前回補足し忘れましたが、タマちゃんは仕事をそのまま継続させてちょっとした探偵業。
ウイは本の修繕余った時間で古書の解読をしてる、研究者みたいな感じ。
家の中だとタマちゃんはお面をキャストオフしてるぞ!
小さな子供たちにドタバタと手を焼く毎日が...懐かしいなぁ。
あの毎日からまた数年経って、子供たちも成長した。
フミは15で、かなり落ち着いてきた。
けど、トウコとソウコは13でハルは10。まだまだヤンチャ盛りだけど、それでもかなり落ち着いた。
身長もかなり伸びて、ハル以外にはもう抜かされちゃったし、なんなら、フミに至ってはパパも抜かされちゃいそう。
うーん...私も背はだいぶ伸びて、今は151cmあるんだけどな...
「くっ...!ふぐぅっ...!」
でもやっぱり、欲を言えばもっと欲しい!
高い所に手が届かないの凄く不便!
だからこうやって毎回、高い所...まあ、冷蔵庫の上とか、本棚の上とか掃除する時には踏み台を持ってこないといけない。
「...どこにやったっけ。はあ...もうこれからは全員の部屋に踏み台用意しておいてもらおうかな...」
「...お母さん?そんなところまで...しなくていいのに...」
ばたばたうるさかったのか、別の部屋で読書に勤しんでいたフミがひょっこりと顔を出した。
髪色もウイさんにそっくりだから、一瞬見間違えた。
眼鏡も着けるようになったら、いよいよ見分けがつかないかも。なんて。
「こういう所ほったらかしにしたらダメだよ?ホコリだってたまりやすいんだから...それに、せっかく集めた本が悪くなるのは嫌でしょ?」
「......ありがと。」
「別に暇な日なんだからいいよ〜...ふおっ!?」
あ、でもちょっと届きそう...なんて苦戦していると、突然視界が上がった。
「ふ、フミ?」
「...こうした方が早いし、よく見える...でしょ?」
「た、確かにそうだけど...びっくりしちゃったから、せめて一言言ってよ〜。」
「うん、ごめん。」
あ、でもこれ、すごい楽...
ずっと持ち上げてもらってるのも悪いし、あんまり汚れてなかったしでパパっと終わらせて、下ろしてもらう。
「ありがとうね。フミのおかげで早く終わったよ。」
「...ん。」
小さく唸ったあと、腰を丸めて、ぺたんと耳が畳まれた頭を差し出してきた。
こういう所は、どんなに大きくなっても変わらないなぁ。
再度、「ありがとうね。」って感謝を告げながら頭を撫でてから、部屋を出た。
「.........軽すぎでしょ。あんな、あんなの...」
「お仕事...あ、どっちもだけど順調?この前、発見されたばかりの古書を解読するよう依頼されてなかったっけ。」
「あの子でしたら...二年ほど前に見た子と、言語体系が似通っていたので...なんとかなりそう、ですね。」
「そんなに前のこと覚えてられるんだ。やっぱりパパは凄いね。」
一つの同じソファに腰を沈ませて、体の側面をピッタリ合わせる。
どんなに時が経っても、この時間は落ち着く。
適当に最近の話をしたり、同じ本を同じスピードで読み進めたり。
普段は忙しそうだったり子供たちの相手をしていて、あんまりゆっくり出来ないんだけど...
今だけは、私だけの...
「...あの...タマヨちゃん?私、少しお手洗いに行きたいです...」
「?」
行けばいいじゃん。って言おうとしたら、腰を見るように指さされる。
「その...尻尾、離していただけませんか...?」
「...ひょわっ!?」
「あ、無意識だったんですね...いつも、私と密着するみたいに固く結び付けてくるものでしたから、てっきり...」
「ご、ごめんごめん!」
離そうとしたけど、頑なに拒否する尻尾。
大人しく手を使って解いて、ウイさんを見送った。
見送ってすぐ、恥ずかしさに顔を赤くしていると見計らっていたかのようにインターホンがお客さんの存在を告げた。
大きなダンボールを二機がかりで支えて持ってる、見慣れた運送業者の制服を見て、とりあえず出ることにした。
『あっ!こんにちわ!古関フミコさんはいらっしゃいますか?』
フミコ?
フミなら今は居ないけど...荷物が届くくらい言ってくれればよかったのに。
「いや、今はいないですけど、代わりに受け取りますよ。」
『妹さんですか?』
「ア、ハイ、ソウデス。」
正直に言ったところで良いことないし適当に誤魔化しておこ。
『ではお願いします!重いのでお気をつけて!』
「はー...いっ...!?」
重っ!?
『ありがとうございましたー!』
「あ、あり、がとっ...!」
私が脇に抱えられるぐらいなのに重すぎない!?フミのことだから、また本を買ったんだろうけど、どれだけ頼んだのさ...!
いつもは私でも、なんとかフミの部屋まで運べるくらいだったのに...!
「ちょ...むり...ウイさん来るまで待と...」
ずしん、一瞬、家全体が揺れた気がする...
それと同時に、二つの足音がこっちに向かって真っ直ぐ来ているのを耳が捉えた。
一つは走って、一つは歩いてる。
「ねえ今なんの音!?ママなにかあった!?」
「うん、部屋までしっかり聞こえた。ソウコの走る音とそっくり。」
「はあ!?私そんなに重くないんだけど!」
後からやってきたトウコもトウコで、楽しそうに片割れをからかっていた。
「それで、母さんはどうしたの?」
「うん...フミの荷物が届いたんだけどね。今日はちょっと...重くて...」
「なら私たちで運んでおくよ!フミねえの部屋だよね?トウコはそっち持って。」
「うん。」
「わ、ふ、二人ともありがとう...!」
「母さんもフミねえも居ない時は私たちが受け取ってるから、気にしなくていいよ。」
私の返事を聞くまでもないってふうに、既にソウコとは反対側に位置取っていたトウコ。
「「せーのっ。」」
さすが双子...普段は正反対な感じだけど、優しいところはそっくり。
しかも二人がかりとはいえ、しっかり持ち上げられてる。
「いつもより軽いね〜。」
「うん。でも、フミねえの部屋が本棚だけになるのも、時間の問題。」
「......え...?」
...あれで、いつもより軽いの...?
