※この作品はR-18です。

天雨アコ「こんなイヤらしい社長が支配する会社に、私はぜったい屈しません!」→なお   作:a-su

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【前回のあらすじ】

 五月一日、メーデー。声を奪われたはずの天雨アコは、イエローランクの社員四十人を率いて労働組合デモを決行した。「オナニーさせろ」「イかせてくれ」——下世話な叫びの裏に隠された、洗脳システムへの反逆。手旗ひとつで群衆を操るアコの力に、社長は笑い、「鏡の中の自分」の言葉に耳を傾けようとする。
 しかしアスナが社長の耳を塞ぎ、唇を奪い、思考を溶かしていく。

「ね、アコちゃんのこと、ご主人様のものにしちゃおうよ。機械なんかにお任せじゃなくて、ご主人様のかっこいーおちんちんでね、体に分からせてあげよ?」

 甘い囁きとともに、アスナはある「約束」を持ち出した。アコに謝罪させれば、自分をスカイブルーに昇格させてほしい、と。社長の前にしゃがみ込んだアスナの瞳は、五月の空よりも澄んでいた。


後編

「ねえねえねえ、ご主人様っ♡ ここ、大変なことになってるよ?」

 

 細くて長い指が、ズボンの膨らみをつついた。

 

「ぶひひっ、アスナちゃんのキスが上手すぎるんだよぉ~。舌がにゅるにゅるで」

「にゅるにゅるされて勃起しちゃった?」

「うん、ビンビン」

「も~、可愛い♡」

 

 ピアニストのような指がちょこ、ちょこ、と、好奇心いっぱいの動きをする。大型犬が新しいおもちゃを見つけたときのよう探りかただ。

 

「んふ~♡ ならココも、にゅるにゅるしたげる♡」

 

 アスナがその場にしゃがみ込んだ。メイド服のミニスカートがふわりとめくれ、白い太ももが午後の陽光に照らされる。

 見上げてくる瞳は、五月の空よりも澄んだブルーだった。

 

 ──周囲で、女性社員たちが足を止める。通路を歩いていて立ち止まる者。壁際に寄って視線を送る者。みな美女だ。『採用試験』をくぐり抜け、男の邪悪な手を逃れ、このユートピアで美を磨き快楽に耽溺する幸せを保証された若く美しい女性社員たち。

 

「ぶひっ」

 

 社長は鼻を鳴らした。ここでは隠す必要などない。むしろ見せつけることが、彼女たちのためなのだ。

 アスナに場所を譲ったカリン、アカネ、トキも固唾を飲んで見守る。衆人環視の中での奉仕などユートピアでは珍しくもないが、初々しい彼女たちには刺激が強いのだろう。

 

 それにアスナの存在感は特別だ。この一ヶ月で最も社長に奉仕をした名誉ある社員に、四方から羨望の眼差しが注がれている。

 

「わあっ♡ ねえねえ、パンパンに膨らんでるよ? おっきーい♡」

 

 アスナは頬をむぎゅっと膨らみに押し付けて、目を細める。ズボンの布越しに形を確かめるように、スリスリとほっぺたをこすりつけてくる。

 

「んー、えいえいっ、んふっ、ふふふっ。これだけでご主人様の形、思い出しちゃう♡」

「おっほ、ホカホカでたまらん……!」

 

 だが、それだけでは言い足りない。アスナの頬から立ち上る人肌の熱がズボンの繊維を一本一本くぐり抜けて、勃起した肉棒に染み込んでくる。

 布地が何かを吸って、じわりと湿り始める。それがアスナの頬の湿りけなのか、自分の先走りなのか分からない。

 

 頬骨の硬さが、布越しに竿を押す。ほっぺの肉が、ぷにりと凹む。押し返してくる弾力。

 そして、唇の近くで小さく動く呼吸。吐息がズボンを温め、吸気が布を引っ張る。生きている。この布の向こうに、生きた女の子の顔がある。

 

「ちゅっ……♡」

 

 桜色の唇が布地に触れ、沈む。

 唇の外縁が最初にくっつき、次に中央の柔らかい部分が布地を包む。へこんだ肉が、ペニスの形を記憶するように変形していく。

 

 離れるとき、唇はゆっくりと元の形を取り戻す。しかし完全には戻らない。ほんの少しだけペニスの形を覚えたまま、名残惜しそうに離れていく。

 その桜色が、何度も何度も布地に落ちる。

 

 ちゅっ……ちゅっ……♡

 ちゅっ……ちゅっ……♡

 

「ご主人様のおちんちんが住んでるテント……こんにちは、ちゅっ♡ いるでしょ、ちゅっ♡ ねえってばぁ、ちゅっ♡」

 

 ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅっ♡

 社長の喉がごくりと鳴った。ズボンの前が、さらに窮屈になっていく。

 金の光を帯びる髪へと手を伸ばす。さらさらと指の間を流れる感触を確かめつつ、頭頂部から後頭部へ、ゆっくりと撫でていく。

 

「んー……♡ もっとぉ……♡」

 

 アスナが目を細めた。嬉しそうに頬を緩めて、頭を社長の手に押し付けてくる。「もっと撫でて♡」と、尻尾を振る大型犬みたいに髪を揺らす。

 

