※この作品はR-18です。

オリジナルエロ話   作:歩輪気

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彼女
ポケ〇ンのオカルトマニアっぽい見た目。


僕と彼女

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 僕が彼女と出会ったのは、偶然立ち寄った古本屋で本を漁っていた時のことだった。確か中学2年生の頃だった気がする。その日は、親から夜は出かけるからと言われて持たされた千円札、それを元手にコンビニで適当に買って、家に向かう帰り道を大きく外れて寄り道をした。

 

 別に古本に興味があるとか、そういうのはない。趣味なんてものは特になくて、話題のアイドルとか歌手とか、流行に流されやすいクラスメイトの話題に着いていけなかった。着いていく必要もなかった。少なくとも、同種の友人がいるから不満はない。

 

 ただ、その日は気が向いたと言えば良いか、見た瞬間からその本屋に体を吸い込まれてしまったのだ。

 

 開かれた扉の中には、天井近くまで背を伸ばした本棚がいくつも並び、置き切れなかった本が棚の上に奇妙なバランスで乗せられていた。

 焦げたような、木のような独特の匂い、年季の入った紙達、ある程度纏まった状態でまとめ売りされている漫画。僕にとっては、空間にあるもの全てが初めてで、まるで未知の文化に触れたような感覚だった。

 

 眩暈にも似た感覚に襲われながら、僕は店内を散策した。僕以外にも先客がチラホラとおり、皆が手に持った本に集中している。本はジャンル別に並べられているものもあれば、乱雑にバラバラと並べられているコーナーもあった。

 

 入った後で気づいたが、僕は300円しか持っていない。親からはお釣りは好きに使っていいと言われているが、基本的に本は高い。中古とはいえ、300円で買えるような本がここにあるのだろうか。そもそも、僕自身はあまり本を読まないため、何を読めば良いのか分からないでいた。

 

「…………?」

 

 ふと、興味もない歴史小説の並びを見ているところで、僕は視線をレジ横に向けた。

 

 そこには、制服姿の少女が背もたれの無い丸椅子に腰をかけていた。腰まで伸ばした、ボサっとしててやや跳ね気味な長い黒髪。綺麗な程に黎い毛先が、首元から前に垂れ下がっている。

 制服はセーラー服タイプで、白いスカーフ、膝丈より少し伸ばした黒いスカートを履いている。雰囲気は少しジメジメとしており、目つきは若干ジト目で、他人が見たら睨んでいると勘違いされてしまうだろう。

 

 けど、僕にはそうは見えなかった。彼女は今、暗い瞳を本へと向けて、読み込んでいるように見えた。黒の真珠は輝いているようで、それが彼女がその世界に入り込んでいることを証明していた。

 

「…………あ」

 

 レジに若い男が本を置いてベルを鳴らし、彼女はハッと顔を上げる。僕も意識を戻し、現実へと帰る。奥から店主と思われる年老いた男性が暖簾を上げて姿を現し、レジに立った。

 

「………………」

「…………あっ」

 

 ぼーっとその光景を眺めていると、ふと、彼女から視線を向けられていることに気がついた。黒い真珠が僕を深深と観察しているようだった。僕が目を向けると、彼女はすぐさま視線を本へと落とした。というよりは、本で顔を隠した。実に一瞬の出来事だった。

 

「…………ん?」

 

 もたれかかるように、右手を本棚に添える。ふと僕は、手元に触れた本の背表紙に目をやる。タイトルからして、ミステリーものの小説だろう。

 そして偶然にも、それは彼女が今、読んでいる本のシリーズものであった。タイトルが同じで、語尾に〇〇篇と言った文字が書かれていたからすぐに分かった。

 

 僕はそれを手に取り、裏表紙を開く。最後のページの右上に、鉛筆で200円と書かれていた。税別表示だった。

 気がつけば、僕はそれを手に取って、レジに置いていた。店主が受け取り、値段を確認して、レジのボタンをカチカチと押す。小銭を用意している間、僕は彼女をちらりと見た。彼女は本を顔に近づけて表情を隠した。

 店主が小銭を渡してきたので、僕はそれを受け取り、本を持って店を出た。実に無意識に、気がつけば全てが終わっていたのだ。

 

「あれ、買っちゃった?」

 

 今更になって、自分が本を購入したことに気がつく。けど、買ってしまったものは仕方ないと、僕は鞄の中に本を収めた。

 店を出てから数歩歩いたところで、僕は振り返り、店を見た。本に囲まれた奥では、彼女が本を読んでいた。彼女がこちらに気がつくまで、僕は彼女を見続けてしまった。

 

 夕日が差してきた頃、虫の声が風に乗って耳に響いた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 それから、僕はその古本屋に週に3回、平日の帰りと休日の昼間に出向くようになった。小銭も、何時でも購入出来るように持ち歩くようになった。

 

 僕があの本屋に行くようになった理由は、思い浮かぶだけで3つほどある。

 

 1つ目は、前に購入したあの本が想像以上に面白かったからだ。どうやらあの小説家は、序盤、中盤で大量に謎や意味深な言葉を残し、終盤で一気に解放するという物語を好んでいるらしい。僕も読む手が止まらず、徹夜をして読破してしまったほどにハマった。

 しかし、調べたところによると、あの本が発売されたのはひと昔前、一般な本屋には既に取り扱っていないものだった。だから、あの古本屋に立ち寄って他のシリーズを購入しているのだ。

 まとめては購入しない、一つ一つ、読み終わる事に次の巻を購入した。その度に値段が高くなっていくのは懐に痛かったけど。

 ちなみに、彼女も同じシリーズを読んでいたが、あの子はいつも僕の読む本の次を読んでいた。2を購入する時は3を、3の時は4を。まるで僕が彼女の跡を追いかけているようだった。

 

 2つ目は、本を読む、という行為が僕にとって趣味になったことが挙げられる。今まで流行の大体のものを無視していた僕だったが、小説に関しては、あの一件以来、沼の如くハマってしまった。話題の小説はもちろん読み、ライトノベルから、翻訳された海外の小説まで、気になるものはとりあえず手を出して読破した。意外に自分が涙脆いことに驚いた。

 古本屋に行くのは、普通の本屋には置いていない過去に創作された宝が眠る宝庫だからだ。特にあそこは、そういったものが眠っていることが多かった。あとは、普通に買うよりも安く手に入るものがある、というのも理由だ。

 

 そして3つ目は、あの日に出会った彼女が気になったからだ。彼処をよく利用する昔からの常連客の話──よく見かけられるせいか、勝手にあちらから世間話をしてきた──によると、彼女は古本屋の店主さんの孫で、小さい頃から店主さんとその奥さんの3人でここに暮らしているとのこと。大人しい性格で、昔からここで本ばかりを読んでいるらしい。

 その他にも、人付き合いは苦手で、友達と遊んでいるところも見たことがないとか、B級映画が好きで、時々思い出したかのように不気味に笑っているとか、聞いてもいないことを沢山話してくれた。

 

 1度だけ、僕は彼女に声をかけたことがあった。購入していた本の続きがどうしても見つからなかったのだ。生憎、それは乱雑に置かれたコーナーにあったものなので、仮に売っていたとしても自分で探すのは困難だった。

 

「あの」

「…………へ?」

 

 声をかけた時、彼女は唖然とした顔で僕を見つめ、気の抜けた声を出した。表情も相まって、とても可愛いと思った。

 

「この本の続きって、取り扱ってますか?」

「え? …………あ、…………えっと…………」

 

 その時の彼女はとてもあたふたとした様子で、表情をアワアワとさせながら、僕の見せた本の表紙を見た。そして何も言わずに、端の棚の一段目を指さした。その後、お礼を言うと、彼女はさっと素早く本で顔を隠した。その日の本は青春ものだった。

 

 彼女とのやり取りは、後にも先にもそれ1度きりである。

 

 話は逸れるが、僕が思春期特有の異性、性への関心が本格的に湧いたのは、彼処を訪れて少ししてからだった。周りと比較してやや遅かったものの、自分に突然訪れた欲に、僕は混乱はしなかった。

 自慰行為については、勿論動画を閲覧することはあったが、殆どは小説の卑猥なシーンを脳内で再生して致していた。

 だが、決して彼女を妄想してすることはしなかった。してはいけない、踏み込んではいけないと、自分で縛り付けていた。

 

