※この作品はR-18です。

「いつでもイッていいですよ♪」と甘やかす姉と「絶対イっちゃダメだから」と意地悪する双子姉妹に挟まれる先生の話   作:千吹つぐ

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初夜

 

 

「ぷはぁ! はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 危うく酸欠になろうかというころ、二人はようやく唇を離した。

 

 時計を見ると、もう二十分もたっていた。

 

「ん……せいせい」

 

「さくらくん……」

 

 でもまだ足りなくて、二人はキスに没頭した。指と指を絡めて唇を寄せる。

 

 そのとき、ぴろん♪ とさくらのスマホが鳴った。また、ぴろん♪

 

「……ええと、その、さくらくん?」

 

 最初、高木はその通知を無視していた。だが、それが何度目かのものであるのと、また触れた肌から伝わる動揺で、さすがに聞かざるをえなかった。

 

「いいのかい? さっきから、気にしているようだけど……」

 

「いいんです。どうせ葵ちゃんですから……」

 

 ぷいっと、さくらが顔を振った。それがさらに高木の疑問を煽っていく。これまでは葵のことならば何をおいても優先してきたのに……。

 

 さくらもまた、そんな高木の態度に気づいたのか、しぶしぶスマホを確認した。

 

「あ、やっぱり葵ちゃんでした……。~~っっ!?」

 

 顔を真っ赤にしてのけぞる。

 

「どうしましたか……え?」

 

 その拍子に、高木にも画面が見えてしまった。

 

『もうセックスした?』

 

 見慣れたチャットアプリの最新欄には、そんな事が書いてあった。

 

「あ! 先生、これは、その、えと」

 

 さくらが一瞬誤魔化そうとして、すぐに諦めてうつむいた。

 

「な、なんですかこれは?」

 

「……あの、実は今日、葵ちゃんが来なかったのはわざとなんです……葵ちゃん『今日は二人で会うように』ってそう言ってて……」

 

「それは、気を使ってということですか?」

 

「いえ、あの、そう、ですけど、でも、うう、そのぅ」

 

 困ったように、恥じ入ったように顔をそらして、

 

「……葵ちゃん、私達に……その、……セ、セックス、してほしいみたいで……」

 

「??????」

 

 理解が追いつかない。

 

「葵ちゃん、これまでのこと、ずっと気に病んでるみたいなんです。私に抜け駆けしたって、先生にひどいことしたって、罪悪感を持ってるみたいで、だからせめて……」

 

「さくらくんとも、してほしいと?」

 

「……はい」

 

 高木は唸った。まさか、と思うと同時に、葵なら納得もできた。

 

 葵は過去の経験から独占欲が強く、刹那的なところがあった。だが同時に、深い愛情と共感性の持ち主でもある。

 

 そんな娘が、一人で思い悩んで出した結論が、これなのだろう。

 

「ばかですよね……」

 

 さくらが、優しさとも、寂しさともつかない笑みを浮かべた。高木は、彼女が誰かに馬鹿と言っている姿を始めてみた。

 

「あの、高木先生、もしも、もしも、嫌でなければ……なんですけれど」

 

 さくらがもじもじする。長い髪を指でいじり、あらぬ方向を見つめている。

 

「一度だけでいいんです、葵ちゃんを安心させるためにも、私と、そのぅ……」

 

「こら、さくらくん」

 

 高木はちいさな額をぺしりと叩いた。さくらが眼をパチクリとさせた。

 

「君が言ったことではないですか。一人で話すな、と」

 

 スマホを抜き取って、電源ボタンを長押しする。

 

「高木先生?」

 

 小さな頬に手を添える。さくらの顔が喜びと期待に赤らんでいく。

 

「葵くんは関係ありません。……だからこれは、私の意思です」

 

「せんせい……ん……んん……っ!」

 

 再び口づけ。舌を深く差し入れて、奥で縮こまっていた舌と絡める。

 

「ん! んんん~~!」

 

 体重を預ける。ソファにさくらを押し倒して、その唇を強く吸う。

 

「……さくらくん。君が欲しい」

 

「っ!」

 

 乱れた長髪の中で、さくらが息を呑んでいる。その戸惑った顔が、高木に後悔を思い出させる。

 

「……怖いかい?」

 

