※この作品はR-18です。

オリジナルエロ話   作:歩輪気

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♥喘ぎ、擬音表現、淫紋、アナルセックス、排尿、飲尿、暴力描写があります。

今回、初めてマゾっぽいものを書いてみましたが、物足りないかもしれないです。

文章を一部修正しました。


あたしと先輩

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 淫紋──それはアダルトコンテンツでよく目にする、女性の子宮の上辺りの肌にタトゥーのように刻まれる紋のことである。女夢魔(サキュバス)とかそういうエッチ系なキャラがよくお腹に彫っているあのハート型のHな模様のことを指すと言えば分かるかもしれない。

 淫紋には様々な種類があり、物によっては痛みが快感に変わるだとか、レイプが快楽になるとか、忠実な奴隷になるだとか、現実ではありえないものが淫紋によって可能となり、女性は瞬く間にセックスと肉欲の悦びに沈んでいく……というのが、創作物でよく見るお約束らしい。

 

 そんな架空の存在で、今ではコスプレの1種のような扱いを受けている淫紋を、何を考えたのか、現実のものにしようと試みたエロ思考な研究者達がいた。そしてあろう事か、実現させてしまったのだ。

 

 その名は『即席淫紋・小悪魔β』。

 

 そのエロの研究者達が勤めるとあるアダルトグッズ専門の開発企業が発明したアダルトサプリメントである。

 見た目は小瓶に入ったそこらのサプリメントと変わりない錠剤型のそれは、その名の通り、服用者に対してランダムで『淫紋』の効果を発揮させることができる、まさにエロい意味で夢のような発明なのだ。

 もちろん、ただ単にエロ目的で開発したという訳ではなく、彼らいわく、EDに悩む男性や冷えきった夫婦・カップルのセックスレス解消を目的としているらしい。なんでも男性が飲んでも効果はあるようで、同性カップルにもおすすめらしい。

 

 しかしこの小悪魔β、欠点なのは、淫紋がランダムで発動する点と、値段がそこそこ高いという点である。

 前者は事前に決めることが出来ない上に、人によるが、もしハズレの淫紋(俺達ならレイプされることが快感とか)を引き当ててしまった場合、効果が切れるのを待つしかない。市販の淫薬を多量に摂取した方が確実に効果があるだろう。

 後者に関してもかなりの欠点で、これ一つだけで、質のいいアダルトグッズが数点購入できてしまう。これを買うくらいなら、そういう系のものを買ってお互いに気持ちよくなった方が早い。

 

 そんな有様なので、発売から日が経っている今でも売上は全く伸びていない。そもそも淫紋の効果を発揮するなんて非現実的なものを売りにしているのもあって、顧客からはインチキ臭いとそっぽを向かれてしまっていた。こんな商品を購入しているのは、相当なエッチ思考のカップルか、本気で悩んでいるカップルくらいだろう。そのカップル達からも、現在批判を食らっているのだから、救いようがない。

 

 そしてこの商品自体、購入までにはかなりの段階を踏まなければならない。

 まず使用者2人で購入すること、それから使用者の名前、使用目的、理由、好きな体位等々を答え、誓約書を記入し、さらには会員登録(無料)を済ませ、使用した感想を会社のホームページにログインして記入しなければならないという、何ともめんどくさい手順が待っているのだ。防犯対策のためとはいえ、ここまで手間をかけてまで欲しがる者など、早々いない。それは売上を見ればわかる事だ。

 

「…………買っちゃったっすね」

「ああ、そうだな…………」

 

 そんなインチキ臭くて買うのにも手間がかかる小悪魔βが数粒入れられた小瓶を、俺と夢実(ゆめみ)はテーブルに置き、正座しながらじっと眺めていた。

 黒を基調としたラベルの表面に、濃いピンク色のエロい文字で商品名が刻まれている。室内灯の光が表面を白く照らし、文字の一部を白色に塗りつぶしていた。

 

「まさか、あんなに手間がかかるとは思わなかったな」

 

 散々酷評してきたこれを手に入れるために、俺達はわざわざ取り扱ってるアダルトショップを探し出して足を運び、恥ずかしい内容を答え、誓約書にサインをして、会員登録を済ませたのだ。その際、なんとも言えない恥ずかしさが体中に熱となって溢れてきたから、お互いに穴があったら入りたいと思った。

 

「うう、凄く恥ずかしかったっす……なんだか、先輩との性事情を赤裸々に書かされた気がして、もう殺してってなりましたよ」

「生憎、俺も同じだよ」

 

 他人に自分達の性事情を暴露しなければならないなんて、普通は嫌だ。俺だって、彼女とやる時は精力剤を愛用しています、なんて暴露するのは嫌だった。しかし、どうしても好奇心が勝ってしまったのだから、仕方がないのだ。

 

「つーか、流石にあそこまで書かなくても良かったんじゃないか? 好きな体位ならともかく、その他の部分まで書くなんて」

「だって……書きたいじゃないすか。あたしは先輩とここまで進んでるんですよーとか、あたしと先輩はここまでラブラブなんですよーとか……」

「自慢したかったんだな」

「はい、そうっす。すんません」

 

 夢実は項垂れるように深く頭を下げた。恥ずかしがりながらも他人に俺との性事情を書いたのは、ある種の彼女の独占欲故の行為なのかもしれない。

 

 俺と夢実は1つ差の先輩と後輩の関係で、恋人として付き合い始めたのは彼女が中学三年生の時、俺が中学を卒業して地元の高校に進学してからすぐのことだ。告白は俺の方からした。

 元々小学校の時から親交があった俺たちは、何かと関わることが多かった。中学では同じ種目の運動部に所属していて、男女で別れていたとはいえ、部活を行う場所は基本的に一緒だった。そのため、俺達は毎度のように声をかけかい、時に煽りあいながら時間を共にしてきた、だからこそ、俺の中に彼女への好意が芽生えたのだし、彼女もまた、俺に対して好意を持ってくれたのだ。

 また、部署は違うが同じ会社で働いていることもあって、彼女は未だに俺の事を先輩と呼んでいる。いい加減名前で呼んで欲しい気もするが、俺も先輩呼びの方が何故かしっくり来ているのでそのままにしている。

 

「先輩、なに独り言ちてるんですか」

「いや、そういえばお前と付き合い始めてから、随分と経つなぁって思ってな」

「あー、そうっすねぇ。そういえばそうでしたねぇ。先輩、あたしを呼び出して、付き合ってくださいって言って来たっすね」

 

 夢実は俯いた顔を上げると、黒髪を揺らしながら「あの時の先輩、思いっきり噛みまくってましたね」と付け足すように言った。運動部だった頃は短く切っていた髪も、今は肩より先に伸びている。

 

「まだ覚えてたのか、もう忘れてくれよ」

「無理っすよ。だって付き合ってくださいを『ちゅきあってくだしゃい』なんて。ダサすぎるっす、ダサすぎてあたしじゃなきゃ即断ってしましたよ」

 

 意地悪そうに笑いながら、夢実は俺に顔を向ける。昔から変わらない明るい笑顔は眩しかった。

 

「まあ、そんなあたしも、今じゃこうやって先輩とのあれやこれやを他人に自慢したがる女になっちゃったわけで…………これ、先輩のせいっすからね」

「いや、なんでだよ」

「だって、先輩があたしを求めてばっかなせいで、もう先輩とじゃなきゃ満足出来ない体になっちゃったんすよ。責任取れっす」

「言い方どうにかならないのか。あと俺じゃなくて、求めてきたのが多かったのはお前の方だろ」

 

 そう反論すると、夢実は「彼女のせいにするとはそれでも男かー」と唇を尖らせながらブーブーと文句を言ってきた。さっきまでの赤面顔は今何処、すっかり普段の彼女に戻っていた。

 

 夢実と初夜を迎えたのは、付き合い始めて1年経とうとしていたあの日、彼女が中学を卒業し、高校入学までの少しの間の休み期間の時だった。

 前々からエッチなことは中学を卒業してからと約束していたのもあって、夢実は卒業式を終えて早々に俺の家に押し入り、卒業証書を見せつけながら『先輩っ! やるっす!』と恥ずかしげもなく堂々と告げてきたのだ。

 確かに、エッチなことは卒業まで絶対にしないと言ったのは俺の方だし、たっぷり期待させてイライラとムラムラを募らせたのは悪いと思っている。

 しかし、だからと言って家族の目の前で宣言するのはどうかと思うし、案の定、両親はなんのこっちゃと首を傾げていた。

 

 そんなこんなで準備を整えた数日後、卒業記念のデートを楽しみ、俺の家に泊まらせた際に、俺達はとうとう肉体的に結ばれた。

 運動部ということもあって、彼女の身体はなかなか引き締まっていて、挿入した時はかなりの締め付けが陰部を襲った。夢実もまたかなり痛かったようで、根元まで差し込んだ際には、唇を噛んで必死に声を殺し、早くも目から涙を溢れさせてい。

 

 しかし、それとは裏腹に、彼女の肉まんこは俺の陰部をあっという間に受け入れ、腰を振る度に彼女の乳房は可愛らしく揺れた。中学生の時からほんのりと膨らみ始めた乳は、見ているだけでも目を奪われたし、掴んだ指は沈み、しゃぶれば甘い味が口いっぱいに広がった。おかげで初めての射精はなかなかの量が出て、コンドームが膣穴から抜けなかった。

 

 夢実が好きな体位は正常位と伸長位のような、対面で向き合いながら愛し合う系。バック後背位は押し潰されてるみたいで嫌らしく、あまりやらせてくれない。しかしそれでも十分すぎるくらいに、俺達は度々肉交に情熱を爆ぜた。

 

 そして社会人となった今は、こうして同じアパートで二人暮しを満喫し、こうしてエロバカな商品を購入しているのだ。

 

「……それで、いつ飲むんだ?」

 

 俺が訊くと、夢実は尖らせた唇を引っ込めて、視線だけを小瓶に向ける。夕食はデリバリーで済ませたから、風呂さえ入れば今からでも始められる。あとは使うか使わないか、その選択をするだけだった。

 夢実は肩を竦め、テーブル上で腕を伸ばしながら息を吐いた。

 

「今すぐにでもって言いたいんすけどぉ……やっぱり勇気がいるって言うか」

「じゃあやめとくか? 一応使わなくても開発元には感想を書かなくちゃならないが」

「それは嫌っす。折角高いお金払って買ったのに使わないなんてありえないっす。だって淫紋っすよ。先輩が高校生の時に読んでたエロ漫画にあったシチュが、こうして実現するんすよ。こんな機会、二度とないかもしれないっす」

