光の一切入らない締め切った部屋の中で、電話を通して会話している。
「うん...ちょっと、疲れが来ただけだから。しばらくしたら...戻ると、思う。うん、うん......毎日心配かけてごめんなさい。じゃあ、切るね。バイバイ、先生。」
ここの所毎日電話をかけてくる先生にいつものように謝って、携帯を適当な場所に放り投げて、いつものようにベッドの上で何もせず、天井を見つめる。
何も考えないように、ただ、じっと。
最低限の衣服を纏って時間をやり過ごす。
そうやっていつものように太陽がどこかへ行くのを待っていると、部屋の扉からこつこつと音がした。
「タマヨ?起きてる?私は少し、買い物に行ってくるから...何か欲しい物ある?」
「.........」
「...そう。おにぎり作ったの、部屋の前に食器に乗せて置いておくから、お腹が減ったら食べてね。」
そう言って足音が段々離れて、玄関が開いて、閉じる音がした。
...最近のお姉ちゃんは、ずっとお家にいる。
前なら嬉しかったけど、今は少し煩わしく思ってしまう。
ことある事に部屋の扉を叩いて、声をかけてくるの。
何も反応しないのに、しつこい。
「......ん...」
携帯が鳴ってる。
どこやったっけ...
......まあ、いいや。
しばらくどこかで鳴り続ける着信音を聞きながら何も考えないようにする。
それが成り終わったぐらいだったかな。
また玄関の方で、音がした。
もうお姉ちゃんが帰ってきたのかなって思ったけど、違った。
「タマヨちゃん...?あ、あの...えっと.........入っても、いいですか?」
あの日以来初めて、ウイさんの声を聞いた。
いつもはこの部屋に人を入れるなんて、絶対にしないんだけど...
今だけ...ウイさんだけなら、入れてもいいかなって...少しでも思っちゃった。
声を出す気力も無かったから扉を開けようと、ベッドから体ごと落ちて、足を引きずりながら、上半身だけで這って扉の前に来る。
でもドアノブに届かないななんて思いながら、こっちからも扉をこつこつ叩いた。
それが開くとまず最初に、照明の光に目が眩んだ。
顔を顰めているとそれに気付いたのか、私の部屋に踏み入って、扉を閉めた。
「あの...おにぎり、食べないんですか...?少しでも食べた方が...」
しかもご丁寧に、お姉ちゃんの作った物まで持ち込んで、それをぐいぐいと私の口に押し付けながら。
「しょく、よく...な、い...」
いつぶりかの会話をした私の喉はがさがさの、虫が鳴くような声しか出なかった。
「その割には随分やつれていますが...クマもすごいですし、眠れてもいないんですか?」
「寝る、と...夢、見ちゃう...から...」
「...今すぐ寝ましょう。寝ないと、死んじゃうかもしれませんよ...?」
「...そう...」
「他人事じゃないですよ、どうして座り込んだままなんですか?まだどこか...悪いんですか?」
やっぱり入れない方が良かったかも。
説明するのも面倒だったから、大人しく青紫色の弾痕ばかりが残っている足を見せる。
「...えっ?な、なに、どうしたんですかその足!?」
「...撃った。けど、お姉ちゃんにバレて、銃も、危ない物も、取られた。」
「......あぁそうなんですね。お姉さんは素晴らしい英断をしましたね!ならベッドまで運びますから、寝ますよ。」
あえて触れないようにして、寝ろと催促。
「や、やだ...寝たくない...こわい、やだよ...」
私の弱々しい抵抗なんてものともせずに抱き上げると、そのままベッドに寝かされた。
「もし、怖い夢を見るとかでしたら、そばに居てあげます。それがどのくらい効果があるかは分かりませんが...」
「一人よりはマシだと思います」って、私の頭を撫でたり、手を握ったりでなんとか寝させようとしてくるんだけど、ただの徒労に終わる。
「...私なんかに構うより...もっと、有意義なこと、したら...?」
「弱った友達に寄り添うことほど有意義なことは、無いと思いますが。」
...なんだか、自信満々だね。
「いや...いいよ...どうせ、無駄なんだから...」
極力目を逸らして体を起こそうとする私を、ウイさんがまた、抑えた。
「本当に心配しているんですよ?古書館にも来ませんしモモトークにも返信が無いんですから......タマヨちゃん?」
「はっ、はっ、はひっ、ふうー、ひぃっ...!」
私の視線は、肩で力を加えるウイさんの手に釘付けだった。
