男1:女2の3Pものです。
素人なので、結構ガバガバな部分が多いです。
後半、グロ描写があります。苦手な人はご注意ください。
また、このお話はフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係がありません。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「それじゃあ、彼君の誕生日を祝って……かんぱーい!」
その日、彼が住む1Kのマンションの洋室に女性の高い声が響いた。腰に手を当てながら発した声は、世の男性なら振り向くのは間違いないほどに明るく快活であった。
彼女の声に続くように、彼も「かんぱーい」と声をあげた。辺りには豆乳の匂いがほんのりと、暖かな部屋の隅から隅まで、家具なども全て包み込むかのように漂っていた。
「かっ……かっ…………」
少し遅れてから、喉がつっかえるような音が鳴る。それは音ではなく、弱々しくグラスを握った女性の口から発している声だった。
「大丈夫、落ちついたらできるから」
「う、うん……か、かんぱーい」
遅れてもう1人の女性の声が響く。声質からも分かる通りに弱々しい彼女の乾杯は、グツグツと沸騰する鍋の音に掻き消された。
「ほら、
「うう、ごめん……あ、
「こんなことで緊張してたら、来年もまた同じことになるよ。彼君、困っちゃうよ?」
「うう、ごめんね」
申し訳なさそうにするキョウカに、彼は微笑みながら手を振った。そんなに気にすることないよ、むしろこうして祝ってくれるだけでも有難いよ、と返した。
彼君は優しいなぁとアヤカは微笑みながら、キョウカに瑠璃色の瞳の横目を向けた。
「でもね彼君。この子、彼君のためにって、家で乾杯の練習とか沢山してたんだよ。誕生日の祝い方なんて誰かのブログまで参考にしちゃってさ。一途だよねー」
「あ、アヤカ……そ、そういうのは教えちゃダメだよ。は、恥ずかしいよ……」
「いいじゃん。あなたが頑張ってるって教えてるんだから、ねぇ? 知っても恥ずかしいことじゃないよね?」
悪戯にアヤカは微笑む。彼女の意地悪にキョウカは頬を膨らませながら、恥ずかしさのあまり紅色の瞳をうるうるとさせて俯いた。
流石にやりすぎたかな、とアヤカは呟き、「ごめんごめん、意地悪しすぎたね」とキョウカの背中を撫でながら謝った。
「ほら、具がクタクタにならないうちに食べよ? 折角のお鍋なんだから」
キョウカは洟を啜り、目元を指先で擦りながら頷く。アヤカは「はい、じゃああらためて」と言って、麦茶の入ったコップを持ち上げた。彼とキョウカも同じように持ち上げると、3人は声を合わせて「乾杯!」と声を上げた。各々トーンは違うが、今度こそ言葉はきちんと重なっていた。
葱、白菜、エノキタケ、人参、もやし、大根、豚肉、鶏肉、しらたきなどなど、鍋の具材としては定番とされる沢山の具材が、煮えたぎり泡を吹く乳白色の汁の中で踊っている。アヤカはお玉と取り箸で3人分のお椀に均等に分け、斜め切りになった葱を箸先でつまみ上げて彼に見せた。
「見て見て。このネギ、キョウカが切ったんだよ。この子、滅多に料理なんてしないのに、彼君が誕生日だからって、一生懸命頑張ったんだ、ね?」
「ね、ネギしか切ってないよ……ほ、ほとんど、アヤカがやったし」
アヤカが褒めるも、キョウカは性格故に自信なさげに俯く。そんな空気を破るように、彼は汁の染みたネギを口の中に運ぶ。じわっと染み出た出汁を舌で感じながら美味しいと微笑んだ。
「ほんと? か、噛みにくくない? 食べれる?」
彼は頷いた。キョウカは「よかったぁ」と声を漏らし、アヤカもやったじゃんと彼女の腕を小突いた。基本的に自信がマイナスに振り切っているキョウカにとっては、たとえ少しの成功でも大きな喜びになるのだ。
彼は葱の次に鶏肉を頬張った。綺麗に肉の繊維が切断された断面は、器用なアヤカが切ったとひと目で分かる。彼女は料理が得意で、施設にいた頃に職員から教えてもらい、みるみるうちに腕を上げていったという。彼も初めてアヤカが一から作った手料理を食べさせてもらったときは、その他とは比べものにならない味に思わず美味いと声をあげてしまうほどだった。
「美味しい?」
アヤカの言葉に彼は頷いた。ありがと、と陽気に返しながら、アヤカも箸で持ち上げた鶏肉を口の中へ運んで咀嚼した。
……1時間後。
3人はオカワリ、〆のうどんと食していき、具を全て食べ終え、鍋の中をすっからかんにさせた。
彼は座椅子に腰を任せながら、腹に溜まる満腹感に苦しさと満足感の余韻に浸っていた。実家を離れて幾数年、誰かと外食をすることはよくあったが、こうして自分の住まいに招いて、しかもご馳走してもらったのは初めてだった。
「それじゃあ、ケーキでも食べましょうか?」
アヤカは膨らみを持った胸を揺らしながら立ち上がる。あんなに食べたというのに、部屋着代わりに持参した白いTシャツの裾から覗く腹部は、変わらず綺麗な凹みを保ったままだった。