「さらっと人の過去をばらすな。ていうか、いい加減忘れろ」

「忘れるわけないっすよ。あたしという女がいながら、爆乳清楚系先輩女子高生の淫紋NTR雌落ち蕩顔アクメなんていう性癖モリモリのエロ漫画で私に隠れておちんぽシコシコしてたなんて、ありえないっすよ。ていうかなんすか爆乳って。中学で成長が止まったちっぱいなあたしへの当てつけですか」

 

 過去に所持していた彼氏のエロ漫画の内容をここまで明確に覚えている方がありえないと思う。あともうその件に関しては『1日夢実の言うことを何でも聞く』ということで片を付けたはずだ。

 

「あーもう分かった分かった。あの件は俺が悪かったから。怒るなら後にしてくれ」

 

 これ以上は過去の恥ずかしい話を掘り返すだけになってしまう。とりあえず適当に話を終わらせ、俺は再度、夢実に飲むか飲まないかを問うた。

 

「……もう、覚悟は決めてるっす」

 

 少し息を吸い「今日、飲むっすよ」という言葉と一緒に吐き出した。

 

「おう、そうと決まれば、まずは風呂に入って準備するか」

 

 そう言って俺は立ち上がり、準備に取り掛かろうと彼女に背を向け、風呂場に向かった。

 その瞬間、背後からカシャンという音が聞こえ、すぐに振り返った。

 

「あ」

 

 という間抜けな言葉が出た時には、既に手遅れだった。

『即席淫紋・小悪魔β』の小瓶が、開封された状態でテーブルに置かれていた。そのテーブルの前では、夢実がコップの水と一緒に何かをゴクリと飲み込んでいた。彼女が何をしたのか、そんなのは一目瞭然だった。

 

「ふう、ご馳走様でした」

「おいおい夢実、何やってんだよ。やるのは風呂入った後だろ?」

「そうっすけど、なんか先延ばしにしてたらどんどん飲まなくなると思って。気持ちにブレーキかかって行く気がしたんで。だったら思い切って今飲んだ方がいいじゃないすか」

「お前、服用は絶対に行為の直前にしてくださいって説明された時に言われただろ」

「大丈夫ですって、ちゃちゃっと入ればいいだけっすから」

 

 夢実はカラカラと軽く笑う。彼女は昔からこういう雑な一面があり、そのおかげで何度か痛い目にあってきた。今回もそうならなければいいのだが。

 

「……あれ」

「どうした?」

「いや、なんか、体がムズムズしてきて、力が──」

 

 話している途中、夢実は言葉を途切らせると、そのままふっと気絶するかのように横に倒れた。

 

「お、おい!」

 

 突然のことに俺は彼女に近寄り、体を持ち上げた。全身が熱い、服越しでも分かるくらいに体温が上がっている。オマケに頬は赤く火照り、息継ぎも荒く苦しい感じになっている。まるで熱を出した時のような状態だ。

 

「おい、夢実。大丈夫か?」

「あ、あれぇ、おかしいっすね……なんか、突然体の力が抜けて……目の前がぽーってなっちゃって……薬、早速効いたんすかね」

「言わんこっちゃない、たく」

「いやぁ……まさかこうなるなんて……思わなかったんで」

 

 重たい頭を上げて苦笑を向けてくる夢実。だが、あからさまに苦しいのは見ているだけでも伝わってくる。

 

「ほら、とりあえずベッドに行くぞ。立てるか?」

「うーん、無理っすー、先輩のお姫様抱っこじゃないと行けそうにないっすー」

「お前なぁ」

 

 否、今はそれどころではない。とりあえず夢実が宜しくない状態なのは間違いない。

 

「ほら、よっと」

「わーい、久々の先輩の抱っこだー」

 

 荒い息継ぎをしながら巫山戯る夢実を腕に抱きながら、俺は彼女を運んだ。前に抱いた時よりも重い気がする。社会人になってから運動をしていないせいだろうか、筋肉が脂肪に変わっているらしい。それを引いたとしても、彼女の体は軽く、全体的にスマートだ。

 

「ふへぇ、へへぇ」

「おい、変な声出てるぞ」

「ほぇ、へぇ」

 

 何だか様子がおかしい、そう思いながら、彼女をダブルベッドに寝かせた。

 

「大丈夫か? なんか変だぞ?」

「うーん、それがー、なんか体がウズウズするっていうか、痺れるっていうかー、これ、薬のせいっすかねぇ」

「多分な」

 

 確か小悪魔βは、服用時に脱力感とか性器に疼きがあるとか、そういう副作用があるって言われたっけか。ダメだ、俺も全部は覚えれてない。

 

「とりあえず、効果が出るまでこのまま横に──」

 

 なってろ。そう言い切る前に、夢実が「あ」と声を漏らした。

 

「せ、先輩、な、なんか……お腹が変っす」

「変? 変って」

「わ、わかんないっす。なんか、凄くウズウズするというか、あ、熱い、すごく熱いっす…………あ、あぁぁぁぁぁっ!? や、や゛だっ、焼ける、焼けちゃうぅ! い゛ぃいぃいい!?」

「お、おい! おちつけ!」

 

 突然、夢実は叫び声を上げ、体をバタバタと跳ねさせながら暴れ始めた。会社の同僚と浮気していると勘違いされた時以来の暴れっぷりに、俺は動揺しつつも、何とか彼女の体を抑えようとした。

 

「ふ、服、服っ! 熱い!」

「服? 服を脱がせばいいんだな!?」

 

 夢実は鬼の形相を浮かべながら激しく頭を上下に揺らす。彼女の指示通りに、俺は1枚ずつ、暴れる体から放たれる拳やら足蹴りやらを受け止めながらなんとか脱がせた。薄い部屋着、インナーと順に脱がせていく。

 

「……ん?」

 

 ふと、ズボンから何かがはみ出ていることに気がついた。臍の下辺り、しかも何故か発光している。

 得体の知れない物にビクリとしながら、恐る恐る彼女のズボンとショーツを同時に脱がした。

 

 そこには、昨夜までなかったはずのものがあった。

 

 臍の下から股間部にかけて、濃い桃色をした左右対称の模様が、彼女の肌にタトゥーのように刻まれていた。その形は花を咲かせているかのように綺麗で、しかしどこか禍々しいものだった。まるで、一種の芸術作品のようだ。

 

 ◇◇◇◇

 

「…………なんだ、これ」

 

 突如全身に走った痛みと疼きが落ち着き、呼吸が戻ってきたところで、先輩の呟くような声が聞こえてきた。

 

「先輩……? どうしたんすか……?」

 

 あたしは正常に戻り始めた体を微動させて、ゆっくりと先輩を見つめた。いつも明るく怒ると可愛い先輩の表情が、唖然としたまま固まっていた。

 

 どうしたんだろうか、そう思いながら、彼の視線の先にあるものに目を向けた。

 

 そこには、あるはずのないものが刻み込まれていた。

 

 ハートの形に似ていて、けれど、何処か禍々しく、明らかにエロスを醸し出したタトゥーが、あたしの臍下から陰部近くかけて彫られていた。ちょうど、子宮のある部位に位置している。

 多分、先輩なら『臍の下から股間部にかけて、濃い桃色をした左右対称の模様が、彼女の肌にタトゥーのように刻まれていた。その形は花を咲かせているかのように綺麗で、しかしどこか禍々しいものだった』なんて表現をしているだろう。

 

「先輩……これ」

「……ああ、間違いない。これ、淫紋だ」

 

 先輩の言葉に、私は開いた口が塞がらなかった。これが、あのエロ漫画で描かれていた、エッチな効果を発揮する淫紋。それがとうとう私の肌に彫られてしまった。あのサプリメント、即席なのも含めて本物だったらしい。

 にしても、なんて綺麗なんだろう。禍々しいなんて言ったけど、模様自体は粗がなくて、丁寧で無駄がない。思わず見蕩れて表情が蕩けてしまいそうになる。

 

「夢実? 大丈夫か?」

「……へ? あ、はい、もう平気っす。それより先輩、これ、なんの効果がある模様か分かりますか?」

「ああ、ちょっと待ってろよ」

 

 ラベルに記載されていたQRコードを端末で読み込み、内容を確認する先輩を横に、私は体を起こした。さっきまでの熱が嘘のように落ち着いている。ただ、子宮に渦巻くものは中々落ち着かない。

 

「えーっと……ん?」先輩は説明書を読みながら眉間を顰めた。

「どうしたんすか?」

「いや、それがな。どこにもないんだ。お前の淫紋。どこにも説明が載ってないんだよ」

 

 そんな馬鹿な、そう言いかけ、改めて自分に彫られた淫紋に目を向けた。確かに言われてみれば、珍しい形をしているというか、なんだか、複数のものが融合したような形をしている。一体どんな効果があるのだろうか、不安になりつつも、内心ではワクワクとした気持ちが湧き上がっていた。

 

「…………あ」と先輩が声を上げた。どうしたのか聴くと、彼は困った顔をしてこちらを見た。

 

「これ、多分『重ねがけ』だ」

「重ねがけ?」

「ああ、説明書に書いてあったぞ。ほら」

 

 先輩が端末の画面をこちらに向け、該当箇所を指さした。

 そこには確かに、『注意:ごく稀に、淫紋の効果が重複する場合があります』と書かれていた。どうやら、そのごく稀な現像にあたしは当たってしまったらしい。とんだ不良品だ。

 

「うわぁ、あたし、運悪すぎ。先輩の告白OKした時並に後悔してるっすよ」

「冗談でもそういうこと言うなよ、こう見えて傷つくんだぞ」

 

 やや意地悪に言ったつもりだったが、少し踏み込み過ぎたらしい。話を切り替えるように、「で、あたしのこれは何なんすか?」と訊いた。

 

「えーっと、ちょっと待てよ」

 

 先輩は画面上に表示されている淫紋とあたしの肌に浮かんだ淫紋を交互に確認した。この複雑さ、多分、2つか3つは重複してるだろう。

 暫くすると、先輩が顔を上げてあたしに説明してきた。

 先輩が言うには、あたしのこれは3つの淫紋が融合しているらしい。その内容は、

 

 ・痛みと罵倒が快感に変換される。反対に、慰めや愛情は苦痛に感じる。

 ・膣内の場合、直接子宮に注ぎ込まれなければ絶頂できない。

 ・性行為中、100%の確率で排卵する(確率で母乳を生成する)。

 

 といったものだった。どうやら、今のあたしらにとってはハズレを引いてしまったらしい。しかも、結構厄介な部類の淫紋だ。あまりの運の悪さに、あたしらは同時にため息を吐いた。しかも下手したら母乳まで出るなんて。母乳は甘いのだろうか。

 

「なんすかそれ……確実に子作りする気満々って言ってるようなもんじゃないすか」

「いや、子どもに関してはちゃんと責任取るつもりだからいいんだ。問題は」

 

