「ここまでくれば、大丈夫だろう……このまま左へ向かってまっすぐ行けば、君がライブをすると言ったドームがある。一本道だから、迷うことは無いだろう」
喫茶店から数キロ離れた裏道で、辺りの様子を窺いながら、ドクターはソラの手を離した。
「あっ……」
ソラは、名残惜しそうにその手を追いかける。
「どうした?」
「え、いや、なんでもない……」
しかし、それにドクターが気づくと、ソラは慌てて手を引っ込めた。
「ふう……にしても、結構な距離走ったな……ソラは大丈夫か?」
自身の額に光る汗を拭いながら、ドクターは聞く。
「私は日ごろ、照明の下で何時間も歌って踊ってるんだよ? これぐらいへっちゃら」
「そうか、ソラは凄いな……」
深呼吸して、自身の息を整えたドクターは辺りを見渡した。追手を振り切ったことが確認できると、改めてドクターは切り出した
「じゃあソラ、ここでお別れだ。ライブチケットありがとう。絶対見に行くよ」
「うん……楽しみにしてて」
ソラは視線を上げることが出来ない。今ドクターの顔を見たら、離れられなくなってしまいそうだったから。
ソラはアイドルであり、ドクターは一般人。それはソラもよく理解していた。だからドクターの言う通り、マネージャーたちの元へ戻るのが正解なことも、よく理解していた。
だが、本能がそれを拒む。まだ、ドクターと一緒に居たいと。あわよくば、この先もずっと、側にいたいと。
「さあ、行くんだ」
ドクターがそう促す。ソラはブレザーを返し、頷くと、ドームへの道を歩こうとしたその時。
「あ、居たぞ!」
思わぬ形で、ソラの願いはかなうことになった。
「クソ! 記者が増えてる!」
ドームへの道を塞ぐように、数名の記者たちが走ってきていた。
ソラの動きは素早かった。神様が自身の願いを叶えるチャンスをくれたのだと解釈し、このチャンスをものにするため、今度はソラがドクターの手を引いて走り出した。
「こっち!」
「ソラ!?」
来た道を戻るようにソラは走り出す。
「ソラ! こっちは!」
喫茶店がある通りから今いる場所に向かう際、一瞬だけ通り抜けた薄暗い道。そこでソラは方向転換し、目についた建物の中に入っていく。
「ちょ、ソラ、ここラブホ……」
やけにピンクな内装で、受付にはパネルのみが備え付けられている。ソラは右手でぎゅっとドクターの手を握りしめながら、戸惑い気味に左手で部屋を選び、宿泊のプランを押した。
すると、パネル横にある引き出しが開き、鍵が出て来る。自動で開いた引き出しに恐る恐る手を伸ばしたソラは鍵を掴む。鍵に書かれた番号とホテルの壁にあるマップを交互に確認し、ドクターを引っぱりながらエレベーターへと乗り込み、そのまま取った部屋へと向かった。
「っつ、はあ………」
鍵を締め、大きく息を吐きだし、その場にへたり込むソラ。
「ごめんねドクター、こんなことになっちゃって。あれじゃあ走って逃げるのは無理そうだったから、ここで待機して、ペン急の皆に迎えに来てもらうことにするね」
「わ、分かった。確かに、そっちの方が安全かもしれないな……でも、僕まで連れて来る必要あった?」
「ドクターが記者にもみくちゃにされている所を想像したら、なんだかすっごく嫌な気持ちになったから……ごめんね、私の我が儘でこんなことになっちゃって」
改めてソラはそう謝る。
「気にしなくていいよ。まあ、少なくとも僕は今日、ここに泊まることになりそうだな……ソラを一人残して帰るのも心配だし……幸い、明日は土曜日で学校もないし……」
ドクターはそう黙々と今後の予定を立てる。
「ドクター、一杯走って汗かいたでしょ? 先にシャワー浴びちゃいなよ、私、その間にペン急に連絡しちゃうからさ」
ドクターは自身の状態を見て、ソラの申し出に頷いた。ドクターは出来る限り冷静になるように努めていた。少しでも気を抜けば、年頃の高校生男子が、綺麗な女子と二人きりで個室にいると言うこの状況を意識してしまい、爆発しかねないと考えていたからだ。
ドクターがシャワーを浴びた後、交代でソラもシャワーを浴びた。ドクターは風呂場から聞こえて来る水音に心を揺らがせまいと、頭の中で円周率と素数を数える。
シャワーを浴びた二人は、そのまま雑談タイムに突入し、会わなかった1年間の隙間を埋める様に話し続けた。
「それでね、そのライブの時に、ファンの人が私に両手いっぱいの花束をプレゼントしてくれてね」
話初めてしばらく経った後、ドクターはやけにソラの距離が近いことが気になった。
ベッドに腰掛け、ほとんど密着するような距離でソラは話し続ける。少し動けば、肩同士がぶつかってしまう。
