天雨アコ「こんなイヤらしい社長が支配する会社に、私はぜったい屈しません!」→なお 作:a-su
ミカの愛撫ではイけなかったアコ。そこへバニースーツ姿のアスナが現れ、「謝れば、イかせてあげる」と迫る。一ヶ月の禁欲で限界を超えた身体に、アスナの問いが突き刺さった。「人殺しになりかけたんだよ」アコは涙ながらに首を絞めたことを謝罪する。
声を返されたのも束の間、背後に社長が立っていた。ペニスが触れただけでアコは絶頂し、何度も何度も壊れるようにイき続ける。クリトリスも、膣口も、肛門も、触れられるたびに失禁しながら痙攣が止まらない。
「お母さん、助けて」
意識が溶けていく中で、アコが最後に呼んだのは、母の名前だった。
唇に何かが触れている。それが最初の感覚だった。柔らかく、温かく、湿っている何か。
(……キス、されてる?)
意識がゆっくりと浮上していく。
アコは自分がどこにいるのか、何があったのかを思い出そうとした。
ミカの部屋で彼女と睦みあった。オーガズムを迎えられず、むせび泣き、疲れ果てた。
そして突然ドアが開き……。
(…………私は、犯された)
思い出した。
アスナ。ネル。そして社長。
社長のペニスに触れられただけで、アコは何度も、何度もイかされた。挿入のない、こすりたてるだけの陵辱で失神するほどの快楽を味わわされたのだ。
(あの天井……まだ、ミカさんの部屋にいるんですね。シーツは新しいのに替えられてますけど……)
間接照明が、天井の隅をぼんやりと照らしている。オレンジがかった弱い光。
身体も誰かに清められていた。なのに、もう濡れ始めている。太ももの裏で布地がじっとりと湿っていた。火照った秘部からにじみ出す愛液が、清潔なシーツを汚していく。
……けいれんしすぎた下半身は、腰が抜けたようになっている。上半身も、指先にさえ力が入らない。
(逃げ、なきゃ……)
指がシーツを掴もうとした。這ってでも、ここから動かなければ。しかし力を込めたはずの手は布地の上を滑るばかりで、サテンの冷たさだけが爪先をすり抜けていく。
「ぁ……ぅ……!」
せっかく取り戻した声も、喉がひりついて出せない。叫びすぎたのだ、「イヤ」と「もっと」を……。
なのに身体は、まだ足りないと訴えていた。膣口がひくひくと収縮する。クリトリスがむずむずと疼く。もっと欲しい、中に欲しいと涙をにじませている。
「ご主人様……♡ んっ♡ んむっ……♡ 」
声が、聞こえた。アスナの声だ。
アコは目を開けた。視界がぼやけている。涙の膜が張っているのだろうか、焦点が合わない。
でも見えた。
ベッドの脇に、二つの影が立っている。間接照明を背にして、輪郭だけが柔らかく滲んでいた。アスナと社長だ。寄り添った体と体のあいだに、他の誰も入れない温度がある。
アコが失神してから、それほど時間は経っていないようだ。二人の服装が変わっていない。アスナは青いバニースーツ、社長はスーツ姿のままである。
さっきと違うのは……。
二人が唇を重ねていること。お互いの腰に腕を巻き付けながら、目を背けたくなるほどイヤらしいキスをしていることだ。
「ちゅ……♡ んん……♡ ちゅる、ちゅ……♡」
アスナは、薄くて敏感なはずのリップをすりすりとこすりつけ、バニースーツからあふれる胸を押しつけ、脚まで絡ませようとしている。
「ん……。ちゅ。ちゅぅ~……っ♡ じゅ♡ ぬちゅ♡ ちゅる……♡ れる、れる……っ♡」
皮膚の接触は粘膜の接触に変わっていく。アスナの舌が社長の舌粘膜に媚び、絡みあって唾液が混ざり、吐息が漏れる音がする。
ぴりっ。
奇妙なことに、アコはその音を
(なんですか、これ)
自分はベッドの上で仰向けに横たわっている。
二人は立ってキスしている。
なのに二人が舌を絡め、唾液を混ぜ、吐息を出すのと同じタイミングで、唇にキスの感覚が染み出してくるのだ。
──気持ちいい。
「んふふ……♡ ご主人様、キス上手……♡」
アスナが社長の首にしゅるりと腕を回して、ぐっと唇を押しつける。
キスが深くなるにつれ、アコの体に流れ込む感覚も強くなっていった。
(ヒュプノスペックだ)
アコの感覚が、「同調」させられているのだ。
経験はある。一ヶ月前、社長と交わる早瀬ユウカや砂狼シロコの性感を擬似的に味わった。
だが、今感じている唇の感覚は、アスナのものか?
(ち、違う…………これ…………!)
社長のものだ。彼が感じていることが、そのままアコの身体に注がれている。
なぜ分かるのか。
アスナが舌を伸ばすのが見える。同時に、舌が「侵入してくる」感覚がある。温かくて、湿っていて、ぬるぬると這い回る。
唾液を流し込むのが見える。同時に、甘い液体が「口の中に溜まっていく」感覚がある。
「んむぅ、んぱ~~~……♡ んぐ、はぁぁ……♡ ご主人様とのキス、一生してられそう……♡ はぁむ♡」
視覚では、アスナが男に奉仕している。
なのに感覚では、アコが奉仕されている。
(イヤ……こんなの、イヤ……!)
──アコは社長になってアスナにキスされている。気持ちいい。美女に舌で媚びへつらわれて気持ちいい。だらしなく鼻の下を伸ばす中年男の愉快さを、アコはいま自分のこととして受け止めている!