 さらっと流すようにとんでも発言をした先輩は、眉間を指で摘んだ。そういうのって、普通はもっとシリアスな場面で言うものじゃないのか。別に、あたしも先輩となら何人だって産んであげてもいいけど。

 

「痛みと罵倒が快感に変換されるってやつだな。よりによって真逆のタイプだな」

 

 あたしは、顔を向き合ってお互いの表情を確認し合いながら、かつ優しく声をかけて甘えさせて貰いながら、じっくりと愛情を感じながらやるセックスの方が好きだ。先輩の言う通り、今あたしの肌に浮かび上がっている淫紋の効果は、その真逆だ。

 

「なんだかなぁ、ランダムだとは分かっていたけど、こうも運要素が絡むなんて。これじゃあ売れないのも無理ないな。SNSとかでも結構ボロカスに叩いてる奴がいたけど、これは叩かれてもしかたないな」

 

 先輩は苦笑しながら、端末の画面に目を向けた。

 激しかったり、叩かれたりするのは普通に痛いし、顔を見ずにやり合うのは何となく怖くて好きじゃない。そんなあたしの面倒臭い拘りを受け入れつつ、お願いしたやり方でやってくれる先輩には、感謝していると同時に申し訳なさも感じている。先輩だって、あたしの両手を掴みながらバックで思いっきり突いてみたいと思ってくれているだろう。もう許してぇと懇願するあたしを見てみたいだろう。

 

「まあ、なっちまったもんは仕方ないか。今日はこのまま収まるのを待っておくか。確か効果は数時間だから、それまでお前は寝てろ。風呂は明日入ればいいから、な?」

 

 そう言って、先輩はあたしの頭に手を置いて、左右にわしゃわしゃと撫でた。いつもならこの手の大きさと温もりが気持ちよくて、目を細めているだろう。

 

 …………けど、今のあたしはそんな気持ちにはなれなかった。

 

 何故だろう、凄く気持ちが悪い。愛情があって、優しい彼の手の動きが苦痛で仕方ない。頭部に伝わる感覚が、背中に寒気を走らせる。こんなもののどこが気持ちが良いのか、ただ単に不快なだけだ。あたしが求めているのは、こんなんじゃない。イライラが積もっていく。

 

「…………ゆ、夢実?」

 

 気がつくと、あたしは先輩の手を払っていた。撫でてくれている彼の手に、パチンと叩き落としたのだ。

 当然、先輩は唖然としていた。あたしも無意識のうちに取った行動に、自分でも驚いていた。しかし、それと同時に、1種の冷静さが生まれてもいた。

 

「先輩、あたし、今すごく不快っす。先輩があたしに優しくしてくれたせいで、吐き気がしたっす」

 

 自分でも驚くくらいに冷酷な言葉が口から漏れた。吐き気がしたのは本当で、今にも夕食に食べたデリバリーのピザとポテトを吐きそうになっている。

 

「お、おい、まさか淫紋の……」

 

 そう、間違いなく淫紋の効果だろう。普段ならこんな感情が湧くことなんてない。しかし、今のあたしはマゾヒズム的な思考を有していて、先輩にあることを求めている。

 

「先輩、先輩はあたしのこと、好きっすか?」

「いや、それは」

「ハッキリ答えろっす」

「……好きに決まってるだろ」

 

 それはあたしも良く知っている。あたしも先輩のことは大好きだ。だからこそ、先輩にはやって欲しいことがある。

「じゃあ」と言って、払った先輩の手首をぎゅっと掴み、自分の頬に掌を押し付けた。押し付けながら思いっきり引っ張り、彼の体をベッドに引き寄せた。体制を崩した彼の服を空いた手で掴み、自身の目前まで近づけさせた。

 

「夢実?」

 

 困惑する彼の顔を拝みつつ、唇を開いた。

 

「先輩、あたしの頬、思いっきり叩いてください」

「……は?」

「もう一度いいます、あたしの頬、思いっきり、手加減なく叩いてくださいっす。あたしのこと、好きなんすよね? だったら、あたしの願い、聞いてくれますよね?」

 

 無表情で、虐めるように先輩に言い放った。別に意地悪で言っているつもりでも、彼の困った顔を見ようとしているわけでもない。あたしは、本気で先輩に叩いてもらいたいんだ。できれば思いっきり、頬が真っ赤になるくらいに。

 

「おい、おちつけ。お前は今、普通じゃないんだ。そんなことしたら、お前が傷つくだろ」

「人の処女膜破ってる時点であたしは傷物ですよ。だったら、今更傷の一つや二つ、問題ないっすよ。それに、先輩、あたしのこと好きなんでしょ? なら好きな女のお願いくらい、聞いてやってもいいんじゃないすか?」

 

 攻める口調は止まる様子はない。どんどんと追い詰められるような状況に、先輩はより顔を青くしていく。その姿にあたしの背はゾクゾクとしたものが走り、子宮がきゅうっと疼いた。

 この人から殴られたら、あたしはどうなるんだろう。今なら感度は数倍だから、きっと絶頂してしまう。恐怖と未知の快感に心が踊り、膣穴から今にも愛液が溢れてしまいそうになる。

 

「さあ、早く」

 

 早くあたしを殴って、先輩。

 

「さあ!」

 

 あたしは、あなたに虐められたいんです。

 

「早くっ!」

 

 早くあたしを虐めて、犯して、頭の中をぐちゃぐちゃにして。

 

「早くしろっ!」

 

 最後の一押し、その言葉と共に、あたしの視界が急にぶれた。先輩を見つめていたはずなのに、気がつくと宙を舞うかのように世界が流れていた。やがてそれは、ベッドに着地したことで収まった。

 

 同時に、あたしの子宮から渦巻いていたものがどっと溢れ出した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「やってしまった」

 

 夢実の頬を平手打ちした瞬間、俺は胸の内で呟いた。

 手のひらに、彼女の頬の感触が伝わり、それは直ぐにジンジンとした痛みへと変化した。

 腕を振り切った体勢のまま、俺は体を半回転させる彼女をスローモーション映像でも見るかのように眺めていた。

 叩いてから倒れるまでほんの1秒にも満たないので、眺めることしかできない。しかし、その際の綺麗な動きと靡く黒髪は、やけに繊細に細かく網膜に焼き付いた。

 

 夢実がシーツにうつ伏せるように倒れる。俺は姿勢をそのままで彼女を見下ろしていた。気がつけば、息も荒くなっていた。

 俺は、人生で初めて夢実を殴った。しかも(如何なる理由があっても殴ってはいけないが)正当な理由もなく、淫紋に狂わされた彼女の追求から逃げるように、手を上げてしまったのだ。

 

「ゆ、夢実……?」

 

 倒れてから体を小刻みに震わせるだけで何も言わない。俺は手を伸ばし、彼女の腰に触れた。

 

 触れたその瞬間、彼女の体が急に跳ねた。

 

「おぉおお゛おぉ゛おぉぉぉっ!? ♥♥」

 

 次に聞こえたのは、彼女の雄叫びのような絶頂声だった。夢実が絶頂する時のか弱い乙女のような悲鳴ではなく、性に依存した者の末路のような汚い声色の叫びだった。

 既に服を脱がされているせいで、下半身から吹き出るものを止めることは出来ない。彼女の秘裂から、透明な液体が水鉄砲のように噴射し、シーツにシミを作った。

 

 目の前で起きた痴態に、俺は言葉を失った。

 そんな俺を嘲笑うかのように、夢実はゆっくりと首を捻ってこちらに顔を向けた。

 

「せ、先輩……最高っす。先輩のビンタ、気持ちよすぎて、絶頂しちゃいました。へへ、あたし、こんなに痛いビンタをされたの、初めてっす。へ、へへへ……ぁへ♥」

 

 今の彼女の表情を、俺は今まで見たことはない。頬を赤くしながら、こんなにも蕩けた顔をし、瞳に妖艶な煌めきを浮かべている、淫乱な彼女の姿を、俺は初めて見た。

 

 同時に、俺の中に眠っていた物が目覚めた。

 心の中で渦を巻いていたそれは、常に俺の心の裏に潜んでいたものだろうか。多分、彼女を愛でる気持ちとともに生まれたそれを、俺は無視し続けてきた。それが今になって、鎖から解き放たれたかのように内側から溢れてきた。

 

 夢実を、もっと傷つけたい。

 傷つけるとは傷害的なものではなく、叩く、罵倒する、手加減なく突き上げるといったものだ。

 いや、どちらにしろサディズムと変わらないのかもしれない。

 しかし、許してと懇願する彼女を後ろから突き上げる妄想は、俺の脳内であっという間に作られてしまった。

 

 劣情を抱いた瞬間、いつも萎びた状態で役目を待っている肉棒に血液が回り、硬さを増していった。下着を、ズボンを押しのけようとするそれは、股間部に大きなテントを張って自己を主張してきた。

 

「あれぇ、なぁんだ。先輩も興奮してるじゃないですかぁ。あんなにオドオドしてたのに、先輩も実はあたしを虐めたくてしかたなかったんすねぇ」

 

 違うと否定することも出来ず、俺は目の前で身を動かす夢実に見蕩れていた。彼女の動き一つ一つが、俺の性欲を煽ってくる。スマートとはいえ、運動部の時と比べて脂肪がついた肉体。食べればきっと、程よい柔らかさを跳ね返してくれるに違いない。

 

 気がつくと、俺は再び手を上げていた。

 そしてその手を、夢実の尻肉へと思い切り振り下ろした。

 

「んおぉ゛おぉ!? ♥」

 

 バチンという音が響き、夢実の尻肉が波を打った。それと同時に、彼女の喉から汚らしい声が漏れ、またもや秘裂から潮を吹き出した。

 もう一度、今度は反対の手で叩いた。すると、同じように夢実は喘ぎ、潮吹きをした。

 

「おぉ♥せ、先輩っ♥そんなに叩いたら腫れちゃうっすっ、おしり、真っ赤っかになっちゃう♥おぉっ、おほぉっ!? ♥」

 

 俺は両手で、順番に、力強く、何度も平手打ちを浴びせた。叩く度に彼女の肉は揺れ、肌は赤く腫れていき、夢実の表情はより淫猥に歪んでいく。猫は腰を叩くと発情するらしいが、彼女の場合も似たようなものだろう。

 

 バチンっ! べちんっ! 