 そのことを自覚した頃、僕の中にある彼女への気持ちがようやく理解できた。だが、決して表には出さなかった。そして自覚して以来、彼女に声をかけることが出来なかった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 季節は過ぎていき、気がつけば、僕は高校2年生になっていた。家からそう遠くない場所に通っていて、偶然にもあの古本屋の前を通って通学していた。その方が近道だからだ。

 

 そして今日も、授業を終えた僕はそそくさと教室を後にし、遊びに誘ってきた数少ない友達からの誘いも断り、長袖の白シャツに汗を染み込ませながら、家に戻って重い荷物を置き、あの本屋を訪れていた。目的は以前購入した本の続きを買うことである、というのは建前で、今日だけはどうしてもここに寄らなければならない理由が他にあった。

 

 僕は入口を抜けて、店内を確認する。初めて来た頃よりもさらに数が増えているのか、積まれている本の高さがどの場所でも上がり、床に組み立てられたダンボールの入れ物にも突っ込まれている。

 対して、乱雑していたコーナーはきっちりと並び変えられていて、以前よりも見やすくなっている。

 

 そして、僕はレジ横へと視線を向けた。

 そこには、いつもと変わらず、本を読む彼女が座っていた。セーラータイプだった制服は、紺色のブレザーとスカート、青いネクタイ、長袖の白シャツと、彼女の通う高校のものに変わっていた。しかし、ボサボサの長い黒髪と暗い瞳は相変わらずで、半目で本を黙読していた。

 

 僕は深呼吸をして、棚の合間を進んで彼女の方へと近づく。

 

「あの」

「…………へ、はい?」

 

 彼女はまたもや、気の抜けた声を出して僕を見た。数年経ったが、あの時と殆ど変わって──いや、大人っぽくなっていた。

 

「店主さんはいますか?」

「え、えっと…………おじいちゃんなら……昼寝だと、思います……呼びますか?」

「いえ、大丈夫です」

 

 店主さんの名前を出したのは、単なる会話の切り口でしかない。

 

「…………あの」

 

 彼女が視線を落とす前に、声をかけた。彼女は再度、僕を見た。今度はなんだと緊張した様子だった。

 

「あの…………なんですか? ほ、本の探し物なら、ある程度は……」

 

 やや怯え気味に彼女が口を開いた。

 

「…………その」

 

 息を一気に吸い込む。

 

「……ずっと前から好きでした。良かったら、僕とお付き合いしてくださいっ!」

 

 噛むことなく、溜めていた思いを吐き出した。僕の声に反応したのか、横に置かれていた本の表紙がふわっと揺れる。店内に人がいなかったことが奇跡かもしれない。

 

「………………へっ?」

 

 かなりの間を置いて、彼女が声を出した。半目は見開き、驚愕で顔を染めていた。今の状況にまだ理解が追いついていないのか、彼女は座ったまましばらく硬直していた。

 

「………………ひゃ、ひゃぁぁぁっ!?」

 

 そして爆弾のように、彼女の表情はボンッと煙を立てて真っ赤になり、高い奇声を上げた。目はグルグルと渦を巻き、額から大量の冷や汗が流れ、カタカタと全身が揺れている。手に持っていた本も床に落としていた。

 あまりにも緊張しすぎているその姿に、告白した僕は逆に心配になってきた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 僕の声掛けに彼女はハッと我に返ると、そそくさと本を拾い、顔を赤くしながら恐る恐る視線を向けてきた。

 

「……い、いえ。突然、だったから…………ず、ずっと、通ってた人、ですよね?」

 

 その問いに頷いた。まさか彼女からも気づかれていたとは。

 

「あ、あんまり話してなかったけど…………私が読んでる本を、後追い……してましたか?」

 

 後追いはしていないけど、面白くて読んでいた。そして、あの本の1巻目が僕を本好きにさせてくれたことを伝えた。

 

「い、1度、私に本を聞いた時…………変に思いましたか?」

 

 全然、寧ろ教えてくれて感謝してますと返した。

 

「…………その、ホントに私で、いいんですか? …………わ、私、こんなんなので……もしかしたら、気持ち悪く思わせちゃうかも…………」

 

 そんなあなたが好きなんです、寧ろ僕が気持ち悪くさせたらすみませんと答えた。

 

「と、友達…………からじゃなくても…………ですか?」

 

 あなたが友達からが良いのなら、それでも構わないと返した。

 

「…………わ、分かりました」

 

 数回のキャッチボールを経て、彼女は椅子から立ち上がった。

 僕は一般的な高校生の中でも平均的な身長である。対して、彼女は僕とそう大差はない。女子生徒の平均身長からしたら、明らかに高い方だ。

 

「…………わ、私で良かったら…………お、お付き合い、お願いします」

 

 緊張した声色で彼女は返事をした。

 使用時間僅か数分、あっという間に彼女からの返事を貰えた僕は、喜びよりも呆気なさが先行して、暫く彼女の瞳を見ていた。実に呆気なく、自分が事前に妄想していた振られるパターンが全て吹き飛んでいた。

 

 そして、彼女が自身の名前を告げたところで、僕は意識を戻し、自分の名前を応えた。彼女は「いい、名前ですね……」と返してくれた。

 そういえば、ここに数年も通っておいて、彼女の名前を苗字しか知らなかった。常連さんはみんな、店主さんも彼女も含めて苗字でしか呼んでいなかったからだ。

 

「よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ……へへ…………」

 

 ようやく喜びの感情が追いついたところで、彼女が微笑みを浮かべて、

 

「…………そ、それじゃあ…………中に入ってください」

 

 続けて意味深な言葉を吐いた。中って、何の中? 

 

「う、家に上がってください…………せ、せっかく恋仲になれたので……わ、私の部屋でゆっくり、してってください…………へ、へへ…………」

 

 恥ずかしそうにしつつ、闇を含んだような不気味な笑みを零す彼女。僕はドキリと緊張しつつ、胸中で首を傾げた。

 確かに僕達はたった今、恋人になった。けどなってからまだ数分も経っていないというのに、まだ相手がどのような子なのかすら分かっていないのに、いきなり家にお邪魔するというのは、流石に気が引けてしまう。有難いけど、ここはキッパリと断っておいた方が良い。

 

「あの、折角ですけど、今日はとりあえず連絡先を交換するということで。それに、いきなりお邪魔したら迷惑に……」

 

 僕が言い切るその前に、彼女の表情がどんよりと雨雲のように曇った。

 

「……そ、そうですよね…………いきなり部屋に誘われたら………………困っちゃい……ますよね…………私、友達とかいないから、昔からこういう付き合い方とか、分からなくて……………………」

 

 一言一言を吐き出すごとに声は小さくなっていき、それに比例して、彼女の雰囲気もどんどん暗くなっていった。長い髪が目を隠して目隠れの状態へ変えていく。どうやら彼女の地雷を踏んでしまったようだ。

 暗闇に沈みそうな彼女の姿に、僕の心に罪悪感がのしかかる。今のは、彼女なりに僕のことを考えてくれた言葉なのだ。良く考えれば、付き合って僅か数分の相手を家にあげるなど早々ない、この誘いは断っては行けないのだと、僕は自分の中で納得させた。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 そう言うと、しなっていた彼女の姿はみるみるうちに戻っていき、二ヘラとした怪しい笑みを僕に向けてくれた。心の底から嬉しいという気持ちが滲み出ているその表情は、普通に可愛いと思った。

 

 僕は彼女について行くかたちで暖簾を上げ、1度も入ったことのない古本屋の奥へと誘われた。その内容は赤の他人の僕が漏らす訳にはいかないので、企業秘密として説明を省かせてもらうが、少なくとも、この本屋さんの店奥は、これまた不思議な空間であると言っておこうと思う。ちなみに、店主さんはレジ入口近くの椅子に座ってうたた寝していた。

 

「お、おばあちゃんはお出かけ中で……夜まで帰ってこないです……だから、気にしなくていいですよ…………」

 

 彼女は2階へ続く階段を踏み、僕も後に続いて踏んだ。築年数が古いのか、階段一段一段に音鳴らしの仕掛けでもしてあるかのように、一歩一歩で軋む音が響く。

 角度の関係から、目の前を歩く彼女のスカートの中が覗けそうになってしまったが、すぐに目を逸らした。

 

「こ、ここです」

 

