納骨堂を出て宿に戻る頃にはすっかり日は暮れていた。
「お客さん! 飯の方は如何しやす? 」
一階の大ホールに併設されている酒場の近くでほっと一息ついていると、宿屋の主人にそう聞かれれたので「あ、私はいいです……お腹空いてないんで……」と断った。
本当はお腹が減って死にそうだが、酒場は人でごった返している。ああいう賑やかな場所は昔から苦手だし、勇気を出して行ってみてもバカに絡まれたり、酔っぱらいに人より大きいとよく言われる尻を触られたりと本当に嫌な思い出しかない。
そんな訳でさっさと二階の自室に戻ろうとした所を、既に飯でも食べに行ったものと思っていたアインに行く手を遮られる。
「おいおいおい! あんだけ動いて腹が減ってねぇのはないだろう! 無理して倒れられても困るし向こうでなんか食おうぜ」
こで今日は君に助けられたから……云々の安い誘い文句を吐かれていたら問答無用で無視していたところだが、そういう風に言われるとちょっと困ってしまう。
部屋には保存食を用意しているのでそこで食事を済ませてしまえばいいとは言え、純粋な心配を無下にすると要らない反感を買って明日からの探索に支障が出るかもしれない。
「……そうですね、失礼しました。それじゃ酒場でなにか頂きましょうか」
諦めた私がそういうと、彼はニカっと笑って何故か取っておいたらしい席の方へ私を案内する。
「はいよ、注文のエールと料理。」 「あんがとさん! んじゃシェルフェ乾杯しようぜ」
美人だが極めて無愛想な給仕が雑にテーブルへ注文の品を置いた途端、私の眼の前に居る今日始めて組んだばかりだというのに、極めて馴れ馴れしいこの剣士は、泡立つエールで満たされた陶器のジョッキを手に持って突き出してきた。
「……乾杯」
せめてもの抗議に言葉でも表情でも嫌々やっている感を出しながら重い陶器をぶつけた後に、容器を傾けこの赤茶けた泡立つ液体を喉へと流し込む。
酸っぱくなったパンのような酸味とほのかなモルトの甘みが口の中に広がりゴクリと飲み込むと食道を焼くような酒精の刺激。しかし喉を通り過ぎると後を引く甘さがあり、普段あまり酒を飲まない私でもついつい杯を重ねてしまいそうになる。
「これ、美味しいですね」
何度かに分けて半分ほどジョッキの中身を飲み干した私は口元を拭った後、率直な感想を胡椒やハーブが練り込まれていて美味そうなソーセージと格闘しているアインに伝えると、彼は自分のことのように嬉しそうに笑った。
「おっシェルフェもいい舌を持ってる見てぇだな! 個室でもベッドの寝心地は最悪、店員はどいつもこいつも無愛想、飯だって、値段の割にイマイチだが、酒だけは美味ぇのさ。」
既に何処かで一杯引っ掛けていたのか、赤ら顔に自慢げな表情を浮かべて自分の店でも無いだろうに口から垂れ流し始めたアインの薀蓄を「あーはいはい、そうなんですね」と言った具合に受け流しながら空きっ腹に飯を詰め込むと、熱い料理と酒精に段々と体が汗ばんで、疲労も加わって頭がボォっとしてくる。
確かに彼が言う通りここのエールは美味しいが、私は別に酒豪なわけじゃない。ある程度飲み食いしたらそのまま適当に切り上げてしまおうか。
「……アインさん、どうしました?」
などと考えながらアインの方へ視線を上げると、テーブルに片肘をついて何かを考えているらしい彼と目があって、少しドキリとしてしまう。
「やっ、別になんでもねぇよ」
そんな風に口では言っていても、付き合いの短い私でも分かるぐらいには顔には『何か言いたいことがある』と書いてあるような表情を浮かべているのが分かるぞ。
ふふふ、なんだか疲労感と酔いが裏返ったかのように気分が良い、散々振り回された仕返しにちょっとウザ絡みしてやろう。
「らしくない表情してますね。今日の依頼で何か気になる所でもあったんですかぁ?」
唇を濡らすほどに、ジョッキの中のエールを飲むと、未だ考え込んでいる様子の剣士君の脚甲を軽く蹴る。
「別にんな訳じゃねぇけど……まぁそれにしたって初日からエラい目に遭っちまったな」
そう言いながら彼はいつの間にか頼んでいたらしい追加のジョッキをぐぐっと飲み干し、ナイフで切った腸詰めの肉片を口に放り込む。
「ええ。あの様子だと、目的地までの道中も動死体がうじゃうじゃいるでしょうね……」
現在も使われており、手入れも比較的行き届いている筈の区画の死体がすべて死霊化していた。より下の区画の状態も、準ずるものと考えるのが妥当だろう。
「けどまぁあの程度の連中程度なら、俺とシェルフェで一捻りだな! 今日の魔術助かったぜ」
こういう風に言われると、どの魔術がどう助かったのか教えていただけると助かります。といったいじわるな事を言いたくなるのが私の常だが、彼の屈託無い笑顔と称賛に微笑を浮かべて言葉を飲み込む。
「アインさんには助けられてしまいましたね。貴方がいなければあの骸骨騎士の剣に串刺しにされる所でしたもの」
助けてもらった手前もあっての礼の言葉が何故かむずかゆく、思っていたよりも和やかに進む会話の話題は自然今日の依頼の話へと移っていく。
「しっかも、依頼人サマは目的地につくまでやれ墓は荒らすなやらなんやらアレコレ煩えしなぁ」 「そこは補填の前金が支給されたでしょう? 成功した時の報酬もかなりの額を提示してくれましたし」
色々と口うるさい依頼人であったのは確かだったが、その分の埋め合わせも十分貰っている。大丈夫だとは思うが一応釘は刺しておこうか。
「例の剣は不可抗力って事でしょうがないとは思いますけど、これ以上は副葬品に手を出そうなんて思わないほうが良いですよ。 バレたら報酬がパーになりかねませんし、モノによっては妙な呪いでも掛かってる可能性も十分ありえます。」「飲み食いは前金で十分賄えるでしょう? 」
問題児を諭す教師のように、ジョッキを片手にわかりやすく、優しく悩める彼に私がそう言ってあげると「うーむ……それがなぁ……」と何か言いにくそうな様子で頭を抱え始める。なにか困ったことでもあるのだろうか?
