プリマドンナ~TS転移娘がふたなりサキュバスに堕とされる話~ 作:Sfon
「――ナ……ミーナ、ミーナ」
肩を揺り動かされ、目を覚ます。寝ぼけた視界の正面にニカさんの顔があって驚き、思わず飛び起きてしまった。ソファに寝っ転がったオレと目線を合わせるためにしゃがんでくれていたみたいだけど、寝起き直後に超顔の良いニカさんの面を至近距離で見せられるなんて心臓に悪いからやめてほしい。
「うおっ⁉ お、おはようございます」
ソファに座り直し、眠気が覚めるのを待つ。視界と意識がゆっくりとはっきりしてきて、オナニーに疲れて寝てしまったのを思い出し、首筋がほんのり熱くなってきた。自分の体を見下ろすと、キチンと服を着ていたから、流石に後処理をちゃんとしてから寝たみたいだ。よかったよかった。
ちょっと疲れた表情のニカさんは、ついさっきまで勉強をしていたんだろう。そんな彼女を尻目にオレは好き勝手過ごしてしまっていたから、少し引け目を感じる。もちろんニカさんはそんなこと知る由もなく、優しい顔をしていた。
「お風呂に入りましょ。女の子のお風呂の入り方、分かる?」
「まぁ、男だったし、何も分からないですけど」
「そうよね。一緒に入ってあげるから、できるだけ早く覚えてよね」
ニカさんと一緒にお風呂。ということは、自分の裸がニカさんに見られてしまうのか。ついさっきまでオナニーをしていたこの体、ニカさんにバレなければいいけれど。できる限りキレイにはしたけれど、匂いが残っているかもしれないし、下着は取り換えられていないから、染みが付いたままで何となくお股が気持ち悪い。男と違って、オナニーしている間にも汚れてしまうのは困ったものだ。男だったらフィニッシュの瞬間だけティッシュでも当てればそれで済むのに、女の子は愛液がだらだら零れてしまう。
(というか、ニカさんとお風呂って、まさかニカさんも裸になるのか……⁉)
オレだけ裸になって、彼女は服を着たままというのはあり得るんだろうか。無い訳じゃないだろうけど、もしも彼女も裸になって、浴室という狭い密閉空間に押し込められたとしたら、オレは耐えられるんだろうか。自分の体ですら頭がくらくらするぐらいだったのに、自分の好みドンズバな女の子の体を直視したら、あまりの興奮に倒れてしまう気がする。
いくら翼と尻尾が生えているといっても、大部分は普通の女の子と変わらないんだ。いままでずいぶんと優しくしてもらったから、ニカさんへの恐怖心がだいぶ無くなっているのも良くない。気持ちを強く保つ手段が一つ失われてしまっている。こんな状況なのに二人でお風呂だなんて、あまりにもハードルが高かった。
それに、『女の子の体の洗い方を教えてあげるから』ってこの体に触れられたら、それだけで変な声を出してしまうだろう。まだ体の奥底で熱が
(そんなの、男として終わってしまう気がする。クリトリスだけであんなに気持ちよかったのに、他のところまで触られたら、頭が狂ってもおかしくないのでは……?)