「ううん、せんせ……」

 

 だがすぐに戸惑いは消えて、さくらは顔をくしゃくしゃにした。

 

「うれしい……うれしくて、死んじゃいそう……」

 

「さくらくん……ちゅ」

 

「せんせい……ちゅう……ちう……ちゅぱぁ……」

 

 キスが、甘いものではなくなっていく、捏ねられた唾液がねばついていく。

 

「んん!」

 

 さくらの胸に手を伸ばす。夢にまで見た乳房が、ずっしりと掌に絡みついてくる。大きい。クラスでもトップクラスの巨乳がブレザーをパンパンに膨らませていた。

 

「ん……ちゅぅ……ちゅぴ……」

 

 キスをして、胸を揉む。分厚い布の向こうにある、柔らかな肉を感じていく。

 

「んちゅ……さくらくん……」

 

「あ」

 

 顔を離す。物悲しげな唇に申し訳なさを感じつつ、さらなる欲望に従っていく。

 

「脱がすよ……」

 

「は、はぃぃ…………」

 

 消え入りそうな返事を待たずに、高木はブレザーの前を開け、シャツのボタンを外していく。

 

 真っ白な肌があらわになっていく、深い谷間が、桃色の可愛らしいブラジャーが、大きな半球があらわれる

 

「きれいだ……」

 

「っっっ~~~~!!!」

 

 さくらが顔を真っ赤にして腕で覆った。桃色のブラジャーは、まるで花弁をかたどったような可愛らしい形をしていて、さくらの巨大な乳房を不思議と清楚に見せていた。

 

 高木はシャツと肌の隙間に手を回して、背中のホックを外した。たゆん、とブラが緩む。前の合わせに手をかけて、布地を一気にまくり上げる。

 

 とっぷん、と、まるで水風船がころがるように、真っ白な乳房がこぼれ出る。

 

 大きい。仰向けになってもなお丸みを見せる乳房が震えている。肌とほとんど色が変わらない乳輪が隆起している。小さな乳首がツンと立っている。

 

「ううっ! ……うっく……ふぅぅ……」

 

 さくらが口元を引き結んで、恥じいるように身を捩った。その動きが乳をふるふると扇状的にゆさぶっている。

 

 触れる。

 

「くぅぅぅぅ!」

 

 ふにゅううううぅぅ、と掌がどこまでも沈み込んでいく。指と指の間に肉がはさまって、肌の血の気を失わせる。

 

 巨大な乳房にはブラジャーの跡がくっきり残っていた。同じように、高木の指の跡が刻まれる。

 

 唇でそこを求める。やわらかい乳房にしゃぶり付き、中心の乳首を口にふくむ。

 

「ひゃあ! あ! あああ!」

 

 新たな場所に触るたびに、さくらの身体がビクビクと跳ねた。その反応がうれしくて、乳房があまりにやわらかくて、高木は加減もできずに舌を使った。

 

「ん……ちぅ……ちゅぱ……れる……じゅるるるるるる……」

 

「あ! ひぃ! せんせ! そんな! ああああああ!」

 

 ちゅうううう、と乳首を吸い上げる。なにもかもがやわらかな身体の中で、そこだけはカチカチに凝り固まっている。さらに、右手で乳房をつかむ。むにゅう、と指の間から逃げようとする肉を許さずに、縛り上げるようにきつく握る。

 

 左の乳首をやさしく舐める。ひたすらそこを甘やかす。

 

「あ! あ! あ! それ! それだめです! せんせ! せんせぇ! ……あああ、だめだめだめ、きゅーって、きゅーってなっちゃう。あ、あ、あ、あああ~~!」

 

 びぐん! と、さくらの背中がのけぞった。その手が高木の頭を抱え込む。びくん! びくん! びくん……。

 

「ああ! あ! あああ…………」

 

「~~~~! ……ぷはぁっ! さ、さくらくん?」

 

 やがてその手からも力が抜けていき、高木はあわてて顔をあげる。

 さくらはゆでダコのように真っ赤だった。

 

「はぁ……はぁ……ふあぃ?」

 

「も、もういってしまったのかい?」

 

「??? いく?」

 

「あ、いやつまり、絶頂とか、オーガズムとか……」

 

「あ、はい……えへへ、いっちゃいました。……すごく、きもちよくて」

 

