※この作品はR-18です。

無名戦士たち~ファンタジー世界senkaSS集   作:火風水

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ハーフエルフの銃士メリッサ:名もなき砦①

あの後もしばらく難民狩りは続き、一ヶ月ほど関所を拠点に気ままに盗賊稼業をして過ごした。「これでまたしばらくは金に困らなくて済むぜ」団長は満足そうに言うが、アタシは正直金があっても使う事は無いのでどうでも良かった。それより問題はそろそろこの辺にも居づらくなってきたという事だろう。この一月ばかりで戦に雇われた時ぐらいに儲ける事が出来たのは良いものの、流石に少し長くこの場所に居座りすぎたのは否めない。縄張りを荒らされた近くの街だの領主だのが討伐隊を差し向けてくる前に、そろそろここを出て次の食い扶持を探す時間だ。そうなると身支度は準備や何やらで忙しくなる前に終わらせておくのに限るというのが相場、暇な内に武器と装具の手入れをすることにした。

 

とは言っても元々それほど上等な代物を着込んでる訳でもなし、手入れと言ってもそんな大層な事じゃない。愛用している幅広剣は包丁や鍋で使う砥石を使って刀身の切れ味を整え、マスケット銃は銃身を掃除し、欠けた燧石を交換する程度に留める。後は予備の武器やら何やらを準備して終わりである。そうして支度をしていると他の連中も次々に集まってきて、自分たちの寝床を片付けたり水浴びをしたりし出した。まぁ準備なんていつもの事であって特別時間のかかる作業でもないから直ぐに済むのだが……

 

「よぉメリッサ。お前は水浴びしねぇのか?」不意に傭兵仲間の一人がアタシに話しかけてきた。いつは確かウチの傭兵団の古株で、何かにつけては昔取った手柄を自慢気に話して、アタシに色目を使ってくる面倒なヤツだ。

 

「こっちゃもう浴びちまったから気にすんなよ、まぁ覗きがしたかったんなら残念だったな。」会話をしながら自然にやつから距離を取る。幸い今は団長のお手つきだからめったなことはされないのだが、下卑た目的で近づいてくるヤツが居なくなったわけではない。

 

「本当かぁ?嘘ってのは良くないぜ?」

 

適当に話を合わせてさっさと追い払おうと曖昧な返事を返しているとそいつはますます調子づいてアタシに体を寄せてきた。汗ばんだ臭い息が顔にかかり思わず顔を顰めるが一向に気にする様子はないようだ。「やっぱり色っぽい女ってのはこうでなくっちゃあなぁ」と囁かれながら胸を揉まれると流石に我慢も限界に達してくる。このエロオヤジ……いい加減沈めてやろうか。そう思った時、「おい!てめえら準備終わったならさっさと砦を出るぞ」と団長が大声をあげていた。慌ててそちらに向かうと既に他の傭兵たちがそれぞれの武器を手に整列して待っている。アタシも急いで合流し隊長である団長の横に並ぶ。

こうして団員全員が揃うと団長は皆の顔を見渡して威勢良く叫ぶのだ。

「諸君!今日から久方ぶりの仕事だ!心して掛かるぞ!!」

■■■

 

それからしばらくアタシ達は黙々と一週間程移動を続け、斥候から得た情報を元に、街道を下って王国国境沿いの砦の攻囲へ参加する事になった。団長が教えてくれた依頼主の話では、名前も無いような小さい砦だが、山の中にあるためそこそこ守りが堅く。ウチの傭兵団を手勢として雇ったらしい。そういう訳でアタシ達は街道から脇に逸れ、一旦本隊から別れると、藪を搔き分けつつ山中へと踏み込んでいく。

 

(団長はあんな事言ってたけど……どうせ今回も楽勝だろ)と前を歩く傭兵達の背中を見ながらアタシは小さく呟くが、隣の男に気付かれて気安く肩を抱かれたので顔をしかめながらそっと手を外した。そしてしばらく歩き続けて漸く開けた場所に出る事が出来たのだが、そこから先は「いつも通り」という感じだった。敵の哨戒線を避けるように回り込んで、本格的な攻撃に備えて砦を偵察する。森の中うす暗く、山の中ということもあって足場も最悪だが、エルフの血を引いているアタシにとってはこんな獣道を通って砦に近づくのはそう困難な話ではない。アタシ達が敵の配置と数を調べて、団長率いる本隊が砦を一気に攻め落とす……。いつも通りの簡単な仕事であるはずだったのだが……。首尾よく砦を一望出来そうな高台にたどり着いたアタシ達は持ってきた遠眼鏡を使って砦の様子を偵察。

