プリマドンナ~TS転移娘がふたなりサキュバスに堕とされる話~ 作:Sfon
駅を出てすぐにタクシーを拾い、路面店の並ぶエリアまでやってきた。記憶のものと大差ない街並みにどこかほっとしたのもつかの間、ニカさんに手を引かれてやってきたのは下着の専門店で、思わず入り口の前で立ち止まってしまう。ニカさんの手を握っているから、彼女を引き留めることにもなってしまって、二人して店の入り口で立つことに。当然、道行く人からは怪訝な目を向けられた。
「ほら、大丈夫だから。いくわよ。ここで突っ立ってるわけにもいかないでしょ?」
そう言われたって、オレの心は男のままなんだから、かなり強い抵抗感があって当然だろう。明らかに男子禁制だと分かるショーウィンドウの中には、フリルのついた可愛らしいブラやショーツなどが並んでいる。ガラス製の扉から覗く内装は白基調にパステルカラーの明るい雰囲気で、店内の見える範囲一面に下着が並べられていた。近くを通りかかるだけでも変な目で見られないか気にしてしまう小心者のオレにとって、その店内に入るなんて足がすくんでしまう。
「こんな、いかにも大人っぽいお店で買わなくてもいいんじゃないです? ファストファッションのお店で、それこそ小学生が買うようなものを買えば十分なんじゃ。こんな、いかにも女の子の店って感じの所に行かなくても……」
「ダメよ。プリマドンナのメスたるもの、質のいいものを身に着けてもらわないと困るわ。ミーナがよくてもわたしの評判が落ちるし、そうなれば困るのはミーナよ? 主人がナメられたら、ミーナにだって被害が及ぶかもしれないんだから」
「なら、ニカさんだけ店の中に入って、良さそうなものを買ってきてくれれば――」
「肌着はサイズが合っていないと辛いわよ? 肌に食い込んだり、擦れたりして、痛い思いをするのはミーナだし。そもそもミーナを一人で外に放っておけるわけがないでしょ」
言っていることは正しいと理解できるし、正直なところ、ほんの僅かではあるものの、女の子らしい下着に興味がある。男の下着とは違ってデザインに
でも、今まで生きてきた中で植え付けられた常識が邪魔をして、どうしても体が納得してくれなくて、一歩も踏み出せない。手を握ったままニカさんの顔を見上げて、何とか許してくれないかと懇願の視線を送ると、困った表情のニカさんはやがて諦めたようにため息をついた。
「……はぁ、しょうがないわね」
これは泣き落としが成功したか、そう思ったとき。ニカさんの腕がオレの背中と膝裏にまわされて、そのまま抱き上げられた。それはいわゆるお姫様抱っこで、急な浮遊感に驚いてニカさんの首に抱き着く。
「ちょっ、急にどうしたの⁉」
「悪いけど、これだけは譲れないから」
まさかこんな強硬手段に出るとは、そしてニカさんがこんなに力持ちだとは思わなかった。あまりにも思考の外にあった行動に面食らってしまい、ろくな抵抗もできないままお店の中へと連行される。周囲からは好奇の目で見られ、途端に、下着店に入る恥ずかしさを、お姫様抱っこをされている恥ずかしさが塗りつぶしていった。こんなことなら、素直にお店へ入ればよかった。
ニカさんが声を掛けた店員さんは二十代前半の見た目をしているサキュバスで、オレへ容赦のない視線を向ける。とはいえ店員であるからか、何か口に出すようなことはしていない。その舐めるような視線は、お姫様抱っこされていることに対してだろうか。それとも、オレの体に対してだろうか。
「この子の下着を十着ほど見繕っていただけます?」
「わぁ、プリマドンナになられたんですね! おめでとうございます!」
「ありがとう、嬉しいわ」
オレを抱き上げながらも呑気に会話する二人。あまりにもオレがお姫様抱っこされていることに言及しないから、なんだか無視されているような気分だ。でも店員さんの視線はオレの顔や首、胸と上から下へなぞっていって、それがとてもくすぐったい。
「ニ、ニカさん、下ろしてよ」
「暴れたり、逃げたりしたらだめよ?」
「もう諦めたよ、そんなことしないって」
ゆっくりとニカさんさんに下ろしてもらうと、すぐに店員さんに連れられて試着室へ向かった。当たり前だが、この店員さんもオレより背が高くって、やっぱりちょっと怖い。電車の中での一件があってから、ニカさん以外のサキュバスには多かれ少なかれ苦手意識が湧いてしまう。