「彼君、もう持ってきていい?」
彼はうんと頷いた。満腹とはいえ、男な彼にとってもスイーツは別腹だった。しかも、2人がこの日のために選んでくれたもので、彼もまだ見せてもらってはいなかったので、楽しみは倍だった。
「キョウカ。手伝って」
「うーん……もう少ししてからがいいなぁ……お腹いっぱいで、ちょっと苦しい」
「あらそう? じゃあキョウカだけケーキは無しねー」
「そ、そんなぁ、酷いよぉ」
「冗談、冗談だって。もう、直ぐに信じちゃうんだから」
立ち上がったキョウカを連れて、アヤカは鍋と皿を抱えて玄関口と部屋の途中にあるキッチンへ向かった。「彼君はあっち向いててね」とアヤカのウィンクを貰った彼は、はいはいと答えてベランダ側に顔を向けた。
視線を向けた先で、部屋の明かりを外に漏れ出すのを遮るように締め切られた、黒生地に紫の花模様が刺繍された厚いカーテンが目に入った。先月、アヤカとキョウカと彼の3人でカーテンを買いに出かけた際に、アヤカが選んでくれたものだ。なぜこれにしたのかと訊くと、
「私、花のこととか全然知らないけど、この花は好きなんだ。花言葉がとても素敵だから。まあ、ネットで調べたから、ホントかどうか分かんないけど」
と、美人な顔を明るくさせて答えていた。花言葉なんてものは殆ど知らない彼は、花にはそういう意味もあるんだなと感心した。
ちなみに、厚いカーテンに隠れた白いレースカーテンには猫の顔が刺繍されている。これは同じ日にキョウカが選んでくれたもので、動物が好きな彼女らしい選択だと思った。
「もういいよ〜」
暫くして、背後からアヤカの声が聞こえた。
隠れんぼのときのような伸びた声に、彼がゆっくりと振り返ると、アヤカとキョウカがホールケーキを支えながら部屋に入って来た。全体を真っ白なクリームで塗装した、真っ赤な苺数個と濃い茶色のチョコプレートを乗せた、オーソドックスなホールケーキだった。ご丁寧に、数字の形をした蝋燭が2本刺されており、プレートには『HAPPY BIRTHDAY』と白チョコペンで書かれていた。
「じゃーん、どうかな? 美味しそう?」
訊ねるアヤカに、彼はとてもと答えた。テーブルに置いただけでも、ケーキの甘い匂いは漂ってくる。豆乳の香りに包まれていた彼らの鼻腔は、一瞬でスイーツに埋め尽くされた。
「こ、これ……あ、アヤカと2人で選んだんだ。彼君、ケーキとかどんなのが好きなんだろうって……最初はチョコにしよっかなーって、思ったけど…………ち、チョコのホールは流石にくどいかなって…………も、モンブランとか、フルーツケーキもあったけど……それも、なんか違うなって思って…………それで、シンプルなショートケーキにしよって、ことに、なったんだ……しょ、ショートケーキも種類があって、店員さんが、い、一番美味しいって教えてくれたものを選んだんだ」
長い説明を、キョウカは顔を赤くし、言葉を噛みながら1人で伝えた。出会ったばかりの頃の彼女は、はいといいえの言葉すら交わすのが一苦労だった。
それが今や、彼に向かって自分で語ってくれている。モジモジとしながらだが、必死に自分の口から彼に話している。これだけでも彼にとっては十分嬉しかった。
「このケーキはね」
アヤカが赤い着火ライターで蝋燭の先端に火をつけながら言った。
「キョウカが一から十まで、自分で店員さんに聞きながら選んでくれたんだよ。もう思わず抱きしめたくなるくらい感激しちゃった」
「そ、そんな……お、大袈裟だよ」
「大袈裟じゃないよ」
着火ライターを置き、アヤカは両手でキョウカの手を握りながら、優しい微笑みを浮かべた。
「キョウカ、最近、外にも積極的に出るようになったし、オシャレとか、そういうのも気にするようになったんだもん。前のキョウカなら、他人と1から話すだなんて絶対できなかったよ」
アヤカの声は、まるで子どもを褒める母親のように暖かで、周りの空気をふわりと包み込んでしまうかのようだった。
「私ね、あなたがこんなに前向きになってくれて、凄く嬉しい。だからね、もっと自分に自信もっていいよ。私、どんなキョウカでも受け入れるから」
「アヤカ…………」
真っ直ぐと見つめるアヤカの瞳をじっと見つめながら、キョウカは握ってくる彼女の手を両手で握り返した。「ありがとう……頑張る」と泣きそうになりながら答えるキョウカに、アヤカは「でも無理はダメだよ」と返して、彼女のボサボサとした黒髪を丁寧に撫でた。気持ち良さそうに、キョウカはえへへと口許を緩めた。
そんな2人の仲睦まじい姿を、彼はケーキの上で揺蕩う蝋燭の炎を挟みながら温かな目で見守った。
まるで本当の姉妹のように、本物の家族のように仲の良い親友同士な2人。しかしそれは2人の過去が関係しており、その全てをあの日、彼女達の口から聞かせてくれたことを、彼はずっと覚えていた。
いや、忘れるはずがなかった。