 

確かに一見すると小規模な砦に見えても、立地は山深く守りが堅いのだが、砦の規模を考えても敵の数は少なく、砦の指揮官らしき金髪ツインテール女騎士と他の兵士たちの折り合いは素人が外から覗いてみるだけで非常に悪そうだ。今も士官らしい別の女と罵りあいをしている所を従者らしい黒髪の少年に諌められている姿が見て取れる。「連中俺達と戦う前に味方同士で戦ってやがる」隊の仲間が馬鹿にしたようにつぶやくのを聞きながら、団長のいる本隊に伝令を走らせ、攻撃の準備に取り掛かる。ふと頬を撫でると、虫に刺されたのか少し腫れていてかゆい。あー最悪だ!さっさと仕事を終わらせてこんな場所からはおさらばしたいな。

 

そうこうしている内に団長のいる本隊による攻撃が始まった。本隊には雇い主が用意したらしい攻城砲があるらしく、耳をすませば銃声や剣戟の音に混じって重い砲声が時折響く。砲弾が砦の城壁に叩きつけられる度に人と一緒に石材が砕けて、当たりどころによってはガラガラと崩れていくのが中々面白い、が今回アタシは伝令狩りとという任務を仰せつかっているので残念ながら城攻めの方はノータッチ。

山をぐるりと回って、敵の伝令が通りそうな道を遮断する。言葉にすると割と困難なように思えるが、防御に適した険しい地形が幸いして、人間がマトモに通れる道の数が限定されていたので一旦目的地にたどり着いてしまえば遮断自体は非常に楽。盗賊稼業の時のように待ち伏せ地点に陣取り、敵の伝令の可能性のある人物を片っ端から殺してまわる。捕虜の扱いは団長から一任されていたが、今回は管理が面倒いので身代金が期待できそうな場合でも捕虜は取らない方向で仲間達と決定。その後実際偉そうな感じの女士官一人捕らえたので、他の連中が輪姦し終えた後に始末した。

 

■■■

 

結局、攻囲は一月程度で終わった。伝令狩りをしていたアタシ達はそのまま敗残兵狩りのため、休む間もなく探索を続行。アタシが遠目から見ても分かるほど、名もなき砦のある方角から黒い煙が流れてくる。煙の量が異常に多い所を見ると火事にでもなったか?攻城砲の砲弾に焼玉でも混じっていたのだろうか。戦利品まで焼かれるとこっちが困るんだけど……。等とたわいない事を考えながら眼下の山道を睨みつける。一ヶ月は城攻めに掛かった時間としては短いが時間だが、休憩時間を入れてもずっと山の中をほっつき歩くのはやっぱりきつい、文明世界が恋しい。既に夜も明け始めていて、東の空が白み始めている。砦の敗残兵が逃げるならこの道しか無いと思っていたが……待ち伏せに気が付かれたか?あくびを噛み殺しながらボヤいていると、「おい、メリッサ!」隊の仲間がアタシの肩を叩く。「向こうの方で何かが動かなかったか?」そいつの指差す方向に遠眼鏡を向けると……居た!砦の敗残兵達が灯りもつけずにぞろぞろと歩いている。先頭を歩いているのは何時ぞやに見た黒髪の少年で、その側に居るのは金髪ツインテールの女騎士だ。アタシは藪の中に隠していたマスケット銃を拾い上げると隊の仲間たちとともに藪に紛れながら山道を駆け下る。

 

■■■

 

「げっ何だよこいつ!?」当初の予定では敗残兵達の数は少なく、奇襲を行えばあっという間に片付く筈だったが、少し予定が狂ってしまった。というのも……「ちっ!しつこいやつらですわ……!」陣羽織と板金鎧を戦塵に汚した女騎士が大直剣を振るう。数はこちらが圧倒的に勝っていると言うのに、倍給兵でも振り回すのに苦労しそうなあの大剣を女騎士が砲撃みたいな衝撃波と共に振り回す度、誰かがぶった切られて泣き別れした胴体に生首だの手足だのが血飛沫と共に宙を舞う。

 