試着室に入って店員さんがメジャーを構える。大人しく立っていると、思わず戸惑ってしまうお願いをされた。
「じゃあ、サイズを正しく測りたいので、下着だけになっていただけますか?」
「えっ、上も下もですか?」
「はい。ご安心ください、皆さんそうやって測っていますから。下着は体にぴったり合ったものじゃないといけないので、ちゃんとサイズを測るのは大事なんです」
もっともらしい理由を述べられては断りづらく、専門店という信頼も少しはあって、文句を言うこともできない。言われた通りにスキニーとパーカーを脱いで下着姿になると、胸の周りにメジャーを当てられた。
「軽く脇を開けて、お辞儀するみたいに体を前に倒してもらえますか?」
店員さんの言われたとおりにすると、メジャーが胸の膨らみのふもとにあてられ、軽く締め付けられ、すぐに解放された。続いて胸の一番高いところにメジャーを回され、また軽く締め付けられる。その時、メジャーが乳首を軽く弾いて、声は我慢したものの、思わず肩をビクンと震わせてしまった。
「ん……っ♡」
「あ、ごめんなさい。もう終わりましたから」
ちらっと店員さんの様子を窺うと、鼻の下が伸びている気がするし、どこか視線もいやらしい気がする。しかし、ニカさんが選んでくれたお店なんだし、店員さんが変なことをするとは思いづらい。まさか故意じゃないだろう。単にサイズを計測しているだけで、『セクハラだったかもしれない』なんて、オレの思い上がりであってほしい。きっと、一番高いところのサイズを測らないといけないとか、そういう理由があるに違いない。
「だ、大丈夫です……」
唐突な性的快感に、心臓がバクバクとうるさい。この世界に来てから、この体になってから初めての快感なのだ。しかも、乳首を弄られて。きっと顔中真っ赤になってしまっているだろう。『こんなことで感じちゃうなんて、敏感な体なんですね』となじられてもおかしくない反応をしてしまって、穴に入りたいくらいに恥ずかしかった。
「測り終わりましたから、いくつか持ってきますね。しばらくお待ちください」
店員さんはサイズをメモすると、試着室から出ていった。そして、それはつまり、この世界に来てから初めて、自分一人の時間ができたということだった。さらに、まさに今乳首を弄られた快感で体に火が付いたとなれば、自分の体に興味が向かってしまうのも仕方ないだろう。
目の前には試着室特有の大きな鏡。その中にはキャミソールとショーツだけを身に着けた黒髪ロング碧眼美少女の姿がある。これが今のオレの姿だと言われても、まだまだ慣れるには時間がかかりそうだ。
鏡の中の彼女を見てから、自分の体を見下ろしてみる。すると、鏡の中の女の子と同じ服が自分の体を覆っている。そっと胸に手を当てれば、指先が胸の中へと柔らかく沈み込んだ。下から脂肪を集めるようにして持ち上げると、ちょっとした山ができる。
(う、うわ……柔らかい……)
実習室でも軽くは触れたけれど、あの時はニカさんに声をかけられたからそれほどゆっくりは触っていなかった。それに、初めて自分の体を見たせいで余裕が無かったから、ハッキリとは覚えていない。
しかし、今は違う。慣れたとは言い難いが、既に一度見たことのある体だ。しかも今回は下着を着けていて、比較的目に優しくもある。胸の形が変わらない程度にそっと触れ、撫でるように手を動かすと、自分の胸が膨らんでいるんだと触覚を通して理解できた。そして指先が胸の頂を通ったとき。
「ふぅっ……♡」
キャミソール越しにわかる、脂肪とは異なる感触。初めは柔らかかったのに、癖になって何度か触っているうちにしこりが出来上がり、服の上からでも見て取れるほどの突起となった。
(やばい、乳首ってこんなに気持ちいいんだ……っ♡)
男にもある器官ながらも、その大きさや形は明らかに異なる。ぷっくりと膨れ上がったそこは性器としての魅力に溢れていて、思わずキャミソールをたくし上げた。鏡に映ったのは、ほんのり色づいたおっぱいの中心で、ピンク色に染まっている蕾。
(これが小さい女の子の乳首……。色鮮やかで、くすみが無くて、なのにちゃんと硬くなってる……♡)
小さなおっぱいの上にキャミソールを何とかひっかけて、両手でおっぱいを下から支えて、指先で乳首をクルクルと撫で上げる。それだけで背筋が痺れるような快感が生まれた。腰をくねくねと動かして快感に
