「健一くんって、本当にダメな男の子ですね♡ もうこんなにカタクしちゃって」
ふふっと微笑みながら、平塚美咲は僕の熱くなったものに人差し指を当ててきた。ちょんちょんと、彼女の指先が当たるだけで、僕の留まることを知らない部位はビクンビクンと反応してしまうのだ。
「へぇー健一くんってパンツ越しに少し触られただけで……興奮してるんですか。変態さんですね、本当にイケナイ人です」
嘲笑うように言って、平塚美咲は僕の陰部を弄るペースを早めてくる。握られたわけでもなく、ただ白い指先が当たるだけで、僕はもう我慢できそうにない。
「ひ、平塚……頼む……も、もうやめてくれ……」
「ふうぅーん。もうイキそうなんですか。イってもいいですよ?」
堪らず、僕は射精してしまった。パンツには染みができていた。
「いっぱい出たね、ふふ。本当に元気いっぱいで頼もしいですね」
布切れの繊維を超えて飛び出た白濁液を眺めて、平塚美咲は目元を緩ませた。
「健一くん……もっと楽しいことしたいですか?」
「……し、したいぃ……」
「聞こえないです。もっと大きな声で言ってください」
子供を叱る母親の如く、平塚美咲は強い口調で言ってきた。
「し、したいっ! ぼ、僕はもっとしたいっ!」
僕の返答を聞き終え、平塚美咲は口元を隠してクスッと微笑んできた。幼稚園児の可愛い言い間違いを優しく聞き取る保育士のような面持ちを持って。
「かしこまりました。健一くん、そう言ってくれると思っていました」
でも……と少しだけ神妙な声で、
「あたしのこと……
僕は首を縦に振ると、平塚美咲は「早く、名前を……」と詰め寄り責め立ててきた。借金取りよりも強引なやり口に、僕は思わず笑みを漏らしながら。
「み、美咲……」と、彼女の名前を呼んであげる。
たったそれだけにもかかわらず、平塚美咲は顔を真っ赤に染め、両手をほおに当てて、目元をうっとりとさせた。
「も、もう一回……お、お願い……も、もう一回だけ……」
クレーンゲームで景品が取れなかった客が何度も挑戦するように、平塚美咲は僕に名前を呼べと欲しがってきた。
狂ったように言わせられ、僕の喉が枯れるかと思ったよ。
「あ、あのさ……ひ、平塚……お、お前……何やってんだぁ?」
「平塚ではありません。美咲と呼んでください、分からず屋の健一くんには教えてあげませんっ!?」
名前を呼ばれなかったことに対して、平塚美咲はご機嫌斜め。ほおをぷくっと膨らませて「もう、健一くんという人は、困った人です」などと言いながらも、僕のパンツへと顔を近づけて、布切れに残った残滓を舐める。
少しだけ吸引力が上がった気がするけど……もしかして怒ってるのか?
「ごめん、み、美咲……」
「……へっ、変態ではありませんっ……ぐぼっ……んちゅ……悪いのはあ、あたしではありませんんううっ……全部、全部……わ、悪いのは……け、健一くんですっ」
「と言いながら、美咲は僕の性器に夢中じゃないか?」
「健一くんが悪いんですっ……け、健一くんが……んっちゅ、んちゅ……んもぉ……ん、健一くんがこんな立派なものを隠し持ってるから……」
平塚美咲は、僕の白濁液を無駄にしてはいけないと思っているらしい。もったいない精神を持つのは重要だと思うが……これではただの痴女だ。
それからも平塚美咲の猛攻は止まらなかった。パンツ越しでは物足りないと思ったのか、僕の陰部を直接口に咥えて奉仕の限りを尽くした。小さなベロを器用に使い、玉や裏筋までもを舐めあげる。普段触れる機会がない場所なので刺激を与えられるだけで、僕の脳は蕩けそうになってしまいそうだ。
「美咲……そ、その舐めるだけじゃなくて……そ、そろそろ……」
「健一くんは欲しがりな方なんですね。あたしにメロメロになって可愛いです」
「お前が悪いんだ。お前が僕を誘惑するから」
「そうです。悪いのは全てあたしです。あたしは悪い女の子ですから」
じゅっぼぉ、と卑猥な音が響き、やっと僕は快楽から解放された。
唾液の糸を垂らす平塚美咲は
「何度イってもまだ勃つんですね。どれだけ健一くんは欲求不満なんですか」