「ごしゅじんさまー…………♡」

 

 アスナは唇をベルトに近づけていく。鼻にかかった、湿った声には吐息が混じっている。いやむしろ吐息に声が乗っている。その振動が鼓膜を震わせて、社長の背筋をぞわりと粟立たせた。

 

「あむっ」

 

 歯でバックルを噛む。舌で金具を弄りながら器用に外していく。社長を見上げたまま、目線を離さない。

 

 カチャリ。

 

 次は、チャックだ。歯でつまみを咥え、ゆっくりと引き下げていく。上目づかいで社長を見つめながら、見ててと言わんばかりの勿体ぶったスローな動作で、アスナは顔を下ろしていく。

 

 じぃー……。

 

 トランクスの膨らみが少しずつ露出していく。

 

「ん……開いたよ♡」

 

 綿の生地の上に、先走りで濡れた染みが見えた。

 

「あっ、濡れてる♡ ご主人様、すっごく我慢してたでしょ? もぉ、正直に言ってくれないと分かんないじゃん♡」

 

 アスナはトランクスの膨らみに顔を近づけ、 布に鼻先を押し当てる。

 

「んー……すーっ……はーっ……すーっ……はぁ♡ ご主人様の匂い……♡」

 

 鼻を押し付け深く吸い込むアスナの瞳孔が、僅かに開く。鼻腔から入ったにおい分子が、嗅神経を伝って脳の奥……本能を司る場所に到達し、性衝動に関わるホルモンを分泌させている。

 

「んー……♡ ここ、あったかくて……匂いが濃い……布の中で、ずっとご主人様の匂いが育ってたんだね……アスナ、この匂い……癖になってて……」

 

 ちゅぅ……♡

 桜色の唇が押し付けられた。アスナは亀頭の位置を布越しに探し、見つけると「ん♡」と微笑み、そっと唇を押し当てる。

 

「ここ……皮がかぶってるところ? やわらかい」

 

 苺色の舌をちろりと覗かせて、布地を軽く舐める。カリのふちを唇でなぞり、包皮に覆われた亀頭の形を布越しに確認する。

 

「れろれろ、ちゅっ……ご主人様のおちんちん、おはよう……♡ あ、濡れてきちゃった……へろへろ……私のよだれで……早く直接、ご挨拶したいな……」

 

 アスナの指が、下着のゴムにかかった。指の腹がゴムに触れた瞬間、熱が腰骨に伝わる。爪の先がほんの少し肌を引っかくのは、「今から脱がす」という予告だろう。細くてしなやかな指の指先が、ゆっくりと布地を引き下げていく。

 

 びぃん。

 

 下着から解放されたペニスが跳ね、アスナの頬に「ぺちん」と当たる。

 

「きゃっ♡ 元気いっぱいだね。私に会いたかったんだ……♡ ご主人様のおちんちんさん、久しぶりっ♡」

 

 アスナは友人に挨拶するかのような口調でペニスに呼びかける。

 

「大げさだなぁ、ゆうべも見たじゃないか」

「だってぇ……毎日、いつでも見てたいんだもん♡ んー、すーっ…………♡」

 

 アスナはすっと通った鼻を、勃起したものの根元に近づけた。臭い物質を深く、長く吸い込んで、恍惚とした表情を浮かべる。

 やがて、アスナは包皮のすき間に鼻先を近づけた。

 

「んー、くさっ♡ これ、他の女の子の匂い?」

「ぶひひっ」

「特にここ、すんすん……皮の中、すごい匂い……♡他の子の匂いと、ご主人様のにおいが混ざって……」

 

 アスナは匂いを嗅ぎながら、メイドスカートの中で太ももをこすり合わせる。

 

「でも私、この匂いが一番好き……ご主人様だけの匂い……♡」

 

 びくん。ペニスが震える。男の醜さが詰まった最も汚い部位を、「一番好き♡」とアスナは言ってくれて、しかも性的に興奮している。

 

「ふふっ。恥ずかしがり屋さんなんだね、ご主人様のおちんちん」

 

 指の腹が、竿をつつー……と撫でた。指紋の渦が、仮性包茎の皮膚を一本一本撫でていく。アスナの体温が表皮から海綿体へ、じわりと染み込む。

 

「皮のお布団から、出てきたくないのかな……?」

 

 社長の腰がびくりと震えた。

 

「あー……ごめんね、なんか、普通のチンポで」

「普通じゃないよ……すっごい色♡」

 

 そうかもしれない。何百人もの淫水を吸った表面はどす黒い。サイズも並み程度だが、アスナのきゅっと整った小顔の前では十分な存在感だ。手の平で包めそうな顔のメイドさんを見て、黒ずんだ皮かむりのペニスがぴくぴく跳ねる。

 

「ご主人様って、いーっぱい頑張ってきたんだよね。この黒いおちんちんって、勲章だよ。女の子いーっぱい幸せにしてきた証拠♡ ご主人様の『男』の色♡」

 

 指先が、竿の根元から先端までをゆっくりとなぞった。どす黒い肌の上を、白い指が滑っていく。

 

「この黒いおちんちんを、私がね、もーっとぉ……」

 