「……アコちゃん」
かすれた声が、すぐ近くで聞こえた。
ミカだ。裸のまま、アコの隣に寄り添っている。細い腕がアコの肩をそっと抱き、小さな手のひらが、額にかかった前髪をゆっくりと梳いてくれていた。指先がこめかみに触れるたび、汗ばんだ肌がひやりと冷える。
「起きた? よかった、よかったぁ……」
安堵の吐息が頬にかかった。温度からして、絶頂の余韻に火照っているらしい。
「大丈夫? 気分悪くない? ね、ね?」
声は優しい。だけど危険だ。ミカは無邪気な毒なのだから。一点の曇りもない純心でアコを「幸せにしたい」と思ってくれているし、そのためなら「アコちゃんを犯してあげてください」と、社長に全裸で土下座してもいい……と言ってくれたぐらいなのだから。
(逃げないとっ)
危機感で意識が一気に目覚める。なのに疲れ切ったアコは声も出せず身体も動かせず、ヒュプノスペックから社長の感覚を受け取るしかない。どんどん鮮明になる「一之瀬アスナにねちっこくキスされる感覚」を流され続けるしかできない。
「ん~~っ……♡ ご主人様ぁ、もっとお……♡♡」
「んー、こうか?」
ぴりっ。
「だめぇ、足りなぁい」
「ぶひひっ、ほら、ぶちゅ、ぶちゅっ」
「もっと、もっとぉ♡」
「ぶひー、むちゅちゅぅぅぅ~」
「やん、ワンちゃんみたいのじゃなくて、もっと……エッチなやつ♡ ほら、ね、こ~ひて、れろれろ~、じゅるじゅる~って♡♡♡」
見たくない。感じたくない。でも目を閉じても、唇の粘膜がじくじく疼く。社長とアスナのキスが深くなるたび、その熱が舌の根から喉の奥、鎖骨、胸の谷間を伝い落ちて──着地したのは、子宮だった。交尾気分と勘違いした膣口が、ひくり、と口を開ける。
やがて、唇を離した二人の間で、透明な糸が三本、四本と伸びる。
「んぱぁ……♡ んふ、ぅあ……♡ お口とお口で、何本も糸、引いちゃってる……♡ んふふ、すごくやらしいキスだったね」
糸はぷつり、ぷつりと切れて、アスナの胸元へ垂れていく。バニースーツに包みきれない乳房が、唾液でてらてらと光った。
「んっ……♡ ごちそうさま……♡」
こくりと喉が動く。社長の唾液を飲み込んだのだ。
その瞬間、アコの口内にも唾液が湧き上がる。飲み込んでもいないのに、喉の奥に甘ったるい粘りが絡みつく。アスナが好きなリップ・グロスの人工的な甘さ。その下に潜む、汗と似た塩気。
(お、いしい……)
唾液腺が、もっとくれと言わんばかりに疼いた。
「じゃあ次は、アスナのおっぱいで一休みしてね♡」
アスナは唇をぺろりと舐めてから、男の頭を自分の胸へと引き寄せる。ライトブルーのサテン地からあふれそうなJカップの谷間に、社長の禿げ上がった頭を沈みこませていく。
「ぶひひっ……アスナのおっぱい、柔らかいなぁ」
「えへへ♡ ご主人様のために、いつも大事にお手入れしてるんだよ♡」
母性的。そう、世間一般では母性的と言われる光景に見える。アスナは、社長を「甘やかして」いた。赤ん坊をあやし、疲れた子供を抱きしめる女性のように。
(……どうして、そんなに幸せそうなんですか?)
アコの知っている母親像とは、まるで違うが。
「ご主人様、今日もお仕事お疲れ様♡」
アスナは甘く柔らかい声を出し、社長のネクタイに手をかける。するすると、結び目を解いていく。指先は慣れた動きで、まるで毎日そうしているかのように自然だった。
「頑張り屋さんのご主人様……今夜も、アスナがぜ~んぶ、お世話してあげるね♡」
まるで喉の奥に蜂蜜でも詰まっているかのような、粘度のある声。
ネクタイが床に落ちた。次はジャケット。アスナの細い指が社長の肩を滑り、背中に回る。脱がせる動作の一つ一つが愛撫のようだ。
(……なんですか、あれ……)
アコはミカに横抱きにされたまま、二人の親密さをベッドの上で見せつけられていた。目を背けようにも、脱力した身体は言うことを聞かない。頬はミカの裸の胸に押し当てられたまま、視線だけがアスナと社長を追ってしまう。
アスナは楽しんでいる。社長に奉仕することを心の底から悦んでいるように見えた。男と、女の行為には付きもののはずの、暴力と、支配と、恐怖の影がどこにも見えない。
(ああ、でも)
でも──そうだ。考えてみれば、早瀬ユウカや砂狼シロコだって、そんなセックスをしていなかったか?
アコはなぜ、それに気づかなかったのだろう。なぜ今、それに気づいたのだろう。
「次は、ワイシャツ……♡ ボタン、ひとつずつ外していくね。ゆっくり、ゆっくり……ご主人様のカラダ、全部見たいから♡」
ボタンを外していく。一つ、また一つ。その度に、アスナは社長の肌にキスを落とした。鎖骨に。胸に。腰をかがめて、ぜい肉のついた腹に。
「んふふ、いい匂い~……♡ ご主人様の匂い……♡ アスナ、ご主人様の体、だ~い好き♡」
アスナは社長の胸に顔を埋めて、顔をこすりつけ、深く吸い込む。脂ぎった中年男の体臭、不快なはずの匂いを、さも幸せそうに嗅いでいる。
「大好き、んー……♡ 汗の匂い……♡ おじさんの匂い……♡ くさいのに、好き……♡♡」
あろうことか、網タイツに包んだ太ももをすり合わせていた。まさか匂いを嗅ぐだけで発情しているのか。
「ぶひひっ、そんなに好きなんだ?」
「うん……♡ でもね、もっと好きな匂いがあるの」
アスナの視線が、社長の股間に向けられた。
「んふふふ~♡ おっきくなってる♡ いっぱいキスしてぇ、興奮しちゃったの? んふふ~♡ おちんちんの匂い、早く嗅ぎたいな……♡♡」
社長が、顔を上げた。
「アスナちゃん、お薬飲んでるかな?」
薬?