(乳首でこれなら、あそこは……っ♡)
一度初めてしまえば、そこから進むことに大した抵抗は無かった。ショーツの上にそっと手を添えると、既にじっとりと湿った感触がする。乳首を軽く弄っただけなのに、もう濡らしてしまったのだろうか。重くなったその生地の上を伝い、割れ目を指先で僅かに撫で上げると。
「んっ……♡」
そこは、単なる体の一部というには敏感過ぎた。男では絶対に経験できない、今までに無い感触が快感となって、ただ股間の割れ目をなぞるだけで、お腹の底から背中を通って首へと昇ってくる。
下着に包まれた股間はふっくらとした脂肪が柔らかく、指先で軽く突くと簡単に形を変える。そして、その割れ目を股間の真下からお腹側に向かって撫で上げたとき。
「あ、んっ……♡」
明らかに他の部分とは違い、鋭い快感が生まれる部分を見つけた。それはちょうど割れ目の上端に当たる場所で、その部分を指先で上下に擦ると、まるで亀頭オナニーをしているような、でもそれよりずっと濃い快感が込み上げる。粘膜を擦られているようなピリッとした快感だ。
(そっか、ここがクリトリス……)
注意深く触ってみると、確かに指先に感じる小さな突起があった。お豆さんとか言うんだからもっと大きいものかと思っていたけど、割れ目の奥に沈み込んでしまっていてよく分からない。片手でクリの上をクルクルと回すように刺激しながら、もう片方の手で胸を揉んでみる。鏡の中に視線をふと戻してみれば、そこには顔を真っ赤にして立ちながらオナっている美少女が居た。
(やばい、オレが可愛すぎる……♡)
頬を染め、目を潤ませて快楽に溺れようとしているその表情は、幼い顔つきと相まって犯罪的な魅力を持っていた。こんなに可愛い女の子になったのなら、一度イってみたい。更衣室の中、お店の中にいるということも頭の中から消え失せて、性欲が体を突き動かした。だから、声を上げて快感に溺れる前に、水を差されたのは本当に幸運だったのだろう。
「お客さま、お持ちしましたから、中に入りますね~?」
「――ッ⁉ は、はーい!」
慌てて手を体から放し、キャミソールの裾で手を拭い、一度深呼吸をして気持ちを落ち着けようとしたとき、ようやく気付いた。鏡に映っている少女は顔を真っ赤に染めているし、ショーツは股間に小さなシミができてしまっているだろう。生地が白いのに加えて横からは見えない位置も幸いして一見しただけでは分からないが、確認しようと覗き込まれたらバレてしまう。
手の匂いを嗅いでみたら甘酸っぱい匂いがして、これが女の子のエッチな匂いなんだろうか。自分じゃ分からないけれど、もしかしたら更衣室に匂いが充満しているかもしれない。今の状態で店員さんが試着室に入ったら、『さっきまでオナニーていたんだな』ってバレてしまうかもしれない。しかし後悔したところで、気づくのがあまりにも遅すぎて、もはやどうしようもない。解決策を必死に考えても、何も思い浮かばず、もう諦めるしかなかった。
試着室のカーテンを開けると、店員さんが大きな籠一杯に沢山の下着を詰め込んで立っていた。その顔を見て、『ああ、すべて理解されたんだな』とすぐに分かった。だって、店員さんはオレがカーテンを開けるやいなや深呼吸して、恍惚の表情を浮かべたから。
「……大丈夫ですよ、私からは何もしませんから♡」
「――っ♡ は、はい……っ」
あれこれ取り繕ったところで無駄に違いなく、こうなってしまったら観念するしかなかった。初めてこの体を見た時と言い、この体を鏡越しに見た時はいつもこうだ。まるでこの裸体には魔法でもかけられているようだし、それが自分にも効いてしまうのは困ったものだった。
店員さんが手に抱えている、籠いっぱいのブラジャーとショーツ。なんとなく見るのが
「いろんなタイプがありますから、とりあえず色々試してみましょうね」
店員さんは籠を床に下ろし、最初に試すものを吟味しているようだった。しかし今更ながら、こんなに小さな胸、オレの小さな手で覆い隠せてしまう程度の幼い胸だというのに、果たしてブラは必要なのかと思ってしまう。