 苺色の舌がだらりと出て、唇を舐めた。その唇がペニスに近づく。

 

「黒く、してあげる……♡」

 

 包皮に触れた。

 

「ちゅっ……♡」

 

 桜色の唇が、黒ずんだ皮に吸い付く。

 

「ちゅう……♡」

 

 弾力ある肉ひだが包皮に吸い付く。吸い付いて沈み、離れようとする──いや、離さない。唇で包皮を軽く噛んで、もっと吸い付いてきた。

 

「むっちゅぅ~………………♡♡♡」

 

 唇の内側の粘膜を包皮のシワに入り込ませ、濡れた肉と濡れた肉とを絡みつけ、弄んでいる。

 

「…………ちゅぱっ♡ あは、この皮、かわいいっ♡」

 

 やっと離れた唇から舌先が伸び、ちろ♡ ちろ♡ と小さな動きで包皮をつついた。苺のようなピンク色の舌先が、尖ったり丸くなったりしながら包皮を探る。

 

「恥ずかしいなあ、皮かむりだから」

「そんなことない、反り返ってて、カッコいいよ?」

 

 舌先が包皮と亀頭の隙間に入り込んだ。

 

「きれいにしたげるね♡ れろ……んー♡ ご主人様の味ぃ……これも、ご主人様の一部……♡」

 

 細く尖らせた舌先が、狭いすき間を器用にくぐり抜け、ぐるりと一周して恥垢を舐め取っていく。

 

「んぐ、もぐ、んく、ごくっ」

「アスナ……」

「気にしちゃダメ。それに、むきむきしちゃえば関係ないよ……へむぅ♡」

 

 アスナは唇で包皮を軽く吸い、舌先を海綿体と皮の間に潜り込ませる。ぐるり、ぐるりとすき間を器用に押し広げながら、甘噛みした包皮をゆっくりと押し下げていく。

 

「出てきた出てきた、ご主人様のっ♡」

 

 露出した赤黒い亀頭に、すかさずキスを落とす。

 触れた瞬間、桜色がわずかに赤みを増した。興奮で紅潮している。

 そこから、アスナはキスの雨を降らせ始めた。

 

 亀頭に。

 ちゅっ。

 カリの縁に。

 ちゅっ。

 竿の真ん中に。

 ちゅっ。根元に。

 ちゅっ。

 根元から先端まで、唇が何度もキス。キスのたびに弾力のある肉が凹んで、押し返してくる。唾液の湿り気が、キスの跡を点々と残していく。

 

「全部にキスしてあげるっ♡」

「ぶひひっ、アスナちゃんの唇、ぷにぷにしてるっ」

 

 ぷにぷに、という言葉では足りない。唇の外縁の硬さと、中央の柔らかさ。押し付けられると沈み、離れると戻る。その繰り返しにペニス全体を愛撫されて、金玉の下にある筋肉が何度もびくつく。

 それをごまかすように、手のひらで頭頂部を撫でる。さらさらの髪に指を通しながら、ゆっくりと後頭部へ。

 

「いい子だ。本当に……僕にはもったいない……」

 

 アスナが目を細めた。口淫のペースが、ほんの少し緩やかになる。嬉しそうに頬を緩めて、頭を社長の手に押し付けてきた。

 

「もっと撫でて~♡」

 

 嬉しくて嬉しくて仕方ない、という顔だ。尻尾があれば、千切れんばかりに振っているだろう。

 

「つば出すね。びっくりしちゃダメだよ?」

 

 アスナは唾液をたっぷりと塗りつけ始めた。自分の匂いを「一番上」に塗るつもりなのだろう。

 舌をだらりと出して、竿の根元から先端まで執拗に、念入りに舐め上げる。

 

「へろ~……♡ へろ~……♡」

 

 大型犬がご主人様を舐めるときのようにだらしなく、無防備に、夢中で舐め続ける。

 

「私の匂い、いーっぱい付けてあげるね。私の色に、なーれっ、れろれろ……♡♡」

 

 竿の表面を這う血管を舌先でなぞる。脈打つ静脈、社長の命を運ぶ動脈を、世界中探してもそうはいないだろう美女が愛しげにたどる。

 

「ドクドクしてる。ご主人様の心臓の音、おちんちんから聞こえるよ……♡」

 

 ──にっこりと笑ってから、アスナは周囲を見回した。社員たちの、特にカリンとアカネとトキの視線を確認するように。

 

「ごめんね意地悪して。でもみんなはそのままだと、私より先にスカイブルーに選ばれちゃうかもだし……それに」

 

 アスナはスーパーロングの絹髪を耳にかけ、今度はにんまり笑う。

 ──通路の社員たちの様子が、変わり始めていた。

 

「ねえ、気持ちいいでしょ? 私がご主人様を気持ちよくしてるところ見て──感じてるでしょ?」

 

 頬が薄く染まり、唇は半開き。誰も彼もが息を荒くしている。

 

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 

 タイトスカートの下で、カリンの太ももがこすり合わされる。トキの指は、スカートの裾をぎゅっと握りしめていた。アカネの目は眼鏡の下で潤み、アスナの舌に視線を釘付けにされている。