 覚えたての言葉を使うおさなげな笑み。

 

「先生が抱きしめてくれるの、初めてで、先生がキスして、求めてくれるなんて、夢みたいで……」

 

「さくらくん……」

 

「そんなの、我慢できません……あ……ああ……」

 

 高木はたまらずに、彼女の願いを叶えてやった。

 

「ん……ちゅう……ちゅぅぅ」

 

「れろ……える……ちゅぱぁ……」

 

 再びキス、顎に触り、胸をもみ、少しずつ指先を下げていく。かわいらしいへそを撫でて、肌触りの良いスカートにふれる。

 

 さくらの体を、長いソファに引き上げていく。白のソックスとゴム履きが、頼りなさげに宙を蹴る。

 

 なめらかな太ももを撫であげて、スカートの裾を乱していく。指先がその奥の布地に触れて、さらに奥へと進んでいく。

 

 熱い。

 

「ん~~! んん! んんん!!」

 

 さくらの反応を、高木は全力で抑え込んだ。体を押し付けて震えを許さず、口づけで喘ぎ声を貪《むさぼ》った。

 

 初めて触れられる性器への快楽を、だからさくらはどこにも逃すことも出来ずに、その未経験な身体で一身に受けた。

 

 それが限界に達しようとして……、

 

「んん! …………はれ? せんせ……?」

 

 ふいに手を止めて離れていく高木を、さくらがもどかしそうに見つめている。つぅ……っと糸を引きながらスカートから逃げる指先を、腰がもじもじと誘っている。

 

 もう少しだったのに……さくらの顔にはそんな不満がありありと浮かんでいた。だがさすがに口に出すのは恥ずかしいのか「……あの、先生?」とおずおずと裾を引いた。

 

 高木はソファに膝立ちになり、股間のジッパーを引き下ろした。

 

 さくらの顔に理解が、それから期待と不安が浮かんでいく。

 

 勃起したペニスを引っ張り出す。ポケットからコンドームを出して装着する。

 

 スカートをまくりあげる。真っ白な太ももの奥に、ブラジャーと同じデザインの下着がある。愛液でびしょびしょに濡れた布地が、白い肌を透かしている。

 

 パンツを脱がしていく。くるん、とくるまった布を引き抜く。

 

「ふ……うう……ふぅ……」

 

 恥ずかしくて堪らないのだろう。さくらは狭いソファのなかで身をよじり、少しでも股間を隠そうとする。

 

 だが高木はそれを許さずに、むしろ膝を押さえてガバリと開いた。

 

「うぅ! うぅぅぅぅ~~~~!!」

 

 真っ白な肌の中心に、しとどに濡れた隙間がある。熟れた身体とはうらはらに、いまだ使われていない性器は固く閉じていた。

 

 彼女の間に入り込む。若い性器の入り口に、グロテスクな男根をあてがう。

 

「さくらくん」

 

 怯えている彼女の頬に、高木は最後にそっと触れる。

 

「君を、ください」

 

「……っ!」

 

「君が欲しい。君と繋がりたい……」

 

「せんせぇ……」

 

 さくらはやはり涙した。垂れ目が限界までさがって、涙がぽろぽろとこぼれる。

 

「はい、あげます……私の全部あげます……だから……せんせ……」

 

「さくらくん……」

 

「あ……あ……あああ!」

 

 腰を落とす。体重を一点に集中させて、まだ誰も入ったことのない場所へ入っていく。亀頭がうまる。それだけで信じられないくらい心地よい。けれどもっと奥へ、

 

 もっと、もっと、

 

 ズ……ミチ……ミチミチ……。ブチン!