ショーツやキャミソールはあまり抵抗がなかった。どちらも、形は違えども同じ機能を持った男性用の下着がある。しかし、ブラは女性特有のもの。なんだか悪いことをしているような気がして、あまり気が進まない。別にそんなに大きな胸でもないんだし、必要ないんじゃないかと最後の抵抗を試みる。
「こんなに小さくても、ブラって要りますかね。キャミソールだけでも十分なんじゃ」
「そんなことありませんよ。何もつけないと乳首が擦れて、痛みが出ることだってありますから」
「いや、でも……」
「それに、乳首ビンビンにしたままキャミソールだけ着たら、結構苦しいと思いますよ? ブラなら胸にしっかりフィットしますから安心です」
店員さんの表情が笑顔のまま、あまりにも明け透けな言い方をされたことに面喰ってしまい、ニカさんがどれだけオレに気を遣ってくれていたかを感じた。その言い方はあまりにも自然で、サキュバスにとってはその感覚の方が普通なんだろう。
(確かに、ノーブラで過ごすのもそれはそれで怖いか。サキュバスにバレて弄られて、変な声を出しちゃうとか絶対に嫌だし)
ブラを身に着けることは諦めて受け入れることとして、どんな奴なら耐えられるかな、とカゴに盛られた沢山のブラに視線を向ける。ブラジャーと聞いてイメージするようなカップの付いているものはちょっとえっちすぎるけど、まるで腹巻の小型版みたいなものはこの中だとダサく感じてしまう。
ここに集められてるものを見るだけでもデザインが豊富で、ただの胸部サポーターとしてはあまりあるものだ。オレみたいに小さな胸でも世間のみんなは着飾りたいんだな、と他人事のように考えてしまう。装飾の少ないやつをつけるくらいならキャミソールのままでも良さそうなものだし、どうせ着けるならカップのついた可愛いのが……なんて思ってしまい、即座に思考を振り払った。まずい、自分の体を弄ったせいで、頭の中が女の子に寄ってしまったんじゃないか。
「どれから試そうかな……とりあえずこれを着けてみましょうか」
差し出されたのは軽く装飾が付いていてカップも付いている、いかにも女の子が着けていそうな下着といったもの。大人用のブラの子供版なんだろう。とても可愛くて、こんな下着を着けてくれていたら、見るほうはめちゃくちゃテンションが上がるに違いない。
ただ、それを自分が着けるとなると話は別だ。ニカさんから貰った下着は全部シンプルなのに、このブラには可愛い装飾がいっぱいされていて、いかにも女の子の下着ですって主張が激しくて、まともに視界に入れられない。
(女装趣味なんてないし、こんなブラジャー、初めて見るよ……。恥ずかしい……)
そうは言っても、店員さんに渡されたのに、ずっとそのまま突っ立っているわけにもいかなくて、しょうがなく身に着けることにした。深呼吸までして気合を入れて、いざ着けようとしたら、肌着も脱いで直接試着してほしいらしく、キャミソールも脱ぐ羽目に。
できるだけ胸を見せないように脱いで、胸を隠しながらブラを当てた。そうじゃないと店員さんに乳首を見られそうで恥ずかしかったから。いや、別に見られるのが恥ずかしい訳ではなくって、店員さんがエロい視線を向けてくるのが嫌だというほうが正しい。
(どうしてオレがこんな女の子っぽい仕草をしなきゃいけないんだ……)
いや、やっぱり先程のはただの言い訳だった。胸くらい見られたってどうということは無いだろう、そんな気持ちが今までのオレの常識だったけれど、さっき自分の乳首を弄ってからは胸を見せるのが恥ずかしくなってしまった。それなりに膨らんだ胸はともかくとして、その先端で固く尖っているところを晒すのは股間を晒すのと変わらない気がした。
気を取り直して、ブラを身に着ける。その方法はエロ漫画で見たから何となく知っていた。肩ひもに腕を通して、背中側でブラのホックを留めるだけ。彼女の着替えを見たからとか、そういう理由じゃないのは我ながら悲しい。
(とめ……あれ、なかなか引っかかってくれない)
この体はとても柔らかくて、手を背中に回すのは何の苦労もない。胸を張る形になるから少し恥ずかしいけれど、両手を後ろに回して、フックを受け口に引っかけるなんて造作もないことだと思っていた。でも、全く見えない状態で留めるのは案外難しく、なかなか留まってくれない。しばらく格闘していたら、それを見かねた店員さんがアドバイスをくれた。
「着けにくかったら、前でホックだけ止めて、ぐるっと回してから肩ひもを通してもいいですよ」