 ヒュプノスペックを通じて、女体の発情が伝播しているのだ。

 

「ごめんね──あむっ♡」

 

 それを尻目に、アスナの口腔がペニスを包んだ。

 最初に触れたのは、唇の内側だ。まだ外気の名残がある。ひんやりとした粘膜が亀頭を出迎え、火照った海綿体を心地よくさせる。

 次に、歯茎を通過する。ここで空気が遮断される。外界から切り離された感覚。

 そして舌の上──。

 

「うお、アスナのクチマンコやべぇっ……」

 

 血が通う舌の筋肉が、亀頭の下で脈打つ。人肌より熱い。興奮で充血した舌が、生きている女の子の熱、内臓の温度を直接伝えてくる。

 

 さらに奥へ……カリが唇を通過すると、頬の内側がペニスに寄り添ってきた。ここは舌より少しぬるい。脂肪の層が熱を和らげているが、その分だけ柔らかい。頬肉が、亀頭の形に合わせて凹んでいく。

 

 ゆっくりと奥へ……喉の入り口に亀頭が当たった。

 

「んぐっ……♡」

 

 きゅっと締まる。

 

「おおっ、アスナの口、熱いっ、チンポが溶けるっ」

 

 そこはまるで溶鉱炉の入り口だ。亀頭がドロドロになりそうだ。いや、なっている。アスナの喉の熱で、亀頭の輪郭が曖昧になっていく。どこまでが自分で、どこからがアスナなのか。もはや亀頭はアスナの体の一部──そんな錯覚が、社長の脳を痺れさせた。

 

「じゅぅっ……♡」

 

 舌が亀頭の裏側に触れる。頬の内側が、社長の形を覚えようとするかのように竿に寄り添ってくる。口腔全体がペニスを「歓迎」していた。おかえりなさい、とでも言っているかのようだ。

 

 じゅわっ。唾液が湧き出した。

 

 ペニスを包む液は粘り気がない。中年男のねばついた唾とは違う、健康な若い女のサラリとした唾液が、舌と竿との間で薄い膜を作り、動くたびにぬる~りと滑る。

 

(──この子の身体が、僕を「歓迎」している)

 

 ぴゅ。先走りが吹き出る。

 ぢゅうっ♡ すかさずアスナに吸いとられる。頬がきゅっと内側に凹んだ。

 

「んく、ごくっ……。んむぅ……♡ ごひゅひんひゃまが、わらひの中にいるぅ……んふぅ♡」

 

 そのままアスナは舌で全体を舐め回し、唾液をたっぷり分泌した。

 ぬるぬる、と濡れていく。一之瀬アスナのさらさら唾液が、社長の金玉まで垂れていく。

 

「アヒュナの口に、ちょーろいい♡ んふふ、んむむ、えろぇろ……じゅる、じゅる……♡」

 

 舌がカリ首に絡みつく。表面に並ぶ細かい凹凸が、亀頭の神経を一つ一つ撫でていく。滑らかなのにざらざら、ぬるぬるなのに引っかかる。唾液が舌と竿との間で薄い膜を作り、膜が伸びたり縮んだりするたび、ぬちゃ……ぬちゃ……と音が鳴る。

 

「にゅるぬる……♡ ぬるにゅる……♡ んふー♡」

 

 空いた手が陰嚢に伸びた。

 細くて長い指の腹が触れた瞬間、睾丸を包む皮膚がぴくりと縮む。反射だ。冷やして守ろうとする、オス本能の反応。

 

 しかしアスナの指は、その防衛を無視して熱を注ぎ込んでくる。指の腹から発情した女の温度が染み込み、睾丸を温める。くりくりと転がして、精子に動き出す準備を始めさせる。

 

「んふふ、ひゃまひゃま♡ ぷにぷにっ♡」

 

 アスナは指の腹で睾丸を優しく持ち上げ、重さを確かめる。

 

「ここにご主人様の赤ちゃんがいるんだねっ♡」とでも言いたげに、切れ長の目を細めた。

 

「ぐひっ」

 

 吸われ、舐められながら金玉を揉まれるとヤバい。下っ腹がぞわぞわとしてきた。精液が上がってきて、一之瀬アスナの胎内にザーメンどぴゅりたい、という衝動がこみ上げる。

 危険だ。

 

「ふーっ、ふーっ、アスナっ」

 

 社長は、アスナの耳たぶに指を伸ばした。親指と人差し指でつまんで、くりくりと揉んでから軽く引っ張る。

 

「ひゃっ♡」

「この耳、感じやすいだろっ。真っ赤になってるから分かるぞっ」

「んぷっ、ぷぁっ、やだぁ、おクチ入れてるときに、危ない、やぁあぁ♡」

 

 アスナは耳を真っ赤にして、口からペニスを吐き出した。敏感な耳を愛撫され、体をびくびくと震わせる。

 

「きれいな首だ。いつかここに首輪をつけてやる」

 

 社長は、指先を首筋へと下ろしていった。鎖骨から耳の下まで、血管の上をゆっくりとなぞる。

 アスナがゾクッと震えた。鳥肌が立つ。なのに首を傾けて、もっと触れさせようとする。

 

「んぅ……、ご主人様ぁん…………♡」

 

