※この作品はR-18です。

「いつでもイッていいですよ♪」と甘やかす姉と「絶対イっちゃダメだから」と意地悪する双子姉妹に挟まれる先生の話   作:千吹つぐ

14 / 18
葵の決断

 卒業までに結論を出す。そう約束した三人は、それぞれの目的のために行動していた。高木は常識と愛情の間で道を探り、さくらは『みんなで付き合う』ために三人での関係を望んだ。そして葵はそんな姉に勝つために高木を求めた。

 

 結果的に、三人の時間は増えていった。それはさくらの望みが叶っているようにも、より対立が深まったようにも見えた。

 

「ね、先生。選んで」

 

 葵は事あるごとに選択を迫った。姉と妹のどちらが好きなのかを選択させた。

 

「そんなのもちろん、葵ちゃんですよね♡」

 

 一方。さくらは全力で停滞を選んだ。時に誘導し、ときにごまかして、葵の質問をうやむやにした。

 

 三人の仲を結ぼうとするさくらと、爪を立ててでも奪い取ろうとする葵。それが、このところの三人の関係であり、そしていま、歴史資料室で行われている痴態の本質だった。

 

 

「ほら、先生、どっちか選んで」

 

 

 ソファの上で重なり合う、美しい双子の姉妹が居る。妹が下に寝転んで、その上に姉が覆いかぶさっている。

 

 二人とも冬服のブレザーをしっかりと来て、しかしパンツだけは穿いていない。スカートを捲り上げた太ももの奥で、しとどに濡れた性器を晒している。

 

「ね、先生が、いま一番抱きたいのはどっち? どっちのオマンコで射精したい?」

 

 葵が挑発するように言って、自身の性器を指で開いた。ぐっしょりと濡れた膣口が、ぱくぱくと物欲しそうにあえいでいる。

 

「私とお姉ちゃん、どっちがいいの?」

 

 葵の、強い瞳。そこにはあの日とまったく同じ炎があった、何度ごまかされても、快楽に呑まれても、それでも消すことは出来なかった妄執の火が、高木に停滞を許さなかった。

 

「先生……」

 

 さくらが肩越しに振り返って、視線だけでなにかを訴えかけている。恐れるように寄った眉が『妹を選んで』と告げていた。

 

 高木は、ごくりとつばを飲んだ。

 

 この一ヶ月、双子と関係を深めてきた。会話をして、身体を重ねて距離を近づけた。

 

 その日々が、高木の心を浮き彫りにしていく。肌のふれあいが、生姜湯の暖かさが、そして彼女の炎が、魂の形を浮かび上がらせていく。

 

「先生、選んで……」

 

 高木はゆっくりと双子に寄った。ソファの上に這い上がり、股の間に入り込む。まっしろな股と、傷口のように赤い二つの性器。ほとんど見分けもつかない似通った二つの、その一方にペニスをあてがう。

 

 結局、高木は嘘をつけなかった。

 

「先生! まって! あ! あああ!」

 

 上の、さくらの性器にペニスを入れていく。熱く、熟れた感覚に、竿の根本まで埋まっていく。

 

「あ! あぐぅ! くぅぅぅぅ!」

 

 ぞりぞりと、襞の一つ一つまで感じるほどの狭まりにのめり込んでいく。まるで、お互いがお互いを埋めるためにあったような、あるべき場所へと還っていく。

 

「そっか……そうだよね」

 

 葵は、いっそ晴れやかな表情をしていた。

 

「ひゃうぅ! 葵ちゃ、これは……あぅぅ!」

 

「お姉ちゃん、気持ちよさそう」

 

 さくらの体から力が抜けて、とろけた横顔がソファに落ちた。感じきって赤熱している太陽のような顔と、冷たく凍った月が向き合っている。

 

「良かったね。先生に選ばれて」

 

「ちがうの! 葵ちゃん! ちが! ああ!」

 

「お姉ちゃん、私、嘘は嫌い」

 

 同じ顔に、熱情と冷静が浮かんでいる。

 

「先生、ありがとうね、嘘をつかないでくれて。ごまかさないでくれて、嬉しい」

 

「葵ちゃん! ああ! ああああ!」

 

「ほら、お姉ちゃんも素直になりなよ。せっかく好きな人とセックスできてるんだよ? お互いに大好きな、そんな運命の相手とめぐりあえたんだから……」

 