そして彼は2人の過去を受け止め、そして彼女達に認めて貰えた。だからこそ、今こうして3人で共に過ごし、誕生日を祝ってもらえているのだ。
「……て、置いてけぼりにしちゃったね」
「あ、ごめん……」
2人が苦笑しながら彼を見た。彼は手を振っていいよいいよと答えた。
「主役を置いてけぼりにしちゃぁダメだよねー」
アヤカはカラカラと笑いながら立ち上がり、スイッチを押して部屋の明かりを消した。かんっと軽い音と共に洋室が暗闇に包まれる。その中で 、炎がぼんやりと揺れながら彼らを照らし、3人の瞳に反射した。
「か、彼君」
キョウカが緊張した面持ちで声をかけた。目はブレブレで、しかし必死に彼に視線を合わせようとしていた。
「た、誕生日、おめでとう……そ、それから……私と…………付き合ってくれて、ありがとう」
こちらこそ、と彼は返す。むしろ、自分のことを『彼氏』と認めてくれたことに彼女達に感謝したい気持ちだった。
「キョウカー、彼君は私の『彼氏』でもあるんだから。そこんとこ、忘れないでよー」
アヤカがジト目で言うと、キョウカは「う、うん、分かってるよ」と答えた。
「それじゃあ」
アヤカが手を合わせると、遅れてキョウカも手を合わせた。パンパンと一定のリズムで拍手を始めると、2人で合わせて『HAPPY BIRTHDAY』の唄を歌い始めた。
明るく透き通るような声と、湿ったような控えめな声が混ざりあい、部屋の中で反響し、彼の耳に届いた。
歌が終わるタイミングで、彼が蝋燭に息を吹きかける。一瞬ふわっと揺れたのち、燃えていた炎はぼっと音を鳴らして消え去り、部屋を暗闇に包む。暗闇の中で、パチパチパチという拍手が響いた。
◇◇◇
彼らが出会うきっかけになったのは今から1年前、彼が喫茶店『
彼は仕事上、外でパソコンと睨み合うことが多々あり、その日も仕事ができる場所を求めて辺りを散策し、ランチのついでにと、外看板を見て直感でハレルヤに来店した。店内は明るめな暖色の光で包まれており、壁紙からテーブル、ソファ、スピーカーから流れる店内曲に至るまで、店長の拘りに彩られていた。日当り良好で、窓からは外の様子も伺えた。
「いらっしゃいませー!」
そして、その際に彼を接客してくれたのがアヤカだった。
後頭部に束ねた流れるようなダークブラウンのポニーテールを揺らし、一目で見ても分かる端麗な体を、白い長袖ブラウスと膝丈以上ある茶色の店員用エプロンが包み込む。その姿で、彼女は明るく濁りのない声で席まで案内し、注文を受け、品物を運び、会計で釣り銭を渡した。
そして気がついたときには、彼は彼女の虜になっていた。目が離せず、惚けた顔をしていたのを、全てが終わったあとに自覚した。所謂、一目惚れというやつである。
以来、彼はハレルヤに通うようになった。仕事をするついでに、メニュー表に記載されている店長自慢のコーヒーや、ハレルヤオリジナルの特製スパゲティ、ちょっとした小腹におすすめなハムサンドなどを注文して、運んでくる彼女と他愛もない会話を交わした。
お冷とおしぼりを運び、注文を聞いて厨房へ戻る彼女の姿を、彼は瞬きも忘れて目で追い、彼女の口から発せられる声に耳を癒された。
その甲斐もあって、彼は店の常連として彼女に顔を覚えてもらい、世間話をする間柄になった。
そしてある日、勇気を出して食事に誘ったことをキッカケに、ただの客から異性の友人に関係を発展させた。といっても、カラオケやゲームセンターに遊びに行くといったことはなく、仕事後に夕食に誘ったり、有名店の噂のメニューを食べに行ったりと、その程度の付き合いである。しかし彼にとってはそれだけでも十分で、食事中は、料理の味の感想と仕事の話で盛り上がっていた。
交流をする中で、彼はアヤカのことを知っていった。
彼女は元々遠方にある町の出身者で、地元の高校を卒業後は上京して就職、いくつか職を転々としたのち、ハレルヤに巡り会ったとのことだった。今は友人とここから少し離れたアパートで同居しており、社会人生活は大変だが、なんのかんの楽しく暮らしているという。
また、アヤカは同居している友人についても時々話していた。
あの子は昔からの親友で、今はイラスト関係の仕事をしている、仕事の都合で家に引きこもることが多くて、滅多に外には出ない、そもそも本人が外に出たがらないから、私が一緒じゃないと買い物にも行けないんだ、料理もいつも私が作ってるんだよ。と、アヤカは愚痴をこぼすように、しかしどこか嬉しそうな表情で、有名スイーツ店のパンケーキを頬張りながら話していた。
そのときの彼女の姿は、店員として接している時よりも、2人で世間話をしている時よりも朗らかで、窓から差し込む光も相まって、より美しかったと彼は語った。
少しずつ深めていく彼女と距離。当然ながら、ハレルヤのマスターには彼の気持ちはバレバレで、「今まで何人も振られて来たから、ダメでも落ち込まないようにね」と言葉を送られた。どうやら彼女を狙っているのは彼以外にもいたようで、尽く撃墜されたようだ。しかし、ここまで親しくなったのは彼が初めてらしく、もしかしたら行けるかもよ、と、日焼けした黒い顔をくしゃっとさせた怪しげなスマイルで背中を押した。