 

「あ、゛ぅおん゛♥ぉ、おっ、おっ、っおぉっ゛〜♥んひぃぃっ♥」

「このクソ女っ! 何生意気な口聞いてんだっ! 叩かれて喘ぎやがって! お前がそんなクソマゾだったなんて、幻滅、だっ!」

「お、お゛ふぅ〜っ♥」

「学生時代からそうだったなっ! セックスに対して要求が多いんだよ! 何が向き合わなきゃ嫌だだ、このクソアマ!」

「んひぃぃぃんっ♥ごめんなさいぃ♥っあぅっ♥」

 

 罵倒が、次から次へと湧いてくる。こんな言葉、夢実に向かってぶつけたことがない。

 

 肉の叩くいい音色とともに、彼女は何度も絶頂し、潮を吹き出した。こんなにも絶頂しては、下手したら死ぬかもしれない。しかし、そう思いながらも、俺は手を止めることはできなかった。

 徐々に肉棒の熱が増していく。少し力を入れると、尿道につっかえていたものが尿穴へと這い上がっていく感触があった。どうやら喘ぐ彼女に我慢の限界が来たようだ。

 

「あへぇ、あぇぇ♥」

 

 一通り叩き終えた俺は漸く腕を止め、肩で息をしながらへたった。手のひらはジンジンとした痛みに覆われて感触は殆どない。

 そして小ぶりで肌色だった彼女の双臀も、見るも無惨に真っ赤に腫れていた。

 

「夢実、お前、最低だな」

 

 いつもなら大丈夫か、と声をかけているはずなのに、俺は更に彼女を罵倒した。普通なら完全に醒められて、拒絶されているはずだ。

 しかし、夢実は罵倒に臀をぴくりと跳ねさせ、こちらを振り向いた。その表情は、性に溺れた雌のように淫らだった。

 

「(夢実、綺麗だ)ブサイクだな、お前」

 

 実際の声とは逆の言葉を彼女に投げた。ここで褒めてしまえば、彼女の快感は苦痛へと変わってしまうのだ。これは仕方のないことであり、彼女が望んでいることだ。

 

「さ、最高っす……死ぬほど絶頂したっす……♥」

「まだ始まったばかりだろ。おい、勝手にヘタるな」

「はい……んぉ゛♥」

 

 そう言いながら、俺は彼女の黒髪を掴み、乱暴に体を持ち上げた。髪を掴まれる痛みは相当なもので、俺も友達とじゃれあった時に何度かやられている。正直、こんな痛みは不快でしかない。

 

 しかし、夢実は喘いだ。全ての痛みが快感に変わる彼女にとって、この不快な痛みさえ子宮の疼きを満たす快楽でしかない。

 

「ほら、しゃぶれ」

 

 強引に股間部に彼女の顔面を押し付ける。テントを張ったズボンに埋めるように顔を沈ませ、鼻先に無理やり亀頭部分を押し当てた。

 

「んぉッ、おぉぉ……♥(やっば、先輩のちんぽ、ズボン越しなのに臭い♥は、早く食べたい♥先輩の種付けちんぽ、ズボズボしたい♥)」

「早く脱がせろ」

「は、はいぃ……♥」

 

 夢実は両手で俺のズボンを掴み、ゆっくりと下ろしていく。絶頂の連続で力が入らないのだろう。その動きは実にスローだった。しかし髪を引っ張り、毛根部分を痛めつけると一瞬だけ早まる。俺はそれを繰り返しながら、彼女に服を脱がせた。

 

 そして姿を現したのは、いつにも増して硬さを身にまとった自分の肉棒だった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ぇ、これ…………♥」

 

 ぶるんとその身を揺らして姿を現した黒い巨体に、あたしは思わず言葉を失った。

 先輩のおちんちんは、今まで何度もしゃぶってきた。それこそ初夜を迎えた時から、塩辛いチンカスと苦いザーメンの味をこの舌に擦り込ませてきた。

 

 けれど、ここまで大きなチンポは初めてだ。おかしい、先輩のチンポはもう少し小さかった気がするのに。しかも匂いも、いつにも増して酷い。こんなものを加えたら、あたしの脳は細菌に犯されて死んでしまうかもしれない。神経細胞一つ一つが細菌にズッコンバッコンされてしまうかもしれない。

 

「お前のせいだぞ、雌犬」

「はえ、そんなぁ……」

「お前がマゾ野郎になったせいで、俺は変なものに目覚めちまったんだ。そのせいで、埋もれていた分が出てきて、いつも以上に固くなっちまったんだよ」

 

 おら、と、先輩はいきり立つチンポをあたしの顔面に押し付けた。ムワッと蒸れた臭い匂いが鼻穴を覆い、呼吸を乱す。その時の子宮に走る快感に、あたしは「おぉっ……♥」と声を漏らしてしまった。なんてだらしのない雌犬なのだろう。飼い主である彼に対してこんなにも汚い姿を見せるだなんて。

 

「ほら、さっさと咥えろ。歯は立てるなよ。立てたら髪の毛を毟りとるからな」

「ふ、ふぁい…………ぉぇ♥」

 

 先輩に脅されながら、あたしは口を大きく開き、亀先を唇で包んだ。

 包んだ瞬間、我慢汁のくっさい味と臭いが口の中に侵食した。唾液がたっぷりと溢れているおかげで、チンポはスムーズにあたしの喉奥へと入り込んでいった。顎が外れそうな感触と寸前の痛みでさえ、あたしはゾクゾクとした。

 

「ん、ふぐぉっ! ……ぉ、おぇっ゛♥」

 

 そして喉で彼の黒いチンポをキャッチして、あたしは頭を前後に揺らした。半分は自分で、もう半分は彼が髪を掴みながら強引に。

 

 ちゅぶ、ちゅぼっ♡ぢゅぽっ♡ぢゅぷっ♡

 

 先輩のオスチンポが何度もあたしの口から出入りする。後ろに引っ込めれば頬肉をカリで削ぎ落とそうとして、前に進むとそのまま食道まで犯す勢いで滑り込む。

 

 息がしずらい、頭も痛い、喉奥が苦しい。

 けれど、それらは全て快感へと変わる。

 淫紋の効果であたしはすっかりマゾヒストになってしまった。

 マゾヒストがどういうものなのか、具体的に知っているわけじゃない。でも、こんなにも先輩に痛めつけられて喘ぐあたしは、間違いなく狂っている。マゾヒズム的思考が頭をグルグルと掻き乱し、か弱い自分を消していく。

 

 ぢゅぷっ♡ぼちゅっ♡ぢゅるっ♡

 

「ん、んちゅ♥ふ、ふぉっ♥おぅ♥ぢゅるるっ♥んぉ゛、ぉぅふっ♥ふぉ、ぉ♥♥♥」

「う、おい、締め付けが足りないぞ。もっと口まんこ窄めろ」

「んぐっ、ふぁい♥」

 

 先輩は空いている手であたしの顬辺りを叩いた。それほど力は込めていないのに、パチっとしたものが網膜に散った。

 あたしったら、こんなにも先輩に虐められて興奮しているんだ。あんなに愛の言葉をかけてくれている先輩が、淫乱な雌犬になったあたしに興奮して、願う通りに虐めてくれて、臭いチンポでオナホ同然に口まんこを犯してくれている。

 こんなに気持ちのいいものだったら、もっと早くやってもらえれば良かった。

 

 ちゅぶっぢゅぶっ…………ぢゅるるるるぅぅ♡

 

「うぁぁっ……!?」

 

 あたしはチンポの先を咽頭まで滑り込ませ、頬を窄めて一気に吸い上げた。バキュームのように吸い上げるそれは、あたしも初めてやった。

 奥まで突き刺しているので、当然息はできない。

 けれど、その苦しさを、あたしはもっと味わいたかった。

 窒息しかけているのに、それすらもあたしには脳を焼くテイストでしかなかった。

 もしここで歯を立てたら、先輩は怒ってあたしを殴るだろうか。そしたら凄く痛いし、すごく気持ちいいに違いない。

 

 ぢゅる、れろれろっ♡

 

 舌肉を操り、裏筋をずるずると舐めていく。チンカスの臭い味が舌全体に走り、頭の中をおかしくしていく。

 この支配されていく感覚、卑猥な頭と連動するように、淫紋が熱を帯びて光を放っているのが分かる。先輩の読んでいたエロ漫画でもこんな描写があったけど、彼女達もこんな快楽を感じていたのだろうか。

 

「うあぁっ!」

「んぐぉっ!?」

 

 チンポが血液を帯びて膨れた瞬間、先輩はあたしの髪と頭を掴んで、思い切り自分の股間へと押し付けた。そうなると当然、あたしの喉は無理やり拡張されて、亀頭先がより深く差し込まれる。

 

 ────びゅぶぅぅぅぅぅっ♡♡びゅるるるるっ♡♡びゅぐるる〜〜〜っ♡♡

 

 瞬間、オチンポから熱いものが迸った。

 ねっとりとしたそれは、今まで味わってきたものと同じ苦味があった。

 でも、その喉越しはいつも以上に滑らかだった。

 

「ふごぉぉっ!? おぉぉぉっ♥おぅっ!? ふ゛く゛う゛う゛っっ! んんんんぅぅぅうぅぅっ♥♥♥」

 

 破裂しそうな程に脈動を繰り返す先輩のオスチンポからは、絶え間なくザーメンミルクが放たれ続ける。灼熱のような熱さのそれは、容赦なくあたしの食道を焼きながら胃袋へと落ちていき、どんどんと溜まっていく。あたしはその苦しさに、白目を向いて呻くしかなかった。

 

「おぐぉぉっ♥ふぉぉっ♥お゛ぉぉぉっ……!」

 

 今にも泡を吹き出しそうなくらいに苦しい。体が意志とは反対にちんぽから離れようとする。

 けど先輩はそれを許さない。あたしの頭を掴んでグッと股間に押しつける。それも、鼻穴に陰毛を擦り付けて、油臭い匂いで鼻腔を包ませながら。

 

「(やば、いぐっ、くっさ♥けどいく゛っ♥)」

 

 シーツをぎゅっと掴み、あたしは先輩の暴力的なプレイに快感を覚えた。

 ぎゅるっと、瞳を戻して彼を見た。

 先輩は、笑っていた。

 本人は気づいていないだろうけど、その顔は虐められて苦しむあたしを見て恍惚としていた。こんな先輩の表情を見たのは、初めてだ。

 

「んぎゅうぅぅううぅ゛っ♥♥」

 

 世界が弾けた瞬間、膣穴から1番の潮水が吹き出た。

 夢実と呼ばれて愛されていた時と同じくらいの悦びが、感覚的に子宮を突き刺した。

 

 正直、あたしはこの淫紋の効果に感謝している。

 特に2番目の効果、もしこれが『中出しされない限り絶頂不可』なんてものだったら、恐らくあたしは狂って狂って、セックスやチンポと連呼する廃人になっていたかもしれない。それに比べたら、こうして痛みの度に絶頂を幾度も迎えているのはラッキーだ。ああ、どうしよう、考えていたら『中出しされない限り絶頂不可』という効果も試してみたくなった。考えただけで、あたしの子宮は疼いた。

 