何の気なしに置かれたであろう手なんだけど、今に関しては、私の目から見てすると、それは毛むくじゃらな獣の手と重なっていた。
全身をびっしりと鳥肌が覆う。
「やっ...ごめんなさいっごめんなさいっ...!やだっ、もうやだっ...!おとなしくします、さわぎませんっ...!ふひゅっ、ら、らかりゃ、いたいことしないでっ...くだ、さいっ...!」
また力で押さえ付けてレイプされると思い込んだ私は、そそくさとパンツを脱いで少し腰を上げた。
「待ってください!?何してるんですか!?」
「はあっ、はあっ...す、好きにっ、好きにおまんこ使っていいですっ、いいですからっ...!やだっ、いたいのやだっ...!」
「だ、大丈夫...大丈夫ですから...!誰も、あなたに酷いことなんかしませんから!」
「ひぃっ...!」
組み伏せるように全身を押さえ付けられて、動きは止まったけど体の震えが余計に酷くなる。
「ごっ、ごめんなさいっ...!ちゃ、ちゃんとっほぐしますっ...!自分でメス穴整えますのでっ...!」
混乱しきった頭のまま、指をおまんこに添えて、そのままぐちゅぐちゅと掻き回す。
自分が少しでも気持ちいいと思うところを何度も指で叩いて、ローション代わりの愛液を必死に出そうとする。
「す、すぐっ!すぐ終わりまひゅっ!お、おねがいしますもう少し待ってくださいっ...!」
「そんな事しなくていいんですよ!もっと、自分の体は大切にしてください!」
「ひっ...ご、ごめっ.........もう...やだぁ...ゆるしてぇ...!」
「えっ、え、えっ?」
小さな子供みたいに謝って泣く私に、どうすればいいのか分からず狼狽えているウイさん。
とりあえず、無様に突き出している腰をそっと触ってベッドに沈ませる。
いそいそと脱いだ物もまた着させて、なんか介護されてるみたい。
それからウイさんもベッドに寝転んで私を抱き寄せると、そのまま頭を撫でる。
「ぅあ...っ...?」
暖かくて落ち着く匂いに包まれたからか、不思議と体の震えが止まる。
それでようやく周囲を見るぐらいに落ち着きを取り戻してウイさんの顔をしっかり見た。
「...あれ...?私の、部屋...?」
「やっと...戻りましたか......?やっぱり、少し寝ましょう。睡眠を取っていないから、まいっちゃっていますよ。」
「......でも...」
「私ってそんなに信用ないですか?騙されたと思って、一度目閉じてください。」
「...うん...」
言われた通りに目を閉じると視界が真っ暗になる。
...しばらくして、じわじわと脳に焼き付いた路地裏が瞼の裏に投影されようとした時に、ウイさんの声がそれをかき消した。
「大丈夫ですよ〜...私が、居ますからね〜...」
染み込むような声が徐々に意識の隅から侵食して、やがてすぐに、私の意識を真っ黒に塗り潰した。
「...ん...ふわぁ...」
「...あ、え?もう、起きたんですか...?まだ一時間ぐらいしか...」
「そうなんだ。でも、ちょっと、すっきりした。ありがとうね。」
さっきよりも格段に、憑き物の落ちたような頭で感謝を伝える。
自分の発想が上手くいったのが嬉しかったのか、少し、口角を上げて、「困ったことがあったら、また、頼ってくださいね」と言った。
「...じゃあ早速だけど、ちょっと相談してもいい?」
「はい。私でよければ。」
中途半端に睡眠をとって、上手く働かない頭。
本来なら隠すべきだと判断して言わないことも、今ならポロッと言ってしまえる。
「私ね、最近...あの時のことを思い出すと、お腹が痛くなるの。きゅうって締め付けるような感じがして、どうしてか、おまんこがちょっと...ぬるってしちゃうの。」
「......はい???」
「ここの所、すごくむらむらしちゃって...じ、実は、恥ずかしいんだけど...一日の大半を、お、オナニーして、過ごしちゃってるの...」
あまりに唐突なカミングアウトに、ウイさんも目をぱちくりさせてる。
「もうあの瞬間に、きっと私、
震える手を誤魔化すようにぎゅっとウイさんの腕を握る。
「私...そんなのやだ...やだよっ...!」
また大粒の涙をポロポロ零しながら
「助けて...ウイさんっ...!」
掠れた声で、必死に助けを求めた。
あとがき
どっちにしよう...
どっちも書けば解決な話ですけど、それならそれで、どっちを本来のルートにするべきか...