「記念のライブとは言え、ちょっとビックリしちゃったんだ~」
ドクターは、ソラが話している間に少しづつ距離を置こうと身体をスライドさせるが、同時にソラも身体を動かし、この距離を保っている。
「えっと、ソラ? さすがに近いから離れようとしてるんだが……」
そう切り出すドクターに、ソラは一瞬ドキッと心臓を跳ねさせるが、なんとか平然を装う。
「そうかな? でも、こうして近くにいた方が、私の声がはっきり聞こえるでしょ?」
「まあ、そうだけど……」
「それとも、ドクターは私が側にいるの、嫌?」
ソラは上目遣いでそうドクターに迫る。その動作に、ドクターの心拍数が跳ね上がる。
「嫌ではないけど……」
自分の行動を受け入れたことに勢いづいたソラは、そのまま畳みかける。
「ふ~ん、ドクター、私にこうやって近寄られるの、嫌じゃないんだ?」
ぎゅっと自身の身体をドクターの腕に身体を密着させ、手をドクターの太ももの上を滑らせるソラ。
「こら、あんまりからかうな!」
なんとか鋼の意思でベッドから立ちあがり、ソラから距離をとる。
「へへ、ごめんなさーい」
舌を出して軽く笑うソラ。反省している素振りはない。
その後も、ソラはドクターに密着するように座り、機会を窺っては太ももや手に触れて来た。ソラは完全に、その気だった。
しかし、ドクターは鋼の意思でその誘いを跳ねのける。相手はアイドル、自分が手を出していいような相手ではない。ソラのこの動作も、からかっているだけ、そう頭の中で繰り返しながら会話を続けた。
気づけば時刻は夜の11時となっていた。二人は会話に夢中になりすぎて、すっかり夕飯のことなど記憶から抜け落ちていた。
「そう言えばソラ、ペン急の皆は何時に迎えに来るんだ? もう11時になるぞ?」
「え、えっとね……皆は、明日の9時に来るよ」
「そうか、明日の朝来るのか………明日!?」
ドクターは素っ頓狂な声を上げる。
「じゃ、じゃあ、今日は……」
「うん、ドクターと一緒に、ここに泊まるよ」
「そ、そうか……」
ドクターは何とか平静を保つ。しかし、頭の中では依然混乱状態だ。憧れのアイドルである美少女と一晩同じ部屋の中で過ごす。男子高校生にとって、これ以上ない夢のようなシチュエーションだ。
「じゃ、じゃあソラはベッドで寝てくれ、俺はそこのソファーで寝るから」
混乱状態とは言え未だ鋼の意思は健在で、ドクターはそう告げる。間違いが無いように、自身の暴走でソラを傷つけないように、その一心でドクターは自身の本能を押さえつける。
制服の上着を脱ぎ、ソファーへ寝転ぼうとするドクター。だがソラはそんなドクターの腕を掴み、首を振る。
「ダメ! そんなところで寝たら風ひいちゃうよ。私は……気にしないから、ベッドで寝よう? ね?」
ステージ衣装で、装飾を外した姿のソラがドクターを見上げるような形でそう尋ねる。
「うっ……」
その愛らしい瞳をむけられたドクターは、断ることが出来なかった。
「分かった」
「うん、ありがとう」
ソラが先に布団に入り、後に続いてドクターも布団の中へと潜った。しかし、ドクターは布団ギリギリの位置に陣取り、ソラに対して背中を向ける。
「ドクター、それじゃあ落ちちゃうよ、もっとこっちによって」
ソラの言葉の後、少し躊躇い気味にドクターは自身の身体をベッド中央に近づけた。ソラはドクターの大きな背中を見ながら、期待と緊張の狭間にいた。
ここまでお膳立てしたのだから、自分を襲ってくれるのではないかという期待。上手くドクターを満足させられるか、上手くできるかの緊張。その感情を募らせていく間に、ソラの情欲は増していった。
ドクターに全てを奪われたい。奪って欲しい。その感情で胸が一杯になったソラは、遂に自分から手を出すことを決意した。
「ドクター……」
そっと背後に近づき、ドクターの下半身へと手を伸ばした。
「そ、ソラ!?」
慌ててドクターは布団から飛び出す。
「えへへ……ドクターのあそこ、軽く触っただけでも分かったよ?」
ソラも布団から這い出し、ベッドの上で腰を抜かしているドクターのズボンのチャックへ手を伸ばす。ジジジジと制服のズボンのチャックを下ろし、ベルトを緩めると、パンパンにテントを張ったパンツが見える。
「もう、ガチガチだって」
「や、やめ!」
ドクターの制止も聞かず、とろけた表情でパンツをまさぐり、ずり下ろす。
すると、むわっと男の匂いを漂わせながら、ドクターのパンパンに勃起した肉棒がソラの顔の前に起立する。
「わ、大きいね……男の人は、皆こうなのかな?」