あまりの緊張に体を硬くしながら、部屋着を持ち、二人揃ってお風呂場へ向かう。脱衣所は二人立っても余裕があるほど広々としているし、洗濯機や独立した洗面台もあって、寮の設備としてはあまりにも豪華だ。
「うわ、すごいお風呂。ホテルみたいじゃん」
「メスと一緒に入る前提なんでしょうね」
緊張を隠すようにして、余裕ぶった口ぶりで話しかけた。それは実際のところ時間稼ぎであり、内心は『本当に二人で入るのか、オレの裸を見せるのか』と二の足を踏んでいる。そうしてもたもたしていたら、先に入ったニカさんが当然のように服を脱ぎ始め、慌てて背を向けて彼女のストリップショーを視界に入れないようにした。そんなオレの情けない姿を見たのだろう、背中越しに呆れたようなニカさんの声がかかる。
「どうしたの? 脱がないとお風呂入れないでしょ」
「いや、流石に女の子の裸を見るのは気が引けるな、と思って」
「これから沢山見ることになるのよ。慣れるなら早い方がいいじゃない」
それはつまり、今後ニカさんとお互い全裸になってえっちなことをするってことか。オレを気持ちよくしてくれる一方的なものじゃなくって、オレもニカさんに触れる双方向のえっち。想像しただけで鼻血が出てしまいそう。
確かに、その時になって初めてニカさんの裸を見たら、あまりの興奮に気絶してしまってもおかしくない。だから今のうちに、段階的に慣らしていくのは大事だというのは理解できる。しかし、そんな簡単に割り切れるものでも無かった。好きな人の裸なんて、しかも、ニカさんみたいにオレの好みのど真ん中を射抜いている人の裸なんて、あまりにも眩しすぎる。
(でも、このまま服を脱がないでいるわけにも、いかないよな)
できるだけニカさんのことを見ないようにしながら、服を一枚ずつ脱いでいく。パーカーとスキニーを脱いでブラジャーを外すと、胸元の締め付けが無くなり、それがちょっと心もとなく感じて、もう女の子の下着に飼いならされたのかと少しショックだった。
「脱いだ服は籠に入れておいてね。下着は分けて洗うから、下着の入っている籠に」
「分かった」
パーカーとスキニーは脇によけて、キャミソールとブラを籠に放り込む。その時、あくまで不可抗力によるものであり、意識してみたわけではないけれど、ニカさんの下着が目に入った。黒のレースで飾られたショーツと、同じデザインのブラ。オレのと比べてずっと大きなカップの付いたそれは、いかにも『女性の下着』といった見た目だった。
下着を買ったときに女の子の下着への免疫は多少ついたと思っていたけれど、ニカさんのそれはオレのものと全く違うジャンルのものに思えた。そうしてニカさんの下着を見ていたのがバレたのだろう。すでに浴室へ向かおうとしていたニカさんが、背後から声を掛けた。
「……えっち」
「なっ……別にいいじゃないですか。オレだって着けてるんですから」
「なら、顔を赤くしちゃだめよ」
背中越しに聞こえる、ニカさんのからかい声。恥ずかしがらないなんて、そんなの無理に決まってるじゃないか。少なくとも見た目はめちゃくちゃ大好きな、女の子がつけていた下着なんだから。
そんなに分かりやすい顔をしていたのかとモヤモヤしつつ、最後の砦であるショーツを脱いで、そっと洗濯籠に入れた。さっきオナニーしたせいでシミがついているかもしれないから、できるだけクロッチ部分が見えないように気を付けて、隠すように。
身にまとっていたものを全部脱いだのは、この世界に来てから二度目、目が覚めたあの時以来だ。胸が膨らんでいて、股間には何もついていない、この感覚。下着に覆われていないせいで、動くたびに胸が僅かに揺れるから気になってしょうがない。
「ほら、入るわよ」
「わ、分かってますよ……」
ニカさんに呼ばれ、浴室に入った。彼女の裸が視界に入らないように床を見ながら歩みを進めるけれど、それはそれで自分の体が視界に入ってしまって気が気でない。ツンと尖ったピンク色の乳首と、それで彩られたふっくらバスト、そして下半身がその下に続く。この世界に来てすぐに見た自分の裸だけど、全然慣れなくて胸が高鳴った。あまりにもナルシストが過ぎるけれど、やっぱりこの体はとても可愛くて、綺麗で、えっちだ。
(ニカさんの裸を見てしまうくらいなら、自分の裸をじろじろ見ているって思われたほうがマシだ)