「ふご、ふごぉ……♥」

 

 チンポの脈動が落ち着き、硬い体が柔らかくなった。けれど、先輩はなかなか解放してくれない。

 

 かと思ったら、先輩はあたしの髪を持ちあげて、無理やり股間から引き離した。だらんと垂れるチンポは、あたしの唾液でベトベトに濡れていた。

 そして突き放すように、彼は涎を垂らすあたしを投げ捨てるようにベッドに放り出した。力の抜けた体を、軋むベッドが柔らかに受け止めた。

 

「おい、雌犬。なに自分だけ勝手にくたばってるんだ」

「く、くたばってにゃいです……んいぃっ!?」

 

 横向きで倒れるあたしの太腿を、先輩は容赦なく抓った。痛い痛い、痛いのに気持ちいい。

 

 ふと、横目で先輩を見た。彼の萎えるはずのオチンポが黒光りしながら、再び勃起していた。小悪魔βを服用してないはずなのに、まるで媚薬を摂取した獣のように反り立っていた。

 

 まだまだ痛めつけてくれる。そう思うだけで、あたしは蕩け顔を零さずにはいられなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 こんなにも淫乱な彼女を、そして暴力的な自分を、俺は今まで知らなかった。そして自分の肉棒が、こんなにも禍々しいだなんてことも。

 

「ふぐうっ、せ、先輩、もっと痛めつけてくだしゃい♥あうぅ♥んぉッッ゛! ッ……お゛ッ♥」

 

 指先が彼女の太腿を、臀肉を抓り、ぐいっと引っ張りあげる。摘んだ箇所が赤くなり、その度に夢実は快を喘いだ。あんなにも精液を胃袋に流し込み、息ができないほどに肉棒を突っ込んだというのに、彼女の表情には余裕の笑みが浮かんでいた。

 その姿に、俺の加虐心は刺激された。

 なんて生意気な、しかしとことん追い詰めれば、彼女は泣きながら許しを乞うかもしれない。そう思うと、肉棒はあっという間に血が巡って、再び黒い巨根へと姿を変えた。

 

「おい、雌犬。ご主人様の命令だ。ケツをつき出せ」

「は、はい、先ぱ……あうっ♥」

「ご主人様だ」

「は、はい、ご主人様ぁ♥」

 

 夢実は犬のように下半身を振りながら、リンゴのように腫れた尻を俺に向かって突き出した。学生時代よりも肉ついた彼女の臀部は、あの頃よりも触り心地がよく、噛めば柔い噛みごたえを返してくれるかもしれない。

 俺は邪魔な衣服を脱ぎ捨て、彼女と同じく裸になった。全身から興奮の汗が滲み出ていた。

 

「んはぁぁんッ゛♥」

 

 俺は肉棒を尻肉に擦り付けながら、それを叩いた。さっきよりは弱めにしているが、それは甘えではなく、痛みを求めている彼女に苦痛を与えるための加減だ。もっと強く叩いて欲しかったら、もっと媚びろと言っているのだ。

 

「ご、ご主人様ぁ、そんな意地悪しないでくださいっす……ひぅっ♥」

「主人に対して口答えするな」

 

 生意気にも強請る夢実をケツを、パチンと弾いた。

 臀溝で肉棒を扱きながら、俺は彼女に訊いた。

 

「雌犬。お前はどうして欲しい?」

「は、はい……あたしは……ぐふぅ♥」

「もっと頭を下げろ。頭を垂れて、シーツに自分の顔を押し付けながら、犬みたいにケツを触れ」

 

 俺の指示通りに、夢実は顔をベッドに押し付けながら、林檎臀をフリフリと振って雌声で言った。

 

「あ、あたしのおまんこに、ご主人様のおちんちんぶっ刺して欲しいです♥ケツ穴も、おまんこも、全部ご主人様のものです♥どうかこのマゾ犬に、ご主人様のおちんぽとザーメンをお恵みくださいっ♥」

 

 耳に心地の良い声が聞こえてきた。服従した証である雌犬の宣言に、俺の加虐心は最骨頂に達した。こんなにも忠実な夢実には、ご褒美を上げてもいいと思った。

 俺は肉棒を彼女の臀の溝にあてがい、狙いを定めた。

 

「じゃあ、望み通りにしてやる……なっ!」

 

 そして目標の穴に、亀頭先を深く突き刺した。

 加減なく、突き破る勢いで。

 

「んぎいぃぃぃぃッ!?!? ♥お、おひりぃぃぃぃ♥」

 

 無許可で皺を寄せて閉じるケツ穴にぶち込んだ。

 

 あまりの締めつけに俺は唸り声を上げ、夢実は痛みに叫び声を出した。なんせ、汚いものを捻り出すケツ穴に、逆に逸物をぶち込まれてしまったのだ。最悪縫わないといけないのだから、それは叫びたくなるだろう。

 

「や、やけりゅうぅぅぅ! アナルがばるぅぅ♥」

 

 泣きながら逃げようとする夢実。そんな雌犬を逃しまいと、俺は彼女の両手首を掴み、思い切り背中を仰け反らせ、更に奥深くへ、直腸より奥へ肉棒を突き刺した。

 

 ぶちゅんっ♡

 

「んほぉお゛おぉ!? ッお、ッッ゛♥おぉぉ♥」

「うあ、お前、ケツ穴締めすぎだろ」

「そ、そんなば、はえ、使ったこと、にゃいからぁ♥」

 

 ぶちゅっ♡

 

「んほぉぉぉぉっ♥」

 

 泣き叫ぶ彼女を無視するように、俺は無慈悲に腰を振っていく。いつも夢実にしてやっているやつよりも激しく、手加減のない腰振りは、彼女の腰を容赦なく砕く。

 

 どちゅっ♡♡ぶちゅっ♡♡ぶちゅっ♡♡

 

「や、んお゛っ、おっ゛ぉ゛、おぉ♥♥おがぁっ♥!? あへぇ、い、いだいぃぃっ! いだいのにぎもぢぃぃっ♥♥」

 

 剛直な肉棒は、俺の腰使いと同じく、容赦なく彼女の腸内を突き進んだ。ケツ穴はまんこと違って、筒の狭さが半端ない。特に直腸の奥底の壁は肉壺の襞のように伸縮を繰り返していて、本来なら受け入れないはずの肉棒をぎちっと咥えこんでいる。それが余計に彼女に苦痛を与えるとも知らずに。

 

「う、ケツ穴やべぇ。お前、ずっとこんな穴隠してたのか」

「ひゃ、ひゃいっ♥痛いのが嫌で隠してたっす♥本当はバイブで拡張したいって思って……おぼっ♥」

「言い訳はいい! 隠してた分まできっちりケツ穴締めろよ! あと敬語!」

「ひゃ、ひゃうぅ♥」

 

 血管を浮き上がらせた肉棒が、彼女のケツ穴から出入りする。肉まんことは違った、ペニスと粘液が擦れ合う音は、人によってはグロテスクに聞こえるかもしれない。だが、この雌犬と俺にとっては主従関係を象徴するためのエロティックな音色だ。

 

「お、おひり、やけりゅ♥やけちゃうッ♥もうアナル戻んないよぉ♥」

 

 飛んだ戯言を吐き始めた。元々お前の穴は俺に犯され、虐められる為にあるのだ。アナルが戻らなかったぐらいで、何を言うんだ。

 夢実を虐める今の自分の人格は、心の内でも彼女に罵声を浴びせていた。

 

 ぶちゅっ! ぶちゅ! どちゅっ! ぶちゅっ! 

 

 痛いと言っておきながら、夢実の肛門はぎゅっと俺の竿を咥えている。それこそ腰を引いたら、離すまいと穴が盛り上がるくらいに。

 

「おお♥♥おっ、お゛〜っ♥んほぉ゛ぉ〜♥おぉ♥ぉ゛っ……おおっ、ッお゛おっ♥あ゛ぁ♥あ゛っ♥」

 

 夢実の声は本当に汚い。いつも姫声を上げているが、あれは俺を騙すための仮初の叫びで、これが本来の夢実の喘ぎ声なのだろう。

 

「んぎいぃぃぃぃっ♥♥!?」

 

 そう思った瞬間、俺の彼女への加虐心は高潮した。手を離し、彼女が前に倒れる瞬間、俺は肩より先に伸びた髪を掴み、宙ぶらりんの状態にさせた。今の夢実は、自分の膝と引っ張られる髪の毛で己を支えているのだ。

 

「や゛やめて゛っ♥いぐ♥いぎじぬっ♥ゆるひてぇ♥」

 

 あまりの痛みに、夢実は会館に喘ぎながらも涙を溢れさせる。舌をだらしなく垂らし、ヨダレをベッドへと染み込ませるその様は、無様の他ない。

 

 ぶちゅ、ぶちゅっどちゅっどちゅどちゅっ♡♡

 

「う、ほら、もうすぐ出るぞ! アナルに腸内射精(なかだし)するぞっ! ありがたく受け取れ!」

「い、ムリムリ゛っ、お腹、ぐちゃぐちゃになりゅ♥うんこだせなくなっちゃうぅ♥」

 

 彼女の悲鳴を無視して、俺は腰振りを早めた。ケツ穴は最早ゆるゆるのケツマンコへと変貌し、俺の肉棒から放たれるものを今か今かと待っている。

 

 どちゅどちゅどちゅどちゅどちゅどちゅ────どちゅんっ! 

 

 ブビュルルルルルッ♡♡びゅびゅうぅぅぅぅ〜♡♡

 

「んほぉぉぉぉぉっ♥出てりゅっ♥アナルにオチンポミルク注がれてりゅうぅぅっ♥アナルマンコで赤ちゃん孕みながらいくぅぅぅぅぅッッッ♥♥♥」

 

 最早何語なのかすら分からない。

 腸内越しにポルチオを突かれた夢実は、狂喜と化した脳内に従うままに喘いだ。もう何度目になるか分からない潮を吹き、アナルを締めつけ、腸を蠕動させてペニスを扱く。快感の嵐は俺にも襲いかかり、目の前を白く染めようとした。

 

 ────ぬぷんっ♡

 

「おぅふっ……♥」

 

 脈動が終わったところで、俺は肉棒をケツ穴から引き抜いた。開いたアナルから、濁った白色のザーメンが粘液と混合して漏れだした。ごぼっ、という汚い音を上げる度に、ダマになったザーメンがシーツに垂れ落ちた。

 

 幸いなのか不幸なのか、竿には汚いものは付着していない。それでも恐らく、目に見えない汚いものは着いているだろう。いくらこれでは、まんこにぶっ刺すのを躊躇してしまう。

 

「おい、雌犬」

 

 放心状態の夢実の体を掴み、再び彼女の顔を股間に押し付けた。

 

「これ、舐めて掃除しろ……て言ったらどうする?」

 

 俺の言葉に、彼女は目を見開いた。

 これを? 今アナルに入れたものを? どうやって? 