そしてある日、夕食の場で彼はアヤカに秘めた想いを告白した。異性としての恋愛関係、つまり恋人になって欲しいと素直に告げたのだ。
彼女からの返事は、『少し考える時間が欲しい。また今度連絡する』だった。
数日後、彼女からの連絡を受けた彼は、待ち合わせ場所の路地裏の隠れたカフェに出向いた。ハレルヤとはまた違った独特の雰囲気、暗い暖色に包まれる店内に流れる70年代の洋楽は、音楽の知識が皆無な彼でも聴いたことがある有名曲であった。
彼が店内を見渡していると、奥のソファ席に座っていた女性が手を挙げて振った。アヤカであった。彼女の服装は遠くから見ても分かるくらいに明るく、アングラな店内では違和感を覚えるほどに輝いて見えた。それは彼が近づけば近づくほど明確になり、全てが黒い中で、一点だけ塗られた純白と云った印象を受けた。明色のイヤリングと、目の前に置いた白いミルクレープと真っ白なアイスミルクも相まって、より眩しく見える。
「ごめんねー、ここ分かりづらかったでしょ。迷った?」
いや、すぐに見つかったよと返事をし、彼は彼女の隣の席を一瞥しながら、対面する形で腰を下ろした。普通なら、ここで彼女と2人きりであのときの返事を聞くものだろうと彼は考えていた。
しかし今、彼女の隣にはもう1人、見知らぬ人物が座っている。
その人物は、明るい服装と容姿なアヤカとは正反対で、黒色系の暗い衣服を身にまとい、跳ね気味な長い黒髪を束ねることなく腰まで伸ばしている。黒いキャップ帽を目深く被り、彼からは鼻から下しか見えない。口元はキュッと結ばれ、目の前に置かれている黒に近いチョコレートケーキとアイスココアに視線を固定している。如何にも緊張しているのが見て取れた。
むしろこのカフェでは、光のようなアヤカの存在こそがイレギュラーで、彼女の隣に座る闇を連想させる人物の暗い雰囲気こそが、この場にはマッチしていた。
「紹介するね」と言われ、彼は視線をアヤカに戻した。
「この子はキョウカ。同居中の親友だよ。ほら、たまにこの子のこと、話してるでしょ?」
その暗い女性こそが、アヤカが話題にあげていたキョウカであった。イラスト関係の仕事をしている、引きこもり気味な女性。彼女が話していたイメージ通り、キョウカという女はそれを体現していた。それもあって、彼はそれほど驚かなかった。
「…………」
「ほら、キョウカ。この人が友達の彼君だよ」
「…………ど、どうも………………」
こもり気味な声で、キョウカは視線を上げて挨拶をした。
全てが引っ込むような、内側に収縮してしまうような雰囲気。
悪い言い方をすれば、他者をイライラさせるような、罵倒を浴びせられても仕方ないと云った空気を纏っている。
だが、不思議と彼は不快には思わず、むしろ守護欲が刺激されたような気がした。アヤカもまた、そんなキョウカの暗さなど知らんぷりするかのように会話を続けた。
「とりあえず何か注文する? ここ、スイーツだけじゃなくてコーヒーも美味しいんだ」
彼女に勧められて、彼はコーヒーを注文した。その間に、アヤカはフォークでミルクレープの断層を切断し、刃先に乗せた層を口の中へ運んで口許を綻ばせた。
一方のキョウカは、たまにチラリと彼を一瞥するだけで、手元を膝の上に載せたまま、身動きひとつ取らなかった。
軈てコーヒーが運ばれ、彼は1口飲んだ。舌の上で絶妙な苦味が転がり、喉仏を動かして飲み込んだ。ハレルヤのマスターとはまた違ったこだわりを持っているコーヒーだ。
飲み込んだのを待っていたかのように、アヤカはさて、と声を漏らした。
「いきなり連れてきてごめんね。驚いたでしょ?」
少し、と彼は答えた。
「この子も行きたくないって直前で駄々を捏ねて大変だったよ。でも、どうしても大事なことだからって、来てもらったんだ」
なぜ彼女がキョウカを連れてきたのかは分からない。しかし、自分の告白のせいで迷惑をかけたような気がして、彼はもにょっとした罪悪感を覚えた。
「それで」と、アヤカはテーブルに肘を乗せ、両手を組み、手の甲に顎を載せた。
「この前の返事なんだけど……実は、1つ条件があるんだ」
条件? とこれは首を傾げた。
「私と付き合うなら、この子とも一緒に付き合って欲しい。もちろん、恋人としてね……まあ、分かりやすく言うと、私達を彼女にしてってこと」
どう? と、ニコっと笑顔を浮かべながら話すアヤカに、彼はほぉ、と腑抜けた声を漏らした。突然のことに腑抜けてしまうのも無理はなかった。予想していたのか、アヤカも「まあ、当然の反応か」と言った。
彼はコーヒーをもう1口飲む。
苦味で口内を潤し、もともと自分がここに来た理由を思い出しながら、彼女にそれはどういうことか、と訊いた。