そう考えるものの、オレが一目惚れした人の裸がすぐそこにあるんだから、やはり見たくないわけがなかった。もしかしたら今後またとない機会になるかもしれない。ニカさんはこれから何度も裸の付き合いをすることになるって言っているけれど、それもどこまで本当なのかは定かではない。
それなら、この好機を逃さないほうが良いのではないか。ここで勇気を出さなかったら、後々後悔するのではないか。そんな気もしてくる。そして結局、己の良心と欲望がせめぎあった末に、そっと横目で盗み見た。豊かな胸、綺麗な色形の乳首、くびれた腰。股間はすっきりとしていて毛もなく、背中の翼と腰のしっぽが異質なだけで、他は絵画かと思うくらいに洗練された景色だ。
そうして視線をちらちら送っていたら、当然ニカさんにバレた。考えてみれば当たり前のことだけど、それでも視線を向けるのを止められない。この恥ずかしさは甘んじて受け入れる他なかった。彼女の表情が軽蔑するようなものでは無く、まるで子供の悪戯を見る母親のような、暖かい苦笑を浮かべていたのは幸いだった。
「別に正面から見ればいいのに。私の体、気になるんでしょ? 私はミーナの体を眺めてとっても満足してるし、ミーナも好きにすればいいわよ」
また、呆れ声。妙に煮え切らないオレの態度が面白いのか、声色は暗くない。
「そんなこと言われても、やっぱり元男としては恥じらいってものがあるわけで」
「今は同性でしょ。自分の体にも付いてるんだから。私からしてみれば女の子の体とサキュバスの体は全然別物なんだけど、あなたの世界からしてみればどっちも変わんないらしいし」
裸を見られても恥ずかしがる素振りは微塵もないし、流石サキュバスといったところか。容姿への自信はかなりお持ちのようだ。オレは女の子の裸にまるで耐性がなくて、きっと顔が真っ赤になってしまっているだろう。本人にお誘いいただいたところで、彼女の体をまじまじと見ることなんてできない。
そうだ、ニカさんはオレの裸を見ることに慣れたんだろうか。この世界に来てすぐ、実習室でストリップショーをしてしまった時のニカさんの反応は、今のオレよりはマシだったけど、初心な女の子っぽいものだったはず。それなのに、今は随分余裕の口ぶりだし、なんだかんだ言って、オレの、女の子の、メスの裸を見ても動揺しなくなったのだろうか。
もしそうだとしたら、ニカさんに負けた感じがして嫌だ。オレがこんなに恥ずかしいんだから、ニカさんにだって恥ずかしがってもらいたい。オレだけが困っているなんて気に食わない。そう思ってニカさんの顔を覗き見た。耳の先端まで真っ赤にして、オレの体から視線をそらしているわりに、こちらを横目でチラチラと見ていた。
(なんだ、ニカさんだって、そうなんじゃないか)
お風呂場は一般的な新しめのマンションと変わらない。しいて言えば洗い場が比較的広めで、椅子が二つあることくらいか。そのうち一つは真ん中がへこんでいる『スケベ椅子』で、その使い方は言うまでもない。
(これは……そういうことだよな)
一応空気を読んでそっちに座り、ニカさんの動きを待つ。裸で椅子に座ると股間が丸見えになってしまってどこか気恥ずかしく、かと言って足を揃えて横に流すのはあまりにも女の子っぽくて長続きしなかった。すべすべとした太もも同士がくっつく感覚も心臓に優しくない。色々試して、なるようになれと男の頃のようにどっかりと座った。
目の前には大きな鏡、そこには裸のオレとニカさんの姿。少女から抜け出していない体のオレと、成長した女性の入り口にいるニカさん。それは対照的で、オレの幼さやニカさんの女の子らしさが互いに引き立て合っていて、直視できなくて、目線を
オレが椅子に座るだけでもあたふたしていた間に、ニカさんはシャワーの温度を確かめており、そのおかげで浴室もだいぶ温まった。お風呂特有の、お湯の匂いがする。肌がしっとりと湿り、長い髪が背中や首筋、顔にくっついた。
「それじゃ、髪から洗っていくわよ。私もミーナも代謝はないけれど、埃とかは体に付いちゃうし、えっちをしたら汚れるから、きちんと毎日洗わないとだめだからね」
あまりにもアッサリと言われたから一度聞き流してしまい、頭の中で反芻したときにたまたま引っかかった。体を洗うのは当然として、なんだって?
(代謝がない。それって、どういうことだ?)