 

「あ! くぅ! ううう! うくぅぅぅ!!!!」

 

 突然、抵抗が消え去って、ペニスがズルンと滑り込む。亀頭から竿までが一挙に包み込まれて、高木は危うく射精しそうになった。

 

「痛つぅぅ! あ! ああ! ……ふぅ……はぁ……はいっ、たぁ?」

 

「さくらくん。動かない方が……」

 

 さくらは鈍痛に顔を歪ませながら、それでも顔を上げてそこを見た。

 

 つながりあったその場所は、血と愛液で濡れていた。

 

「大丈夫かい? 痛くないかい?」

 

「いえ、思ったよりは全然……むしろ、心地よくて、幸せで……」

 

「本当かい?」

 

 気遣って嘘を言っているのではと高木は不安になる。だがさくらは笑った。

 

「はい、だって、うれしくて……ようやく、先生と一緒になれた……先生にほしいって言ってもらえて……だから……だから……」

 

 痛みすら抱きしめるように、さくらはうっとりとした顔で胸を抑える。その腰元が、無意識にもぞもぞと動き出している。

 

「だから先生、もっと、もっと……私の全部、もらって……」

 

「……さくらくん!」

 

 もう、気遣うことなど出来なかった。

 

 腰を前後させる、ペニスをズルズルと引き抜いて、抜ける寸前に指し戻す。肉棒の幅をいっぱいに使って、恋人のすべてを味わっていく。

 

「あ! あ! あ! 先生! 先生!」

 

 スカートの腰をつかんで、大胆にペニスを前後させる。

 

 半裸に脱がしたブレザー服のなかで、胸がブルンブルンと跳ね回る。腰をかがめて乳首を吸う。

 

「ひゃぅ! 先生! そこ、ああ! ああん!」

 

 さくらが聞いたこともないようないやらしい悲鳴を上げている。彼女を一突きするたびに新しい魅力が漏れ出して、高木はたちまち夢中になった。

 

「あ! ああ! あああ!」

 

 学校の片隅で、誰にも言えない営みをする。狭いソファの上で、誰か来るかもと考えれば服を脱ぎ切ることも出来ずに、禁じられたまじわりに耽っていく。

 

 それをおそろしいと思いつつ、だが高木は溺れていく。まるで人生をなげうってしているような、快楽の炎に焼かれていく。

 

 ぱんぱんぱんぱん!

 

「ああ! 先生! 先生!」

 

 もう十月だというのに暑くてたまらない、滴る汗が乳房で弾けて、陽炎のような湯気が上がる。

 

 限界が近い。

 

「さくらくん……」

 

「せんせ……せんせ……あ、あ、あ!」

 

 さくらはやはり、最後は抱擁を求めた。シャツとシャツをこすり合わせ、わずかに露出した肌で触れあう。お互いの背中に手を回して、ぎゅっとひとつになっていく。

 

「ん……ちゅ……ちゅぱ……ちぅぅ」

 

 抱きしめて、キスをする。やさしく、触れる。

 

 ぱんぱんぱんぱん!

 

「あ! あ! あ! せんせ! せんせ!」

 

 反対に、腰を乱暴に振り続ける。血まみれの傷口に容赦なく、男の欲望を叩き込む。

 

「あ! ああ! あれ来ちゃう! きゅーって……あ、ああ、いく、いっちゃう!」

 

 だがさくらはそんな暴力さえ飲み込んで、自身の快楽へと変えていった。身体がぶるぶると震えだす。股間がぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

 

「さくらくん!」

 

「せんせ!」

 

 どぐん! 

 

 ひときわ強く打ち付けて、高木は最奥に射精した。

 

 どぐん! どぐん!

 

「ひぁ! ひぁぁぁあぁ!」

 

 さくらが跳ね上がる。その身体をぎゅっと押さえ込んで快楽に変える。二度三度と続く脈動は、そのひとつひとつが射精のようだった。

 

「ひぐぅ! あ! あぁぁぁぁぁ!」

 

 さくらもまた、精を受けるたびに体を震わせて、その絶頂を深くしていった。

 

「あ! ああ! ああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!」

 

 やがて、最後の一滴まで出し尽くして、二人はソファに倒れ伏した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 射精が終わり、絶頂が去ってなお、二人はつながったままだった。

 

「あ……あああ……せんせ…………せん……せ……」

 

 口寂しさを満たすように、二人でキスを繰り返す、絶頂の余韻を慰めるように腰を動かして、くちゅくちゅと精子を捏ねまわす。

 

 屋上で下校のチャイムが鳴っている。

 

 けれど二人はまだ教師と生徒に戻りたくなくて、絶頂の名残にすがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしたち、昔は芸能人みたいなこともやっていたんです。

 

 

 

 それは二人が服を着る前のこと。恋人たちが寝物語に興じるように、狭いソファに寝転がって、さくらが言った。

 