「うーん、まあ、なんていうのかな。こういうこと言ったら変に思われるかもしれないけど、あなたは私のことが好きになってくれたってことでしょ。それで、私もあなたからの告白はとっても嬉しかった。このままお付き合いもしていいかなって思ったんだよ。でも、そうなると同居とか、そういうことになる可能性もあるでしょ? けど、私としては、キョウカと離れるつもりは全くない。私とキョウカは昔からずっと一緒だったから、この子と離れて暮らすとか、想像できないんだ。でも、あなたのことは異性として好きになりたいし。それでね」
アヤカは彼を見つめた。その目は今までの彼女とは思えないほどに据わっていた。
「どうせなら、キョウカとも恋人になってくれればいいなって思ったんだ。そしたら、この子も一緒にいられるし、置いてけぼりにはしないでしょ」
彼女の言葉を第三者が聞いたら、どういう反応を示すだろうか。
意味が分からない、自分勝手、自意識過剰、ちょっと気持ち悪い、他にも様々な言葉が投げかけられるかもしれない。
彼自身も、複数の女性と関係を持つという概念がなかったため、たじろぎそうになった。
「もしキョウカと付き合えないなら、この話はなし。悪いけど、あなたとはそういう関係にはなれない」
しかし、彼女の目と口は真剣なものだった。まるで尋問をする刑事のように、彼からの答えを待っている。
答え方を間違えてはいけない。そう感じさせるような、明るい雰囲気からは想像できない重い空気が彼女から発せられていた。
からんと、溶けた氷が音を鳴らした。
「…………なーんてね、冗談冗談」
暫しの沈黙の後、緊張する彼を解すように、アヤカは先程とは打って変わっていつものスマイルを浮かべた。彼は自然と胸を撫で下ろして、ソファに腰を任せた。漂っていた重い空気が辺りに散らばり、肩が幾分か軽くなった。
「いきなり付き合えなんて我儘だよね。ていうか、意味わからないよね。告白したのに、いきなり他の子とも付き合えなんて、普通ならドン引きするし、私もどうせダメだろうって思ってたから、他の人からの告白は避けてたんだ」
アヤカはアイスミルクをストローで啜る。キョウカはようやく手を動かしたかと思えば、鍔を上げてチラリとアヤカを見つめた。アヤカはチラッとキョウカと視線を合わせると、大丈夫と視線で言葉を送った。
「今すぐ付き合え、とは言わないよ。この子のこと、何も知らないんだから無理だよね。だから、まずは友達として、この子と付き合って欲しい。それであなたとキョウカがお互いにOKだったら、私とのお付き合いも成立。どっちかがダメなら、そこまで。そのまま友達止まり。友達としてもやっていける気がするけど、どうかな?」
一方的な要求。しかし彼女に譲る気配は無い。明るいながらも、彼女の言葉は刃物のような鋭さを持っていた。
「…………」
ふと、彼はキョウカに目をやった。
彼女は手をつけていなかったアイスココアのグラスを持ち上げ、ストローを咥えて吸っていた。チューっと小さく音を立てながら少女のように吸い上げ、ぷふっと小さく息を吐いた。そして彼の視線に気が付き、一瞬だけ紅い目を合わせ、すぐに視線を外した。
この人は、言い方が悪いが暗い。しかし、不快感が全くない。そして、今の仕草一つ一つを見て、彼は癒されている自分に気がついた。
「どうかな?」
再度訊ねたアヤカに、彼は視線を合わせながら、お願いしますと返事をした。
その日から、彼とキョウカは友人としての付き合いを始めた。といっても、彼女の隣にはいつもアヤカがおり、どちらかといえばアヤカがキョウカを連れ出しているという印象が強かった。悪く言えば、キョウカは彼とアヤカの恋愛に関するアレコレに巻き込まれたように見えた。
実際、キョウカは彼と話そうとはしなかった。何か食べたい? これがいい? という質問でさえ、はいかいいえを籠もりながら答える始末だった。
また、キョウカは常にアヤカが楽しそうにお喋りをする横で、黙々と軽食やスイーツを頬張るだけ、彼とは全く視線を合わせようとしなかった。初めて3人で寄ったカラオケやゲームセンターでさえ、キョウカはただ隣で歌う彼とアヤカを、コーラを飲みながら見ているだけだった。
なんだか、とんでもないことに彼女を巻き込んでしまったような罪悪感が彼の中に渦巻いた。このまま一緒にいるのはキョウカが辛いのではないか。このことをアヤカに伝えるべきではないか。いっその事、断ってしまった方がお互いのためではないかと彼は考えるようになった。
関係を持ってから暫く経ったある日、3人はとある駅から徒歩数分の場所にあるカフェに出かけた。ただのカフェではなく、もふもふからショートヘアまで、サビからミケまで、数多の猫が客人を自由奔放な姿で持て成し、客人は猫のいる空間にお邪魔せていただき、癒しを分け与えてもらう、そんなコンセプトのカフェだった。
注文したメニューを食べ終えたあと、3人は猫達がいるスペースへと移動し、自由気ままに動き回る彼らを眺めた。そうしていたら、自然と向こうからもやってくる。しかし不思議なことに、アヤカの周りには猫は群がらなかった。