言われてみればそうだけれど、それだとせっかく胸を隠せているブラの全面が背中に行ってしまう。とはいえ、『いや、それだと乳首が見えちゃうだろ』なんてこと言えるわけもなく、鏡のついていない壁のほうを向き、体を隠しながらブラのホックを留めて、何とか装着し終わった。
いざ着けてみると不思議な感覚だ。胸の周りをぐるっと一周して締め付けられるこの感じは初めてだし、胸元がぴったり覆われているのも気になる。これ、本当に必要なんだろうか。これだったらサラシでも変わらないんじゃないか。そうしてもじもじしていると、店員さんがおもむろに近づいてきた。どこか不備でもあっただろうか、それともまたセクハラが始まるのだろうか、と警戒していると。
「もっと脇や下からもお肉を集めて、カップの中に入れてください」
「えっと……こう、ですかね?」
言われた通りに自分でやってみるけれど、なかなかうまくいかない。なんだ、お肉を集めるって。こんなに小さな胸でもそんなことしないといけないのか。店員さんの目の前で自分の体を触るのが恥ずかしくて遠慮気味にいじるけれど、一向にコツがわからない。苦戦しているのを見かねたのだろう、しばらくすると、店員さんがその手をオレの胸元に延ばした。そして、かなり遠慮なく、ガッツリと胸を触られる。
「ちょっと失礼しますね」
「え、うわぁっ⁉ ちょっ……!」
下着の下に差し込まれた店員さんの手のひらが、脇から体の真ん中へと向かって肌の上を撫で上げる。くすぐったいとか気持ちいいとかは無くって、急にお腹を掴まれたような感覚。一応気を遣っているのか乳首には触れないでくれたけど、なかなか思い切りのいい触り方だ。
体を他人に触られたのはこれが二人目。一人目はもちろんニカさんだけど、こんな触り方はされなかったから、何かしらの初体験がこの店員さんになってしまった。むむむ、なんだかちょっとモヤモヤする。
「よし、こんな感じですね。どうですか?」
どうって、触られたのが死ぬほど恥ずかしい。ただ、店員さんに整えてもらったブラの付け心地は、オレが上からブラを当てただけとはまるで違った。小さいながらも、胸の膨らみがカップの中にすっぽりと納まっているのがわかる。ブラの下側の縁が体に沿ってキレイにフィットしていて、胸をしっかりと支えているんだって感じられた。
そして、少し動いてみたら、すぐにブラの大切さが分かった。何というか、こう、守られている感がすごい。きっちり胸の形に合っているし、先端も横も下もキレイに覆われていて、キャミソールには無い安心感だ。軽く上下に動いてみても、殆ど揺れない。そもそも胸が小さいのもあるけれど、これはなかなか快適だ。認めるのはなんだか負けた気分がするけど、実用性には代えがたい。それに加えて、鏡の中の女の子がキャミソールよりずっと可愛い下着をつけていて、ちょっとテンションが上がった。
(なんだよ……めちゃくちゃ可愛いじゃん……)
顔をほんのりと赤く染めながら、レースで飾られたブラをしている黒髪ロングの女の子。肌が白いからブラのデザインが引き立っていて、まるで絵画のようだった。これが自分だと分かってはいるけれど、なんだか人形遊びをしているような気分だ。自分の姿に全く慣れていないから、他人の皮を被っている感覚。そうなってしまえば、自分好みに着飾るのも楽しくなってくる。
「次は、どれを試しますか?」
「えっと……じゃあ、これとか……」
場慣れした店員さんの見事な話術に乗せられて一度ブラを受け入れたら、そこからは早かった。一応腹巻みたいなやつを付けてみたけど全然可愛くなくって、着ただけでテンションが下がってしまう。こんなものはオレみたいな可愛い見た目には合わないんじゃないかとすら感じてしまうほどだった。締め付けている感覚はかなり緩いから、リラックスしたいときには良いのかもしれないけれど。
どうせ着けるなら、鏡の中の女の子に似合うような可愛いやつ。黒とか白とかのシンプルな奴もいいし、パステルカラーの柄物も悪くない。なんだ、女の子の下着ってこんなに種類があって、デザインが豊富で、着飾れるのか。そうして長々と試着室の中でファッションショーをやっていたら、ニカさんが待ちかねて声をかけてきた。
「ミーナ、どんな感じ?」