 そして階段を登りきって、やや広めの廊下に出たところで、彼女は左側の部屋の襖扉を横に開けた。

 開かれたその先には、6畳ほどの広さの部屋が広がっていた。畳について詳しくはないが、おそらく中京間の畳が敷かれている。そんな室内を埋めるように壁が家具で隠されていた。唯一、机の置かれた目先の窓ですら閉め切られていて、部屋はなにかの儀式をしているかのように薄暗かった。

 

 彼女が電灯の紐を引くと、大小の丸型蛍光灯が白い光を灯す。やはりという言うべきか、家具の大半は、クローゼットや机を除けば全て本棚だった。本棚には、これでもかというくらいに本がぎっしりと敷き詰められて並べられている。一昔前の作品もあれば、新し目なものもあり、それら全てが、著者の名前順に並んでいた。まるで、1つの本屋のような光景だ。

 

 目の前の光景に圧巻されていると、彼女はそそくさと押し入れを開き、座布団を2枚ほど取り出した。一瞬だが、押し入れの中が見えた。中には畳まれた布団と、何やら怪しい器具が押し込まれていた。

 

「ど、どうぞ…………」

 

 彼女に促され、僕は彼女と向かい合う形で座布団に正座をした。彼女は凄く緊張した様子で、ジト目を僕に向けていた。

 

「き、汚い部屋ですみません……」

「いや、全然汚いなんて思ってませんよ。それどころか、本当に本が好きなんだって伝わりました」

「は、はい…………わたし、こんな性格なので、外で遊ぶとか、友達を作るとか、できなかったので……本ばかり読んでまして…………へへ……」

 

 緊張しつつも、どこか気恥しそうに笑みを零す。

 

「実は、僕が本を読むきっかけになったのって、ここに来て初めて買った本なんです」

「さ、さっき仰ってましたね……あの、わ、わたしが読んでたのを見て……購入したって」

「はい。思っていた以上に面白くて、つい続きが読みたくなったんです。そしたら、あとを追いかけるみたいになっちゃって」

「だ、大丈夫……好きな物は好きでいいんですよ……わ、わたしも、きっかけになれて……良かったです……」

 

 彼女は目を弛めて微笑む。

 常連の人は彼女のことを『暗い』と言い切っていた。けど、初めて会った時、暗い真珠を輝かせていた彼女を見ていた僕にはそうは思えなかった。現に今も、彼女の笑顔は暗いものではないからだ。

 

「……あの、お店の方は大丈夫ですか? 流石に店主さんが寝てたらお客さんが……」

「も、問題ないです。あの人は、ベルを鳴らせば直ぐに起き上がるので……」

 

 長年そうしてこの店を営んできた、最早体に染み付いてるレベルだと彼女は話す。おそらく僕が初めて来た時も仮眠をとっていたのだろう。

 

「へ、へへ…………じゃあ、早速始めましょう」

 

 始める? 何を? そう僕が首を傾げている間に、彼女は紺のブレザーをするりと脱ぎ、ネクタイを解きながら僕の方へ────いや待って。

 

「え、え? あの? 何を始めるつもりで?」

「だ、大丈夫です。練習は何度もしてきたので」

「はい? 練習ってなんの?」

 

 疑問符が大量に浮かぶなか、彼女は袖と首元とその下のボタンを外し、頬を赤くしながら僕に寄りかかろうと近づく。恥じらいと不気味さが重なった笑みが距離を詰めて顔に近づいてくる。

 僕は混乱しつつ、膝を崩して後退った。正座をしていたせいか、足が痺れて体を引きずるようにしか動けない。

 

「へ、へへへ……へへっ!」

「ちょっ!?」

 

 そして彼女は笑いながら僕に飛びつき、下半身にしがみついた。突然の狂動に僕は逃れそうと悶えるが、太もも部分を両腕でがっしりとホールドされているせいで、全くの無意味となってしまった。

 

 …………いや、それよりも、僕の下半身の大切な箇所に何やら柔らかいものが当たっている。下着に包まれていることは分かるが、それでもその柔らかさは僕の股間部分に刺激を伝えている。

 

「こ、恋人になったら、まず体を交じりあうのが、こ、恒例儀式だって……ひへぇっ」

 

 前髪が目元を乱雑に隠す。黒い隙間からは、狂気を孕んだ暗い目が上目遣いでこちらを覗いている。彼女の息が、腹部に当たる。儀式というワードが出たが、恐らく官能小説の受け売りだ。僕も似たようなものを読んだから、何となく予想はついた。

 しかし、不思議なことに、彼女の狂気な行動と狂喜な笑みに、僕は焦りは感じつつも、恐怖は一切感じなかった。そんなことよりも、陰部を襲う弾力のある物体の方が問題だった。彼女がモゾモゾと体を揺らす度に、2つの肉袋が形を変えて僕のあれを押し潰す。

 

 僕は襲撃を耐えようと、必死に藻掻いてみた。しかし、見た目からは想像もしてなかったほどに彼女の腕力は強く、抵抗は無意味に等しかった。

 何とか耐えようとしたが、彼女の柔らかさと、白シャツの中から見える黒のブラジャー、それに包まれた乳房が作る谷間が僕の視界に映り、嫌でも下腹部に血液が集中してしまう。

 

「ま、ちょ、流石にこんな形でそういうことは……がっ!」

 

 身じろぐ途中、僕は体勢を崩してしまい、体を後方へ倒し、背後の棚に身体をぶつけた。出血はないが、激しい痛みが背中と後頭部を襲い、頭頂辺りに黄色い雛を飛ばした。

 

「ふ、ひひ……こ、興奮してくれてますね…………ズボンがこんなに張ってる」

 

 意識が朦朧とする中、彼女が不気味な笑い声を漏らす。彼女の目の前で今、僕の股間部分が鋭く盛り上がり、テントのように張っていた。

 彼女は痛みで身動きの取れない僕から、ズボンのベルトを外し、フック、ファスナーと、手際よく解いていく。中に眠っていたパンツが現れ、テントがより一層張りを増した。

 

「よいしょ…………ぇっ」

 

 そしてパンツをずらしたところで、中で身を潜めていた僕の肉幹が、前後に身を震わせて彼女の前に姿を現した。自分で言うのも恥ずかしいが、その肉幹は亀のような膨らんだ頭部と、伸縮を使い分ける首で出来ている。彼女からのアプローチで興奮しきった肉幹は、首元に血を走らせ、口元から透明な我慢汁を漏らしていた。

 

「こ、これが……お、男の人の……お、おお、おちんぽ……っ」

 

 彼女は半目を剥き、肉幹の名を呟いた。恐らく、男性の陰部──特に勃起状態のものを生で見たのは初めてなのだろう。彼女の体は、未知のものに恐怖するかのように硬直し、瞳は目前の棒から視線を逸らすことができていなかった。

 

「ふ、ふふ……あ、安心してください。こ、ここから先は、きちんとシミュレーションを重ねましたから」

「し、シミュレーション?」

 

 一体何をどうしたものなのか、痛む頭を使って少々思考している僕を他所に、彼女は肉幹の首に鼻先を近づけ、犬のようにクンクンと嗅ぎ始めた。

 どの部位からも臭わない、1度触ると臭いが移る、独特な香りを放つ陰部。その異臭を彼女は積極的に堪能し、やがて唇を開いて舌先を伸ばした。ねっとりとした温かいものが、肉でできた棒の表面を這った。

 

「れろ……おちんぽ、しょっぱい……れぇっ♥」

 

 開かれた口からだらんと出た舌肉が、幹を容赦なく舐め上げる。ざらついた表面が、赤黒い皮膚を垢を擦るように、根元から裏筋を何度も往復している。

 

「れろっ、じゅるっ♥れろっ♥」

 

 黒髪の垂れる頭を動かして、彼女は肉幹全体を喰らう。まるで動物が毛繕いをするように、汗で蒸れていた長い首のチンカスを舐め取り、唾液でぬるぬるとコーティングしていく。

 

「あっ、あぁ……」

「はむっ、んちゅっ♥むふぅ……♥」

 

 舐めるだけでは飽き足らず、今度は唇で啄むように肉幹をしゃぶり始めた。首を左に傾け、左側面の皮にかぷりと噛みつきキスを交わす。その次は右側を、次にまた左をと、彼女はジックリ、ゆっくりと、交互に僕に快感を伝えた。

 絶えず流され続ける快感に、僕には最早に抵抗する力は残っていない。今は、彼女からの奉仕に体をびくつかせることしかできなかった。

 

「ちゅっ♥へへ、い、いただきます……ングっ♥」

 