軽く自身の手で上下に擦る。すると、ドクターの身体はビクッと反応し、肉棒がドクンと脈打つ。慣れない感覚を手のひらに感じ、少々戸惑いながらも、段々と興奮が高まっていく。
興奮が高ぶって来たソラは、大胆な行動に出る。
「ドクター、喫茶店で私の水着姿のページ、食い入るように見てたよね? それって、私の身体に興味があるってことでしょ?」
竿を擦り、亀頭を手の平で撫でる様にまさぐる。
「ち、ちが……そうゆうわけじゃ……」
「見栄張らなくていいのに」
竿を握りしめたまま、ソラはドクターの耳元で囁く。
「お家に帰って、私の水着を見ながらこうして、シコシコするつもりだったんでしょ? えっち……」
ドクターの身体がビクンと跳ね上がる。
「でも、ドクターが私の身体で興奮してくれていることに、悪い気はしないかな。むしろ、嬉しい」
手で作った輪っかで、カリをひっかく様に刺激するソラ。指が触れるたびにドクターから声が漏れるのを見て、ソラは自信をつける。自分の動きは、間違いなくドクターを気持ちよくできていると。
自信を付けたソラは、意を決したように、ドクターの肉棒を自身の小さな口で、多くの人へ美声を届けて来た口で咥えこんだ。最初は亀頭、そして竿と、ドクターの肉棒は、生暖かいソラの口へと入って行った。
「くっ、あぁ」
思わずドクターの口から声が漏れる。
「ソラ、だめ、だ……」
ドクターはソラの顔を押しのけようと手を伸ばすが、ソラが口の中で肉棒を舌で転がすと、快楽によって全身から力が抜ける。
ソラはそんなドクターの反応を見て、頭を上下に動かし始める。
「………んむっ……ん、ん……っ…んん、おえっ……ん」
決して上手とは言えなかった。きっとそこらにある風俗店の慣れた嬢なら、自前のテクニックを駆使して男を骨抜きにし、手玉に取ることもできただろう。
だが、そんなテクニックなど持たないソラのフェラでも、ドクターは底知れぬ快楽に浸っていた。上手く呼吸できず何度も嗚咽を繰り返し、涙を目に浮かべるソラの表情、時折肉棒のカリを前歯が引っかき生じる若干の痛み。興奮で紅潮する頬。
「……っ、はぁ……ん、ん……っ…ん」
小さな口から滴り落ち、ベッドのシーツを濡らす銀色の唾液、気持ちよくなっているかを確認するために、チラチラとドクターの顔を除く視線。そして、空いている手で自らの本能のままに、ショーツの上から秘部をなぞるソラの動き。それら全てが快楽となって、ドクターの脳を支配する。
もはや、ドクターはその快楽に抗えなくなっていた。
「やばい、ソラ……このままだと」
体内から絶頂の瞬間が昇って来るのをドクターは感じた。
「
ソラはドクターを絶頂へ導くべく、精一杯肉棒への愛撫を続ける。じゅる、ちゅると、淫らな水音が大きくなっていく。ドクターは全身でソラからの愛を感じ、その思いを、自身の肉棒から噴出させる。
「ヤバ、い……イッ!」
直後、大量の白濁液がソラの口の中で洪水を起こす。
「ッんん! ん……んん……」
一瞬驚きで目を見開いたソラだったが、口の中へ広がる液体を、ゆっくり、ゴクンと音を立てて飲み込んだ。舌の上から喉、胃袋へと、焼けつくような熱をソラは感じながら、ドクターの精液を飲み込んだ。
「ンッ! ゴホッゴホ! に、苦い……」
ソラは、ドロドロと濃厚なその液体を飲むのに相当の労力を要し、喉へ負担をかけたのか、大きくせき込んだ。さらには、初めて感じる精液の独特な苦みに、表情を歪めた。
「ソラ! ごめん、大丈夫?」
慌ててドクターはソラの肩に手を置き、様子を窺う。
「えへ、えへへ……ドクターの精液、飲んじゃった。苦くて、喉や鼻を突く感じだけど、なんだか、悪い気はしない、かな」
精一杯の笑顔を浮かべるソラ。その表情は、多くの人へ振りまくアイドルとしての清純な笑みではない。ただ快楽に身をゆだね、自身の愛する男へと向ける淫らでとろけた女としての笑み。その口元からは、自らが注ぎ込んだ白濁液が僅かに零れ落ちている。
ドクターの理性はこの瞬間0となり、鋼の意思は砕け散った。
「ソラ!」
華奢な体はいとも簡単に押し倒される。
ドクターの手によって、ソラの纏っていた煌びやかな衣装が、アイドルの『ソラ』を形作っていた衣装が少しづつ脱がされていく。『アイドル』という衣装が脱げていくに連れて、ありのままのソラの姿が露わになる。
「ドクター……ようやく、その気になってくれたんだね?」
「もう、ここまで来て、やめては通じない。引き返すなら、今だよ」
念を押すようにドクターは、ソラを押し倒した形のままそう問う。ドクター最後の、理性ある行動だった。しかし、ソラは首を振る。