もうやり直せない、六度目の最後の世界
彼は未練だけは残さないように四姉妹と仲睦まじく過ごす
「最後なんだし全員とデートして全員にプレゼント渡したいな」
「彼女達をもっと色んな場所に連れて行けたら良かったんだけど、今はこれくらいしかしてやれないのが辛いな」
『幸せね…ずっと…こんな日々が続けばいいな…』
『ねぇ…イスタロトを倒しても…私達はずっと一緒だよね…?』
─どうだろうな─
『今日、こうしてあんたと一緒に見た月も…きっと私は一生、忘れない。』
『イスタロトを倒して、戦いに勝って…全部片付いたら、いくらでも…また一緒に月を見られるんだから』
─イリトに花束を手渡した─
『わっ…!え、こ、これ、くれるの?』
『う、嬉しい…!ありがと、大切に飾らせてもらうね!!』
『気持ちいいですわね…戦いが全部終わったら、こういう船旅もいいかもしれませんわ』
『無事にイスタロトを倒せたら、またこうやって遊びに来られるといいですね』
『ステキな夜ですわね…殿方と二人で月を見る…私にこんな時間が訪れるなんて…』
─セラフィナに花束を手渡した─
『あ、あら、私にこれを…?フフ、なかなか良い趣味をお持ちではありませんか…』
『う、受け取らせて頂きますわ。ウフフ、綺麗…─ありがとうごさいます』
『ふふ、楽しかったね…音楽、全然興味無かったけど…
ちゃんと聴いたらすごく良かった』
『こういう時…普通の男女ならロマンチック…
キャー抱いて…とか言うのかな…』
『せっかく二人でデートに来るくらい仲良くなったんだもん…死なれちゃ悲しいしね…』
─ニーヴァに花束を手渡した─
『え、私に…?花束…?』
『何か…フフ。照れる…うん、でも嬉しいよ…ありがとね…』
『水のせせらぎ音が気持ちいいわ…お酒は無くてもいいから…ずっとこうしてたい…』
『何だかこそばゆいけど…本当にステキな一日。
ありがと主様、連れてきてくれて…』
『アタシも色々刺激的で…楽しかったわ。
良かったら…また来ましょ。今度は別の場所でもイイけどね!』
─ジュエリに花束を手渡した─
『おおっ!?アタシに、これくれるって言うの?ヒュー、さっすが主様!』
『うん、大事にするわ…ありがとね!』
『私とデート、ですか…貴方、自分の状況を分かってて誘ってるんですか!?』
『アルブの寿命は短いから最期の想い出に、ってそう言われたら断れないじゃないですか…』
─ナミィに花束を手渡した─
『私にプレゼント…?わぁ、綺麗な花束ですね!』
『プレゼントなんて初めて貰えました!大切にします!』
『フォラス様と妹達にも見せてきます!!』
『今度はフォラスが襲撃に来そうだからやめて』
「うーん、やってる事が控えめに言っても四、いや五股のクズ。…まぁ、クズ以下なのは今更か」
「それでも…イリトも、ニーヴァもセラフィナもジュエリも、ナミィも!」
「全員の事が、大好きなんだからしょうがないよな!!」
魔宮の最奥、彼は愛しい四姉妹に感謝を伝え、最後の話をする
「この奥にイスタロトが…いよいよ本当に、最後の時だ…」
「今だから聞いておくけど、あんたは全てが終わった後も、この旅を続けたいと思う?」
「人から見たら、偽物に過ぎないこの五人の関係を…これからも続けたいと思う?」
思わない
罪人の俺にそれを望む資格は無い
お前と二人で旅したい
五人で旅を続けたい
今はそんな話をする時じゃない
四姉妹にこれまでの悪業に対する許しを乞い、素直な気持ちを打ち明け、共に生きる道を選べるほどの欲深さは持てなかった
己にそんな資格がある訳無いのだと。彼自身が一番よく分かっている
もし、一度も悪人に堕ちる事さえ無ければ…彼には別の未来があったかもしれない
そして、最後の魂の追憶とイスタロトとの対話が始まる