 充分に堪能したと思ったら、彼女は食事の挨拶文を吐いて、ぷくりと膨れるカリ高な亀頭先に口付けを交わした。そして、流れるように彼女は頭をおろしていき、その口に僕の肉幹を押し込んだ。水気を出しながら竿は彼女の口の中へと消えていく。そして一息する間もなく、唾液で潤った口内が肉竿全体を生暖かい抱擁で包み込む。

 

「あっ…………」

 

 僕は抑えられない小さな悲鳴をあげた。自分で致していた時には感じることの出来なかった、肉筒の柔らかさ、血の通った頬肉の脈、偽物などでは味わうことなんて出来ない全ての刺激が、脳に小さな、しかし威力の高い鋭い電光を走らせた。

 

「ふぐっ、ふふっ、んふぅ…………♥」

 

 くぐもった声を出しながら、彼女は吸い込むように肉幹をしゃぶり味わう。苦い男の味に、彼女は半目に涙を溜めながら、口先を尖らせ、白い頬肌を窄ませる。

 

 そして、ある程度味わったところで、彼女は頭を動かし始めた。ボサボサな長い黒髪がゆさゆさと揺れて、一部は前に垂れて僕の下半身に毛先を降ろしている。太腿に髪のふさっとしたこそばゆさが走る。

 

 ぢゅるっ♡ぢゅぷっ♡ぬぷっ♡

 

 唾液を潤滑油に肉幹を擦りあげる口肉の水音が響く。首を伸ばした亀の首元が、彼女の唇から出たり入ったりを繰り返す。頭が上がれば唇の内側がカリのエラを掴みあげ、下げれば仄かな凹凸を作る柔らかい内頬が肉幹を滑らせ、喉奥へと吸い込まれる。

 

「おふっ、ふぉふっ♥ふぅっ」

 

 肉幹が奥へ滑り込む度に、亀頭が彼女の口蓋垂を押し潰す。彼女は途切れ途切れに息継ぎをしながら、喉ちんこを潰される苦しみに嗚咽を漏らす。けど、その苦々しい顔とは裏腹に、彼女は猫のように無我夢中で好物に食らいついている。

 

 ぢゅぼっ♡ぢゅぶぶっ♡ぶぼっ♡

 

「ふぐぅ、んふぅ」

 

 頭を上下させ、只管に肉幹を貪る彼女。口満紅という別称、第2の肉穴として、エロス界隈では当たり前のように行われる口内奉仕。偽物の筒では味わえない快楽に、僕の思考は完全に焼ききれていた。

 

「んふっ、ふぐっ♥んぶっ♥

(お、おお、おちんぽっ♥はじめてのおちんぽっ♥塩っぱいっ♥にがいっ♥けど、この人の、しゅきっ♥)」

 

 呻きながら肉幹にしゃぶりつく彼女、おそらく下品な言葉を垂れ流しているのだろう。

 僕はというと、もう諦めていた。後頭部の痛みは既に引いたが、ここまでされておいて、抵抗する余裕なんて残っていない。唯、彼女の肉筒に包まれる感覚に、体を溶かしながら嵌るしかなかった。

 

 ぐぼっ♡♡じゅぼっ♡♡

 

 一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。彼女の奉仕はまだ続いていた。

 棚を背もたれの代わりにしながら、僕は彼女を見つめた。彼女の黒髪は未だに揺れている。ボサボサの髪の毛に隠れている、半分だけ開いた眼は、何かを訴えるように上目遣いで僕の目を見つめていた。その表情は、初めて見た彼女の姿からは想像できないくらいに不気味で、けれど艶やかで、淫乱に染まっていた。

 肉幹は彼女の愛行によってすっかりふやけきってしまい、体全体を唾液と我慢汁でベタベタにさせていた。

 

「あ……あぁっ…………!」

 

 自分で自分を慰めていた時から何度も味わっていた感覚、それが今、僕の体に流れていた。これは間違いない、僕はもうすぐ絶頂しようとしていた。

 無意識に腰が震え、足がびくつく。手を握りしめて必死に耐えようとするも収まらない。

 

「んんっ、んんっ♥」

 

 ぼぶっ♡ぢゅぶっ♡♡

 

 僕の様子に気づいた彼女は、肉幹を咥えながらいやらしい視線を向け、僕の足を強く抱き締めた。そして追い討ちをかけるように、右内頬に亀頭を押し付ける。彼女の右頬がぼこっと膨らむ。

 

「で、でるっ…………」

「ふぁふっ、ふぁふふ♥」

 

 もう無理だ、そう内心で叫んだ瞬間、僕の睾丸から無数のおたまじゃくしが尿道に向かって這い上がってくる。尿意を押しのけ、粘ついた液と融合した彼らは、外へ出ようと尻尾を畝らせている。

 

 ぢゅぼっ、ぢゅるるるっ♡………………ぶびゅるるるるっ♡♡♡♡どぴゅるっ♡♡

 

「んふ゛ぅぅぅぅぅぅんんんっ♥♥♥ん゛ん゛ん゛んんんんんっ♥♥♥」

 

 脳が白く焼かれた瞬間、腰が跳ね、遂に亀頭先の鈴口から精液が飛び出した。じっくりと溜められた白濁液は口腔で弾け、彼女に嗚咽の悲鳴を上げさせた。

 ドロドロとした白い熔岩が口の中に溜まり、彼女は両頬をリスのように膨らませた。見開いた目は焦点が合わずにぶれていて、瞳は白目を向きそうな勢いで上を向く。

 

「ふっ、んっ…………♥(美味しい♥苦い♥脳がやける♥)」

 

 とろんとした耽顔をしながら、彼女は精液を飲み始めた。僕を逃さんと下半身をホールドしながら、ゴクリ、ゴクリと、喉を鳴らして嚥下する。

 やがて溜まっていた頬も徐々に萎んでいき、元の可愛らしい彼女の顔へと戻っていく。

 

 …………ぢゅるるるるるるっ♡

 

 そしてトドメを刺すように、彼女は肉幹の根元まで口に含み、尿道に残された精液をしぼりだす。バキュームのように吸われる光景、画面の向こう側でしか、文章でしか感じたことのない性の実感が、僕の目の前で揺らいでいた。

 

 ………………ぬぽっ♡

 

 響き良い抜き音とともに、彼女は口内から肉幹を引き抜いた。バキバキに勃っていた亀は、敵を警戒するかのように萎んだ。

 

「…………あーっ♥」

 

 彼女はその場で口を開き、僕に口内を見せつけた。中には飲み残しと残滓によって白く粘ついていた。外へ出そうな精液は、突き出した舌によって遮られている。残された何億ものおたまじゃくしが、彼女の口の中で泳いでいた。

 ある程度見せつけたあと、彼女は口を閉じて残りの白濁液を飲み込み、三日月のように口端をとがらせた。

 

「へ、へへへ……ど、どうでしたか? 私の奉仕は…………が、頑張って練習したんですよ…………」

 

 口端に陰毛をつけながら感想を求められた。

 正直に言うと、彼女からの奉仕は気持ちよかった。それ以外に文句のつけようがなかった。

 

「お…………」

 

 気がつけば、早くも賢者タイムを終えた肉幹が再びその身を起き上がらせ、彼女の目の前で仁王立ちをしていた。あまりにも早い復活に、彼女は微かな驚愕を漏らす。

 

「ま、まだまだ満足出来ないんですね……わ、分かりました」

 

 彼女は僕の下半身から離れて膝立ちになる。そして胸辺りから白シャツの中に手を入れると、黒いブラジャーを上にずらした。

 瞬間、彼女の乳房がぷるんと震えて姿を現した。大きすぎず、しかし小さすぎない、絶妙なサイズのバストが彼女のブラから零れ落ちた。

 初めて生で見る女性の生乳、それは僕の下半身の血流を促進させた。

 

「わ、私に任せて………………あ、あなたは力を抜いて、楽にしてて……ください……」

 

 怯えにも似た笑みを浮かべながら、彼女は制服のスカートの両端を掴んで捲し上げた。中に隠れてきた黒いショーツには大量の染みがついており、吸収しきれなかった分が太腿を伝っていた。縦に口を開いた濡れそぼる秘裂が、下着越しにくっきりと形を見せている。

 

「きょ、今日みたいな日のために、安全日もきちんと計算してました…………だから、大丈夫ですよ」

 

 ああ、もう駄目だ、全てを諦めた僕は口を開いた。

 

「……お願いしますっ」

 