 如何にもそう訴えている。そして、俺の返答を心待ちにしている。どんなやり方で掃除させてくれるのだろうか。口マンコで扱いて臭いのを味わえ? それとも手で拭って味わえ? どちらにしろ、今の彼女にとってそれら全てはご褒美だ。

 

「ふぎゅぅ♥」

 

 だから、俺は敢えてそれら全てを却下した。そのつもりで、俺は夢実の頬を平手打ちし、横に倒した。

 このあとは、彼女のヴァギナに突き刺すつもりだ。だからこそ、アナルで汚れた肉棒を綺麗しないといけない。だが、それは自分でやるつもりだ。こいつには一切やらせない。

 当然だが、夢実は倒れながら表情を青く染めた。青ざめながらも、俺の意図を読んだのか、目は笑っていた。

 

 その後、俺は風呂場で陰部を洗った。仕切りを開けて、犬のようにお座りの姿勢で待つ夢実に見えるように、敢えて目の前で洗ってやった。

 その時の彼女は、ご褒美を取られた犬のように絶望した顔を浮かべていた。本当だったらあたしが綺麗にするはずだったのに、と、声に出したい気分だったろう。

 しかしそれは許さない。もし叫べば、今日のプレイは中止、お前を一日中愛でると脅した。

 彼女にとって、愛でることは吐き気を催す。苦痛が快感な彼女にとって、愛でられることで発生する嫌悪感はまたそれとは違う。そのことは淫紋を浮かべた彼女が1番理解しているはずだ。

 

 残すはあと1つ。メインディッシュは残しておくものだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 苦痛には、種類がある。

 今のあたしの場合、愛でられること、優しい声掛けをされることがそれに当たる。その代わり、暴力を受けたり、罵倒をされたり、格下の扱いをされると体が悦びで舞い上がる。そして、普通なら不快に思うことをさせられるのも、また快感を覚えてしまうだろう。

 

 なら、今目の前で起きていることは、あたしにとっては苦痛に入るのだろう。折角、ご主人様があたしのアナルをズボズボのゆるゆるに犯してくれて、その上オチンポがくっさい粘液を身にまとっているというのに、ご主人様はその掃除を許してくれなかった。それどころか、こうして眼前で、ボディソープを使って綺麗にしている。こんなにも勿体ないことはない、あたしの口端から垂れる涎は虚しく床に滴り落ちた。

 

 そして、ご主人様は意地悪だ。

 この光景を、こうして目の前で、お座りをさせながら見せているのだ。なんて意地悪で、あたしの被虐心を燻るのだろう。

 その燻った心は、いつの間にか別のものとなって股下で疼いた。

 

「あの、ご主人様……おトイレに」

 

 そう言った瞬間、ご主人様はあたしを睨んだ。じっと睨みつけて、やがて微笑み、あたしの股下の床を指さした。

 ああ、なんて人。あたしにそんな辱めを受けさせるつもりなのだろうか。でも、あたしは雌犬だから、ご主人様の命令には従わないといけない。

 

「んぁ…………はぁ、あぁぁ」

 

 じょろろろろろ…………♡

 

 ほんの少しだけ、腹部に力を入れた。すると尿穴から、潮水とは違う、黄色い聖水がチョロチョロと漏れだした。

 お漏らしだなんて、小学生の時、しかもご主人様の家に泊まった時以来だ。いい大人に、しかも普通に働く女になって、こうしてトイレでもない手洗い場の床に排尿するだなんて。あたしは、トイレすらまともに覚えられない駄犬なのだ。こんなんだから、飼い犬の証である首輪すら貰えない。

 そして、このあと待ち受けるものに、これまた心を躍らせている。

 

「おい、なに床に放尿してるんだ」

「は、はい、もうしわけごじゃ……あぁ♥」

 

 案の定、風呂場から上がったご主人様があたしを睨みつけ、無造作に髪の毛を掴んだ。

 

「おい、飲め。汚したのはお前だ。少しは綺麗にしろ」

「え、お、おしっこを……?」

 

 口答えをしたあたしにお仕置をするように、ご主人様は手に力を込めて、あたしの顔をおしっこで濡れた床に押し付けた。

 べちゃっとした音とともに、唇の隙間から尿が入り込み、口の中を塩辛い味で包んでいく。自分の排尿だなんて、ご主人様のザーメンの方がまだ美味しいのに。

 

 ゴンッ! 

 

「んぶっ♥」

「おら、早くしろ」

 

 ご主人様は急かすようにあたしの頭を床にぶつけた。

 まともにおトイレすらできないあたしをこんなにも虐めてくれるだなんて、ご主人様はなんて酷いお方なのだろう。そして自分の垂れ流した尿に顔を沈めるあたしは、なんて悪い子なのだろう。

 

「んぢゅ、ぢゅるるるぅ♥」

 

 あたしは彼の命令通りに、漏らした自分の排尿を啜り飲んだ。こんな姿、同僚の天音ちゃんに見られたら、なんて言われるだろう。冷めた目でキモイと罵られるだろうか。そうなったら、あたしは全身に彼女の言葉を受け止めながらおまんこを濡らしてしまうだろう。

 

「んぁ♥」

 

 一通り啜り終えると、ご主人様はあたしの髪を掴んだまま、寝室へと引きずるように運んでいく。

 犬どころか物のような扱い、快を得てしまったあたしは、愛液を垂れ流し、床に軌跡を描きながら引きずられた。

 

「んぎゃっ、ひゃん♥」

 

 あたしはベッドの上に雑に放り投げられた。目の前は全てが蕩けていて、桃色に染まっている。

 

「おいおい、お前、瞳にハートマークなんて浮かべて、生意気だな」

「はぇ?」

 

 ハートマーク、そんな事有り得るのか? いや、自分でも分かる。臍下の複雑で芸術的なピンクの淫紋は光を帯びている、だから、その効果であたしの瞳に、ハートマークが浮かび上がっているのも間違いないだろう。

 

「さて、なんて言うんだ?」

 

 ご主人様が、綺麗になったオスチンポをあたしに向ける。もう2回も出しているのに、その硬さは衰える様子を見せない。彼は、昔から夜には強い方だったけど、どうやらあたしという雌犬を飼ったことで目覚めてしまったようだ。

 

 なんて言うのかなんて、分かりきっている。お口も、おまんこも、全部をサディスティックモードなご主人様に捧げた。なら、残るはここだけ。愛ばかりを流し込まれたここだけだ。

 

「……あ、あたしの……あたしのメスマンコに、ご主人様の極太チンポをください。あたしの体を沢山痛めつけて、ありったけの痛みを味あわせて、濃厚ザーメン、マゾ犬なあたしの子宮の中にびゅるびゅる注いでくださいっ! ♥」

 

 あたしはベッドの端に上半身を寝かせ、子鹿のような足取りで床に立ちながら、愛の蜜がたっぷりと溢れた陰部を彼に差し出した。

 

「ふんっ!」

 

 ぱちぃぃんっ! 

 

「んはぁぁぁっ♥」

 

 ご主人様の両手が激しくあたしの臀を叩き挟む。

 

「おぉぉおぉおっッッ♥」

 

 そして次の瞬間、膣穴から膣内にかけて、灼熱を帯びたチンポがねじ込まれた。そこには優しさの欠片もない、ただ性欲を発散するためにオナホを用いるように、ズブリと挿入されたのだ。

 その瞬間、性感帯を突き上げた刺激は、膣穴を中心に背中の神経を駆け巡り、性欲に塗れたあたしの脳に激しい稲妻になって迸った。

 

「おほ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ゛♥」

 

 脳が真っ白になる、視界すらも白くなって、快感だけがあたしを包んでくれる。喉が破裂してしまうような喘ぎ声が腹の底から吐き出される。

 

 どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡どちゅっ♡♡

 

 彼は慰めの声をかけることなく、あたしのおまんこを容赦なく猛撃した。何度も射精したオチンポはその硬さと禍々しさを最骨頂にまで高め、カリ裏で削ぎ落とすように肉襞を擦り取ろうとしてくる。

 

「おほ゛っ、おぉっ♥んおぉぉ♥お〜、おほぉっ! あ、あ゛ぁあ! お゛〜っ♥あぁぁ♥あ゛う゛う゛っ♥」

 

 体もそうならば、あたしの膣内も最早感度数倍、繰り出される無慈悲な突き上げが、快感へと変換される。

 

「おら、おら、もっと鳴けっ! 犬みたいにワンワン鳴けっ! じゃないと優しくやっちまうぞ!」

「っ!? 、わ、ワン、きゃん♥きゃうぅんっ♥」

 

 ご主人様の命令に従い、あたしはオナホのように体を揺らしながら、本物の犬の鳴き真似をした。

 こんな状態で優しくされたら、あたしの子宮は欲求不満と嫌悪感で破裂してしまう。そんなのは、絶対に嫌だ。

 

「きゃんっ♥く、くうぅんっ♥あん、あ゛♥ぉぉん゛♥(あ、やべ、いぐっ♥いぐっ♥オスチンポ、きもぢよすぎ♥肉襞削れる♥オスチンポでおまんこ壊れる♥)」

 

 チンポが激しく膣穴を出入りする中、あたしは灘らかでないに等しい胸部をふるふると揺らしている。不思議と、何だかムズムズとした感触が乳全体に広がっている。何かがあたしの胸部で作られているかのような、むず痒い感覚だった。

 

 ぷしゅっ、ぷしゅっ、ぷしゅっ! 

