※この作品はR-18です。

「いつでもイッていいですよ♪」と甘やかす姉と「絶対イっちゃダメだから」と意地悪する双子姉妹に挟まれる先生の話   作:千吹つぐ

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話しの終わり

 

 資料室の鍵を締める。施錠を確認して廊下に出る。

 

「じゃあ先生、また明日……」

 

 茜さす廊下の真ん中で、さくらが小さく手を降った。高木はすこし不安になる。

 

「さくらくん、本当に送っていかなくて大丈夫ですか?」

 

「そんな、大げさですよ先生」

 

「嘘。大げさじゃないよ、お姉ちゃん、絶対熱あるもん」

 

 葵が姉のおでこに触り「熱っ」っと大げさにリアクションした。

 

「まったく、興奮して熱だすなんて、ホント子供なんだから」

 

「こ、子供じゃないもん。生徒会長だもん」

 

「はいはい、……そうじゃなくてもさ、その目、どうするのよ」

 

 葵が指差す。さくらの目は大量の涙であかぎれており、糸目になるほど腫れあがっていた。

 

「あの人、絶対なんか言うよ。うるさいんだから」

 

「あはは……」

 

「……うち、来る?」

 

 葵がプイッと、そっぽを向く。

 

「え? うちって、パパの家?」

 

「そう」

 

 パパの家、とはおそらく離婚した藤宮の父親が借りた新しい家だろう。高木は思い出す。藤宮の家は現在、離婚して別々に暮らしており。その際に母がさくらを、父が葵を引き取ったのだ。

 

 そのときに、双子の交流も途絶えてしまったらしいのだが……高木はまだ、そのあたりの詳しい話を聞けないでいた。

 

「ほら、例の写真のバックアップもさ、消した確認とかいるじゃない?」

 

 葵が、そっぽを向きすぎて背中を向けながら言う。

 

「……お姉ちゃんが嫌なら、いいけど」

 

「いく!」

 

 さくらが、子供のようにぴょん! と跳ねた。

 

「やった! やったぁ! お泊りだ!」

 

「ちょっと! 興奮しないで! また熱上がるよ!」

 

「だって、葵ちゃんの家なんて行くの初めてで……」

 

「別に、いつでも来ればいいでしょ」

 

「~~~~っ!」

 

「ああもう! うるさい! ばたばたしないで! ……えっと、それじゃ、先生……」

 

 高木は姉妹と向き合った。

 

「また、明日……?」

 

「はい、葵くん。また明日、学校で会いましょう」

 

 断言すると、葵はホッと息を吐いた。

 

「ん……それじゃね、先生……」

 

「せんせえ、さよなら! また明日!」

 

「きゃっ! ちょっとお姉ちゃん! 歩きづらい!」

 

「大丈夫! 葵ちゃん運動神経いいから!」

 

「いやそれって私任せじゃない……はあ、ホントしょうがないんだから……」

 

 夕日の中へと帰っていく二人を、高木はいつまでも眺めていた。

 

 

 

 

 

 そのあとも、双子の動向はチャットアプリで知ることができた。

 

 夜、高木は家でスマホを見ていた。ときおりポン、ポン、と投稿がある。いま家に付いた。せんせいあたまいたい。ロキソニン飲ませた。おうちきれい。そろそろ夕食。せんせい夕飯なに食べたの? 脈絡のない投稿が、高木の殺風景な日常に入ってくる。

 

 お茶とお菓子、餃子と炒飯、借り物のパジャマでピースしているさくら。

 

 写真のなかの姉妹の距離は、枚数が進むごとに近づいていった。

 

『先生、お姉ちゃんになんとか言ってよ。全然寝てくれないんだけど』

 

『さくらくん、明日も学校ですよ。おやすみなさい』

 

『はい! 先生!! おやすみなさい!!!!!』

 

「それ絶対寝るテンションじゃないでしょ……」

 

『葵くんもお疲れ様です。おやすみなさい』

 

 高木の手からスマホが落ちる。もう少し付き合いたかったけれど、もう限界だった。

 

 布団の中で、うとうととまぶたを閉じる。このところずっと眠れていなかったのが嘘のように、あっというまに落ちていく。

 

『先生、寝ちゃったかな? ね、葵ちゃん?』

 

『私には口で言えばいいでしょ。となりにいるんだから』

 

『もっとお話したかったな』

 

『すればいいでしょ、明日』

 

『うん!!!!!!!』

 

『うるさい。ほら、もう寝るよ』

 

 スマホの灯りが消えていく。

 

『おやすみなさい、高木先生』

 

『おやすみ先生』

 

 おやすみなさい……意識の端でこたえて、夢の中へと落ちていく。

 

 

 

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