「あはは、急にどーしたんですアインさん。サイフでも落しましたか? 」
冗談めかして私がそう言うと、彼の表情が強張り引きつった笑いを見せる。えっまさかコイツ……。
「俺今気がついたんだけどさぁ……骸骨騎士とヤリあった時にさぁ……前金入った財布を落としちまったんだけどさぁ……今日の飯は奢りって事にしてもらえねぇかな……」
しまった、こいつバカか。
別の前衛を探すか?一瞬そんな考えが頭をよぎるが、こいつより役に立ちそうなヤツをこれから探すのも手間だし、前衛抜きに死霊の巣のようになっている納骨堂を探索するのも願い下げなので渋々、この場は顔を繋ぐ事を優先。
「……しょうがないですね、今回だけですよ」
今回だけなら大した出費ではないが、予想外の出費に頭が痛い。
「すまねぇ、この借りは利子も付けてきっちり返すからよ」
そう言ってハハハと笑うアインの姿にため息をつきながら、私は近くの給仕を呼び止める。
「すみません、エール、追加で一つお願いします。そいつの分は要りませんよ」
予定は無かったが、なにか飲まないとやってられない気分、やって来たエールを見せつけるように飲んでやる。あっやっぱり美味しい! いい気分だ。
■■■
「んんッ!」
ギシギシという音を立てて、二人分の過重を受け止める安物のベッドが軋み声を上げる。
薄暗い部屋の中には二人分の……私とアインの服を脱ぎ散らかされて転がっており、安物の蝋燭に照らされた壁には四つん這いの姿勢で後ろから獣のように責め立てられる私の姿が影となって映し出されている。
「……このッ!最低最悪ですね……!」
あの後、慣れない深酒にベロベロになってしまった私はいつの間にか、アインの部屋に連れ込まれていた。
最初からそういう目的で近づいたのか、酔いつぶれた私を見てチャンスと思ったのか、いずれにせよ私が正気に戻った時には既に下着を脱がされており、アインは露わになった人よりもよく大きいと言われがちな私の尻の肉をしっかりと掴んで腰を振っている最中だった。
「くっ……んんッ!」
、肉と肉がぶつかる生々しい音と共に、露わになった胸が揺れて汗が飛び散り、太く熱い男の肉棒が膣壁を刺激するあの感覚に思わず声を上ずらせて喘いでしまう。
そんな気恥ずかしさから顔をシーツに埋めて、耳元で囁く彼の吐息が酒精に赤くなった背中や首筋にかかるのを感じて思わず
「財布を無くしたからご飯奢ってやったのにこいつぅ……!」と声を上ずらせ叫んでしまうが
そんな問にもお構いなしに他人によく大きいと言われる私の尻を両手で掴んで腰を降るアインの肉槍は私の子宮口をズンズンと打ち据え、その都度身体が快楽で小さく跳ねてしまう。
「悪りぃ悪りぃ! その灰色の髪がすげぇ好みだったもんでなぁ! 」
「話した感じ別に初めてって感じでも無かったし、まぁそれなら他のやつに食べられちまう前に……てな訳さ」
どういう意味での『訳さ』なんだ!? 意味がわからない!