 

「お前、さっきはよくも『早くしろ』だなんて生意気な口を聞いたな! え? 生意気言った奴がこのザマか!?」

「はえ、きゅうんっ♥きゃんんっ♥(ご、ごめんなさい♥生意気でごめんなさい♥許してくださいぃ♥)」

 

 胸の内で頭を下げながら、あたしはご主人様からの暴力的なビンタを浴びた。尻肉どころか、背中や太もも、全ての箇所に痺れる痛みが走る。

 

 膣肉がチンポに擦られ、愛液が漏れだし、飛沫になって宙を舞う。そのリズムに合わせて、あたしは鳴き声を上げながら、連続で絶頂した。

 

 もう、普通の体には戻れないかもしれない。愛のあるセックスなんかじゃあたしは満たされないかもしれない。でも、それでいいと思う。あたしは、ご主人様にこうして虐められることで性が満たされる。彼になら、一生オナホ扱いでも構わない。縄で縛って浣腸して、見るも無惨な姿にされてもいい。

 

「おら、よっ!」

「お゛゛お゛おお゛ぉぉ゛ぉ!? ♥♥♥」

 

 突然あたしの体は持ち上げられ、深い場所を亀頭先が突き上げた。背面駅弁というやつだろう。

 太ももを限界まで持ち上げたことで、腹部が圧迫され、付け根あたりの骨も軋み、非常に苦しい体勢で、彼はチンポの猛攻を維持したまま犯し続ける。ぐちゅぐちゅという音がより明快に響き、あたしに彫られた淫紋が露わになる。

 

 じゅぷっ♡♡ずんっ♡♡ぶちゅんっ♡♡ぶちゅっ♡♡

 

「おっ、わ、おぉんっ♥お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ♥きゃおぉぉぉ♥」

 

 雌犬の声しかあげられない、言葉を忘れたかのような声しか出ない。目が白目を向きかけていて、頭が弾け飛びそうになる。

 小ぶりな乳房に走っていた疼きがより酷くなる。それは乳腺に燻っていて、軈て乳頭に全てが集まっていく。

 

「(あ、でりゅ、でりゅ、なにかでりゅうぅぅぅ♥でちゃうぅぅぅぅ♥)」

 

 ぷしゅうぅぅぅっ♡

 

 そして破裂するかのように、あたしの勃起した乳首から白い液体が溢れた。確か、ご主人様が調べた時に、100%で排卵する淫紋には、確率で母乳を吹き出すようになると言っていた。どうやら、あたしはその確率に当たったらしい。今日は尽く運が強いようだ、

 

 ぷしゅうぅぅぅっ♡ぷしゅっ♡ぷしゅっ♡♡

 

「(と、とまんない♥母乳とまんない、赤ちゃんミルクびゅ〜びゅ〜でちゃうっ♥おぉ♥やっべ♥)」

「この雌犬、だらしないまんこ晒してる上に母乳まで吹き出してるのか、どこまで行っても駄犬だな! お前は! なんなら、このままベランダに出るか!?」

「きゃ、きゃうううんっ♥あうぅぅっ♥」

 

 母乳を撒き散らしながら、あたしは悲鳴をあげた。

 

 そんなことしたら、あたしは社会的に終わってしまう。仕事先でもベランダで痴態を晒した淫乱女として白い目で見られてしまうし、嬲られるあたしの姿を通りかかる人達は写真を撮って、一部は自分のちんぽをシコシコするおかずに使うに違いない。それを脅しに使って、あたしを肉便器として使う輩も現れるかもしれない。三つ穴使ってザーメンタンクにするかもしれない。

 

 もしそうなったら……そう考えるだけで、あたしの心はウズウズと疼き回った。疼いて疼いて、気がつくと、目下に見える淫紋がピンク色に輝いていた。あたしのマゾヒズム的思考に反応して輝いているのか、旗また淫紋の影響であたしがマゾヒスティックになっているのか、この際どちらでもいい。

 今のあたしはご主人様のマゾ犬。

 母乳を吹き散らして、股を晒して、舌を出してアヘ顔を浮かべる淫らなペットでしかない。

 

「うぉ、でる、このぉ!」

「んぎぃぃ♥ち、乳首取れちゃうっ♥ちくびちぎれちゃうぅっ♥」

 

 脚を抱えているご主人様は、指先であたしの乳頭を引っ張るように摘み潰した。撒き散らしていた母乳が、さらに勢いをつけて部屋中に飛び散り、2人で購入した家具やベッド、床にまで付着した。今までの思い出が、赤ちゃんミルクによって汚されていく。

 

 ぶちゅっ♡ぶちゅっ♡ぶちゅっ♡

 ぷしゅうっ♡ぷしゅうっ♡ぷしゅうっ♡

 

「あえ、へあ、……ッあ、ッはえぇ、……お゛ぉぉん゛♥」

 

 下からも上からも、あたしの体液が溢れ出ていく。ご主人様の与えてくれる痛みが、あたしの全身を悦びで満たしてくれているのだ。

 

「うお……出る……おらっ! 膣内射精(なかだし)するぞ!」

「ひゃ、ひゃい。ひゃううん♥」

 

 腰振りが速さを増し、あたしの体を激しく揺さぶる。脳がぐわんぐわんと揺れ動き、思わず吐き気が込み上げてくる。けれど、それ以上に涙が溢れ、笑顔が溢れ、嬌声が溢れる。玩具のように弄ばれる快感に、身体中の毛穴一つ一つが開いた。

 

 ぶちゅ、どちゅっ♡♡どちゅっ♡♡どちゅっ♡♡どちゅ

 

「うぉぉぉ…………」

 

 ──────ぶちゅんっ♡♡♡

 

 ぶびゅるるるる〜〜♡♡♡ビュルルルルルルッっ♡♡♡

 

「あぁぁ゛ぁあぁぁあ〜〜〜っっ♥♥♥♥(お腹がぁぁ♥焼けりゅぅ〜♥)」

 

 ポルチオを突き上げ、子宮口が押しつぶされ、数ミリの穴を掻き分けるように尖端が入り込み、濃厚なザーメンミルクが子宮へと注がれる。びゅるびゅると射精音を鳴らしながら、あたしの膣まんこに圧迫されながら、何度も何度も脈を打って、粘着液状の赤ちゃんザーメンを子宮へとたっぷりと流し込んだ。

 

 同時に、ちょうどタプタプとタンクのように溜まる子宮に重なるように彫られた淫紋が光った。

 

「おほぉぉぉ゛゛!!?? ♥オオ゛オォォォォ゛♥」

 

 刹那、あたしの全身に電撃が迸り、子宮を中心に手足の先、そして頭頂目掛けて鋭いものが穿いた。映像が真っ白に焼ききれ、バチバチと火花を散らす。噴射した母乳が、視界も世界も白く染めていく。

 

 これが、膣内射精(なかだし)されたことによる絶頂、それも今までの中で1番の、絶頂。

 

 こんなもの、普通の人間なら死んでしまう。

 

 いや、もう何度絶頂したのだろうか。

 

 それすらもあやふやになる。

 

 …………ぽこんッ♡

 

 そして、また淫紋が光った途端、あたしは自分の卵巣から卵子が排卵されたのを感じた。しかも1つだけじゃない。2つ同時に、左右からゆったりと漂っていく。

 多分、間違いなく、あたしの卵子はご主人様の精子を受け止める。あたしは、ご主人様の子どもを孕むんだ。

 

「お、お、お…………あへぇ♥」

「うあ……」

 

 疲れたご主人様が、あたしに覆い被さる形でベッドに倒れた。彼の体重が全身にのしかかり、潰れたような声が出る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 

 息を切らしながら、あたしは朧気な意識の中、自分という存在を確かめた。

 

「おい」

 

 けど、ご主人様はそれすら許さない。彼は挿入したままぐるりとあたしの体を回転させた。オチンポがまんこの中でぐるんと回り、擦り上げた。

 

「はむっ」

「あぅ♥」

 

 ご主人様はあたしの微かに膨らむ乳房に顔を押し付け、乳輪を歯で噛みつき、千切る勢いで吸い始めた。母乳が彼の口の中で吹き出し、それを彼は喉を鳴らしながら飲み込む。このまま乳首を噛みちぎって、咀嚼して、あたしの肉体を食べてしまうのたまろうか。けど、そこまでいくとただのカニバリズムだし、あたしも快感は感じない。このギリギリの、するようで寸前で止める恐怖が、今のあたしは好きなのだ。

 

 ちゅぽんっと乳頭を離し、ご主人様はあたしを侮蔑する目で見下ろしながら、

 

「まだまだ終わらせないぞ、覚悟しろ」

 

 と、口端をつりあげた。

 あたしは首肯する代わりに、恍惚とした表情を浮かべた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 次の日、目が覚めた俺を襲ったのは、全身に走る筋肉と骨の悲鳴だった。

 ベッドの上で仰向けになって寝ている俺は、寝ているというよりは倒れていると言った方が正しいかもしれない。こんなにも全身が疲れ切るまで夢実とセックスをしたのは初めてだった。

 初めてだからこそ、体の自由が効かないくらいに悲鳴を上げている。なんか、同じことを繰り返して言っているような。

 

「…………なあ、夢実……」

 

 俺は隣で、俺の腕を枕にしながら同じ天井を眺める夢実に話しかけた。表情は見えないが、間違いなく眉間に皺を寄せている。

 

「なんすか、サディスト先輩」

「俺たち、やったんだよな」

「ええ、やりましたね。あたしが小悪魔βの影響でマゾっ子になって、先輩がなんも飲んでないのにサディスティックになってあたしを虐めつくしましたね」

「痛いか?」

「痛いどころじゃないっすよ。色んな穴がぽっかり気味っす。マジでどうしてくれるんすか」

「ごめん、マジでごめん」

「ごめんで済むなら警察はいらないっす。アブノーマル主義者」

 

 なにか言い返したかったが、昨夜の俺は間違いなく自分の意思で彼女をいたぶった。言い返す権利はない。

 

「なあ、覚えてるか?」

「忘れる方が無理っすね。いじめっ子な先輩もそうっすけど、あんなあたしは、あたしじゃないっす。ええ、マゾってなんすか」

 

 皮膚を伝って夢実の熱が上がったのが分かる。どうやら昨夜のことを思い出して、恥ずかしさで顔を赤らめているようだ。

 

「淫紋は? 消えたか?」

「ええ、もうないっす。気づいた時には綺麗さっぱり、まるで何もなかったかのように」

「……とんだ、ジョーク品だったな」

「そうっすね……これ、セックスレス解消とかそれ以前の問題っすね。多分、あたしら以外にも同じような目に会った人、すげーいるっすね」

「……俺、飲むのが凄い怖くなってきた」

「おい、逃げんなっす。あたしを散々雌犬呼ばわりしたんだから、今度は先輩が飲むっす」

「嫌でございます」

「このぉ」

 

 怒った夢実は、体を起こして俺をポカポカと殴る。

 黒髪も全身も、セックスによって艶々と輝いていて、いつも以上に厭らしく、大人びて見えた。

 臍下はすべすべとした肌のみで、淫紋の跡は一切残っていない。

 

「まあ、あれだな。この薬、多分販売中止になるな」

「当たり前っすよ。こんなもん、契約書とか書く以前の問題っす。中止中止」

 

 体に乗っかるふくれっ面の夢実を見る。重なる視線を同時に横に向かせ、遠くに置いたテーブルに置かれた小瓶に移した。

 

『即席淫紋・小悪魔β』。

 

 EDに悩む男性、冷えきった夫婦・カップルのセックスレス解消を目的としてたこれ。うん、やっぱり、これを買うよりは、媚薬と大人の玩具を駆使した方が絶対に良いと思う。

 

「ホント、とんだインチキ商品買っちゃいましたね」

「ああ、けど、まあ、楽しかったは楽しかったな」

「……そうっすね」

 