 ──もうダメですっ、という声が聞こえた。壁際でトキが限界を迎えたようだ。その手がスカートの中へ滑り込む。下着越しに秘部を押さえ、小さく腰を揺らし始める。

 それが合図だった。あちこちで同じ光景が始まる。カリンは壁にもたれて体を支え、アカネは床にへたり込んで、一斉にオナり始める。

 

 彼女らのヒュプノスペックが、ネイビーブルーやマリンブルーの光を放ち、ゆっくりと明滅している。

 通路全体が──発情していた。選りすぐりの美女と美少女しかいない社員たちがスカートの中に手を入れ、腰を揺らしている。選りすぐられた若い女たちが社長の快感に同期して、自分の身体を弄っている。

 

 ──ああ、あんぅ、んぁぁ……。

 

 カリンの首すじに汗が光り、アカネの眼鏡が吐息で曇り、トキの髪が額に張り付いて、スカートの布地が、リズミカルに膨らんでは凹む。ちゅぷ、ちゅぷ、と、どこからか水音が聞こえる。

 

 社長の胸に、征服感が広がった。この通路全体が、自分の快感を感知して、発情しているのだから。

 アスナの背中に手を伸ばし、メイド服の上から肩甲骨の間を撫でる。

 

「もう一回?」

「ああ、もう一回……もう出そうだ」

「んー……♡ じゃあ、これでトドメ♡」

 

 アスナが、苺色の舌を宙でひっくり返した。裏側をペニスの先端に当てる。

 舌の裏側は表面と違い、味蕾の凹凸がない。薄い粘膜の下を血管が走っていて、その熱が亀頭へ直に伝わる。唾液の膜が途切れない。表面のようにざらつかない。まるで温めたローションの中を滑っているようだ。

 その舌の裏で、アスナはカリの縁をなぞる。くるくると円を描いていく。

 

「えろえろ、えろ、えろえろ、えろ、んふー♡」

 

 唾液の膜の上を、亀頭が滑っていく。引っかかりがない分、快感が鋭くなる。

 

「ち、ちんぽがっ、やばいっ」

 

 それしか言えない。快感が亀頭の先っぽから、竿を伝って根元へ。根元から腰の奥へ。腰の奥から背骨を駆け上がって、脳天まで突き抜けて、言葉を奪う。

 さらに、アスナは根元を握った。細くて長い指で、ペニスを優しく包む。

 

 絹のようだ──いや、違う。絹には脈がない。アスナの指には脈がある。指の腹を通して、とくとくと血流が伝わってくる。絹は乾いているが、アスナの手のひらは興奮で薄く汗ばんでいる。その湿り気が、竿の皮膚に吸い付いてくる。

 

 生きている絹が、ペニスをしごく。

 

「しーこ、しーこ♡」

「おほっ、その声ヤバい……!」

 

 根元を握って上下する手は、唾液と先走りが混じった潤滑液の中を滑っていく。

 上がるときは包皮を引き上げ、亀頭を締め付ける。下がるときは包皮を剥き下ろし、カリの縁が指の腹に引っかかる。その繰り返しが、一定のリズムで快感を積み上げていく。

 

「しーこ、しーこ♡ しこ、しこ♡ しゅっしゅっ♡ しーこ、しーこ♡ しこ、しこ♡ しゅっしゅっ♡」 

 

 アスナの指にペニスを「所有」されている。きっとこのまま、射精まで追い立てられる──。

 

 ──通路のあちこちで、社員たちが「出してぇ♡」「早くぅ」と声をあげる。目は虚ろで、体が小刻みに揺れている。スカートの中の手がじゅぶじゅぶと音を立て、唇からは声を殺した息遣いが漏れる。

 社長の射精が近い、と感じ取っているのだ。放出と同時に許される甘美な絶頂を心待ちにしてオナる手を速め、微弱電流で社長の快感に同期しながら絶頂に向かっている。

 

「ねえ、おちんちんもう我慢できないでしょ?」

「ああイく、イくぞっ」

「どこに出す? お顔? お手々? それとも……」

「口で受けろ、一滴もこぼさないで、アスナっ」

「…………♡ 全部、吸い出してあげる♡ んむっ♡ じゅるるっ……♡ 」

 

 アスナはぱくっと亀頭を咥え、三点責めを始めた。

 

 じゅぽっ♡ じゅぽっ♡

 

 頬を窪ませて作る真空──唇がすぼまり、きゅっと締まる。

 

 しこしこ、しこしこ♡

 

 根元を握って上下する手──指が竿を撫でるたび、絹を纏ったような滑らかさが走る。

 

 もにゅ、もにゅ♡

 

 陰嚢を揉む手──指の腹が睾丸を包む。くにくにと形を変える。

 精巣の中で、精子が出口を求めて蠢いた。

 

「アスナッ……アスナッ……!」

 

 頬がさらに深く窪み、真空がペニスを吸い上げる。アスナが吸い付き、舐め回し、シコって揉みたてる。青い光を宿した切れ長の瞳が、「出しちゃえ~♡」と言わんばかりに弧を描いた。

 

(うーッ、出るっ!)

 

 びゅるっ! びゅるるっ! 