「それはお互い様だろ……み、美咲だってもう濡れているじゃないか?」
「あ、当たり前です……す、好きな殿方と一緒にいるだけで……何回イったと思ううんですか? 身体を擦り合わせるだけでも、もう……あ、あたしは」
「何回イッたんだ? 正直に言ってみろ」
「……ご、強引な人です……ご、五回……です」
「嘘をつくなよ。もう十回近くはイってるだろ?」
図星を突かれて恥ずかしかったのだろうか、平塚美咲は顔を背けながら。
「十四回です……け、健一くん……」
「やっぱりただのど変態だな、美咲って」
不満顔になった平塚美咲は僕の上へと馬乗りになり腰を振ってきた。ダンス経験者のようにリズミカルな腰振りは、僕の性欲を最高潮にさせてしまう。
「美咲……た、頼む……い、入れてくれ……」
僕は頼み込むのだが、平塚美咲は腰振りを止める気配はない。
「これはお仕置きです。入れてあげません」
お仕置きという割には、自分の方が気持ち良さそうに喘いでる気が。
「ど、どうして、って表情をしてるね。健一くん」
僕の唇へと、平塚美咲は初雪のような指を向けて、
「だって、現在の健一くんには彼女さんがいるでしょ? それにあたしを一度振った経験があるんだよ? だからね、だーめぇ」
不満顔を示す僕を一瞥し、平塚美咲はニコッと微笑んできた。
まるで、悪徳業者が新たな信者を取り入れる際に用いる笑みだ。
「でも、どうしてもヤりたいと言うなら、一つだけ約束を守ってくれれば」
平塚美咲が提示した条件とは——。
「愛梨さんに電話を掛けて、今すぐに別れを告げてください」
「そ、そんなので、できるはずが——」
平塚美咲は僕の顔へと両手を当て、ジィーッと僕の瞳を見据えたまま。
「健一くん、あなたは正直になるべきです。考えてください。
「ぼ、僕はあ、愛梨のことが……」
「本当に好きなんですか? 健一くん、あの人はもう変わりましたよ。あなたを束縛して、あなたを自分のものにしたいだけです。正直、面倒で重たい女です。健一くんの幸せを第一に考えていない。自分の幸せを、健一くんの幸せだと勘違いしているただの愚か者です。二人で生きていこうと考えていませんっ!!」
でも、あたしなら……あたしなら……平塚美咲は確信に満ちた瞳で。
「あたしなら、もっと健一くんを幸せにすることができます。二人の幸せを一緒に考えていける。あなたに一生尽くして、あなたを幸せにしてあげられる。もう何も考えなくていい。あなたはもうあの人に苦しまされることはありません。あたしは決して重たい人間ではありません。ただ、無常の愛情を持って、あなたに尽くします」
甘くて蕩けそうな香りが漂ってきた。僕を惑わす耽美な甘い香りが。
***
「流石は健一くんです。賢明な判断をありがとうございます」
平塚美咲はショーツをズラして、甘い液を垂らす桜色の割れ目を見せた。淫らな蜜が溢れ出ており、彼女自身も欲しがっているのが伝わってくる。
「それでは健一くん。愛梨さんに電話をお願いします」
指示の通りに僕は連絡を入れた。流石は愛梨だ。
僕が電話を掛けた瞬間に、すぐに出てきてくれた。
「愛梨……実は話があるんだ」
こうして、僕は決定的な言葉を投げかける。
「もう僕たちは別れよう。実は——」
電話口に聞こえるのは、愛梨の激昂。
何を言っているのか、全く聞き取れなかった。
愛梨の怒りが治るのを待とう。
そう思っていたのに、平塚美咲が僕の手からスマホを奪い取った。
「愛梨さん……いいえ。元カノさん。健一くんはもうあたしのものです」
その言葉と同時に——じゅぼぉぼぉじゅぼぉぼぉ。
それでも、平塚美咲は動きを止めるはずがない。
「んんぅ……いいですよ、いいですよ、健一くん……もっともっと気持ちよくなってください。あたしの中にいっぱいいっぱい子種を出してくださいね。あたしが孕むまで、もう何度もドピュドピュって射精しちゃってください」
『ねぇーど、どういうこと……? ねぇー、どどど、どういうことぉ?』
スピーカーモードになっていたのか、愛梨の声が聞こえてきた。
「面倒臭い人ですねー。百聞は一見に如かずと言いますので、いいでしょう。もう西田健一はあなたのものではないことを、あたしが教えてあげます」
