今年も憂鬱な梅雨の季節が来た、スタレも落ち着いたし季節物でも書いて気分を変えよう
春が過ぎ去り、日中は少しずつ暑さを感じ始めた頃
俺とミスズが暮らしている里に梅雨が訪れた
「最近は雨ばかりで、なんだか気が沈んじゃいますね…」
「俺は雨の日も好きだけどね、ミスズの珍しい姿も見れるし」
ミスズの方に振り向くと、彼女は尻尾に頑張って櫛を通して整えようとしている
しかし毛の抵抗は激しく、すぐに膨らんでしまう
「あぅ…あんまり見ないでください…梳いても梳いても毛が跳ねて大変なんですよ?」
「これも梅雨の風物詩だよミスズ…とても可愛い」
「もう、私の気も知らないで…そろそろ怒りますよ兄さま?」
ぷんぷんもっふもっふ。あの頃よりずっと大きくなった尻尾を揺らしながら、可愛い妹弟子が怒っている
今日も嫁が可愛すぎて幸せだね
「いつまで笑ってるんですか…えいっ、観念してください兄さまっ…そりゃあっ」
「うわーモフモフに襲われるー」
俺が梅雨を好いている理由は九割ほどミスズのおかげなんだけどね
・・・・・・・・
「兄さま、尻尾の手入れを手伝ってください…」
「今日もミスズの尻尾は立派だねぇ」
「うぅ〜…」
布団の上で座っていると恥ずかしそうに頬を染めたミスズがこちらへ背を向けて座り、大きな尻尾を差し出してきたので傍に置いていた櫛で梳いていく
共に歩んだこれまでの旅路にて成長したミスズは、伸び続ける実力と併せて小さかった尻尾もフワフワモフモフと立派になってきた
今では梅雨の季節になると高い湿度によって尻尾が膨れ上がってしまう
「んっ…♪やっぱり兄さまに梳いてもらうほうが気持ち良くて好きです」
「俺にとっても、梅雨の楽しみの一つだから好きだよ」
「ふふ、兄さまに喜んでもらえますし、私も幸せな気分になれるので梅雨も悪くありませんね」
雨がしとしとと降る音を聴きながら手の中で揺れ動く尻尾をモフりながら梳く
1尾ずつ丁寧に梳いていき、綺麗になった尻尾に手や腕を巻かれたり時折頬を撫でてきたりとその感触と温もりに破顔する。
「気持ち良いけどやり辛いよ、ミスズ。もう少し大人しくしてね」
「えへへ…ごめんなさい、兄さま」
遠慮がちにふわふわと揺れる尻尾を撫で、残りの尻尾も手入れしていく
根本から毛先まで丁寧に櫛を通していくミスズと軽くおしゃべりしながらこれから始まる夏に思いを馳せる
「今年の夏はどう過ごそうか。ヒリョクの森で涼んだり、領都の縁日に行くのも面白そうだ」
「兄さまと一緒なら、きっと何処でも楽しいです」
「梅雨の間はこうして家の中でゆっくりするのも良さそうだね」
「梅雨が終わるまで、誰にも邪魔されずに…このままずっと…2人きりですね♡♡」
「この子ったらまた怖い事言ってる」
「ひゃっ、んっ♡兄さま、もっと優しく触ってくださいっ」
少しだけ乱暴に尻尾をモフると愛しい妹弟子は楽しそうに笑う
「もう、尻尾の手入れで夜が明けちゃいますよ」
「モフモフに包まれて徹夜するのも良いかも…」
「兄さまったら、そんなに私の尻尾が気に入ったんですか?」
尻尾の手入れがようやく終わった時、背を向けていたミスズがこちらに抱きついてくる
上機嫌に揺れる尻尾を眺めながら頬擦りするミスズを撫で回す
「んぅ〜っ♡♡兄さま、もっとしてください…♪」
「甘えたがりなのは変わらないねぇ」
「大人っぽい方が好きですか…?」
「どんなミスズも好きだし愛してるよ」
「私も愛してます、兄さまっ♡」
目の前でゆらゆらと揺れる黄金色でフサフサの尻尾をつい掴んでしまう
「ひゃぁっ!?またですか兄さま…?今は尻尾じゃなくて私を可愛がってくださいっ!」
「ごめんごめん、いててて」
尻尾に心を奪われていると、可愛い妹弟子が首筋に口付けて痕を残したり、弱めに噛んでみたりとマーキングしながら抗議してくる
尻尾から手を離してサラサラとした髪や耳を撫でてしばらく過ごしていると、気が済んだのかミスズは身体の力を抜いてぴったりと密着した
「ぅん…兄しゃま…」
「今日はもうこのまま寝るかい?」
「はぃ…おやすみ、なさい…」
「おやすみ、ミスズ」
枕に倒れこみ、掛け布団代わりにミスズを抱きしめて睡魔に身を任せる
いつまでも仲睦まじい日々が続くように祈りながら…
「はぁっ…!ようやく晴れましたね、兄さま!」
「もふもふ尻尾…また来年ね…」
「むっ…ほらっ、行きますよ兄さま!まずは2人きりでヒリョクの森でシンリンヨクですっ!」
「分かった分かった。ほら、しっかり手を繋いでいこう」
「はいっ♡」
梅雨は過ぎて、暑い夏が始まる。
愛する彼女と巡る四季は、いつまでも飽きないだろうな
連載中の章を差し置いて完結した章のオマケとな!?
あの世界はアスファルトやコンクリートが道を埋めつくしてないからきっと夏はそんなに辛くないかもしれない