 

 精液を放つ。

 腰の奥から搾り出される。

 何度も、何度も、痙攣が走る。

 

 ほぼ同時に、周囲の社員たちが「あ~♡」と声をあげて一斉に震えた。トキの膝が崩れ、かろうじて立っていたカリンがしゃがみ込む。アカネが目を固く閉じ、唇を震わせる。全員が小さく、小さく、体を震わせている。大きくではなく小刻みに、長く、震えている。

 

 ──素敵です、社長♡

 ──気持ちいいです♡

 ──好きです、大好き♡

 ──イってますぅ♡ まだイってますぅ♡

 ──愛してます♡ 一生お仕えします♡

 

 社長の射精にヒュプノスペックが同期し、微弱な電流によって生み出す悦楽の熱波がトキの、カリンの、アカネの、社長を中心とした半径数メートル内にいる社員たちのみずみずしい女体に何度も押し寄せているのだ。

 

 ──ありがとうございますっ♡

 ──イかせてくださってありがとうございますっ♡

 ──お射精してくれて、ありがとうございますっ♡

 ──私を守ってくれて、ありがとうございますっ♡

 ──ユートピア最高♡

 

 階下のシュプレヒコールにも負けない、愛と快楽と感謝の叫びをあげる。彼女らのヒュプノスペックが、それぞれの色でゆっくりと明滅していた。

 

「んっ、んむっ……♡」

 

 アスナは、射精が始まっても口を離さなかった。びゅるびゅると出る精液を全て受け止めてくれている。

 

「ぅむぅー……」

 

 頬が膨らむ。少しこぼれて、唇の端から垂れる。

 頬が膨らむ。桜色のほっぺたが、ぱんぱんに膨らんでいる。

 収まりきらない白濁が、唇の端から零れた。あごをとろりと伝い、メイド服の胸元に垂れていく。

 

「ぶ、ひぃ……っ」

 

 社長の腰がびくんびくんと跳ねる。射精の余波が、下腹から背骨を駆け上がっていく。

 

(まだ出てるっ、まだ吸われてるっ)

 

 アスナの頬が、ゆっくりと動いた。

 

「ごくん……♡」

 

 喉が上下する。一度、二度。

 

「ごくっ……♡」

 

 三度。

 

「んぐっ、んっ、んっ、ごくっ……ごくっ……♡♡」

 

 精液を飲み下すたび、アスナの表情が変わっていく。

 

 四口目──眉が下がり、目が細まる。

 五口目──頬の力が抜け、口角がわずかに上がる。

 六口目──瞳の焦点がぼやけ、どこか遠くを見つめるような目になる。

 青い虹彩の上に涙の膜が張っていく。長いまつげが小刻みに震えている。口内にザーメンをぶちまけられて、恍惚としているのだ。 

 

「んっ……ん、んん……♡ んぐっ……♡」

 

 ごくん、ごくんと飲み込んでいる。絶世の美女──スーパーモデルの優美さと、めちゃシコグラドルの肉感を兼ね備えたすこぶるつきの美女が、醜い中年男の精液をなんの抵抗もなく、むしろとびきり甘いジュースでも飲み干すみたいに嚥下していく。

 遠くで、シュプレヒコールの声が響いていた。

 

『愛を返せ〜! 私たちにも愛を〜!』

 

 アコが率いる労働組合の声だ。だがその声は、今の社長の耳には届かない。

 

 ◆

 

 射精が終わっても、アスナは口を離さなかった。

 ぷは、と息をつくこともなく、じっと咥えたままだ。

 

「んー……♡」

 

 萎えかけたペニスを、口の中で転がしている。

 れろ、れろと舌が這う。亀頭の輪郭をねっとりなぞる。カリの裏側を、優しく舐める。

 

「ぶひっ……アスナちゃん、もう……」

 

 敏感になった亀頭が、舌に触れるたびにびくんと震える。

 アスナはペニスを咥えたまま、上目遣いで社長を見上げた。くすりと笑った──ように見える。唇はふさがっているから、目だけだ。切れ長の目が、得も言われぬ美しい弧を描く。

 

「ぇへ……ちゅ……♡」

「ひぅっ」

 

 舌先で尿道口を突っつかれ、社長は変な声を出した。

 まだ残っていた精液が、ちゅるっとアスナに吸い出される。

 

「んー……♡ まだあった……♡」

 

 ようやく口を離して、アスナは嬉しそうに微笑んだ。

 唇が、精液と唾液の混じった糸を引く。

 

「全部、もらったよ。ご主人様の、赤ちゃんのもと」

 

 ぺろりと唇を舐めると、舌先についた白濁が口の中に消えていった。

 社長は、自分の荒い呼吸を聞いていた。射精の余韻がまだ身体を痺れさせている。脚に力が入らない。

 

(あ、危ない……)

 

 そのとき、アスナの手が社長の腰を支えた。

 

「大丈夫? ご主人様」

 

 ぎゅっと腰を抱きしめたせいで、アスナは唾液まみれのペニスをほっぺたで挟んでしまっていた。見上げる青い瞳は心配そうだが、嬉しそうでもある。

 

「いっぱい出したもんね。えへへ、私のせいかな♡」

 