アスナが、初めてアコのほうをちらりと見た。
「うん♡ ピル飲んでるし、日付も安全日だよ」
セックス・ドラッグのことではないらしい。
アコは一瞬ほっとして、そんな自分に腹が立って、唇を噛む。
部屋の隅で、メイド服を着た赤毛の女が動いた。
「おい、社長」
ネルが乱暴な仕草で小さな包みを投げる。社長は、それを慣れた手つきで受け取った。
「いつもの特注極厚品だぞ」
「ありがとうネル」
「ったく、あたしをいつもメイド扱いしやがって」
「ぶひひっ、今度お返しするよ」
「身体でだぞ? 忘れんなよ」
アスナが、するりとその場にしゃがみ込んだ。
網タイツに包まれた膝が床につく。バニースーツのハイレグから覗く腰骨が、ひざまずく姿勢でいっそう艶めかしく浮き上がる。
細長い指が社長の内腿を這い上がっていく。スラックス越しに、ゆっくりと……。腿の内側、その付け根、そしてもっこりと膨らんだ股間へ。指先でそっと輪郭をなぞりながら、もう片方の手をベルトのバックルに伸ばす。
「たまには『極うす』のも使って欲しいな?」
「それは絶対にダメ」
「も~ケチィ……。で~もぉ、ケチんぼのご主人様もかっこいいから……それアスナが付けたげる♡」
慣れた手つきでベルトとジッパーを外し、甲斐甲斐しくズボンを脱がせて、トランクスから半勃起状態のペニスを取り出す。
仮性包茎の醜いペニスだ。たるんだ皮が亀頭を包み隠し、先端だけが赤黒くちらりと覗いている。全体がどす黒く変色し、何百人もの女を犯してきたことを示していた。
サイズは大きくない、とミカは語っていた。むしろ普通か、それ以下なのかもしれない。
(情けない短小包茎……なのに)
アコの膣口が、きゅうっと収縮した。
あの醜いペニスに、さっき何度もイかされたのだ。挿入もされていないのに、身体が黒ずみの恐ろしさを覚えている。
何より、アスナにそれを握られている興奮と快感が同調で伝わってくるのだ。ありもしない肉の棒から、あごの下まで寒気のような興奮が流れてくる。
(な、なに……これ……っ)
当たり前だが、アコは自分の下半身に棒がついている感覚を知らない。けれど確かに、何かが、下腹部で快感を受け取っている感覚があった。
耐えられない。
ひどく重い手を動かし、力の入らない指を下腹部に這わせる。薄い肌の上を辿り、恥丘の少し上、ペニスの根元があるはずの場所を弱々しく押さえた。
何もない。温かい肌と、その下でどくどく血が巡る拍動だけ。なのに、手のひらの下で「何か」が存在を主張するように疼いている。
(ない……ないのに、ここに……)
指が離せない。その場所を押さえていないと、肌の下で暴れる何かが飛び出してきそうなのだ。
「今夜もいっぱい、気持ちよくなろうね♡」
全裸になった社長の前で、アスナは一度、大きく息を吸った。
息を止めたまま、半勃ちのものにそっと唇を寄せた。
ちゅ。
最初のキスは、亀頭の先端。皮の隙間から覗く赤黒い肌に、桜色の唇がそっと触れる。
ちゅ、ちゅ。
続いて、カリ首のくびれ。左側、右側。交互に。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
竿に沿って根元まで。
愛おしげに目を細めながら、アスナは勃起しかけのペニスに接吻を重ねていった。突き出したヒップを、キスのリズムに合わせてフリフリ揺らしている。
社長の肉棒がみるみるうちに硬くなっていく。
「んふふ♡ さっきまでふにゃふにゃだったのにぃ、もうこ~んなにカチカチ♡ ちゅっちゅしただけで元気になるの、かわいい♡」
アスナは勃起ペニスに頬ずりした。飼い犬を愛するように、幼子が親に甘えるように、バラ色のほっぺをすりつける。
顔でたっぷり愛撫してから、アスナはペニスの皮をむき下ろした。
「こんばんは、おちんちんさん……♡」
陶酔したように目を細め、亀頭のてっぺん──尿道口のある窪みに舌先を当てた。くにりくにり、小さく円を描くように刺激する。
「ぶひっ、アスナアスナッ、早くれろれろしてっ」
「んふ~♡ まだだよぉ。だってぇ、おちんちんの匂い、ここからもっとすごくなるもん……♡ 根っこの方、アスナまだ嗅いでないし♡」
頭を抑えようとする社長の手をかわして、アスナはピンクの舌で根元に触れた。陰毛が絡まる付け根から、べったりと這い上がっていく。竿の裏筋を辿り、カリ首の段差を乗り越え、亀頭のてっぺんまで。
「れぇ~……ろ……♡」
一舐めに、たっぷり五秒。それを七回。舐め上げるたびにアスナは軌道を変え、肉棒に自分の唾液を塗りつける。
昇った頭をゆっくり落とし、夢見るようにまぶたを伏せながら、肉棒を咥え込んでいく。アスナは恍惚と目を細め、噛み締めるように唇を閉じた。
──その一部始終、社長の「フェラチオされている感覚」が、アコの脳に流れ込んでいた。
口腔の温度が、身体の芯へじかに伝わってくる。体温よりも熱い、興奮で火照った女の口内。その熱に、アコの下腹部の奥が、じんわりと温められていく。
「ちゅる、ちゅる……♡」
舌が絡みつく。表面のざらつきが、神経の束を一本一本撫でていく。唾液のぬめりが、摩擦を甘美なものに変えている。
「ちゅうぅぅ……♡」
そして、吸われる。
頬の内側が窄まり、陰圧が生まれ、亀頭が引っ張られる。その吸引が、子宮を直接引っ張り上げるような錯覚を引き起こした。
(あったかい……おくちの中、あったかい……)
認めたくない言葉が脳裏に浮かんで、消えない。
下腹部を押さえていた手に、ぎゅっと力が入った。薄い肌が指の下でくぼむ感覚ごと、えぐり出してしまいたい。
でも快感は止まらない。手のひらの下から溢れ出るように、下腹部の奥が、じわ、じわ、と疼いていく。ないはずの棒が、あるはずのない熱を送りつけてくる。
アコの思考が、ぐちゃぐちゃにかき乱されていく。
(やめて……私の、身体じゃ、ない……)
それなのに、太腿の奥がじんと疼き始めていた。男の快感を受け取った身体が、女の反応を返そうとしている。男の快がそのまま女の快に変換されて、背骨を這い上がっていく。
(おかしい。こんなの、おかしいはずです。頭では、頭では分かっているのにっ)
なのに下腹を押さえた手はもう離せなくなっていた。そこに「ある」ものを押さえていないと、自分の体がどこまでも男に侵されていく気がする。
「んぱ、んん……♡ ねぇご主人様、お汁、いっぱい出てるよ……♡」