 その言葉を合図に、彼女は僕の体に騎乗し、腰を下ろして竿に陰口を押し付けた。グリグリと数回前後に揺れて愛液を塗りつけたあと、彼女はスカートから両手を離し、左手で肉幹を支え、右手でショーツの底をずらして、卑しい谷をさらけ出した。

 

 ぐちゅっ────じゅぶぶっ♡♡

 

「おっ、おお゛っ♥…………おっ♥」

 

 亀頭先を二丘の間にあてがうと、彼女はそのまま腰を降ろし、膣穴の中へと沈めていく。音声でしか聞いたことのないオホ声というものが、僕の耳に直に届く。

 

「ああっ、あっ…………」

 

 僕は僕で、初めての肉筒に声を震わせた。手では味わえない本物の膣肉の熱、みちみちと押し広げられていく肉道、なのにぬるりと皮を滑らせる愛液──僕は告白をするために彼女のもとを訪れた。なのに、今は彼女に食われようとている。

 

 ────ぼすっ♡♡

 

「おほぉっ♥」

 

 そして腰を深くまで降ろした瞬間、彼女は曇った咆哮を上げた。ぶちぶちと裂けたような音もなく、肉幹は彼女の肉筒へと収まった。

 

「お、おぉ……おっ♥」

「だ、大丈夫…………?」

 

 味わったことのない快楽に身動ぎながら、僕は話しかけた。彼女の体はビクビクと痙攣し、目は今にも気絶しそうなほどに上を向いていた。しかし意識はあるようで、彼女は小さく頷いていた。

 

「……あ、ああっ……んんっ♥」

 

 数秒間した後、彼女は呼吸を整えて腰を上下に揺らし始めた。初めはゆっくりと腰を上げて、肉幹を上へと引っ張りあげる。膣肉の壁にできたイボイボとした凹凸がエラを引き上げ、膣口できゅうっとしめる。そして上まで登ったところで、今度は落下に任せて腰を下ろす。降ろされた肉壁によって亀頭は頭全体をずるりと擦られ、快感を脳へと伝えた。

 

 じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぶ♡

 

「あっ、ふぁ、ほ、本物……本物のおちんちん、あちゅいっ♥焼けりゅ♥」

 

 淫らに身を捩りながら、彼女は卑猥な言葉で喘ぐ。その姿に、本を読んでいた彼女の面影は…………普通に残っていた。

 

「へぁっ、あひっ♥ひゃうっ♥」

 

 彼女は僕のお腹に手を置き、腰を振り続ける。膣内で蠢く肉襞が僕の肉幹を根こそぎ奪おうときつく締め付ける。首もカリ裏も亀頭も、全ての部位に襞が吸い付いている。生暖かい熱とともに無数の舌が這うような感覚が、陰部全体を襲う。それに加えて、目の前で口角を吊り上げながら僕を睨む彼女の姿が、性欲の箍を取り外そうとする。

 

 パンっ、パンっ、じゅぶっ♡

 

「あふっ、お゛っ♥ふぁっ♥」

 

 蕩けた笑顔で喘ぐ彼女、時に腰を畝らせ、肉幹を在らぬ方向へと誘う。無理に曲げられた肉幹はその刺激に身を委ね、新たな快感を味わう。

 

「おふっ、き、気持ちいい……ですか? ♥おぅっ♥」

 

 下品な声を上げて、彼女は僕に問いかけた。答えようと思っても、肉筒が与える刺激に邪魔をされてしまい、僕は呻き声を上げるしかなかった。けれど、それを頷きと受け取ってくれた彼女は、腰振りをより激しくした。

 

 じゅぼっ♡じゅぼっ♡

 

「ああ、あなたの、おちんちんっ♥私の中で、暴れてるぅ♥」

 

 初めてあった時とは大違いに、饒舌に卑猥な言葉を吐く。長い黒髪が彼女の動きに合わせてゆさゆさと揺れる。

 

「あっ、あっ………………お゛ぉっ!?」

 

 途中、彼女は突然大きな声を響かせると、背中を仰け反らせて激しい痙攣を始めた。目は完全に白目を剥いていた。そして合わせるように、彼女の膣穴とは別の穴から透明な潮が噴き出し、僕の股間部を濡らした。

 

「あっ、ああっ…………あっ…………」

 

 口をパクパクさせながら、彼女は天井に顔を向ける。僕が声をかけようとしたのもつかの間、彼女はもたれ掛かるようにこちらへ倒れた。弱い胸板に、彼女の頭部がポプっと収まる。黒髪からは、汗に蒸れた臭いが漂っている。

 

「…………ご、ごめん……なさい…………私、さきに……いっちゃ……」

 

 死にかけの人のようにブツ切りに言葉を並べる。どうやら、彼女がいち早く絶頂を迎えてしまったようだった。別に謝ることじゃないのに。

 

「えっと、じゃあ、僕が動いていいですか?」

 

 僕の発言に、彼女は驚いた表情で僕を見た。ここまで来たら後戻りはできない、こんな生殺しは嫌だ。この時の僕は後先のことなど頭になく、僕自身もまた、性の興奮を優先していた。

 

 彼女はしばらく動揺したのち、こくりと頷いた。僕は彼女を支えながら、彼女の体を畳へと寝かせ、正常位の体勢に切り替えた。

 

 畳に寝かされた彼女の姿は、快楽に浸っていた先程までとはまた変わっていた。力の抜けきった彼女は両手を顔の横に置き、不安そうな涙目をこちらに向けていた。セックスで上気した顔と赤く火照った頬、細かく吐かれる白い吐息、畳に淫らに広がる黒髪。それらはまるで彼女をか弱い1人の少女のように映す。

 

 とりあえず、僕は邪魔なベルトをズボンからするりと外し、彼女のスカートを捲りあげた。愛液が隙間から漏れている、彼女の方は既に準備は出来ていた。

 

「あ、あの、お……お願い、します…………んぉっ♥」

 

 そして彼女のお願いを皮切りに、今度は僕が腰を揺らす。動画や漫画、文章で想像するしかなかったが、やり方は自分の中で出来上がっていた。しかし、実際にやってみるとその差は明らかで、思っていたよりも快感で体が痺れている。

 

「ふぁ、あ゛っ♥いったばっかなのに、ぃぐっ♥ふぐっ♥」

 

 脚と腕で彼女の柔らかい太腿を挟む形で、腰を揺らす。腰を引いて亀頭のエラで疣を引きずり出し、腰を打ち付けて肉幹を押し込む。亀頭先が膣の奥深くにある紅肉を押し潰すと、彼女の身体が跳ねて、口から悲鳴を上げる。

 

「あ、あんっ! ほぁっ……あぁ! あっ!」

 

 僕の動きに合わせて、彼女の身体も前後に動く。ブラジャーから解放された、ほんのりと膨らむ2つの乳房が服の隙間で揺れている。

 

 じゅぶっ♡♡じゅぼっ♡♡ぼすっ♡♡

 

 瑞々しい音が響くなか、彼女は顔を逸らして、細くしている目の端から涙が溢れている。不気味な笑みを浮かべていたさっきまでとは違い、アクメな表情をして喉を鳴らしていた。

 

「おっ、おふっ♥お゛お゛っ、あぁっ♥ん゛ぉ゛♥」

「う、動かします」

「へぁっ? あ…………んぁっ♥」

 

 僕は身を動かし、彼女を横に寝かせ、片足を上げさせる。膣内で肉幹がぎゅるんと半々回転し、肉壁を擦り上げた。

 

「あっ、ひゃっ、ひぁっ、あふっ♥」

 

 亀頭が側面の疣肉を押し上げ、彼女の敏感な箇所を突いている。それは亀頭先の感触で分かっているし、彼女も嬌声を上げて答えてくれていた。

 

 よく見れば、彼女の白いシャツに汗が染み込み、肌とピッタリと密着している。恐らく僕も同じだろう。さっきから汗が溢れて止まらない、セックスってこんな運動をするようなものだったのか。けど、腰の動きは止まる気配はない、彼女を喰ってしまおうと、脳が疲れという感覚を麻痺させて汗と愛液を弾かせる。

 

「あっ、くぅっ、おあっ…………」

 

 そういえば、この行為は誰から始めたのだろうか。あんなにも悶えて逃げようとしていたのに、今、僕は彼女をこうして襲っている。いや、彼女の同意があったとはいえ、こうして獣のように攻めている時点で襲っているのだ。

 

