「いつでもイッていいですよ♪」と甘やかす姉と「絶対イっちゃダメだから」と意地悪する双子姉妹に挟まれる先生の話 作:千吹つぐ
それから一週間が経っても、二人の関係に表面的な変化はなかった。さくらも高木も忙しい日々に追われて、一緒に会えるのは以前と同じ程度だった。
「せんせ、今日もお話してください♪」
そして、その貴重な時間でも、やっていることに変わりはなかった。二人は大河ドラマの感想を言い合い、世間話に花を咲かせた。
たぶん、実際に付き合っても、それどころか夫婦になっても同じ時間が流れるのだろう。そう思わせるほど、二人の関係は完成されていた。
「じゃあ高木先生は、やっぱり教職をおすすめしないっていうんですか?」
「うん、残念ながらね」
「どうしてですか? 私、向いてないですか?」
「そうじゃないんだ、さくらくんだけじゃなくて、教師という仕事のほうが、もはや万人には向いていないんだよ」
この時期は将来の話題も多かった。彼女は教職を目指しているそうだが、高木はあまり進められなかった。
「少子化や職場のブラック化で、この業界の将来性はひどいからね」
「じゃあ、どうして先生は教職を?」
「私の場合はそれを上回るメリットがあったからだよ」
言って、高木は資料室にある大量の書籍を見渡した。
「もともと私は歴史マニアだからね、他の人には大変な勉強も、映画を見るような感覚なんだ。そんな趣味の話をするだけで給金を貰えるのだから、渡りに船さ」
それは流石に言いすぎだが、本音ではあった。
「そうですか。……よく、考えてみます」
「それがいいですね、大学に入ってからでも、選択する時間はたくさんありますから。……おっと、そろそろ時間です」
一時間もしないうちに、別れの時間がやってきた。
「あの、高木先生……」
もじもじとするさくらに高木は苦笑して、手を広げて答えてやった。すると彼女はパッと顔を明るくして、真正面から抱きついてきた。
「ふふふ、せんせ……せんせぇ……」
ぎゅ、とさくらが幸福そうに顔をうずめた。
あれから変わった唯一のこと、それがこのハグだった。
どうやらさくらは「ハグまではしていい」と解釈したらしく、以降も出会いの最後には毎回求めるようになっていた。
高木としてはあれ一度きりの事と思っていたのだが……、かといっていまさら駄目とも言いずらくて、ついついこうして付き合っていた。
いや、それも言い訳だろう。
(……あたたかい)
さくらの抱擁が、心をじんわりと温める。いままで恋人もなく、寂しい一人暮らしをしてきた高木にとって、彼女とのふれあいは貴重な癒やしだった。
「高木先生……」
ハグだけだ。高木は自分を戒める。
「せんせい……」
それ以上は、決して手は出さない、鋼の精神でそう誓った。
卒業までの半年、自分たちがどうなるにしろ、その日までは彼女を絶対に傷つけないと決めていた。
「せん、せぇ……ふぅ……ふぅ……」
だが、それは高木だけの一方的な誓いでしかなかった。
「はぁ、はぁ……せんせ……ふぅ……ふぅ……」
あれからさらに一週間が過ぎたころ、二人は今日も別れのハグをしていた。
だが、これは本当にハグなのか。高木にはもうわからなかった。
「たかぎせんせ……んん……」
さくらが、ぎゅぅ、と高木を抱きしめる。
その抱擁は以前とは様変わりしていた。
少女の左手が高木の腰に、右手が首に伸びている。男の体を絞りあげて、自分の体に押し付けている。
高木の骨ばった体に、さくらの豊満な体がめり込んでくる。豊かな乳房がむにゅぅと押されて、胸板の上で潰れている。
「せんせ……すき……すきぃ」
外では聞いたことがない、発情しきった甘い声。
「ああ、せんせい……いいにおい……すぅぅぅぅ」
さくらは全身全霊で高木を味わっていた。鼻孔をひくつかせて匂いを嗅ぎ、股の間に足を差し入れてくる。
「あ……さくらく……ん……」
少女の細い腰が、高木の股間になすりつけられる。
「せんせ……ハグってこんなに気持ちいいんですね……わたし、知りませんでした」
誰がどう見ても前戯でしかないそれを、しかしさくらは無意識で行っていた。本能のままに、腰をクイクイとひくつかせる。
「せんせ、すき、すきぃ……」
それはまるで、高木の体で自慰行為をしているような、ひとりよがりな性の発露だった。だがそれだって彼女の責任ではないだろう。女がここまで猛っているのに、手を出さない男が悪いのだから。
「さくら……くん……」
高木は身動きひとつ取れなかった。
これまで女性経験というものが一切なかった高木はひとたまりもなかった、ただズボンのなかでペニスを勃起させて、ブレザーの腹で愛撫されていた。
「せんせ……あ……ああ!」
幸い、さくらが勃起に気づいた様子はない。彼女はいまどき珍しいほどに性にうとく、自分がなにをしているかすらわかっていない様子だった。
「はぁはぁ……あれ? ……か、からだが……」
ただそれでも、野生の獣がなんの知識もなしにまぐわうように、花が咲くのを拒めぬように、自らに宿ったメスとしての機能を目覚めさせていった。
「なに、これ……変な感じ……あ! ああ!」
強く、強く抱きしめられる、股間と股間が、痛いほどに擦り合わされて、
「あ! ああああああ~~~~!!」
びぐびく! とさくらが震えた。細い体が痙攣して、全身ですがりついてくる。
「…………あ……あぇ? な……なにこれ……」
おそらく生まれて初めて絶頂したのだろう。彼女は見知らぬ感覚に困惑していた。
「先生? いまわたし…………あれ? 先生……」
さくらが、なにかに気づく。その視線が下がっていく。
さっきまでパンパンに張っていた男の股間が、すっかり縮み上がっていた。
(気づかないでくれ……!)