アスナは、亀頭の先端ににじんだ透明な液に舌先でちょんと触れた。それからリップをかぶせ、ちゅる、と吸う。唇がすぼまり、その奥で舌がうごめく気配がする。先走りの味を口内で転がしているのだ。
「んぅっ……♡ しょっぱくて、ちょっと苦ぁい……ご主人様の味……♡」
唇が妖しく弧を描いた。
舌を伸ばし、亀頭と竿の境目にあるくびれた部分を狙う。エラの段差に舌先を引っ掛け、ぐりぐりとこねるように刺激する。
「えろえろ~、ふふ、ちゅ、えろえろえろ~」
ねちねちと舌を遊ばせながら、完全勃起した肉棒の根元を右手で握る。親指と人差し指とで輪っかを作り、しゅっ、しゅっ、と竿をしごいていく。唾液で濡れた肉棒が手の動きに合わせてぬらぬらと光る。
その間に、アスナは左手でコンドームの小袋をつまみ上げた。袋の端を唇に挟み、器用にぷちっと歯で破る。
「んむ……♡」
ぁむ、と先端にキスをするような形で、ゴムの輪を被せる。
そこから唇と舌だけで、手を使わずに装着していく。唇でゴムのふちを押さえ、舌でサオに沿わせながら、少しずつ、少しずつ下ろしていく。口をすぼめたり、広げたり、首を傾けて角度を調整しながらスルスルと根元まで。
ぷはっと口を離すと、極厚コンドームが社長のペニスにぴったり張り付いていた。
「んっぷ……♡ はいぴったり♡ アスナとご主人様、これでいっぱいパコパコできるねっ♡♡」
アスナが瞳をトロン、とさせて笑ったとき──。
「社長……」
温もりが離れていく。アコの体から腕を解き、裸のままミカはベッドから降りた。裸の足がフローリングに触れた瞬間、ぴくんと肩をすくめる。行為後の火照った体に、床の冷たさが沁みたのだ。
それでも止まらない。ふらふらと──骨盤が安定しない、ぎこちない足取りで社長のもとへ。
「来てくれた」
途切れ途切れの声。喉が詰まっているのだろう。
「シュプレヒコール、聞いてくれたの? ほんとに? ほんとに来てくれたの?」
肩がかすかに震えていた。小さな手をきゅっと握り、胸の前で押さえている。裸の身体を隠すためではない。あふれそうな感情を、そうやって支えているのだろう。
(……怒ってはダメです。ミカさんは、久しぶりに好きな人に会えて、嬉しくて泣いているだけ……!)
社長がミカを見下ろした。オッドアイが、柔らかく細められる。
「あの、『平等に愛して』って……」
「うん、聞いたよ」
「やっと叶うの……?」
「うーん、平等には難しいかな」
社長は、ミカのあどけない輪郭へと指を伸ばした。親指と人差し指とで、小さなあご先を挟むように持ち上げる。
「ミカは僕のお姫様だもの。他の子と平等になんて、できないよ」
「あ、ああ……!」
「キスしてもいいかな」
「うん、欲しい……♡ キス、ちょうだい……♡♡」
ミカが、社長の胸に飛び込んだ。全裸の身体を押しつけ、両腕を首に回し、爪先立ちで背伸びをして唇を求める。華奢な身体が中年男の胸板に押し付けられ、汗ばんだ肌にぴたり、と張り付いた。
「んっ……♡ 社長……♡♡」
涙と鼻水で濡れた顔のまま、唇を合わせる。
その光景を、アコは見せつけられていた。
ミカさん、良かった。
ミカさん、逃げて。
二つの思いがせめぎ合う。何が正しく、何が間違っているのだろう。
──そして、下腹部を押さえていた手だけが、じわりと汗ばんでいることに、アコは気づかないふりをしていた。
「ご主人様、先にアスナとアコちゃんにかまって♡」
アスナがヒールを脱ぎ捨て、四つん這いでベッドに上がった。アコの寝ている方だ。
「こ、来ないで」
横に逃れようとする。しかしベッドの横はすぐに壁、たちまち追い詰められ組み敷かれた。
亜麻色のスーパーロングがカーテンのように垂れ下がり、アコの視界を狭め、世界をアスナだけにする。
「お待たせアコちゃん♡」
「待ってません」
「あ、ウソついた。い~けないんだ。言ったでしょ、アスナ勘がいいって。そーいうの、直感で分かっちゃうんだから」
切れ長の青い瞳がアコを見下ろしていた。とろけるような眼差しに、押さえきれない昂ぶりをにじませている。
感情を表すように、うさ耳カチューシャがぴょこっと揺れた。
「ねぇ、見ててね? 私とご主人様のラブラブなとこ、アコちゃんに見せてあげる♡」
吐息が顔にかかった。リップグロスの甘さ、キスの残り香──そしてその奥に、発情した女の身体から立ち昇る、かすかな
この女は、もう濡れているのだ。
顔を背けても、すぐそこにアコをも惑わす白い肉塊がある。青いバニー服からこぼれ落ちそうなメートル越えのバストが重力に従って重く実り、先端がアコの胸元すれすれで揺れていた。
(……見たくない。見たくない)
でも、目が閉じられない。
「ご主人様ぁ、早くぅ♡」
「ぶひぃ、そう急かさないで」
ベッドが沈んだ。社長がベッドの足元側に上がってきたのだ。アスナの背後に膝立ちで回り込んでいく。
何をしているのか、アコからはアスナの身体にさえぎられて見えない。
でも、分かる。
アスナのまぶたが半分だけ落ち、唇がわずかに開く。吐息が漏れ、首筋に鳥肌が立つ。
何をされているのか見えなくても、この顔を見れば分かる。下半身に男の手がかけられたのだ。
アスナが首をめぐらせて、背後の社長を見上げる。
「ねぇ、ご主人様……早く……♡ アスナのからだで、いっぱぁい気持ちよくなってぇ♡ アスナの身体で、ご主人様の性欲、おマンコで処理してぇ……♡♡」
アコは、媚びる横顔を真下から見上げていた。
幸せそうだった。瞳の奥には、子供がプレゼントを待つような純粋な期待と、女が男を迎え入れる直前の渇望が同居していた。これから犯される。その事実を、この女は心から喜んでいる。
「アスナ、ボタン外して」
「え~、ご主人様が外して? お願い♡」
「ぶひひ、しょうがないなあ」
アスナの下半身からパチン、パチンと何かのボタンを外す音がした。ついで、何かのジッパーを外す音。たぶん、男を迎え入れるための穴を開けたのだろう。
社長とアスナが、下半身の位置を合わせていく。
「いくよアスナ」
「うんっ♡」
ずぷっ。湿った音がした。
「あっきたっ……♡♡」
アスナはびくりと震え、肩をきゅっと丸める。アコを見下ろしていた青い瞳を見開き──そして次の瞬間、恍惚と細める。
「ふああっ、すてきぃ……」
唇の隙間から、甘い吐息が漏れた。頬に朱が差し、こめかみに汗の粒が浮かぶ。
苦痛の色はない。女子校時代、誰のものにもなろうとしなかった美少女は、いまや醜い中年男の愛人として交わりに歓喜している。
(っ!)