 じゅぼっ♡♡ぶじゅっ♡♡

 

 水気と粘り気のある愛液の音が、6畳の部屋に響く。今更気がついたけど、ギシギシと軋む音も立っていた。彼女と僕の咆哮もこんなに大きい、これでは下の人達にバレてしまうのではないだろうか? けれど、今の僕には……僕達にはそんな不安を考える思考などとうに捨てていた。

 

 ぬぷんっ♡

 

「おぅ……」

 

 僕は動きを止めて、1度肉筒から肉幹を引き抜いた。

 ぐったりと畳に体を沈める彼女は、目を虚ろにさせながら荒らげた呼吸をしていた。捲れたスカートからは、陰毛ででき黒い茂みに隠れた谷間が姿を覗かせている。そこからはべっとりとした愛液と潮水が漏れ出ていた。

 僕は彼女をうつ伏せにさせて、とりあえず邪魔になると思い、びっしょりと濡れた黒いショーツを脱がした。

 濡れ濡れに濡れた彼女の秘部を眺めつつ、僕は肉ついた臀部を両側から挟むようにして持ち上げ、割れ目を肉幹にあてがった。

 

「あ? あ、あの……んほぉ゛っ♥」

 

 彼女が何かを言う前に、僕は勢いをつけて肉幹を膣奥へと押し込み、2つの丘を裂いた。彼女は背を思い切り仰け反らせ、再び喉奥から下品な声が響かせる。

 

 けど、僕は彼女の牝の叫びを無視して、激しく腰を振った。今までより強く、尻の肉を叩く勢いで、腰を打ち付ける。

 

 ぱちゅっ、ぱちゅっ♡♡ぱんっ♡パンっ♡

 

「おふっ、ふぐぉっ♥ぶふぅ♥ん゛ん゛♥」

 

 袖に口を当てて、彼女は嗚咽を白いシャツに漏らす。けれど、潰れた蛙のような鳴き声を抑え切ることはできず、僕の耳へと届く。それは耳を通して脳に届き、余計に僕の性的興奮に拍車をかけた。

 

 ぐじゅっ♡ぶじゅっ♡♡ぶじゅる♡♡♡

 

「んお゛っ♥お゛ぉ、おちんちんがぁ♥あなたのちんぽぉっ♥私の中で、ふぐぅっ♥あ、暴れりゅりゅぅ♥ぅぅぅぉお゛♥おぉ゛♥おっ♥」

 

 早々に抑えることをやめたのか、彼女は汚い喘ぎ言葉を吐いた。背中を向けているが、彼女は今、白目を向いて舌をだらりと垂らしていると容易に想像できた。

 けれど、僕にはそんな彼女の表情が汚いなんて思えない。寧ろ、想像すればするほど、肉幹の内部の海綿体が膨らみ、膣中を広げる。

 

「ふ、太いぃ♥壊れりゅぅ♥おぉぉ゛ぉ゛♥」

 

 彼女の肉襞を鉤首で引き抜く勢いで腰を引き、奥へ突き破る勢いで腰を打つ。彼女の腰を掴んでそんなピストン運動を繰り返す。時に左側面を、次に右側面を、たまに下側と、突く場所を変える。まるで発情期を迎えて腰を振ることに夢中な獣のような動きを、僕は只管に行っている。

 

 寿命が近づいているのか、丸型蛍光灯がチカチカと点滅していた。もしくは、僕自身の脳内が幻覚の閃光を見ているのか。そういえば、部屋の中もなんだか暑い。締め切っているせいなのか、それとも僕達の体温が上がっているのか。本の匂いと生臭い魚のような匂いが混じり合い、頭をふやけさせる。

 

 ぐじゅっ♡♡ぐじゅっ♡♡ぐじゅっ♡♡

 

 いつの間にか、肉幹が彼女の肉筒の中に溶けて1つになってしまうような感覚が僕を襲った。いや、肉竿だけじゃない。身体全体が彼女と溶けて融合してしまいそうな未知の快感が指の先まで伝わっている。

 

「とけりゅ♥からだ、とけちゃぅぅ♥♥」

 

 どうやら彼女も同じようだ。

 

「あっ……」

 

 気がつくと、僕は彼女の体にのしかかり、胸板を背中に押し付けていた。手は自然と彼女の胸元へと伸び、白シャツ越しに彼女の柔らかい乳房を揉みしだいていた。自分でも無意識に取ってしまった行動だった。

 

「お、おっぱいっ♥おっぱい、揉みちゅぶれりゅうぅ♥」

 

 けれど、彼女はそれで満足してくれているようだった。僕は彼女の黒髪の臭いを嗅ぎつつ、腰を動かし続けた。

 

 ぶちゅっ、ぶちゅっ、ぶじゅっ♡

 

 肉々しい音に変化が現れ始めた。腰がぶるりと震える。これは彼女の奉仕を受けた時にも感じたものだ。

 

「で、でる…………っ!」

「へ? ひへっ? ひゅひゅう♥」

 

 もう彼女には汚えぎ声を出す余力も残っていない。僕は最後の絶頂点を目指して腰振りを速くした。敏感な箇所を何度も突き上げ、彼女の体を跳ねさせた。

 

 ぶちゅ! ぶちゅ! ぶちゅ! じゅぶっ! ぼじゅっ! ぼじゅっ♡♡

 ドビュルルルルルッ♡♡びゅるるるるぅ♡♡♡

 

「お゛ぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ♥♥♥」

 

 最後の大絶頂、僕は腰を深く打ち付け、膣奥に眠る入口を突き上げる。途端、睾丸から熱いものが這い上がり、肉幹を通って亀頭先から飛び出した。白く濃い精液が、噴火したマグマのように射精されたのだ。

 人生で初めての彼女に初めての膣内射精──何か忘れている気がするなか、背を仰け反らせ、耳を劈くほどの絶頂声を漏らす彼女の体を、僕は強く抱き締めた。手の中で乳袋が握り潰れ、脈動の度に腰が震える。

 本能が彼女から離れるなと言っているというのもあるけど、それ以上に、彼女の肉襞という名の舌肉が肉幹を離さんと、根元から頭の先にかけて搾るように蠕動していた。

 

「(でてりゅっ…………濃いの…………赤ちゃんの素…………お腹、焼けちゃう…………この人の子ども……孕んじゃう…………♥)」

 

 …………どぷんっ♡

 

「お゛…………♥」

 

 そして最後の一滴まで搾り取られた所で、彼女は掻き消えるような声を出した。

 

 暫くの間、僕達は体を重ねた状態で時間を過ごした。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 どれほどの時間が流れただろうか。

 

 気がつくと、僕と彼女はお互いに向き合うように正座していた。彼女はセックスで服がびしょびしょになってしまったため、今は代わりのTシャツに着替えていた。僕は替えの服がないので、股間部をよく拭いてから制服を着直した。

 

「ぐすっ……ご、ごめんなさい…………わ、私は……とんでもないことを…………」

「い、いいですから。大丈夫ですよ」

 

 そして今は、子どものように嗚咽を吐きながら泣きじゃくり謝る彼女を、僕は必死に宥めていた。

 数時間前の彼女の奇行、話によると、あれはやはり官能小説の受け売りだったようだ。しかもかなり偏った部類のもので、本来はあんなことを実行しようだなんて思う人はいないと思う。

 けど、自分なりに恋人へのアプローチを考えた、考えに考えすぎてしまった結果、狂気の方向へ走ってしまったとのことだった。

 

「あの、1つ聞きたいんですけど」

「…………はい」

「さっきの話が本当なら、あなたはずっと前から……その……僕のことが、好き……だったんですか?」

「……は、はい…………」

 

 僕の質問に、彼女は照れくさそうに答えた。

 僕は古本屋に通ううちに、いつの間にか彼女に惚れていた。しかしそれは彼女も同じで、彼女もまた僕のことを好いていたのだ。

 

「は、初めてあった時は……め、珍しく新しいお客さんが来たなぁ、って、思ってたんです…………けど、その……同じ本を読んでて…………私もなんだか追いかけっこをしてるみたいで……た、楽しくなっちゃって…………気づいたら…………はい」

 

 はい、というのは、この先は言わなくても分かるという意味なのだろう。

 

「は、初めて声をかけられた時…………内心では凄くドキってしました…………だから、いつか、告白して…………そ、そういう関係になれた時のために…………そういうことや、あっち系の本を読んで…………勉強しました」

 