「あー、私って昔から動物に嫌われてるんだよね。鳥とか犬とかも、みんな私のことを避けていくんだ」
自虐気味にアヤカは笑い、足元近くにいた茶トラに手を伸ばした。そしてシャーと吠えられて呆気なく振られ、しょんぼりとした。人とのコミュニケーションに長けている彼女だが、対動物となると違うらしい。何か寄せ付けない獣臭さでも出しているのだろうか。
不意に、彼の足元に1匹のサビ猫が頭突きをしてきた。彼が頭を撫でると、サビ猫はゴロゴロと喉を鳴らしながらぐでーっと腹を見せてながら横臥した。若々しく伸びた綺麗な背中の曲線に、彼は思わず破顔しながら撫でる。血の通った体毛が温かかった。
「…………ね、猫…………好き……なんですか?」
ふと、彼の隣からボソボソした声が聞こえてきた。
いつの間にか、キョウカは猫に囲まれていた。足先から膝の上まで、数匹の猫が彼女の周りを占領し、甘えた顔で彼女を見つめていたのだ。アヤカとは正反対で、彼女は動物を寄せ付けるフェロモンを放っているようだった。
彼は頷き、実家で柴犬とサビ猫を飼っていたことを話す。既に寿命を迎えてこの世を去ったが、2匹とも、彼にとってはかけがえのない家族だったと、彼らが生きていた時のことを思い出しながら語った。好き故に自覚無くウザ絡みをする柴犬と、たまにキレて猫パンチを浴びせるサビ猫。子犬子猫の時から一緒だった2匹は、片方の寿命を迎えるその時までお互いの傍に立っていた。語っていくうちに、彼らとの生活を鮮明に思い出し、彼は涙がちょちょ切れそうになった。
「……わ、私も……猫とか……動物、好きなんです……い、イラストとか……動物をモチーフにしたものが、多いんです…………ひ、人と違って、イジメたりしてきませんから…………」
言葉をつっかえさせながら、キョウカは口許を動かした。
「……彼さん……や、優しいですね……あ、あなたみたいな飼い主に出会えて……その子たちも、幸せだったと思います…………」
そう言うと、彼女は初めて彼に向かって微笑んだ。
満面とまではいかないが、少しだけ心を開いたような表情だった。
これが、2人の初めての、ちゃんと形を持った会話。
このとき、彼の中に何かが生まれた。
それは、アヤカを一目見た時と似たような感覚であり、彼女を、キョウカという女性を守護したいという気持ちに似ていた。
1匹の猫が彼の膝の上に乗る。彼は猫を撫でながら、キョウカに向かって笑みを返した。アヤカが暇そうに猫を眺める横で、彼女は顔を逸らして猫を撫でた。その間も、時々彼のことを紅色の瞳でチラチラと見ていた。
その日以来、キョウカは彼と話すようになった。
アヤカのようにハキハキとした喋り方はできないものの、会ったばかりの頃とは打って変わって、顔を上げながら、自分から彼に話しかけていた。彼女の話題は仕事に関係することから動物のことまで、アヤカとはまた違ったものであった。
「凄いよ彼君、私、キョウカがあんなに他の人と話してるの、初めて見た」
勤務中のアヤカは彼にコーヒーをご馳走したついでに嬉しそうに話していた。
いつの間にか、キョウカの彼に対する呼び方も変わっていた。前まで『彼さん』と他人行儀だったのだが、親しくなってからは『彼君』と、アヤカと同じ呼び方になっていた。
また、アヤカ曰く、前まで控え気味だった外出にも積極的に行くようになり、今度いつ出かけるのか、彼君の好きなものは何かと、自分から訊くようになったという。
関係を続けていくうちに、次第に彼の中にはアヤカとキョウカ、両方への好意が芽生えていた。アヤカが言っていた通り、彼はキョウカに対しても恋心を持ち始めていたのだ。
アヤカとは正反対の内気な性格、控えめな仕草、暗い雰囲気。しかしその全てが、また違った魅力として彼の目には映っていた。
今なら、自分は2人に告白できる。
しかし、当のキョウカはどうなのだろうか。彼女自身は自分のことを認めてくれるのだろうか。1度浮かんだ疑問は消えることはなく、それが枷になって、彼は2人に想いを伝えずじまいになってしまった。
そうして言いたいことも言えず、しどろもどろとしていたとき、彼は2人の方からお出かけに誘われた。どこに行くのか訊ねると、アヤカは「それは行ってからのお楽しみ」と電話越しに言った。ただ遠出をするから、交通費は用意して欲しいと言われた。
そして当日、待ち合わせ場所の駅前のオブジェで、彼は一足先に待っていた彼女達と合流した。
アヤカは相変わらず明るい色の服装で、キョウカは暗い色の服装を身にまとっていた。アヤカはサラサラな長髪を、キョウカは癖毛気味な長髪を下ろしている。雰囲気は違うが、本物の姉妹のように見えた。
数回かけて電車を乗り継ぎ、ビルの群れから畑、と思えばまたビルの並び、と思った次の瞬間には田舎町と、ころころと変わる風景を、3人は黙ったまま観ていた。
