゆりかぁ…っ」

 

泣きそうだった。

 

涙が溢れてくるくらいに気持ちがいい。

 

ゆりかの事を考えるほどに、ボクの男の子の部分は大きくなっていって、もう完全に、あの夜と、初めて ゆりかと一緒になった日と変わらないくらいに膨らんでいた。

 

「んはっ…はぁっ、あ、ぃぅっ。ゆりか、ぁぁ…もっと、もっと…ボクに」

 

思い出すだけでも達してしまいそうだ。

 

ボクに触れてくれた指先の柔らかさ。その温もりと、熱っぽく名前を呼んでくれる声は、今でも鮮明に思い出せる。

 

もっと、もっと、触って欲しかった。

慣れないながらも一生懸命に、ボクを気持ちよくしようとしてくれて、その気持ちが嬉しくないわけがない。

 

それがどんなに拙くても、ボクにとっては…。

 

「ごめん、ごめんね…ゆりか、ボク…あ、はぁ…んぁっ…ぁぁっ」

 

気持いい。気持ちがいい。

 

けど、猛烈に虚しくもあった。

ゆりかの匂いのするベットに体を擦りつけながら、膨らんだ自分のモノを慰める。

それは、とても気持ちが良い。だけど、想像の中ででも ゆりかを勝手に使ったみたいで後ろめたかった。

 

こんな事考えちゃダメなのに、指が止められない。

 

すぐに止めないといけないのに、今止めてしまったら、次にゆりかを見た自分が何をするかわからない。

 

押し倒して、服を脱がして、それから…。

 

快感の熱が一段と上がった。

 

裸のゆりかを押し倒す。そんな光景に目眩がする。

 

「ゆりかっ、んぁっ! ボク…ごめんっ、ごめんねっ…思うだけだから、考えるだけだから、こんな、ボクのこと…許して、んぁっ…」

 

想像が止められない。

 

自分を慰めていた手の動きが激しくなる。

 

頭の中では、幾らも強引に、ゆりかの事を犯していた。

それなのに、彼女は、大丈夫だよって、マロンの好きにしていいよって。

噛みつかれて、爪の跡が付いて、絶対痛いはずなのに。

 

お尻を抱え、ベットの上に ゆりかを押さえつける。

押さえつけた彼女の体に、破裂寸前になったボクのモノを叩きつけると、ゆりかは大きな声を上げて体を震わせた。

 

シーツを手繰り寄せ、枕にしがみつき。

繰り返し、繰り返し、自分の体を襲う衝撃に耐え続ける。

もう何度止めようかって、こんな乱暴にしちゃいけないって思うほどに、ボクは興奮を抑えきれなくなっていく。

 

だって、そんな、涙と悲鳴で顔をグチャグチャにしながらさ。

振り返って、ボクに言うんだ「好きだよ、マロン」って。

 

「ボクもっ、すきっ、すきだっ! ゆりかっ、ゆりかぁぁ…っ」

 

後少し、もう少し。お腹の奥底で煮えたぎった精液を、射精しそうになるその寸前。

 

ガチャリと、部屋の扉が開いてしまった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。