だがアコの胸にさすのは、苦しみばかりではない。
「こっ、れっ、アスナさん、のっ」
「そぉだよアコちゃ、あっ、ああっ、それがアスナのおまんこぉっ、ああっ、ご主人様に教えてもらった、女の子がいちばん気持ちよくなれるトコぉっ♡」
感覚同調だ。社長の男根がアスナの女陰に沈みこむ感覚が流れ込んでくる。自分の身体から伸びた何かが、温かくて柔らかいものに包まれていく。
いや、吸い込まれているのだ。とろりと蕩けた肉の壁が侵入者を歓迎している。興奮で火照る女の内側がぬるぬる、とろとろ、愛液を潤滑剤にして肉と肉との間を滑らせ、ひだで寄り添い、絡みつき、ぎゅっと締め付け、すぐに力が抜けて、また締まる。
きゅ、きゅ、きゅ、と脈打つようなリズムはまるで、
『待ってたよ♡』
『すっごく寂しかった♡』
『いらっしゃい』
と歓迎しているかのようだ。歓びが、収縮の一つ一つに込められている。
(そ、それに、それにっ)
アコは目を見開いた。視覚では、歓喜するアスナの顔しか見えない。なのに「入っていく」ことが分かる。見ているものと、感じているものが一致しない。
「ああっ……♡ お腹の奥、こつんってぇ……♡♡ 子宮にご主人様の形、押されてるぅ……♡♡」
アスナの声が鼓膜を震わせた。かすれて、湿って、熱を帯びた声。吐息を無理やり言語に成形したような音。
「ぶひぃ……あったけー……」
欲棒を奥まで埋めたまま、社長は静止していた。
女洞の中で肉棒がどくん、どくんと脈打っている。心臓が下半身に降りてきたかのような律動が、アスナの膣壁ごしにアコの感覚を内側から叩く。
「ねぇ、アコちゃん……♡」
アスナが、潤んだ瞳でアコを見下ろした。
「今ね、子宮口が……ご主人様の先っぽに、ちゅうちゅうしてるの……♡ 精液ちょうだいって……おねだりしてる……♡」
言われた瞬間、先端の感覚が鋭くなった。柔らかい輪が亀頭をくわえ込んでいる。ぷにぷにと吸い付き、きゅっと締まり、また緩む。ちゅぅ~♡ ちゅ~♡と赤子が乳首を吸うようなリズムだ。
「あっ、喋ってるだけで、締まっちゃ……♡ ご主人様ぁ、奥の奥、ぐりぐりってしてぇ♡ さっきアコちゃんに教えたとこ、おちんちんでこねてぇ……♡♡」
アスナの腰が小さく揺れ始めた。待ちきれないのだ。自分から腰を使って、くちゅ、くちゅ、と結合部から水音を漏らす。
揺れるたび、アコの子宮がきゅんと疼く。アスナが腰を引けば喪失感、押し込めば充足感。他人の性器の動きに、自分の内臓が反応している。
「ぶひひ、そんなに欲しいの?」
社長がアスナの腰骨を掴み、動きを止めた。
「じゃあ、たっぷりかわいがってあげるよぉ」
前後に動き始める。ずちゅっ、ずちゅっと、湿った音が響く。
「あッ、ふああッ、あんッ♡ はあああッ……♡」
その全てが、アコの脳に流れ込んでいた。
奥まで突くたびに、子宮口がちゅうっと吸い付いてくる。精液をください、とねだる。そのリズムに合わせて、アコの子宮もきゅんきゅんと疼く。
(奥が、きゅうって……吸いついてる)
怖気が走る。イけない体、善意で誘惑する
その事実こそが、いま最も恐ろしかった。不安に対してセックスが処方され、羞恥や罪悪感、怒りが快楽で奪われ続けたら。アコは、マイナスの感情が高まるほど、それをセックスで解決したがる女にされてしまうのだろうか……。
それこそ、母のような。
(こんなもの──こんなもの、私の身体じゃないっ)
激情のまま、下腹部に生えた見えない根を、爪を立てて引き千切ろうとする。
何もない。
(引きちぎれないっ……引きちぎれないっ……!)