時々彼が2人を見ると、アヤカは無感情な表情で、キョウカは緊張した面持ちで車窓から流れる景色に目を向けていた。内心は読み取れないが、何かを考え込んでいるのは確かだった。
ようやく目的の駅に辿り着いてから、3人は目的地付近が終点のバスに乗り込んだ。電車よりも揺れが激しい車内に体を揺らされ、終点に到着したあとは、そこからまた歩き始めた。
河川敷に挟まれた川、それに沿って立ち並ぶ集合住宅、堤防と堤防を繋ぐ幾本の橋、如何にも何かあった場所を取り壊して建てられたような一軒家の群れ、住宅と住宅の間に建てられた個人飲食店、遠くに見えるスーパーの看板、学校の校舎とグラウンド。現在住んでいる場所とはまた違った町景色を見ながら、アヤカは口を開いた。
「ここさ、私達の故郷なんだ。施設に行く前に住んでた場所」
施設、という単語に彼は彼女に聞き返した。彼女達の過去とか、そういった話は今までされたことがなかった。「あ、そっか。言ってなかったね」とアヤカは珍しく苦笑する。
「私達、元々はこの町に住んでたんだよ。私は両親と、キョウカはお母さんと。お互い、名前も顔も知らないで暮らしてた。それが、まあ色々あって施設に入ったんだ」
懐かしく、しかしどこか淡々とアヤカは語っていく。気のせいか、キョウカが身を縮こませているように思えた。
彼は色々とは何があったのか訊こうとした。しかし、それは聞いてもいいことなのか、迷って口を閉じた。そして再び開こうとした時、アヤカの方から口を開いた。
「殺されたんだよ、私達の親」
彼女の言葉を聞いた瞬間、彼は全身を引き締めた。殺しというワードが、彼の全身から熱を奪っていく。
「偶然同じ日にね。キョウカの方は、お母さんと当時付き合ってたおじさんが殺られたんだ。2人とも、お酒を飲んでて、酔って寝てる間にぐざっと……この子は隣の部屋で寝てたから、運良く見つからなかったらしいけど……殺される瞬間、見ちゃったんだって」
赤信号を前に3人は立ち止まる。車通りの少ない交差点には人気はなく、遠くを走る自動車の走行音が酷く目立って聞こえた。
そして信号が青に変わって歩き出したのと同時に、アヤカは続きを話し始めた。
「私の家は、殺したうえに火をつけられてね。私はなんとか逃げれたけど、2人は家と一緒にまっ黒焦げになっちゃった……やっぱり思い出しちゃうなぁ。私は親の死体を目の前で見ちゃったし、この子は殺される瞬間を見ちゃった。しかも、どっちも犯人はまだ捕まってない」
彼は背中に冷たいものが流れるのを感じた。
アヤカの声はそれを撫でるように続いた。
2人は親が殺され大きなショックを受けた。そんな彼女達を、知らない大人達が取り囲み、そのときの状況を事細かに聞こうとした。家族を殺されたというのに、大人達はまるでそれを面白がっているかのようだった。時には、両者の事件を無理やり結び付けて面白おかしく語る輩も入れば、己の鬱憤を晴らしたいがために幼い彼女達へ誹謗を吐く輩もいた。犯人が自分達の命を狙っているかもしれないという不安を抱えていた2人にとっては、大人達は守ってくれるどころか、自分達を殺そうとする共犯者に見えた。
以来、アヤカもキョウカも心の底では人を信頼できなくなった。施設での生活、自分達のことを気遣いながらも、被害にあった可哀想な子ではなく、1人の普通の子どもとして扱ってくれる大人達に出会わなければ、あのまま人間不信になっていたという。現にアヤカは立ち直り、こうして社会人として働き、今はハレルヤの店員として日々笑顔を振りまいている。その一方、キョウカの方は人と会うことが怖くなり、引きこもり気味になってしまった。
「あんな経験がなかったら、今頃、どんな人生を歩んでたのかな」
けど、とアヤカは言葉を繋げる。
「…………私とキョウカは、今はこうして生きてるんだ。あの惨状か、地獄から、運良く生き延びて、そして、出会ったんだ」
出会った、彼は同じ言葉を返した。
「頼れる親戚もいなかった私達は、別の町にある施設に入った。偶然ね。それからは毎日ずっと一緒で、本当の家族みたいに過ごしてた。多分、同じような目にあってたからかな、凄く親近感が湧いてきてね、なんだか、会う前から友達だった気がしてた。それで高校を卒業して施設を出たあとは、離れた場所で二人暮しを始めて、ここまで生きてきた」
歩いているうちに、とある公園が見えてきた。まあまあな広さを持っているそこでは、幼児達がキャーキャーと声を上げながら遊具で遊んでいた。近くでは、保護者らしき大人たちが遠くから眺めながら世間話を交わしている。
「休もっか」とアヤカの言葉に従うように公園に入り、端に設置されているベンチに腰掛けた。彼から見て左隣にアヤカが座り、さらにその隣にキョウカが座った。
「懐かしいなぁ、たまにこの公園に来てたっけ」
アヤカは塗装が剥げた座面をトントンと叩きながら、深い息を吐いた。キョウカは両手を握り、帽子の鍔の奥から膝の上をじっと見つめた。