 月がぽろりと涙をこぼした。

 

「ほら、おねえちゃん、我慢してないで、いっちゃいなよ」

 

「やぁ! だめ、いきたくない……やだ……やだぁ……」

 

 さくらが泣いている。

 

「葵ちゃんと、いっしょがいい……いっしょにいきたい……」

 

「もう、わがまま言わないの」

 

 葵はあらゆる意味で冷めていった。初期の凶行をささえた狂乱も、現在の保留を受け入れた希望も、そして姉に対する嫉妬心さえも、月日の中で柔らかな絶望に結実していった。

 

「葵ちゃん……葵ちゃん! んん!」

 

 さくらは、そんな冷めた身体を温めるように、妹の身体を抱きしめた。口づけを交わして、死者に命を吹き込もうとした。

 

「ん……」

 

 けれど葵はなにも応えず。まるでいつかの高木のようになすがままだった。

 

「ん! んん! ちゅぴ……ああ! ああああああ!」

 

「……ほら、お姉ちゃん、もういきな」

 

「やだ! やだやだやだ! やだああああああ!」

 

 さくらの身体が反り返る、限界まで我慢した反動が、彼女を極限の絶頂へと打ち上げる。

 

 膣がきゅうきゅうとペニスを絞り、高木を絶頂へと連れて行く。男は女に手を引かれて、同じ高みへ登っていった。

 

「…………」

 

 ただ一人、葵だけをとりのこしたまま。

 

 

 

 

 冬休みが明けて、学園は雪に覆われていた。

 

 共通テストを控えて、受験はいよいよ本番を迎えようとしていた。これからの数日間で人生が決まる。そんな悲喜こもごもの日々が控えていた。

 

 そんななかで姉妹はと言うと、さくらはすでに推薦合格を決めており、残すは葵だけとなっていた。

 

 高木はひそかに不安だった。葵はその冷徹な見た目よりもずっと繊細で、身を焦がすほどの激情の持ち主だ。そんな彼女が受験と、恋と、そして卒業という約束の日を控えて、果たして耐えられるのかと思っていた。

 

「~~♪」

 

 だがいま、歴史資料室で勉強する彼女は穏やかだった。

 

 控えの机に腰掛けて、赤本をテンポよく解いている。カリカリと鳴る鉛筆の音は開始から休まることを知らず、終了時間をだいぶ残したままで、すでに最終問題に取り掛かっている。

 

「よし、終わり」

 

「まだですよ、葵くん。見返しはギリギリまでしてください」

 

「はーい、先生」

 

 先生。そう呼ぶ声に、高木は違和感を覚える。どろりとした愛情と共につぶやかれのではなく、爪を立てる代わりでもない、ただ、生徒が教師を呼ぶような声。

 

「~~♪」

 

 美しい、一人の生徒が机に向かっている。背筋を伸ばして、自らの人生を決める問題に向き合っている。

 

 ぴんと張り詰めたショートボブが、形良い顎を撫でている。唇には小さな笑みが浮かび、最新の流行歌をつぶやいている。

 

「よし、合格♪」

 

 いつしか答え合わせも済ませて、葵が自慢そうに振り返る。

 

「先生、見て」

 

「あ、はい」

 

 高木は解答をチェックした。目標点数は余裕でクリアしており、これならどの薬学部でも入れるだろう。

 

「すばらしい結果です。よく学びましたね」

 

「ん、ありがと」

 

「あとはケアレスミスに気をつけてくださいね」

 

「たしかに、最期のチェックでも、二つやらかしてたし」

 

「それもありますが、どちらかというと遅刻や会場の間違えなどが不安ですね。たとえば……」

 

 高木はまるで教師のように話をした。葵もまた、生徒らしく聞いていた。

 

 それが不思議なようでいて、自然だった。

 

 最近の二人の間には、こんな時間ばかりが流れている。

 

 あれ以来、葵とはしなくなっていた。

 

 最初は、予定が合わないとかではぐらかされて、そして今は『受験に集中したいから』という反対しようのない理由で、葵は逢瀬を避けるようになっていた。

 

 それは前回の拒否と同じようでいて、しかし決定的に違っていた、以前の葵には姉に勝ちたいという気概に満ちていた。

 