爪だけが下腹の肌に赤い筋を残した。ペニスは掻き出せないのに、掻きむしった痕だけが、じんじん熱い。
「ああッ、アコちゃん♡ もっと、よく見てっ♡」
アスナが動き始めた。後ろから揺さぶられる勢いで、アコの身体の上を滑るように、四つん這いのまま少しずつ前に進む。
「ご主人様、ご主人様っ♡ アコちゃんのとこまで、おまんこ、連れてってあげてっ♡」
「ぶひひっ、いいよ」
ペニスの角度が変わる感覚。社長がバニーガールの腰を掴んで押し込むたびに、アスナの体がアコの上をじりじりと移動していく。移動に伴ってヴァギナとの摩擦が変化していく。
小さな顔が、視界から消えていく。代わりに現れたのは、揺れる肉の塊だった。ライトブルーの生地を押し上げ、溢れ出さんばかりに膨らんだJカップは、ピストンの衝撃でぶるん、ぶるんと波打っている。
その乳房が、アコの視界を埋めていく。
(柔らかい──)
性交の汗でぬらぬらと輝く乳肌は、触れるやいなやとろりと沈み込むように形を変える。興奮で火照った女の体温が、汗の湿り気を介して肌と肌とのあいだに淫靡な膜を作っていた。
「ん、ふふっ、アコちゃん、あっ、はぐぅっ、アスナのおっぱい、やわらかいでしょぉ♡ ぎゅってしてぇ、おっぱいの中にぃ、埋まっちゃえ♡♡」
視界が肌色で埋め尽くされ、アスナの匂いが呼吸のたびに鼻腔を満たす。
(もう、もうやめ、てっ)
犯す側の快感と包まれる側の安らぎが同時に身体を満たし、何もかもを溶かしていく。
アスナが嬌声まじりに叫ぶ。
「見て、アコちゃんっ、これ、これがっ」
「……っ?」
「必要なことなのっ、みんなが幸せになるためにっ、必要な、ことなのっ」
まったく意味が分からない。
幸せ?
不意に、ヒナの言葉が蘇った。
『人として見てあげて』
託児室で、赤ん坊を抱きながら言われた言葉だ。
『あれでも人の親なの』
『せめて、人として見てあげて』
──どうして、そんなことを思い出したのか。
いま、アコは感覚同調で「社長の快楽」を体験している。アスナに求められ、吸い付かれる喜び。
(ああ、ああっ、人間の感じる快楽? これが、人間?)
「そうっ、それっ、それがねっ、みんなが幸せになるために、必要な、ことなのっ」
四つん這いで男に貫かれながら、アスナはささやき続けていた。腰を揺さぶられ、喘ぎを漏らしながら、その声でアコの鼓膜を満たしていく。
「必要なことっ、必要なことなの」
言葉のひとつひとつに、子宮がきゅんと応えていた。必要、でひくつき、幸せ、でじわりと口を開く。アスナの声が膣壁を直に撫でているかのように、意味より先に肉が反応する。
アスナの身体がさらに前へ進み、バストがアコの顔から離れ、視界が開けていく。そして──。
「っ!」
息を呑む。
アスナの秘所がすぐ目の前にあった。きれいに剃り上げられた鼠径部。ぷっくり膨らんだラビア。バニースーツのクロッチ部分は外され、桃色に濡れた女性器だけが露出している。
その秘所に、社長のペニスが出入りしている。極厚コンドームを被せた肉棒が、アスナの膣口を押し広げて沈んでいた。
ずるり。桃色の粘膜がコンドームに吸い付いたままめくれ上がる。
──同時に、「引き留められる」感覚がアコの腰骨を鷲づかみにした。亀頭の全周を、濡れた肉ひだが舐め上げていく。
「ご主人様ぁ、抜かないでぇ、さっき入ったばっかりなのにぃっ……♡ 出てっちゃうと寂しいのぉ、アスナ専用おマンコなのにぃ、ご主人様のおちんちんの形しか覚えてないのにぃっ♡♡ ……あっ、あっ、また奥までっ、ずぷって……はあああッ♡♡♡」
ずぷぷぷっ……♡
押し込まれる。窄まっていた膣口が押し広げられ、根元まで飲み込んでいく。
アコは沈んでいく男根を見ている。飲み込んでいく女陰を感じている。視覚と同調感覚が完全に重なり、心よりも理性よりも先に脳で男女のセックスを理解していく。
視線を上げれば、前後する腰とくねるお尻との間に社長の姿も見えた。ぜい肉のついた腹が、ピストンのたびに揺れている。禿げ上がった頭に汗が染みだし、脂ぎった額が間接照明に照らされている。
(醜い、醜い、醜い)
嫌悪感しかない。でも──。
ぴりっ。
(おまんこ、あったかい)
ぴりっ。
(もっと奥、突きたい)
ぴりっ。
(アスナさんを犯してっ)
ぴりっ。
「ねぇ、社長」
ミカの声がして、アコは首を傾ける。
彼女は全裸のまま、社長の腕にすがりついていた。桃色の長い髪が額や頬にべったりと張り付いている。
「私、約束したの。アコちゃんに」
ミカの声は、涙を含んでいた。
「『幸せ』にするって。ちゃんと気持ちよくしてあげるって」
「……ん」
社長の腰が止まった。
ずぷ、と奥まで押し込んだまま──静止。
アスナの膣壁が「出さないで」と言うようにきゅうきゅう締めるのが、アコの下腹にまでじかに伝わってくる。止まったぶん、ひだの一枚一枚がねちっこくペニスにまとわりついて、それがまた堪らない。
社長の節くれだった手が、ミカの頭にそっと載った。
「でもダメだった。あの子の中に指入れて、舌でぐちゅぐちゅしてあげたのに、どんなにクリ吸っても、奥をこねても、イかせてあげられなかった。あの子、泣いてたの、悔しくて。だからお願い、社長のおちんちんで、あの子にも、してあげて?」
その言葉が、アコの鼓膜を貫いた。
身体が強張る。呼吸が止まる。
「アコちゃんのおまんこにも……社長のおちんちん、入れてあげて?」
「ミカ、さん、ダめっ、だめ、ですっ」
「大丈夫だよ、ぜったいイけるから。だってね……社長のおちんちんが奥に当たるとね、子宮がきゅぅーって、吸い付いちゃうの。そしたらもうダメ、頭の中まっしろ。あの気持ちよさ、アコちゃんにも分けてあげたいの」
純粋な、純粋な善意。アコを幸せにしたい、という一点の曇りもない祈り。
だからこそ──アコの膣口がひくり、と痙攣した。善意が、いちばん性器に効く。
「止めてって言ってるのに腰が勝手に動いちゃって、何度も何度もイッちゃって……っ、あっ、やだ、思い出しただけで、お腹の奥がじんってする……♡」
だがそれは、無意識の陵辱だ。ミカは快楽と幸福を伝道し、アコを社長の側に引き込もうとする恐ろしい敵。悪意なき、善意のレイプ。
(ミカさんに悪気はないんです。ないのに──ないから──おまんこが、とろとろになっていくんです)
アコは目を閉じようとした。もう見たくない。もう聞きたくない。こんな光景を、こんな言葉を受け入れたくない。
でも目が閉じられなかった。ヒュプノスペックが、それを許さない。
(本当にそう?)