平塚美咲が手に持ったスマホの画面に映るのは、泣き崩れる愛梨と、淫らに快楽に落ちた僕の姿。平塚美咲は僕が犯されている姿を愛梨に見せつけてやりたいと思っているのだろう。
『西田くん……西田くん……ど、どうして……あ、ありえないありえないぃ!』
「まだ分からないんですか? 愛梨さん、あなたの独り善がりな愛に、健一くんはもう愛想を尽かしてしまったんですよ。もう重たい女は面倒だと、健一くんは言ってくれましたよ。ふっふふ、もうあなたの負けです」
声にならない奇声が聞こえ、平塚美咲は不機嫌顔になったものの、すぐに笑みを浮かべてくれた。何か悪巧みを思い付いたというような悪意に満ちたものだ。
平塚美咲は豪快に腰を上下左右に振ってきた。肉壺内にあるヒダが僕の膨張した部分を覆い尽くすようにへばりついてくる。まるでもう二度と離さないと主張しているようだ。手慣れた激しい動きは、僕を何度も絶頂へと連れていくのだ。
「健一くん、あたしは、
「……あ、甘くて……と、蕩けそうで……も、もうぉ……ううぅんん!!」
『西田くん西田くん西田くん西田くん西田くん西田くん……そうだ、西田くんは洗脳されているんだ。雌豚さんに洗脳されているんだ。こ、こんなのありえない。こんなのありえない。こんなのありえない。こんなの絶対にありえない』
「と、重たくて面倒な元カノさんは言っていますが、健一くんご感想は?」
「美咲……好きだ。好きだ。欲しい。もっと……もっと、甘くて蕩けそうな」
『ありえないありえない。こんなの嘘だよ。こんなの絶対に嘘だよぉ……』
「うるさいですね。あたしたちの愛の邪魔ですね。部外者さんはもう、さようならです」
平塚美咲は電話を終わらせて、そのままスマホをベッドの端に置いた。
そして僕の頭を優しく撫でて、恍惚な表情のままに唇を重ねてきた。
「愛しています。平塚美咲は西田健一くんを心の底から愛しています」
***
何時間も愛を確かめ合った僕と平塚美咲は裸のままベッドに横になって。
「美咲って、教室でヤッたとき血出たっけ?」
「うっ!? そ、……その話はしないでください。あ、あたしにとって、一番の不覚なんです。だ、だから……」
「お前誰かとヤッたことあるのかよ?」
平然な態度を示す平塚美咲の姿はどこにもない。耳まで顔を真っ赤にして、たどたどしい口調で、目を僕から背けながら、彼女は言った。
「……け、健一くんのことを思って……一人で耽っていたら……そ、その……じ、自分で……自分の大切な膜をや、破ってしまいました……ご、ごめんなさい、健一くんに初めてをあげようと決意してたのに……そ、それなのに……あ、あたしは……あ、あたし……本当にダメな女の子なんです。ご、ごめんなさい……」
途中から涙を交えて、本気で謝られてしまった。
「別にいいよ。謝ることじゃねぇーだろ?」
「で、でも……あ、あたしの、は、初めてを……」
もう何も言わずに、僕は平塚美咲を強く抱きしめた。
「ど……ど、どうしてですか?
「美咲の気持ちが伝わってきたから。初めて美咲とヤッたとき、甘くて蕩けるような快感があったんだ。もう一生忘れることができないような……で、でも……愛梨のときには、そ、その快感がなかった」
一度言葉を区切って、僕は彼女の肩を握って再度言い直す。
「美咲……僕は美咲が大好きだ。もう絶対に離さない」
「ありがとうございます、健一くん。あたしも絶対にあなたを離しません」
お互いの愛を確かめるように、僕たちは唇を合わせた。
ぷっくらとした柔らかな感触。そして、甘くて蕩けそうな味がした。
平塚美咲は心を完全に奪われたような瞳で、僕をギュッと抱きしめて。
「あたしが一生幸せにしてあげます。あたしがあなたを愛してあげます。あたしが誰よりも、あなたが好きだと言うことを。あなたのことを愛していることを。あたしがこれからの時間を通して、あたしの愛を証明していきます」
だから、と言葉を区切って、僕の彼女は耳元にそっと囁いた。
「これからよろしくお願いしますね。健一くん、ううん、旦那様」
(完)