 彼女曰く、押し入れに入っていた怪しい器具は『そういうこと』に使うために必死に集めた物らしい。未成年で、且つ人付き合いがほとんどないと自称する彼女が、どこでこんなものを手に入れたのだろうか。僕でさえ、専用の器具なんてものは手に入らなかったのに。

 

「けど、なかなか声をかけられずに、告白することが出来なかった。それで、その末路が今回の」

「はい…………本当ならこんなやり方、おかしいって、分かるはずなのに…………あなたから告白されて……ま、舞い上がっちゃって…………ダメ元でやってしまおうって…………ご、ごべんなさい」

 

 全てを吐き終え、再び泣き始めた。僕がハンカチを渡すと、彼女は思いっ切り鼻をかんだ。ずぴーっといういい音が響いた。

 

 僕に彼女を責める資格は無い、いや、責めるなどあってはならない。僕も僕で彼女からの奉仕を受け入れていた。さらに言うと、最終的には僕の方から彼女を攻めていた。そんな僕に彼女の奇行を責める資格などない。

 

「…………あの、私のこと……嫌いになりました……よね…………」

 

 枯れるように黒髪から水気が抜けていき、彼女の顔を隠していく。

 

「嫌いになんて、なってませんよ」

「…………ほ、本当……ですか?」

「嫌いになるも何も、僕達はまだお互いのことを……体のことは先に知ることになったけど、それ以外のことはよく知らないですから。僕はあなたが好きです、だから、これからはもっとあなたのことが知りたいです」

「……へへ、わ、私も……あなたが知りたいです……」

 

 僕は本心を隠さずに彼女に伝えた。すると彼女は泣き止み、恥ずかしそうな笑みを零した。

 

「……あ、そ、そういえば……」

 

 何かを思い出したかのように、唐突に彼女が口を開く。

 

「私たち…………キスよりさきに……エッチ、しちゃいましたね」

 

 ああ、言われてみればと声を漏らす。

 そうか、忘れていのは彼女とのキスだったのか。

 

「なら、今します?」

「へ? い、いや、そんな…………」

 

 おそらくかぶりを振ろうとしたのだろう。けれど、彼女は迷いに迷い、しばらくして目を閉じながら頷いた。

 僕と彼女は身を乗り出し、お互いの顔を近づけあう。

 そして目を瞑り、唇と唇を重ねた。

 

「んっ…………んっ…………」

 

 表面と表面を触れ合う口付け、それだけのつもりだったけれど、唇の間を彼女の細い舌先が捩じ込もうと暴れている。僕は口を開いてそれを受け入れ、同じように彼女の口内に舌先を入れた。ねっとりとした温かい舌触りが表面を伝って届く。

 

「んっ…………あっ」

 

 10秒程して、僕達は唇を離した。彼女は頬を火照らせながらモジモジと微笑む。

 

「…………うぷっ」

「ひゃぇっ!?」

 

 僕は口内を覆うイカのような生臭さに耐えきれず、口元に手を当てながら吐き気を催す。彼女の口内に出した精液はまあまあな量だった。それを彼女は必死に飲み干していたのだから、口内に残滓が残っていてもおかしくない。

 

「あ、だ、大丈夫……精液の生臭い味がちょっと口の中に広がっただけです」

「は、す、すみません…………」

 

 折角の笑顔を、彼女はまた枯れさせていく。別に彼女が悪いわけではない。僕は1度咳き込み、改めて彼女に向き直した。

 

「えっと、とりあえず、改めてよろしくお願いします」

「……へ、は、はい…………へへ」

 

 彼女は半目から姿を覗かせる暗い真珠をこちらに向けながら、不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 これが僕が彼女と出会い、男女の関係になるまでの長話だ。その後の僕達の物語については、断片的に答えようと思う。

 

 あの日から、僕は毎度の学校帰りにあの店を訪れるようになった。理由はもちろん、恋人である彼女と会話をするためだった。互いに意識し合ったのは数年前からだけど、相手のことを殆ど知らない状態で行為に及んでしまった。

 だから、まずは2人きりの時間を作ろうとした。彼女が本以外に何が好きなのか、学校で楽しい・辛いことはあったか、反対に彼女が僕の何が知りたいのか、そんな話を、学校帰りから門限までの一、二時間の間にしていた。

 その中で、お互いに相手の知らない内面を知り、より強く惹かれ合うことになった。意外だったのは、彼女が携帯の類いを持っていなかったことで、必要な情報は主に雑誌やテレビで入手していた。B級映画は、過去に読んだムック本で知ったものが多いらしく、古本屋にも最新の物が流れてくることがあるのだとか。

 そういうこともあって、僕は彼女に電話をする際は、彼女の実家の固定電話にかける必要があった。物語の演出にあったように、あの店主さんか奥さんが出ないか、初めの頃は凄くヒヤヒヤとしていた。

 

 少し関係が進んだ頃になると、月に1回か2回、休日に、どちらかの家に遊びに行くようになった。とは言っても、遊ぶことはほぼなく、互いに苦手な科目の勉強を教え合うことが大半だった。それだけでも、僕はとても嬉しかった。

 さらに関係が進むと、今度は一緒に映画を観るようになった。ジャンルはB級映画で、何から何まで酷いものから、人は選ぶけど、癖があってハマる人にはハマるものまで。親のいない日に、彼女と2人で並んでテレビに映るキャラクター達の活躍を集中して観ていた。

 勿論、作品全てが僕にとって面白いと思えたわけじゃない。ただ、彼女が嬉しそうにしているのを観ると、何もかも許せてしまった。

 

 3年生になり、僕達は大学入試に向けて受験勉強に本腰を入れる時期になった。そのような状況でも、僕達は会うことを辞めなかった。もちろん、遊ぶ為ではなく、勉強を教え合うためだった。

 本に囲まれた6畳の中で、彼女と2人きりで勉強をして、おやつに塩辛いお煎餅をバリバリと音を立てて食べ、苦い緑茶を飲む。時々、2人で同意しあった上で恋人らしい行為もする。そうして、僕達は辛い受験期間を乗り越えた。

 

 高校を卒業して、大学入学までに少しだけ空白でやることが無い日が何日か続いた。その中で、僕達は初めて外へデートに出かけた。

 とは言うものの、どこか美味しいお店にいったり、テーマパークに遊びに行くようなことはしない。各駅の近くや少し離れた本屋さんを訪ねて回る、それだけだった。けれど、それはまだ出会えていない街や本屋、まるで未知との遭遇を果たすみたいで、僕達にとっては充実したものだった。

 

 大学生になると、僕達は同じ大学に進学した。誤解される可能性があるので言っておくと、付き合っているから同じ大学を選んだ訳ではなく、ちゃんとお互いの将来の夢ややりたいこと、学費等々を考えていたら、たまたま条件が合致した大学になっただけだった。

 僕は一人暮らしも踏まえて実家を離れ、大学近くの賃貸アパートを借りてしばらくそこで暮らした。一方、彼女は店主さんのこともあって、実家から電車で通っていた。アルバイトの関係で会えない日はあったけれど、なるべく僕達は一緒にいる時間を確保していた。

 僕が実家に顔を出すついでに彼女の実家を尋ねることもあれば、彼女が僕の部屋に泊まることもあった。ある意味、高校生の時よりも二人でいる時間が増えた気がする

 

 休日や暇な時は、相変わらず映画鑑賞や本屋巡りをしていた。その中でも興奮したのは、大学図書館の探索だった。

 大学内の図書館は広く、書物の豊富さでも有名だった。背よりも高い棚に詰められた本たち、見たことのない分野の本や論文、そしてなにより、拘りの強い職員によって集められた莫大な小説の数々が、僕達の好奇心を掻き立てた。このまま寝泊まりしてしまおうとすら考えたこともあるほどだ。

 

 また、僕にとっては嬉しいことが他にもあった。それは、彼女に友達が出来たことだ。

 今まで人付き合いが苦手で、友達が出来たことがないと言っていた彼女。けれど大学は色んな人が集まる場所、彼女と同じような性格で同じような趣味を持つ人も沢山いる。そういった人と偶然、授業の関係でグループを組んだ際に自己紹介をして意気投合し、そのまま友達になったと、彼女も嬉しそうに話していた。

 僕以外に楽しそうに話す彼女を見るのは少しだけ寂しい気持ちもあったけど、それ以上にあの頃よりも人に明るい笑顔を向けてくれるようになったことが、何よりも嬉しかった。

 

 