疑問。それがある。知りたいという気持ちがある。
アコは自分の身体が勝手に目を開けていることに、そして腰を浮かせていることに気づいていた。
認めたくない。認めてはいけない。でも自分の体にウソはつけない。
腰が、動いていた。骨盤がピストンのリズムに引きずられて、かすかに前後している。
男の。
男の腰の動きだ。
今アコはペニスがヴァギナを前後するリズムを確認しながら、自分のお尻を揺らしている。ペニスの快とタイミングを合わせて腰を浮かせている。
「あっ、あっ、あっ、あっあっあ゛っ……♡♡」
ぎしっ、ぎしっ。ベッドがあげる悲鳴。
ぱんっ、ぱんっ。肉と肉がぶつかる音。
ぐちゅっ、ぐちゅっ。結合部からあふれる水音。
くちゅ、くちゅ。アコの股間からも音がしていた。
誰も触れていないのに、ただ腰を浮かせてヘコヘコさせているだけなのに、愛液が泡立ち、太ももを伝い、シーツを濡らしていく。
社長が突く。アスナが喘ぐ。アコがヘコる。三人の下半身が同じリズムで蠢く。
「やっ、やっ、そこぉっ、子宮っ、こりこりってっ♡♡ あっあ゛っ、おちん、ぽの、かたちがぁ゛♡♡♡」
「ぐひっ、アスナのおまんこ、奥がきゅうきゅう吸ってくるぅっ!」
「やっ、やだっ、そこっ、そこ気持ちいいのっ♡♡ 子宮、おちんちんでっ、押されるのっ♡♡♡」
社長がバニーガールへとのしかかり、お尻を潰して腰を押し付け、物欲しげに収縮する割れ目をこじりながら美女の奥底になにかをグリ付ける。
「お゛っ、しょこっ! 子宮に、おちんぽの形っ! お゛! ごりごりって……っ、ご主人様の形ぃ゛っ! やっ、やばっ、イっちゃ、イっちゃうっ……! 止まんないっ、止まんなくなるぅっ……!」
アスナの声が壊れていく。エロスという言葉をこねたような女がアコが聞いてもたまらなくなる甘啼きを低く、そして高く放つ。
低いうめきが喉の奥でぐちゃりと潰れ、裏返り、子猫みたいな嬌声になったかと思えばまた獣のように太く落ちる。あの整った美貌の奥底に飼われている、メスの叫びだった。
「ん゛お゛、ぉぉおお゛~~……っっ!!」
ぎゅうっ、ぎゅうっ、と膣壁の締め付けが強くなる。女がイく直前の痙攣だ。びくん、びくんとひきつるヴァギナの向こうで、子宮が精液を求めて吸い付いてくる。
下腹で脈打つ幻の肉越しに感じる、絶頂へと向かう一之瀬アスナの身体。それはとても──。
「ぶひーっ、たまんねぇ、精液上がってきそうっ!」
セックスとは、おまんこ穴でちんちんしごくことは、アスナみたいな美女に求められるのは、男にとって、こんなにも……。
「んんっ、出してっ、中にいっぱい出してっ♡♡」
「中はダメだっ、ゴム、ゴムに出すぞっ」
奇妙な会話が降ってくる。精液を求める甘い喘ぎと、ゴムに出すと拒む下品なあえぎ。女が欲しがり、男が断る──逆さまだ。
だけど疑問の追求はできない。
知りたい。
思考がシンプルになっている。
知りたい。
追い求めることしか考えられない。
知りたい。
男は、何のために女を犯すのか?
「──おほっ」
その声はアコのものだ。
喉からではない。潰れた喉を迂回して、腹の底からせり上がった、低く、太い声だった。
「おほっ、おほぉっ……お゛っ、お゛お゛……っ」
女の声ではない。色気も艶もない、腹腔をけいれんさせて押し出すだけの、獣の呻き。自分の口から出ている音が信じられず、アコは目を見開く。
(こんな──こんな無様な声が、わたしの──?)
止めようと、腹筋に力を込める。だがペニスを締め付ける膣壁が収縮するたびに、お腹が勝手にひきつれ、また醜い声が腹腔からこぼれ落ちる。
同時に、ペニス自身も限界だった。
金玉がきゅっと縮み上がる。尿道を、熱い塊が駆け上がろうとしている。
──出る。出そうだ。女を絶頂させながら、自分も中に吐き出す。その狂おしい快楽が、アコの背骨を焼いていた。
「ん゛っ! お゛、んきゅ……っ! ふぅ゛~っ! ふぅ゛~っ! ご主人様っ、アコちゃんっ、一緒にっ、一緒にイってっ! アスナの子宮にっ、熱いの、ぜんぶっ、注いでぇぇっ……!」
アスナの背中がびくん、とのけ反った。瞬間、ペニスを包んでいた肉壁がぎゅうぅっと絞り上がり──子宮口が亀頭の先端にちゅうっと吸い付いた。ぷにぷにした輪っかが先走りもろとも精液をすすり上げようとしている。
アコの腰もびくんびくん、仰向けのまま、誰にも犯されていないのに同じ痙攣をなぞっている。
「お゛……ぉぉぉぉ゛〜〜〜…………っっっ!」
けものの叫び。
その瞬間、身体に稲妻のような感覚が走り、全身がぎゅうっと縮こまる。
──射精の構えを取っている。
「な、に、これっ、出るッ、でますっ、何か出るっ」
恥骨の裏から押し上げられるような衝動。骨盤の一番奥、その一点が疼き、何かが放出されようとしている。
(──ああ、これが。これが射精なんですか)
狂おしい。一つのことしか考えられない。ペニスを包む暖かいものの中に、ぜんぶ吐き出したい。意識が針のようにとがって、体の中心にある棒が剣のように研ぎ澄まされ、思考が「出す」というただ一点に収束していく。
「ぶひーっ、イくっ、イくぞっ、アスナっ。おまんこ締めて……っ。イキまくってるアスナまんこに、出る……っ!」
「お゛、お゛ん! お゛……っ! ほぉ、あ゛! イ゛くっまたぁ゛、イ゛……っ!」
ぎゅうぅぅっっっ……♡♡♡と締め付けられる。アスナの膣壁がペニスを絞り上げ、収縮して、アコのちんぽを「出して出してっ♡」と締めてくる。
目の前でアスナが潮を吹き、それが脂の乗った腹肉をびしょびしょに濡らす。汚い。きたない。しかし肉からこみ上げる切迫感が、アコの思考を塗り潰す。
「ああ出るッ!」
びゅっ! びゅるるっ!