私の後ろ姿を見て興奮したのか、いつの間にか汗ばむほど熱を持っていた肉棒が膣道の壁をゴリゴリと抉るように奥へと入り込んでくる刺激に私は小さく悲鳴を上げてシーツを強く握り込む。
「女の子と組む度こんな事してるんですかッ! 」
こんなヤツ相手にしてしまった久々のセックスに自分が興奮している事にムカついた私の言葉は聞く耳持たないとでも言うように、彼は私の腰を掴んでいる手に力を込めると更に激しく抽挿を繰り返し始める。
「なッ!?私の質問に答え……うあっ!あぁ♡」
余りに強い快楽に思わず腰が引けそうになるが逃すまいと彼のがっしりとした腕が腰と胸に伸びて、完全に体をホールドされてしまったことで阻止される。
より深く奥まで彼を受け入れる事になってしまった事でビクビクと締め付けてしまう私に対し満足そうに笑うとアインはそのまま続けていく。
「そんな……あッ♡こんな、強引な人にだなんて……」
乱暴に犯されているというのに自分の口から漏れ出す言葉は真逆のもので、それを聞いたアインがククッと含み笑いをしたのを感じた瞬間
彼の腰の動きが更に激しくなりそれに合わせて私もエールの酒精に依るものとは違った火照りに赤みを帯び、汗に濡れた身体を人並みの大きさの乳房がはしたなく揺れるのも隠さず前後に動かし続ける。
「ほんっと!酒の勢いで女の子に手を出すなんて最低ですね!」
酷く強引に始まった情事であるというのに、段々と私の体が、アインのソレを受け入れつつあるという事実に思わずそう叫んでしまうが、私の体を後ろから激しく貪るこの男は悪びれるでもなく「おいおい、そんな格好で凄まれても全然迫力がねぇよ?」
などとほざいて私の胸を後ろから鷲摑みにして揉みしだき更に激しく腰を打ち付ける。
「あッ♡や、やめ……ひぅ♡」 「気持ちいかシェルフェ? 俺もすっげぇ気持ちいぜ……! 」
胸と膣を同時に攻められた私はもう限界で、子宮がキュンキュンと切なく疼く度に彼のモノを締め付けて射精を促してしまう。
もう取り繕う事もできない。私はこの男の肉棒によがって、自分から腰を振り続けて、近づく絶頂に発情期の獣のような甘えた声を上げていた。
しかし彼はまだ達する様子は見せず、逆にさらに激しく攻め立てて来る。まだイけないのか?イけそうでイケない、限界まで膨れ上がった肉棒が私のドロドロに濡れたナカをかき混ぜ続ける!
「ちょっとっ、しつこい……もうっ出すなら早く出してくださいよっ!もう私はげんかっ、だめッ激しッ……♡んんぅぅうああぁぁぁっ!!」
子宮を突かれる度に訪れる快楽に抗えずに達してしまった私は思わず全身を痙攣させてしまうが彼はそれでも構わず激しい腰使いで膣壁を肉棒で責め続けるのでたまらず叫んでしまった。
「おっ♡またイッてるぅ♡だめ、もうイってるのにっ♡♡んんッ♡イッてるのにもっとイク……♡あぁああぁぁッ♡♡」
彼の腰の勢いと自分の絶頂が交差するタイミングに何度果てたかも解らなくなった頃、やっと彼も限界を迎えたようで小さく唸るような声を上げると同時に熱いものが私の中へと注がれていくのを感じながら犬のように尻を突き出した格好で受け止める。
「ふぅーッ……♡ふぅーッー……♡」
汗が湯気のように立ちのぼるほどの激しい運動を終えたアインも私も何かを喋る余裕はなく、後背位の格好で繋がったまましばし息を整える。
「気持ちよかったか?」
大量の精を吐き出したモノをずるっと抜き出したアインがベッドに倒れ込みながらそんな事を言うので、絶頂の余韻が抜けない私は腹立ち混じりに「あほばかまぬけ!カスクズゴミ!恩知らずで無教養な社会の廃棄物!最悪ですッ!あなたとなんか二度と組みませんから!」と吠えるのだが彼はそれに対して余裕たっぷりな笑いを返す。
「……へっ……無理すんなって。俺がチンコ入れる度にぎゅうぎゅう締め付けて何度もイきまくってたくせによ……でもその悪口は傷つくぜ……」
「んな悪口で傷つくなら最初からすんなよ!」
顔がカッと熱くなるのを感じながら濡れた体を簡単に拭うと脱ぎ散らかされた服の山を漁って下着、魔術師の装束、ローブの順に身につけ着崩れをある程度直した後に魔女帽を被る。
アインの憎ったらしい面の前でこんな事をしなければ行けないのが屈辱的だ。
「うわ……首の所に歯型がついてる……痣になったら呪いますからね……」私のそんな恨み言に対してアインはさっきまでの態度から一転して
「わりぃ、それはやりすぎだったな。魔術師のシェルフェが言うとシャレにならねぇから許して……」なんてへんな所でシュンとする。
なんなんだまったく……。
もやもやした物を抱えながら憮然とした顔で部屋を出るとこれから就寝しようとしていたらしい同業者とすれ違いなんとも言えない顔をされてしまったので睨みつけて追い返した。
誰とも親しくしない陰気な魔術女が、服を着崩して男の部屋から出て来たのがそんなに珍しかったか。