「芸能人?」

 

「はい、子役とか……うちはママがそういうのに熱心で、ほかにもいろいろやらされたんです」

 

 澄んだ瞳が、天井の換気扇を見つめている。

 

「水泳にダンスに勉強に……小学生なのにメイク教室に連れて行かれたりして、当時はそれが普通なんだって思ってましたけど……今思うと、ちょっとすごい話ですよね」

 

「ん……」

 

「私、中学校のころに、限界になっちゃったんです」

 

 さくらが困ったように笑っている。

 

「なんだか急に身体が動かなくなって、頭もぼーっとしちゃって、お稽古でも学校でも、なんにもできなくなっちゃって……ママに怒られて、心配されて、それでもなんにもできなくて……」

 

「さくらくん……」

 

「そんなとき、助けてくれたのが葵ちゃんなんです。葵ちゃんは『お姉ちゃんにはもう無理させないでって』って『私がぜんぶやるから』……って」

 

 床に座り込んだ高木が、寝転ぶさくらの頭を撫でる。

 

「思えばずっとそうでした、私が知らない場所で怯えていると、葵ちゃんがかならず守ってくれて……だから私、葵ちゃんはすごいんだって、なんでもできるヒーローみたいな人なんだって、思ってたんです。……だからあのときも、私が葵ちゃんを助けるなんて、夢にも思わなくて」

 

 思い出のなかに後悔が交じる。

 

「うちの家族は、ママが中心でしたけど、でも支えていたのは葵ちゃんだったんです。だから、葵ちゃんが倒れたら、もうどうにもならなくて……」

 

「……お父さんは……?」

 

「パパは、むしろいったん壊したほうがいいって思ってたみたいです。離婚を切り出したのもパパでした。パパは最初、私達を二人共引き取るつもりだったみたいです。その方が誰にとってもいいって……でもママは反対して、一人は絶対に連れて行くって」

 

「ん……その手の裁判は、日本では母親が強いからね……」

 

「はい、それでパパも折れて、私を引き取るって言ったんです。……ママは葵ちゃんにべったりでしたからね」

 

「ん? でもそれは……」

 

 高木は思い出す。何度かあったことのある二人の両親。

 

「……私、ママのことは嫌いじゃないんです」

 

 さくらの顔がゆがむ。

 

「むしろ、大好きなんです。私達のことも愛してくれて、可愛い人なんです」

 

「ああ……そうだね」

 

「でも……あれは……あのときのことだけは……私、許せなくて……」

 

 そこから先を、さくらは語れなかった。高木も無理に聞き出そうとはしなかった。

 

 母親は葵ではなく、さくらを引き取ったのだ。

 

 そのときの葵の絶望を思うと、胸が痛んだ。

 

 ずっと母親を支え続けた葵、だが彼女が一番支えを必要とした時に、母親は彼女を望まなかった。

 

「今思うと、葵ちゃんとお母さんが離れることは、良かったことだったと思うんです。きっとお母さんも、本当はそれが分かっていてそうしたんです。でも、言い方と、タイミングが……」

 

 葵の抱える激情が、高木はようやくわかった気がした。何者も信じない敵愾心と、寂しがりやな本心、姉に対する拒否感と、裏返しの暗い愛情。彼女はいつだって、相反する感情のなかで揺られている。

 

 それは今日のことだってそうだ。

 

「先生は、やっぱり三人で付き合うの、無理だと思いますか?」

 

 高木の喉が詰まる。常識が息を吹き返して、今していることにも罪悪感が湧く。

 

「先生……もしも、もしもこのまま卒業して、葵ちゃんが言うように、どちらか選ばなくちゃいけなくなったら、そのときは……」

 

 さくらが言う。

 

「そのときは、葵ちゃんのそばにいてあげてください。……さっき、好きって言ってもらったばかりなのに、すみません。……でもそれでも葵ちゃんを選んでください……私は、大丈夫ですから」

 

「そんなことを言うものじゃないよ」

 

「でも先生、……あ……ああ……」

 

 唇を寄せて黙らせる。愛情と快楽をいっぱいに注いで、溺れさせる。

 

「せん……せい……」

 

 窓の外で、紅く染まった木の葉が落ちていく。

 

 季節が冬になっていく。

 

 

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