「っっっ!」
声にならないアコの悲鳴。
へその裏の、いちばん深いところで、せきが切れた。ありもしない尿道を、灼熱の塊が駆け上がる。
一波、二波、数えられない。脈打つたびに、骨盤の底から快感がしぼり上げられ、身体が知らないはずの先端からほとばしっていく。
身体が、自分のものではなくなっていた。腰が浮き、背が弓なりに反り、爪先が突っ張る。快楽の痙攣だけが、アコを支配していた。
「お゛ほぉぉぉ゛っっ──!」
腹の底から搾り出された絶叫が、部屋を震わせた。舌が突き出され、涙と唾液が顎を伝い、けいれんする腹筋がさらに浅ましい音を押し出した。
男の絶頂、これが男の絶頂か!
全身の力が潮のように引いていく。脳の奥を、温かい波が満たした。出し切った。何もかもを絞り出し、放ち、終えた。これまで味わったことのない、深い弛緩が全身を包んでいる。
(こんなの……こんなの、知らなかった……)
アコの目から涙があふれた。快感のせいか悲しみのせいか、自分でもわからない。
ただ、理解してしまった。心よりも理性よりも先に、脳が理解していた。
男がセックスに囚われる理由。この快感を求めて、何度でも女を抱きたくなる理由。あの社長が「何百人もの女性を幸せにした」と自信満々でいられる理由。
この、圧倒的な達成感!
「はぁ……はぁ……♡ アコちゃん、ご主人様……♡」
アスナの声が、陶然と揺れていた。絶頂の余韻にまだ浸っている──甘く蕩けた吐息が、言葉の輪郭をぼかしている。
「いっぱい……出たね……♡ コンドームの中、ぱんぱんだよ……♡♡」
アスナの内側も外側も、離したくないと言いたげだ。膣壁がペニスを柔らかく絞り上げ、余韻の収縮を繰り返している。離したくない、と肉そのものが懇願していた。
「ほんとはね……ゴム、ないほうがいいの……♡ だって子宮がね、ご主人様の赤ちゃん汁、直接ほしいって、きゅうきゅう言ってるもん……♡♡ でもご主人様が決めたことだから……アスナ、我慢する……えらい?」
「うん、えらいよ」
「社長……♡ すごい、アスナちゃん完全にメロメロじゃん……♡」
ミカは社長の二の腕にしがみつき、頬を押しつけている。細い指が男の腕に食い込んで、爪の先だけが白くなっていた。
「アスナちゃん、幸せそう……いいなぁ……♡ 私も、おちんちんでイきたい……♡ ねぇ、社長……♡ 次は、私にも……♡」
爪先立ちで背伸びをし、社長の胸元に顔を埋める。その拍子に、桃色の長い髪がはらりと背中に流れた。視線の先には、まだアスナとつながったままのペニスがある。
ミカと睦み合ったとき嗅いだ清潔なシーツの匂いは、もうどこにもなかった。部屋に充満しているのは汗と愛液と精液が混じり合った、甘く重い瘴気だ。吐息と吐息のあいだを、満足の余韻だけがたゆたっている。
しかし──。
(……私は?)
アコの身体は、満たされていなかった。男の絶頂は味わったのに、女のアコは空っぽのままだ。出しても、出しても、子宮が泣いている。
膣がひくひくと収縮している。入れて、入れて、と口を開けて懇願している。脳は「イった」と認識しているのに、ヴァギナだけが取り残されている。
イけない。女としての絶頂が、できない。
さっきまで下腹部を掻きむしっていた手が、今はシーツの上で力なく開いている。引きちぎろうとした、ありもしないペニス。あの拳を、もう握り直すこともできない。指が一本ずつ、ゆっくりと伸びていく──何かを求めるように。
死にたくなるほどの、性的飢餓。
「──ぶひひっ、すごいな、アスナまんこ。ザーメンぜんぶ搾られちゃった」
社長が腰を引いた。アコの目前で、ペニスが脈打ちながらズルリと抜けていく。根元には愛液がぐるりとこびりついていた。
「いっぱい、でたねぇ、アコちゃん……♡♡♡」
赤く輝く実の中に、ぎゅっと詰まった小さな粒……一之瀬アスナの
ゆっくりと……まるで、蜘蛛が地獄に一すじの糸を垂らすように。
「っ」
「ねえ、アコちゃん……ペルセポネのザクロって……知ってる?」
「……知ってるに決まってます」
なにしろ、そのギリシャ神話をアスナに教えたのは他ならぬアコなのだから。
友達だった。勉強を教えて、根気よく面倒を見た。その代わりに危ないときは助けてもらったし、泣きたいときは胸を貸してもらった。一生ずっと友達でいたかったのに、なのに……。
「ペルセポネが口にしたザクロは……」
それは生と死を行き来する果実──冥界の食物だ。ハーデスはペルセポネに恋をし、彼女を冥界に連れ去った。冥界のザクロを口にしたペルセポネは、哀れハデースの妻として生きることを余儀なくされた。
しかし──あの神話は、どういう結末を迎えていたのだったか?
「飲んで、アコちゃん♡」
陽炎のような湯気が立ち昇っていた。セックスで灼けたアスナの秘所から──ザクロの果肉を割ったような、甘酸っぱく、それでいて生臭い、命そのものの匂いが漂ってくる。
アコの唇の上で、体液がゆっくりと、口の中へ滑り込もうとしていた。
(続く)
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