高木が願ったそのとき、
校舎の鐘が鳴り響いた。
「あ! 大変! 会議の時間!」
さくらが飛び上がった。別れの挨拶代わりのハグで、すでに数十分がたっていた。
「すみません高木先生! 私、行きますね!」
さくらが去っていく。
遠ざかっていく足音を聞きながら、高木はどっと息を吐いた。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
じんわりと、ズボンにシミが広がっていく。
いくら童貞だからといって、情けない。服越しのつたない愛撫で、こんなにあっけなく果てるだなんて……。
「……どうすればいいんだ……」
どうすれば……と繰り返す。
現在の痴態と、日々エスカレートしていく二人の関係に付いて、高木はなんの対抗策も思いつかなかった。
それからも、二人の抱擁は続いた。
「たかぎせんせぇ……」
さくらは高木とハグすると、その体を使って無自覚な欲望に溺れていった。
「う! くぅ! さくら、くん……」
それが、高木を苦しめていた。グイグイと押し付けられる細い腰が、鼻孔に吹き込まれる甘い吐息が、股間のものを固くさせた。
高木はなんとか抵抗しようとしていた。ハグを健全な、あくまで抱擁の範囲に収めようとした。
「せんせぇ……ふふ、ふふふ」
だがそんな決意も、いざ抱きしめられると消え去ってしまった。
(ああ、なんて暖かで、いい匂い……)
まるで酒に溺れた人間が、決して適量で終われないように、一度彼女に抱きしめられると、高木はなにも考えられなくなってしまうのだ。
甘く香る汗の匂い。こちらを信頼しきった柔らかな体。
じわりと涙が浮かんでくる。孤独な日々のなかで得るさくらの暖かさは格別の癒やしだった。
「せんせぇ、だいすきぃ……」
舌っ足らずな口調が耳元で弾ける。熱い吐息が香りをまとって鼻腔をくゆらす。
手が、自然とそこに触れている、股間とも太ももともつかない領域を撫でていく。
「さ、くら……くん」
壁に体重を預けて、高木は愛撫を受け続けた。ズボンのなかでパンパンに勃起したペニスが、限界を迎えようとしている。
「せんせ……あ……ああ!!」
そしてさくらもまた、高まっていく。小さな身体が、すっぽりと男の身体にはまり込み、足と足が絡まり合って、首筋の匂いを嗅がれていく。
「あ! ああ! せんせ!」
右手と同じストロークで、少女の腰がグイグイと動く、高木の太ももでオナニーをして、同じ高みに登っていく。
「がはっ! ああ!!」
「あ! ああ~~~~!!!!」
どぐん! 高木は少女の掌に射精する。どぐん! どぐん! 二度三度と精子を放って、パンツの中を汚していく。
「あ……ああ……せんせ……」
さくらがうっとりとしてしなだれ掛かる。
「だいすき……だいすきですよ……先生」
高木に体を預けながら、さくらはやわらかく微笑んだ。
どうすればいいのだろう……。高木は悩む。
こんな関係は辞めねばならない。だが、どう伝えたらいいのかわからない。あのような行為に及んでなお、さくらは無垢で、純朴な少女のままなのだ。それを傷つけずに諫める言葉が、なんど考えても浮かんでこない。
いや、果たしてそうか? 高木は疑う。
こうして悩みながらも、実のところ自分は喜んでいるのではないか? 彼女がもたらす快楽にすっかり溺れて、悩むふりをしているだけではないか?
いや、そんなことはない。次こそは言おう。次こそは……。次こそは……。
そんうしている間にも、季節はすっかり秋になっていた。