やってくれたなと飛び道具持ちが集中砲火を浴びせてみても、生意気にも着込んでいる特注品らしい板金鎧が太矢はもとより、銃弾も火花をちらして弾くだけでほぼ無傷。どんだけ重い鎧を着てんだ!?「メリッサ助けてくれ!あの化け物馬鹿女、まだやる気だ!」パニック寸前の味方の叫び声にうるせぇなと顔をしかめながら暴れる女騎士の肩越しにこちらに弩の照準を合わせていた敗残兵の頭を鉛玉で弾いて殺すと、薬包を噛み切り銃弾をマスケット銃へ急いで装填しつつ女騎士とやり合っている仲間に叫ぶ「正面からぶつかるな!囲んで槍で嬲ってやれ。決闘じゃねぇんだから正々堂々やる必要はねぇぞ!」この指示がどれだけ効果があるかはわからないがどのみち多勢に無勢だ。化け物みたいな膂力の持ち主でも体力も気力も有限(多分)あまつさえアタシではどれだけ重いのかも想像すら出来ない板金鎧と大直剣を振り回しているんだから、いくら鍛えていてもそう長くは動けないだろう。

 

味方の血肉で稼いだ時間で装填を終えたマスケット銃を構え直したアタシはもう一度女騎士へ照準を合わせる。どこを狙おうか?生半可な場所を狙っても多分弾かれるだけのような気がするが……。一瞬考えた後、当てやすい胴体ではなく装甲が薄そうな関節部分に狙いを定めて引き金を引く。「ぐぅ!?」けたたましい銃声とともに放たれた銃弾は今度は弾かれず、女騎士は一瞬苦痛のうめき声を漏らし、肩の関節部分から血がどくどくと流れ始める。親指の先ぐらいの大きさの鉛玉に体をえぐられたのだからもうちょっと派手に痛がってもよさそうなものだけど、女騎士は元気に暴れまわってやがる。人の形をした熊か何かか?

 

あまりの頑丈さに半ばあきれながらも、怪我が堪えるのか彼女の動きは段々と動きの精彩を欠き始め、勢いづいた仲間たちが斬り殺されるのも躊躇せず果敢に群がり斬り掛かっていく。こりゃなんとかなりそうだね。

 

■■■

 

それから数分後「もう……限界ですの……!」肩から血を流し息を荒げながら剣を振るう金髪女騎士だが、既に失血と疲労に体力の限界なのかその動きは鈍い。「主様から離れてください!!」と黒髪少年が叫ぶが、その声もどこか力が無い。「はぁ……はぁ……」やがて金髪女騎士の動きが鈍り始め、彼女の背後から迫る数人の傭兵に気が付き、振り返るが遅かった。「しまっ……!?」女騎士は背中を切りつけられながらも剣を振り回すが、包囲の輪を抜ける事は出来ず遂に、生け捕り用に棍棒を持っていた仲間たちに鎧越しにタコ殴りにされて膝から崩れ落ちる。

 

「降伏しなって、アンタの主サマ共々いい思いをさせたげるからさぁ」アタシはそう言って黒髪少年に歩み寄ったけど、少年は剣を構えるとその可愛らしい顔を憎悪に歪め睨んでくる。アタシより少し年下ぐらいだろうか?あどけない顔立ちがとても可愛らしい。生け捕りにしようかな?等と考えながら剣の切っ先を向けたままアタシは距離をジリジリと距離を詰める。「何故……!何故あなた方は僕から全てを奪うんです!」と黒髪の少年は歯を食いしばり、涙を堪えながらそう叫ぶと斬り掛かって来た。大振りな袈裟斬りを剣先で逸らして、喉元を狙って放った突きが小手で防がれる。思ったより手練れ。

 

 

アタシは突き出していた剣を引くと、そのまま横薙ぎに叩きつける。今度は彼は反応しきれず、脇腹から血飛沫をまき散らして尻餅をつくが「……まだ!」と叫んだ少年が歯を食いしばって立ち上がり再び斬り掛ろうと来たので剣を弾いた後、逆手で殴ってひるませた所を組み付き押し倒す。いいとこの出なのか、髪からいい匂いがする。「まだじゃねーって、アンタはこれで終わり終わり」女の子みたいな背中に手を回し体を締め上げ、耳元でささやく。感情が顔に出やすいのか、そうしただけですごくいい表情をしてくれて面白い。最期にいい思いぐらいはさせてやろうか?そんな事を考えている、丁度他の連中も仕事を終えたのか、勝利の雄叫びが聞こえてくる。

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