 だがいま、葵は穏やかだった。

 

「~~♪」

 

 冷めた美貌にはやわらかな笑みが浮かび、硬質な声が優しい曲を口ずさんでいる。丁寧な所作は洗練されていて、そばにいて緊張をしいるものはなにもない。

 

 まるで他人のように美しい姿に、高木はいつかの既視感を見る。

 

 ウェディングドレスが写った一枚のハガキ。

 

「それじゃ先生、またね」

 

 やがて葵はすべてを終えて立ち上がった。その顔にもはや涙はなく、瞳に執着の炎はない。右足を引きずる傷もなく、松葉杖に頼ってもいない。

 

 それは、高木が夢にまでみた生徒の姿だった。傷を癒やし、心を安くし、穏やかで、まっすぐに前にすすんでいく。そんな、過去の夢を、葵は体現しているように見えた。

 

 それなのになぜだろう、この胸の焦燥は。教師として、大人として見れば良いことなのに、焦りばかりがつのった。

 

 その理由を、高木はまだ知らない。

 

「葵くん……」

 

 知らぬままに、高木は葵に寄り添った。本能のままに手が伸びて、彼女の肩にそっと触れた。それは秋風の送り方もよく知らぬ男の、精一杯の愛の知らせだった。

 

「やめてよね、先生」

 

 しかし、葵はその手をパシッと払った。

 

「同情なんて、いらない」

 

「同情、ですか?」

 

「うん。だって先生が一番好きなのは、お姉ちゃんでしょ」

 

 さらりと、葵は決定的な言葉を口にした。

 

「…………」

 

 高木は否定も肯定もできなかった。

 

「先生は、お姉ちゃんだけ見ててよ。私のことはもういいからさ」

 

「……なにか起きたんですか?」

 

「え?」

 

「最近の葵くんは、変です。以前の激情が嘘のように消え去って、とても安定していように見えます。それは、なにか原因があるんですか?」

 

 高木はねじれた理屈を口にした。本音では、葵の状態がけっして悪いものではないと感じているのに、まるで心配事のように語って聞かせた。

 

「別に、なにも起きてないよ」

 

 葵は笑った。

 

「ただ、当たり前のものが、当たり前のところに落ちついただけ。……ほら、前にお姉ちゃんが、保留しようっていったじゃない」

 

「ええ」

 

「あれが、やっぱり良かったんじゃないかな。……あのときはまだなんとかなるって、お姉ちゃんにも勝てるんじゃないかって思ったけど、でも無理だった。結局、お姉ちゃんには勝てなかったから……」

 

 少し困ったような、バツの悪そうな笑顔が浮かぶ。

 

「この三ヶ月、三人で過ごして、楽しくて、それで、やっぱりつらかった……」

 

「葵くん……」

 

「やっぱり、ふとした時に気づいちゃうんだ。先生、お姉ちゃんのこと好きなんだって、私と居るときと、ちがうなって……」

 

 困ったような笑み。

 

「葵くん……」

 

 高木は言葉を遮ろうとした。すでに始まっているこの会話の重要性にいまさら気づいていた。

 

「まってください、それは、まだのはずです。結論は、卒業の日に出すと……」

 

「違うよ、卒業の日『まで』に出す。そういう約束だったはず」

 

 葵が一歩、身を引いて、もう手の届かないところにいった。

 

「私は、やっぱり人に決められるのは嫌、せめて自分の気持ちくらい、自分で決めたいの。だから先生、もういいの」

 

 

「大好きだったよ。高木先生」

 

 

「最初は、あなたと一緒に幸せになりたかった。その次は、一緒に不幸になりたかった。最期は、あの人にだけは勝ちたかったけど、でも全部、無理だった」

 

 葵が胸元に両手をやって、その手首のブレスレットをキュッと握った。

 

「安心して先生。もう二人の邪魔はしない。私は、あなたの人生から、出て行くから」

 

 やわらかな笑顔の上を、ひとつぶの涙が流れていく。

 

「私のことは、心配しないで、きっと私、また立ち直るから。この足が治ったみたいに、二人に優しく出来たように、また、歩きだすから……だから」

 

 少女が言葉通りにした。勢いよく踵を帰して、涙の粒を肩で切った。

 

「さよなら、先生」

 

 力強い足取りが、震えた声を運んでいった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。