 得意げな声だ。大型犬が、飼い主に褒められるのを待っている顔だった。

 

「頑張ったね……ご主人様のおちんちん……」

 

 萎えて小さくなったペニスに、アスナが顔を寄せた。

 まず、頬骨の高いところが竿に触れる。次に、頬肉の柔らかい部分がぷにりと凹んで、萎えた肉棒を包み込む。

 

 すり、すり。

 

 左の頬から右の頬へ。亀頭を頬肉で転がすように、ゆっくりと顔を動かしていく。

 整いすぎるほど整った横顔が、白濁と唾液で汚れていく。だがアスナは、目を細めて微笑んでいた。

 

「よしよし……いい子、いい子……♡」

 

 まるで小動物を愛でるように、大切な宝物を磨くように愛撫する。愛されているのがベトベトに濡れた仮性包茎のチンポでさえなければ、その姿は、絵画のようとさえ言える美しさだ。

 

「いっぱい出してくれて、ありがとね♡ 私のお腹、ご主人様でいっぱいだよ」

 

 下腹部を撫でる仕草は、そこに精液が溜まっているかのような言い方だ。

 社長は、ぼんやりとその姿を見下ろしていた。女の胎に精液を入れてしまうことは、本来、彼にとって最も恐ろしいことだ。

 

(でも、今は怖くない)

 

 射精後の賢者タイムがゆっくりと訪れている。だが不思議と、いつも感じる虚しさはなかった。

 アスナが、まだ触れていてくれるから。

 アスナが、まだ愛おしそうにしてくれているから。

 

「……ご主人様」

 

 アスナの声が、少しだけ改まった。

 

「お掃除、するね?」

 

 言いながら、もう舌を伸ばしている。

 

「れろ……ちろ、ちろちろ……」

 

 舌が、ペニスの表面を這い始めた。

 まず根元。陰毛との境目に残った白濁を、舌先でこそぎ取る。

 竿の裏側。血管の溝に入り込んだ精液を、舌の腹で押し出すように舐め上げる。

 竿の表側。乾きかけた唾液の膜を、唾液で濡らし直しながら拭い取っていく。

 そして先端。萎えた亀頭を唇で包み込み、れろりと一舐め。

 

「れろ……ちろ、ちろちろ……」

 

 見落としがないように。一滴も残さないように。アスナの舌が、丁寧に、執拗に、社長のペニスを清めていく。

 

「んっ……たまたまも、ドロドロ……♡」

 

 アスナは睾丸を口に含み、玉袋のシワに入り込んだ白濁まで舌先ですくい取る。ころん、と舌で転がし、ちゅるんと吐き出す。

 

「わぁ、こっちのタマタマも」

 

 もう片方も口に含み、すくい取り、転がす。

 社長は、脚が震えるのをこらえていた。射精直後の金玉に絶世のエロ美女メイドという組み合わせなのだ、触られるだけで腰が砕けそうになる。

 

「きれいきれい……♡」

 

 アスナは満足そうに笑った。そして仮性包茎の皮に指を添える。親指と人差し指で、余った包皮の端をつまんだ。

 

「ご主人様……ここ、戻すね……?」

 

 勃起中は剥けていた包皮が、萎えてたるんでいる。

 

「おやすみなさい……ご主人様のおちんちん……」

 

 指先が包皮を引き上げる。ほんの数ミリずつ、亀頭を爪で傷つけないよう、慎重に。

 皮膚が亀頭の先端に触れた。そこから指でくるりと包み込むように被せていく。

 

「皮のお布団、かけてあげる……♡」

 

 親指で皮のたるみを整え、人差し指で先端の余りを寄せる。ささやくような声は、まるで子守唄だ。

 最後に包皮の口を軽くつまんで形を整える。つつみ終えた上から、アスナはキスをくれた。

 

「ちゅっ……♡ また会おうね♡ 次は、アコちゃんと一緒に可愛がってあげる……♡」

 

 ペニスに向かって話しかけている。それが当然のことのように、ご主人様の大切な一部として、敬意と愛情さえ持って、仮性包茎の中年ペニスをケアしてくれている。

 

「じゃあ、お着替えしよっか! ご主人様♡」

 

 アスナはメイド服の裾を払って、声のトーンをくるりと変えた。大型犬が、「褒めて褒めて」と尻尾を振るような顔をしている。

 レースの縁取りがついた白いハンカチで、ペニスの周囲を拭いていく。太ももに飛んだ唾液、陰毛についた白濁、股間全体を、ていねいに清めていく。

 

「こことー、ん……ここも。うん、お掃除おしまい! はい、パンツ上げまーす」

 

 トランクスを元の位置に戻し、ペニスの位置を確認して窮屈でないように調整する。チャックをゆっくりと上げ、ベルトを締め直す。シャツの乱れを直し、立ちあがってネクタイまで整えてくれた。

 最後にアスナは、仕事を検分するように、社長の足下から頭までを見た。

 そして、にっこりと笑う。

 