「体に合うサイズはメーカーごとに分かりましたよ。店員さんがメモしてくれたから、今は色々見てるところです」
鏡の中の自分を眺めるのに夢中で、ニカさんが外で待っているのをすっかり忘れてしまっていた。悪いことをしてしまったな、なんて思っていると、そこに付け込まれるようにしてニカさんからお願いが飛んでくる。
「ねえミーナ、私も見ていい?」
「……別に、好きにすればいいんじゃないですか」
一瞬、
でも、ここで断ったら、ずいぶん長い間待ってくれていたニカさんに申し訳ないし、それに、そう、ニカさんはオレのご主人様みたいなものなんだから、オレが断れる訳ないのだ。だから、渋々ながら許可を出した。
更衣室に入ってきたニカさんは、宝物を見つけた子供みたいにキラキラ輝いた目をしていた。手には数えきれないほどの下着が詰め込まれた籠を持っており、よほどオレに着せたかったのだろう。しかし、その目線がオレの胸に向いたとき。明らかにオレの下着姿を目に入れたその瞬間、真顔になって、視線がオレの体に釘付けになっていた。
「あんまりジロジロみられると、恥ずかしいんですけど」
文句を言ってもまるで聞いていない様子で、穴が開くほど胸を見られる。これ、ブラを見てくれているよね、まさかオレの体をジロジロ見ているわけじゃないよな、と気が気でない中待っていると、十秒以上掛かってようやくニカさんが戻ってきた。
「ごめん、ミーナが可愛すぎて見惚れてたわ。色々持ってきたから試してみてくれる?」
ニカさんが、オレを可愛いって言ってくれた。元男のオレに向けるには不適切な言葉だけれど、鏡の中の自分をじっくり見た今のオレにはその気持ちがよくわかる。そう、オレの体はとても可愛い。こんなに可愛い体を貰えたなんて、もしかしたら役得なんじゃないだろうか。
いやいやいや、この世界のメスは立場があまりにも弱いし、今のところ辛い思いを殆どせずに済んでいるのは、ご主人になったニカさんが良い人だから。いや、良い人かどうかはまだ分からなくて、気が抜けなくて……ああもう、ごちゃごちゃ考えるのが面倒だ。もう、今のオレは可愛い、それだけ考えればいいか。
ニカさんが手渡してくる下着のリクエストを次から次へと試着して、最終的に十着ほどを選んだ。飽きのこなそうなシンプルなやつ、服装や季節に似合うように寒色系と暖色系、家でリラックスしたいときに着けるもの、そしてニカさんがどうしても買っておいてほしいと懇願してきた、レースとフリルがたっぷり付いたガーリーなやつ。
このお店に来たときは『ブラなんて着けたくない』って思っていたけれど、長々と試着をしているうちに『ブラジャーってすごい』となってしまい、今日買った中で一番気に入ったものを着けていくことにした。いや、ニカさんが『着けていったら?』って言ったから、それに従っただけ。
どれを着けるかちょっと迷って、結局白基調のシンプルな奴にした。そうしたら店員さんから『せっかくですからショーツも合わせましょう』なんて言われて、セットのショーツも一緒に穿くことに。誰も見ないんだし別にそこまでしなくたっていいじゃん、なんて思ったけど、ニカさんの視線がとても熱かったので渋々従った。
「……セットの下着、めっちゃ可愛いじゃん」
負けた。フリルがたくさんついた、なんとも少女趣味なショーツ。それを穿いてみたら、鏡の中の自分があまりにも可愛かった。やっぱり、女の子の下着はただの肌着なんかじゃなくって、その体の魅力を引き出す衣装なんだって分かった。別に自分が女の子だって認めたとか、『可愛いって思われたい!』ってわけじゃないけど、鏡の中の自分が可愛くなるととっても嬉しくって、一度知ってしまったら止められない。むしろ、オレにとっては知らないほうが良かったかもしれない。
しばらく鏡の中の自分を眺めて満足したら、キャミソールを着て、スキニーとパーカーを着て、そこでようやく気付く。
(あれ、ブラを試すだけだったら、スキニーを脱いでショーツ姿を見せる必要なんてなかったのでは……?)
お尻のサイズも測りはしたけれど、サイズ展開はSMLくらいで、スキニーだったら服の上からでも問題なさそうだ。もしかして、店員さんに嵌められたのだろうか。今更考えたってしょうがないけれど……。
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