 ────ざっくりとした説明だが、そうして僕達は、付き合ってからの人生を楽しく過ごした。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 彼女と恋人になってからかなりの年月が経った。

 

 僕は今、自分の部屋であの日のことを思いだしながら、パソコンで打ち込んでいたところだ。それも今ようやく終わる。付き合って以降の流れは凄く雑になってしまったけど、原因は彼女との初体験を書き上げて体力が尽きてしまったのもあった。

 

「よし」

 

 僕はデータを保存すると、ファイルを閉じてパソコンの電源を落とし、両手を上に伸ばして肩を解す。

 やや広めの部屋の中は、僕が使っているデスクとベッド、そして天井ギリギリまで背を伸ばした大きめの本棚が2台ほどある。棚には様々な種類の書物が並べられて、仕事の関係で、小説以外にも漫画や実用書、専門書なども収まっている。これでも彼女の部屋に比べれば圧倒的に少ない方だ。

 机の置時計に目を向けると、時刻は既に10時を回っていた。もうそろそろ彼女が子ども部屋から戻って来てもいい頃だろう。

 そう考えていると、部屋の扉が3回ノックされた。

 

「いいよー」

「ふぅ…………ようやく眠ってくれた」

 

 扉を開けて早々、彼女はため息を吐いた。相変わらずな疲れたような半目とボサボサな黒い長髪に加えて、黒いセーターとロングスカートが、彼女の大人らしさを出していた。

 

「大丈夫? 結構長かったね」

「う、うん……今日は子守唄代わりに絵本を読んだんだけど…………もう1回って目を輝かせちゃって、結局3回も繰り返して読む羽目になっちゃった……」

「あの子、1度ハマるとなかなか眠ってくれないからね」

 

 僕は立ち上がり、扉を閉めた彼女に近寄る。そして、ふらつく彼女を受け止める形で優しく抱きしめた。

 

「お疲れ様」

「は、はぇ…………へへ……」

 

 一瞬慌てた彼女だったけど、直ぐに笑顔を零してくれた。

 

 大学を卒業と同時に同棲を始めてから数年、僕達は籍を入れて、正式に夫婦になった。今はとあるマンションの一室を購入し、家族3人で暮らしている。3人というのは、僕達の間に子どもが生まれたからだ。

 見た目は彼女によく似ていて、時々彼女と似たような言動をする、本が大好きな女の子。毎日、寝る前に物語の読み聞かせをして寝かせていて、2人で当番を分けて行っている。いつもはひとつ話しているうちに眠ってくれるのだが、今日は興奮してしまったようだ。

 

「僕達も寝よっか」

 

 そうして僕は、彼女を支えながら部屋へと連れていこうとした。彼女の仕事の関係もあって、僕達は別々の部屋で眠っていた。同棲時代のように一緒の布団の中で眠りたいと思ったことはあるけど、忙しい彼女に対してそんな贅沢なことは言えなかった。

 

「あ…………あの…………」

 

 彼女が両手で僕の胸を押えて、同じ目線で僕を見つめる。

 

「…………きょ、今日…………い、一緒に寝よ?」

「え? でも、明日は大事な話があるんじゃ」

「ご、午後からだから……け、結構遅い時間帯だから、朝遅くても大丈夫…………そ、それに」

 

 彼女は目を逸らしつつ、頬を赤くしながら悶々とし始めた。

 

「きょ、今日は…………その……そういう気分……だから」

 

 そういう気分、というワードで、僕は彼女が言いたいことを全て理解した。彼女がこうやって恥ずかしそうに気分がどうという場合、それは夜の営みがしたいと訴えている証拠だ。ちなみに、甘えたい気分と言った場合は、ただ一緒に寝たいという意味だ。

 

「そっか。うん、分かった。僕の部屋でいい?」

「う、うん…………あ、あと、今日はやりたいことがあって」

「やりたいこと?」

 

 僕は首を傾げた。彼女の恥ずかしがり具合からして、相当口に出しづらいことなのだろうか。

 

「大丈夫だよ、言って」

「えっ、えっと…………今日は」

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「お゛っ♥あっん、あ゛っ♥ん゛おぉ゛っ♥♥」

 

 灯りを消した部屋の中、僕はベッドの上で、仰向けに倒れる彼女に覆いかぶさりながら腰を振っていた。

 久々の彼女の膣穴の味に、肉幹は食らうように海綿体を膨張させ、その身をぎゅるりと身震いしながら、膣道を押し広げて擦り上げている。それが愛液を掻き混ぜることで卑猥な音を出して、彼女の嬌声と共に室内に響いた。

 

 ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡ぎゅるっ♡♡

 

「お、おちんぽ♥おちんぽ♥体があちゅいっ♥激しすぎりゅ♥んぉっ♥」

 

 暗闇の中、彼女は卑しい言葉を吐きながら、僕からの腰振りに身を任せて揺れていた。

 

 ぢゅぶっ♡ぢゅぼっ♡♡ぢゅるるるっ♡♡ぢゅうっ♡♡

 

「おふっ♥おっ、おっぱい吸われ……ぉぉぉおお゛♥」

 

 白シャツからはみ出た彼女の右乳、その先の黒ずんだ乳頭と乳輪に僕はしゃぶりつき、赤子が母乳を求めるように吸い上げる。子どもを産んだことで少し大きくなった彼女の乳頭からは、ほんのりと母乳の味がしていた。

 

 僕達は今、裸ではない。彼女は高校の時に着ていた紺色のスカートと白いシャツを纏い、僕は白シャツと黒ズボンを着ている。

 この際だから全てを話すと、僕達は今、高校生時代の制服を纏い、初体験の時のような格好でセックスをしていた。と言うのも、今日は『あの頃の気分でやりたい』とお願いされたからで、思い出ついでにタンスの奥に仕舞っていた高校の制服を引っ張り出した。

 けれど、もう10年近くも前に着ていたものだ、僕には少しきつくなっていた。彼女の方も、妊娠と出産によって、胸元辺りがかなりピチピチな状態になっていた。それが余計に色っぽく、僕の脳みそを白に変える。

 

「んあっ、あちゅっ♥お腹、焼けりゅ♥あそこが溶けりゅ♥ぉう゛♥」

 

 奥へ進む亀頭が彼女の子宮口にキスを交し、体全体に快感を行き渡らせる。奥の肉を押し上げる度に、肉壁がキツく締まり、肉襞が肉幹を包むようにまとわりつく。変わりない彼女の名器の味わいに、僕の頭と心はあの頃に戻った。

 灯りは着いていないはずなのに、目の前がチカチカと白く点滅する。今の僕のが快楽に焼きキレそうになっている証拠だ。

 

 ぐちゅっ♡♡ぐちゅっ♡♡

 

「うっ、そ、そろそろ……」

「おお、にゃ、にゃかに♥にゃかに、あつあつのっ♥くひゃしゃいっ♥」

 

 ばちゅっ、ばちゅ、ばちゅ♡

 びゅびゅるるるるるるるっ♡♡♡どびゅるるるるるるっ〜♡♡♡

 

「おほぉぉぉぉぉぉっ♥♥ 」

 

 最後の一突き、腰を深く突き刺し、亀頭を彼女の奥の唇に密着させると、溜まっていた精液が鈴口からどっぷりと吐液する。

 彼女は2つの乳袋を揺らし、背中を仰け反らせ、目を白く剥きながら、劈くような獣の咆哮を上げて大絶頂を迎えた。部屋中を震えさせる彼女の叫び声、下手をしたら、あの子を起こしてしまうかもしれないほどに汚く、淫乱なものだった。

 

「(お、おちんちん、赤ちゃん汁、びゅーびゅーしてる♥……お腹の中、旦那さんの精液でいっぱいっ♥あちゅいっ♥……2人目、できりゅ♥)」

 

 びゅるるっ…………どぷんっ♡

 

「お゛♥…………ふ、へへ…………ずっと……一緒ぉ」

 

 絶頂の余韻に震える中、彼女は目を緩め、涎と涙を流した蕩けた表情で呟いた。僕は快感に気絶しそうになりながら、彼女の言葉に頷いた。

 

 今度、あの子を連れて僕の実家と彼女の実家に挨拶に行こう。きっと近いうちに良い知らせがあるはずだ。

 

「こ、こんどは……セーラー服で…………へへ……」

 

 ぼちゅっ♡♡

 

「んほぉっ♥!?」

 

 今夜はもうしばらく眠れそうにない。

 

 

 

 

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