 夢実は否定することなく、恥ずかしそうに頬を赤くしながら頷いた。

 

 昨夜の俺たちは、確かに普段と違った体験をした。暴力的で、普通のセックスとはかなりかけ離れたプレイをいくつも実行し、危うく病院送りにもなりかけた。

 けれど、それと同時に謎の清々しさもあった。

 

「多分、もうあたし、正常位以外でもいけるっす。バックで両手掴んで、ズボズボとか、持ち上げて、駅弁とか……しても大丈夫……っす」

「プレイのバリエーションが増えたってことか。うん、良かったな」

「はい……でも、アナルはダメっすよ?」

 

 夢実は胸板に顔を埋めながら、瞳だけを俺に向けた。裸同士の時、夢実はこうして俺の上にのっかり、こうするのが好きらしい。

 

「でも、先輩がお風呂でおちんちんを洗ったのは意外っす。てっきり舐めとれとか、そう言ってくるかと思いました」

「ああ、あれな。俺自身も、どっかでやばいってブレーキかけてたのかもなぁ。流石にケツ穴挿したやつでやれないだろ。感染症とか怖いし」

「それと、先輩ったら、虐める割には、首絞めとか縄縛りとか、そういうことしなかったっすね」

「あー、その手があったか。今度やってみるか?」

「冗談じゃないっすよ。二度とマゾになんかなるものかっす」

 

 夢実はぶすっとしながら、ほんの少し笑った。

 

「……さて」

 

 朝の軽い会話を済ませ、俺たちは今一度室内を見渡した。

 夢実の絶頂で何度も放出された聖水によって汚れた床、俺が排尿させたことでシミができたカーペット。ところどころに転々と残る愛液。机や家具に降り注いだ濃厚な母乳の白濁跡…………見るも無惨とは、こういう状況を言うのだろう。

 

「派手に汚しちゃいましたね……」

「……1日、かかるよなぁ。どうすっかなぁ」

「……はぁ、ま、とりあえず、朝飯食べて考えればいいっすよ」

 

 そう言うと、夢実は重い体を上げて、ふらつきながら床に立った。

 

「どこ行くんだよ」

「トイレっすよ」

「じゃあ、ついでにあれ(小悪魔β)も捨ててくれ。もう使わないだろ?」

「……ういっす」

 

 枕に頭を任せながら、この後のことを考えた。しかしその暇もなく、すぐさま夢実が戻り、ベッドに這い上がってきた。

 

「お、なんだ早いな」

 

 そう言おうとして、口を止めた。

 戻ってきた夢実の手には、小瓶が握られていた。ラベルに書かれているのは『即席淫紋・小悪魔β』、夢実は瓶の蓋を開けると、2錠、口の中に放り込んだ。

 

「おい、何やってんだよゆめむぅぅっ……」

 

 黙らせるように、夢実は俺の唇に自分の唇を押し付けた。舌先を潜り込ませ、俺の舌と絡め、そして喉奥へと何かを流し込んだ。間違いなく小悪魔βだ。突然のキスに放心した俺は、思わずそれを飲んでしまった。

 

「……ぷはぁ」

「お、お前……」

「……へへ、こうなったら無くなるまでやるっすよ。せっかく買ったんだから、先輩も一緒に性に溺れろっす。そんであたしと同じもん引き当ててください。たっぷり虐めてあげますから」

 

 妖艶な笑みを浮かべながら、夢実は俺を見下ろした。

 

 

 その後、俺と夢実は、小悪魔βが切れるその時まで、四六時中交わり続けた。裸のまま食事をしたり、風呂に入ったままおっぱじめたり、口移しで色々したりと、プレイのバリエーションをどんどん増やしていったのだった。アナルセックスもやらせてくれた。

 

 ちなみに本社には一応楽しんだ礼も含めて、星4の評価を送っておいた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 クリスマスの夜の都会は人が多い。

 それこそカップルなんていうベタなものから、家族、友達、仕事仲間などなど、ここ数年で多種多様な人が聖夜を満喫するようになった。SNSなんて、毎年この日になるとクリスマス関係の投稿で埋め尽くされているもんだから、去年のあたしは彼らを恨めしく思いながら、会社に残って残業をしていた。

 

 けど、今年は違う。

 

「先輩、クリスマスツリーっすよ!」

「お、結構デカイな」

 

 ダウンジャケットを着込み、イヤーマフで耳元を隠して防寒対策を整えたあたしは今、先輩の腕を組みながら、都心部に飾られた大きなクリスマスツリーの前に立っていた。あたしらよりも数倍も背が高いツリーは、この時期になるとこの場所に飾られている。今年は白を基調とした装飾とライトを取り付けられていて、まるで雪に包まれているかのようだ。

 

 周りにはあたしら以外にもカップルが沢山いる。子ども連れの夫婦も結構いるし、友達同士と思われる人もチラホラといる。

 

「いやー、今年のクリスマスは休みが取れて良かったっす。去年なんかあたしだけ会社に残って、他のみんなは各々クリスマスパーティーを楽しんでやがりましたから」

「根に持つな、お前。まあ、俺も去年は体調不良で休んだ同僚の分の仕事を片付けるのに必死だったし、クリスマスどころじゃなかったっけな」

 

 ツリーを見上げるニット帽姿の先輩は、疲れながらも嬉しそうだった。その微笑みに、数ヶ月前に見たサディスティックな先輩の面影は全くない。

 

「ん? どうした?」

「いや、なんだか数ヶ月前なのに、ずっと昔のように感じちゃって……小悪魔β」

「……ああ、あれなぁ」

 

 即席淫紋・小悪魔β。

 一部のエロバカな研究者たちがガチで造ったあれは、結局売上を伸ばすことができず、さらには多数寄せられたクレームによって、発売して1ヶ月も経たないうちに販売が中止、生産もストップし、無惨にも廃番の仲間入りを果たしてしまった。彼らの血と涙と汗の結晶は、意図も簡単に壊されてしまったのだ。

 そのことを先輩と一緒に聞いた時は、「だろうな」とお互い苦笑した。

 

「けど、あの企業って、また新しいグッズを開発してるらしいぞ」

「今度は役に立つものを造って欲しいっすねぇ。もうあんなの作らないようにして欲しいっす」

 

 ブツブツと文句を吐いているが、実を言うと、あの薬の効果は結構楽しんでいたし、あたしにとっては苦くて、甘い良い思い出になった。あんなプレイ、普段の自分たちなら絶対にできないし、二度としないかもしれない。だから、あたしはあの薬を使って四六時中、先輩と生気を奪い合った気持ちの良い日を忘れないし、この先も、その事をネタに先輩を弄るだろう。

 

「そういえば、これは噂なんだけどな」

 

 先輩はツリーを見上げ、白い息を吐いた。

 

「このクリスマスツリーで告白とかすると、絶対に成功するらしいんだ」

「なんすかそれ、先輩、ロマンチストっすね」

 

 ちょっと意地悪に返してみた。けど、先輩は何も返さない。それどころかあたしの方を見て、何故か真剣な眼差しを向けている。

 

 うん、分かってる。あたしも、先輩に話したいこと、あるから。

 

 クリスマスのBGMと、建物の灯りや飾りのライトによって空気と景色が彩られるなか、あたしらは向き合い、お互いの瞳を見合う。こんなにも力強い視線を向けてくる先輩は、告白されて以来だ。

 

「……夢実」

「……はい」

 

 答えると、先輩は呼吸を一つ二つとして、あたしに向かって言葉を綴った。

 

「結婚するか?」

「……なんで疑問形なんすか。普通は言い切って下さいよ。かっこ悪い」

「いや、最近だと、結婚しない選択とかっていうのがあるだろ? だから、お前の了承も確認したかったんだ」

「雰囲気、台無しっす」

 

 ほんと、この人は。告白となるといつもこうだ。どうしてドラマみたいなやり方が出来ないんだ。

 こんなダサい人、あたし以外の誰が相手をできるというんだ。

 

「……いいっすよ。結婚しましょ。あたしの苗字、先輩と一緒にしてください。だから、これからも末永くお願いしますっす」

 

 そう答えると、先輩は嬉しそうに微笑んだ。多分、昔ならガッツポーズをして喜んでいただろう。

 

 次は、あたしの番。

 

「それで先輩……あたしも、ご報告がありまして」

「? なんだ?」

「ちょっと、手、貸してくれますか?」

 

 先輩は訝しそうにしながら、両手を前に出した。あたしは彼の手をきゅっと握り、ダウンジャケットの上から、自分のお腹に触れさせた。先輩の男らしい手のひらの熱が、服越しに伝わってきた。

 

「どうっすか? 何か感じますか?」

 

 あたしの問に、先輩は無言のままお腹を見つめる。あたしの言いたいことは察しているけど、言うのを待っているという感じだ。

 雪が降りそうなくらいに寒い空の下で、冷たい空気を吸い込んだ。

 

「先輩、クリスマスって、奇跡が沢山起こるらしいっすよ」

「そうだな、奇跡、起こってるんだな」

「そうっすよ。先輩があたしに告白して、あたしがOKしたんす。そして…………」

 

 先輩は顔を上げた。

 

「…………2人か?」

「はいっす。あの厭らしい淫紋のおかげで、2つとも見事に命中したっす。サンタさんからのクリスマスプレゼントっすかね」

「案外、気づかないもんだな」

「あたしも検査するまで気づかなかったっす。でも、これからっすよ。2人も入ってるんだから、あたしのお腹、パンパンに膨れるっす」

「じゃあ、色々と気をつけないとな。あと、育休とか産休とか、うちの会社がどうしてるか、そういうのもきちんと調べておかないとな」

「その前に結婚指輪が欲しいっす。同僚に自慢したいんで」

「悪い、まだ買えてないんだ。まさかこうなるなんて思わなくてな」

「普通、こういうのは揃えてから告白するもんすよ。まあ、あたしもこうなったし、順番なんて最初から破綻してますけどね」

 

 またお互いに顔を合わせて、先輩とあたしは笑い合う。

 

「先輩、寒いんで、抱きしめて欲しいっす」

 

 あたしがそう言うと、先輩は「仕方ないな」と言いながら、あたしらの体を優しく抱きしめてくれた。あたしはその熱を感じながら、すぐ傍で雪のように白く光るクリスマスツリーを横目で見た。あたしが先輩と出会った時から今に至るまでの思い出が、白光の中に浮かんでいる。まるで、結ばれたあたしらを祝福しているようだ。

 

 

 

 即席淫紋・小悪魔β。興味本位で購入したあれをきっかけに、あたしらの思い出の1ページは、想像していたものとは違うものになってしまった。

 

 けれど、あたしはこの日の、この瞬間を、ずっと忘れない。

 

 だって、こんなにも素敵な一時は、二度とないのだから。

 

 

 

 

 

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