「お前は…プロナントの力に溺れていたものの、今は使っていないようだな。旅路を繰り返して経験と自信がついたか」
「従者とした四人の娘には...あれだけ凌辱しておいて今は手を出さずに生きているのか。今更情愛に目覚めたのか?」
「旅の中、最初こそ悪人として好き放題に我が力を使っていたが、今は多くの善行を積みあげ善人として生きているのだな。贖罪のつもりか?」
「そして…今お前は、私を倒し大勢の人々を救おうとしている」
「素晴らしいぞ…幾度も我が篭絡から抜け出し、信念のみを支えにここまで辿り着くとは…」
「今、まさに…お前の最後の旅が終わろうとしている」
「私は催眠で悪事を成した貴方を非難しましたが──」
「それは悪と理解していながら…フォラス様に加担していた私も同じ」
「私に英雄に憧れる資格なんて無いんです、本当は…
貴方以上の罪人なのですから」
「これまで何度も突っかかってごめんなさい…」
「私、最初は貴方の事嫌いでした──
洗脳されたまま無理矢理犯されるなんて、もう経験したくないです」
「なんで…覚えて─」
「でも、それからの貴方が私達を何度も助けてくれた事、貴方と一緒に見たあの景色の事、悪魔には得難い幸せな時間は絶対に忘れません」
「もし出会い方が違えば…私も貴方の仲間達みたいに、貴方の傍で仲良く過ごせたのかも──」
「さあ、行きなさい…そんな情けない面してないで。
私だって…我慢して笑顔でいようとしてるんですから」
「また、お会いしましょう…愛してます、私の英雄さん。」
この世界で最後の決戦。本気を出したイスタロトを前に、彼と四姉妹は威圧に負けない戦意を抱いて立ち向かう
「さぁ、我が前に来い…退屈に飽いた私を、存分に愉しませてくれ」
「幾万、幾億の退屈な夜を塗り潰すような…峻烈で熱狂的な時を何度でも我が生に与えてくれ!!」
四姉妹達と共に死力を尽くしてイスタロトを追い詰め
最後はイスタロトと彼の力のぶつけ合いが始まる
「我は魔の王…
悪しき者を遍く統べる永久の背信者──」
「この地に住まうは全て我が従僕…即ち我が前に敵無し──対する者は蹂躙され躯を晒すのみ!!」
幾度も行なってきたプロナントによる身体の覚醒
それも今回の世界で最後
「我が力は無限…憤激の迸りは天地を討滅し──
現す言葉は万象の理を変革する──」
「如何なる者も其れに並ぶ事無し…
我は永劫、天地に君臨する絶対者なり!!」
自身の潜在能力を限界すら超えて奮起させる詠唱は、
五体を崩壊させる代償を伴う
「星々よ畏れよ──
我は暴と智で地を統べし後、
天も堕とす巨大な狂星──」
「我が前には万物、何者も輝く事叶わず──
総ては虚無の海、死の闇に掻き消えるのみ!!」
この詠唱によって自身の体が崩壊するとしても!
目の前の大悪魔を滅ぼし、四姉妹を護る事ができるならば
何も悔いは無い!!
「我が命は我が物に有らず──
この身を照らし続けた四つの灯火を、
大魔の脅威から護る礎なり──」
「既に魂の散滅も厭う意味無し──
今こそ我は我に命ず…
従者の愛しき輝きを決して絶やすな!!
我が命を燃やし尽くし、定めを超えろ!!」
「例え偽りの絆でも…
今この時、我は…我らは地獄に差す光──
どんな闇の脅威にも、屈する事無し!!」
身体に極限まで収束させた魔力を
目の前で不敵に笑う宿敵に開放し
今、世界を救う光を撃ち放つ!!
【クリスタルバースト──!!!】
・・・・・・・・・・
《我が命とプロナントが失われし後…お前は負ったカルマと向き合う事になる──》
《力を失いお前が導かれるは…
私と同じ滅び──
私は一足先に逝き…見守るとしよう──》
審判の時が…長かった旅の終わりが、ついに訪れた
ナミィとのデートはきっと楽しいと思う。
読者の皆さまも頑張って想像してくださいまし!