生物ならあって当然のもの。古びた細胞は垢や便となって排出され、摂取した栄養を元に新しい細胞が作られる、その営みが丸ごと無いと言うつもりか。それではまるで――。
「オレって人間じゃない、んですか?」
まさかそんな質問が飛んでくるとは、ニカさんも思っていなかったのだろう。横目で彼女の様子を盗みれば、面食らった顔をしていた。とはいえすぐに気を取り直し、オレに優しい表情を向けて、暖かい声で説明してくれる。
「ミーナは人間よ。それは間違いないわ。でも、トイレもしないし、老いもしない。文字通り、ミーナに『汚いところなんて無い』のよ。今日一日過ごしても、トイレに一度だって行っていないでしょ? プリマドンナのメスはみんなそうだし、サキュバスも同じ。あ、でも、普通の人間や他の動物は代謝があるわ。人間のメスに関しては、サキュバスのものになったら期限付きの魔術で老化を止めたり、代謝を無くしたりするんだけど」
思い返してみれば、晩御飯をしっかり食べて、飲み物も飲んだのに、トイレに行きたい気分には全然ならない。食べたものがどこに行っているのかは不思議だけど、魔術が使えるこの世界なんだからやりようはいくらでもあるんだろう。しかし、代謝の件を超える、また新しい話が出た。
「ちょ、ちょっと待ってください。老いもしないって、死なないってことですか?」
「事故や外傷によって死ぬ可能性はあるけれど、老衰による死は無いわね。それは私たちサキュバスも同じ」
「それなら、人口は増えていく一方で、そんなの、大丈夫なんですか?」
「新しい居住地域が次々に生み出されているから、少なくとも数百年は大丈夫らしいわね。それに、サキュバスはそう簡単に繁殖しないのよ。詳しくはお風呂上りに教えてあげるわ」
サキュバスとプリマドンナのメスには自然死が無い。それはつまり、ニカさんとオレは文字通り永遠に共に暮らすということなのだろうか。それとも、どこかで人生に飽きて、終わりを作るのだろうか。浴室で素っ裸になったまま考えることじゃ無いのは確かだけれど、まさかこんな話をされるなんて思っていなくて、頭の中でとりとめのない思考が渦巻く。正直なところ、ニカさんに『冗談よ』と言われるほうがマシだった。何せ、永遠の命なんて、遥か昔に作られた創作から続く、禁忌の代名詞なのだから。
「で、髪を洗うけど、髪の手入れはするに越したことがないから、しっかり覚えるのよ」
「は、はい」
オレの頭の中は情報の濁流が波しぶきを上げているままだというのに、ニカさんは話を切り上げてお風呂の説明に移ってしまった。一旦手を止めてもらってゆっくり話を聞きたいところだけれど、一度話を始めたらそれこそ簡単には終わらないだろう。しょうがないが、ニカさんに合わせてお風呂の入り方講座に頭を切り替えた。
「まずは目の荒いブラシで髪を梳くの。埃を落して、頭皮についた汚れも浮かせて、あとはマッサージにもなるわね。力加減は大丈夫かしら」
「大丈夫、気持ちいいです」
てっきり最初に髪をお湯で濡らすと思っていたけど、ブラシが頭頂部から毛先に向かって掛けられていくと、頭皮のコリがほぐされていく気持ちよさに、思わず目が蕩けてしまう。難しいことを急に考えていたせいだろうか、頭がすっかり固くなっていたようだ。
「次に予洗いね。シャワーのお湯で全体をすすぐの。お湯の温度はどう?」
「ちょうどいい感じですよ」
シャワーのお湯が頭頂部から掛けられて、暖かいお湯の心地よさに体の力すら抜けてしまいそう。長い髪が濡れたことで、背中にぺったりと張り付く違和感はあるけれど、それよりも暖かさの心地よさが勝っていた。一人でお風呂に入るときなんて流れ作業を手早くこなすだけだったから、こんなにゆっくりのんびりとするなんて一周回って新鮮だった。
そして、シャンプーを手に取って、いざ頭を洗ってもらうフェーズになったとき。オレの頭にニカさんの手が触れた瞬間だった。
「ひゃぅっ♡ ちょ、ちょっと、ミーナ……」
「な、なんです?」
急に背後のニカさんが艶のある声を出したかと思ったら、背中に暖かくて柔らかいような芯のあるようなものの感触。一向に頭が洗われなくっておかしいと思っていたら、その時。恥ずかしさの中から絞り出すような声が、後ろからかけられた。
「ミーナ……オナニーしたでしょ。しかも中途半端に」
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