「とうちゃーく!」
「下ろそ。せーの。」
「......ふー!」
「これでよし。」
「.........ねえ、トウコ。」
「うん、ソウコ。」
「...ママって、もしかして私たちよりも力無い?」
「そうだね。きっとそう。」
「...じゃあ、もし...もしさ...」
「うん、全部言わなくてもわかる。ソウコの考える通りだよ。」
「「......♡」」
仕事も無くて、私の家事は終えて読書をしている時...
「おかーさんっ♡」
「ひやっ!?」
後ろからヤンチャ娘その二が抱きついてきた。
「あははっ!ヘンな声!びっくりした!?」
「すっごくびっくりしたよ、もう...どうしたの?ハル。」
「んー。」
曖昧な唸り声をうっすら出しながら私の前に来ると、膝の上に座った。
「...理由が無いと、だめ?」
「だめじゃない、けど。」
「じゃあいいねっ♡」
そうやって笑って、抱き着いてきた。
うーん...可愛いし、今は特に気にならないんだけど...ハルが親離れする時って、来るのかな?
私が甘やかすから悪化してるって...分かってはいるんだけど...
「...♡...〜♡」
嬉しそうに揺れる尻尾を見ていると、もう少しだけいいかなって気持ちになってくる。
「...ん?」
そういえば、ハルの尻尾...かなりぼさぼさ。抜け毛もすごいんだから定期的にブラッシングしなさいって言ってるはずなんだけどな...
「ハル...あなたちゃんと整えてる?ほら、こんなに「ひやあっ!」ぼさぼさ...で...」
「...もう...いきなり尻尾触るなんて...おかーさん酷ぉい...♡」
「いつも勝手に私の尻尾触ってくるわるーい娘にお返しだよ。それより、ちゃんとブラッシングしてる?櫛なら前買ったでしょ?」
「...おかーさんに、して欲しいなーって。」
用意周到なことで、懐から櫛を取り出すと「よいしょ」と小さな掛け声で私に背中を向けた。
「...」
「...だめ...?」
悲しそうで、今にも泣き出してしまいそうな弱々しい声。その声は、ズルいよ...
「...はあ...今日だけだよ?」
きっと、来週も再来週も、今日だけがあるんだろうね。
まあブラッシング自体は特に問題無く終わった。
あまりにもハルが溜め込んでいたせいで、小さなぬいぐるみぐらいだったら作れそうなぐらいの毛玉が沢山取れたのは別として。
...本当に小さな...狐のぬいぐるみでも作ろうかな?
それこそ、姉妹たち一人につき、自分のぬいぐるみ...ウイさんにはもちろん、私の...
「...あ、おとーさんのこと考えてる!」
「えっ!?な、なんで...!?」
「にやにやしちゃって、まるで恋する乙女!」
ど、どこでそんな言葉覚えて...
「...って、トウコ姉ちゃんが言ってた!『父さんの事を考えてる時の母さん、恋する乙女』って!」
トウコぉぉ...!
「そりゃ、今だって恋してるかもしれないけどさ...」
ぶつぶつ、恥ずかしいのを誤魔化すみたいに色々言ってたんだけど、不意にハルの顔が近くにまで来た。
「......おかーさんって、私の事好き?」
そして、答えの決まっている質問とも言えない質問。
「うん。
「...その好きって、家族としてしか...ないの?」
意味ありげに、鈍い銀色の光を放つ、私の薬指を見つめてくる。
どことなく捕食者めいた眼光に、少しだけ...そう、ほんの少しだけ心臓がきゅっと握られた気がする。
「そ、それって...どういうこ「あー!!!!ハルずるーい!!!!」
「...むうー。」
「私だってママにブラッシングしてもらいたい!!」
「昨日したばかりでしょ。」
絶叫のような声を上げるソウコを、トウコがいつも通り宥める。
「ということで、次は私が...」
「わ、私は昨日の昨日してない!」
「私は昨日の昨日の昨日からしてない。」
「じゃあ私は昨日の昨日の昨日の昨日の...!」
おっと、いよいよ収集がつかなくなってきた。
でも、確かに...ハルばかり、そう何回もして上げてたら不公平だよね。
「二人ともそこまで。そう喧嘩ばかりしないの。」
「えーだってー!!」
「だってじゃないの。さ、二人とも、自分の櫛を持ってらっしゃい。」
「「...?」」
「先に来た方からやってあげるね〜。」
「「!!」」
お、ソウコの方が早く動いた。
「させない。」
めしっ
「ぎゃあぁぁ脛がァァァァァ!!!」
「ちゃんと下も見ないと。お先。」
...まあこれくらいなら、この子たちなりのコミュニケーションだから口を出す必要は無いか。
「それで、ハルはいつまで拗ねてるのかな〜?」
「...別に、拗ねてなんかない。」
ぷいとそっぽを向いて、どこかに行ってしまった。
少し、可哀想...い、いやいや!我慢だよ、我慢...!いつまでも私にべったりじゃダメなんだから...!
あとがき
着々と準備が整っておりますね。
いつまで経っても人からの好意には鈍いタマちゃん可愛いね♡
はよ襲われろ