「メイドのお仕事、完了♡ ご主人様?」

「う……うん」

「今日もカッコいいよ♡」

「ありがとうアスナ」

「もう、それじゃダメ」

「え?」

「ほら、いつもみたいに『ぶひっ』て笑ってみて?」

「あ……うん。ぶ、ぶひひっ?」

「そう、それ。大正解♡」

「ぶひぃ、気持ちよかったよぉ、アスナちゃん」

 

 お尻を撫でると、アスナは大げさなくらいに身をくねらせた。そして、両手を広げる。

 

「ご主人様、こっち来て?」

 

 社長が近づくと、その頭を胸元に引き寄せる。

 頬が沈んだ。

 メートル越えの紛れもない爆乳が、ぷにり、と案外可愛らしい弾力で押し返してくる。皮膚の下の脂肪が社長の顔の形に凹んで、包み込む。

 視界が肌色に染まり、まつげが乳房の曲面に触れた。

 

「ぐふ……すー、はー」

 

 社長が息を吸うと、ボディソープの残り香の下には汗と、発情した女の体臭とが混じっている。さっき、飲み込んだ精液の──自分の匂いも、かすかに。

 そして、奥から伝わってくる熱。心臓の鼓動が、頬骨を通して社長の顔に届く。

 

「えへへ……♡ お疲れ、ご主人様……♡」

 

 後頭部の禿げた部分が、アスナの指でゆっくりと撫でられる。愛おしそうに触られて、恥ずかしく思っている場所に血が集まる。指の腹が頭皮を撫でるたび、毛根のない皮膚がじんわりと熱を帯びていく。

 

「いっぱい出したね。気持ちよかった?」

「ぶひぃ……♡ 気持ちよかったぁ……♡」

 

 顔を埋めたまま、くぐもった声で答える。

 谷間の奥で、アスナの心臓の音が聞こえた。どくん、どくん、と、興奮でまだ速い。

 

「私も幸せだったよ。ご主人様の全部、もらえて」

 

 アスナの声が骨に響く。頭蓋骨を通して、脳に直接染み込んでくるようだ。

 

「ご主人様のおちんちん、大好き……♡ ご主人様の匂いも、味も、全部……♡」

 

 背中に回った腕の、細さ。なのに、逃げ場がない。

 胸板に押し付けられた頬が深く沈み込む。

 逃げたくない。

 心音が、骨を伝って脳に届く。

 逃げなくてもいい。

 禿げた頭を。脂ぎった肌を。加齢臭のする身体を。皮被りの、黒ずんだペニスを。この美しい生き物が、全部知った上で抱きしめてくれている。

 

(ああ……社長として頑張ってきて、良かった)

 

 自然と、そう思える。

 やがて、アスナの声よりも、騒音のほうが大きく聞こえ始めた。

 

『平等に愛を〜! 私たちにも愛を〜!』

 

 シュプレヒコールの声が遠くで続いていた。アコの指揮する声だ。

 

(そうだ、アコ。あの子にも分かってもらわないと)

 

 社長がもぞりと動くと、アスナは名残惜しそうに腕を緩めた。

 顔を上げた社長の頬に、唇が触れる。

 

「大好きだよ、ご主人様……♡」

 

 ──私たちもです、と声が続く。

 社長の射精を見届けた通路に、余韻が満ちていた。

 壁にもたれてぐったりとしたトキの目が、社長とアスナから離れない。

 カリンの目は潤み、恍惚とした表情で社長たちを見つめている。

 床にしゃがみ込んだまま立ち上がれないアカネは、祈るように両手を胸の前で組んでいた。

 羨望。崇拝。そして──幸福。

 

 ちゅっ♡ ちゅっ♡

 

「好きだよ。おちんちんだけじゃなくて……」

 

 ちゅっ♡ ちゅっ♡

 脂ぎった頬にアスナの唇が何度も何度も吸いつき、リップの跡を残していく。

 

「みんなのために頑張るご主人様の、全部が好き♡」

 

 青い瞳が、真っ直ぐに社長を見つめていた。そこに打算はない。駆け引きもない。純粋な、犬が飼い主に向けるような愛情だけがある──と、彼は思った。

 

「アスナ」

「なあに、ご主人様?」

「ありがとう」

「もう、また。ちゃんと『社長さん』しないとダメ」

「うん、でも……ありがとう」

「……えへへっ♡ ご主人様から『ありがとう』って言われちゃった♡」

 

 アスナは社長の手を取った。自然に、当たり前のような仕草だ。

 

「さ、行こっ、ご主人様♡ 一緒にアコちゃんを『分からせ』に行こうね」

 

 一歩、また一歩と歩き出す二人の背後で、シュプレヒコールが続いている。

 

『私たちをイかせてくれ〜!』

 

『オナニーさせろ〜!』

 

『社長は平等に愛を与えよ〜!』

 

 労働者の祭典に響くのは、たった一人の男性に愛を求める声。オナニーの許可を懇願する声。イきたいと泣き叫ぶ声。

 ここは社長を中心に回る小さな世界。AIと電流と、性的欲望のエネルギーで駆動される人工の理想郷だ。

 少なくとも今、このときは。

 

(続く)

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  • プロローグ
  • ユウカの章-1
  • シロコの章
  • リンの章
  • ユウカの章-1
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  • ミカの章
  • アスナの章
  • アコの章-1
  • アコの章-2
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