「こらっ!」と、登ってはいけない場所に登りかけた我が子を叱る保護者の声が響く。驚いたのか、キョウカはビクンと体を跳ねて身を縮こませた。アヤカは彼女の背中を撫でながら、平和そうに遊ぶ子どもを眺める。
「私達は、初めて出会ったあの瞬間からずっと一緒だった。ずっと一緒にいるって決めた。死んだ
アヤカは彼に顔を向けると、数時間ぶりの笑みを見せた。
「……ここに戻って来たのはね。あなたに私達のことを知って欲しかったからなんだ。こういうことは、どうしても避けられないから、早めに知ってもらった方がいいかなって。それに、私達も、いい加減こういうのとは向き合わないといけないと思ってたから。いつまでも割り切れないまま、逃げるわけにはいかないと思ったんだ」
2人の辛い過去、忘れることのないトラウマ、そして出会い。それらを彼女達は彼に打ち明けてくれた。
それはすなわち、全てを話した上で、彼に返事を委ねたということだった。
これであとは彼次第、どちらになったとしても、彼女達は答えを受け入れるだろう。
「……わ、私」キョウカが口を開いた。
「…………か、彼君に出会って…………さ、最初は、す、凄く緊張して…………す、好きになれるかなって、思ったんだ…………でも、少しずつだけど…………か、彼君のこと、アヤカと同じで、ス、好きになれた…………だ、だから……こ、怖かったけど…………ここに戻ってこれた……私……あなたと話すの……う、嬉しくて、楽しかった…………こ、これからも…………そうやって…………」
キョウカは必死に自身の秘めた想いを告げた。そして顔を上げると、彼に向かって満面の笑みを浮かべた。今まで見せたことがない紅潮とした笑顔は、常闇に灯された光のように見えた。
それは彼の内側にモヤモヤと浮かんでいた、自分は彼女達を本当に受け入れることができるのか、という不安を霧散させ、そして1つの言葉を明確に形作らせた。
彼は立ち上がり、彼女達と向き合う。一体何事かと、世間話に盛り上がっていた保護者達は一斉に口を止めて彼の背中を見つめた。
公園内に植えられた木々に生い茂る緑葉が風で揺れ、擦れ合う音が辺りを包む。子どもたちの幼げな声が響き、そよ風が3人の髪を撫でる中、彼は口を開き、ゆっくりと、彼女達も待っていた言葉を告げた。
──俺と付き合ってください。
その言葉に、2人は笑みを浮かべながら見合い、彼に向き直って頷いた。
◇◇◇
バースデーケーキを食した3人は、今度こそ満腹になった腹を擦りながらバースデーの余韻に浸った。残りは明日にと決めてはいたものの、いざ食べるとその甘さと美味さにフォークが止まらなかった。
その後は、お楽しみのプレゼントタイム。
アヤカはとある雑貨屋で購入した、ヘッドに指輪よりやや小さいリングが付いたネックレスを、キョウカは3匹の猫がくっつきながら眠る絵が描かれたイラストをプレゼントし、彼はそれらを笑顔で受け取った。キョウカの絵は個性的で、彼女の絵に惚れた者も多々いる。実はハレルヤの店長もその1人であり、店内にはキョウカが描いた犬の絵が飾られているのだ。
楽しいひと時を終えたあとは、風呂とトイレが別れた浴室で湯船に浸かって体をホカホカに温め、ちょうど放送していたミステリー系のドラマを視聴し、犯人はアイツだろう、いやあの子だと思う、分かんないと予想しあっていた。結局、犯人は彼の予想した細身の女性で、犯行動機は『親から解放されたかった』というものだった。
「ほら彼く〜ん、一緒に寝よ〜」
そして就寝時間、アヤカは彼の愛用しているベッドの上で、キョウカと共に寝転がりながら、彼に手招きをしていた。その表情は笑顔満開で、かつどこか悪戯っぽかった。キョウカも同じように彼を見ているが、アヤカとは違い、顔を赤くさせながら口許に波々した一文字を作っていた。
彼は彼で、目の前で起きていることに苦笑をするしかなかった。この日のために用意しておいた来客用の布団を出そうとした直後に、いきなりアヤカが腕に胸を押付けながら「ベッドで一緒に寝よ」と誘惑してきたのだ。冗談かと思ったが、キョウカも「い、一緒に…………寝よ」と言ってきたので、どうやら本気らしい。
しかし恋人とはいえ、流石に同じベッドの上で寝たことなど一度もなかった。それ以前に泊まらせたこと自体、今日が初だった。そのため、この誘いに乗るかどうか、彼は悩んでいた。
彼女2人、同じベッドの中、しかも間に挟まれながら狭い場所で身を寄せ合う……彼の理性が持つはずがない。
「あ、もしかして今Hなこと考えた?」
彼の心境をとっくの昔に察していたアヤカが揶揄う。彼はドキッとしながら誤魔化したが、表情までは隠しきれなかった。
「彼君も男の子だなー、そりゃあそうか。可愛い彼女2人が一緒に寝てくれるんだもんねぇ」
「か、可愛い……は、いいすぎ……だよ」
「でもねー彼君、この先も私達の関係は続いていくんだから、こういうのにも慣れた方がいいよー」
ほらほらと、アヤカはキョウカと共に空けた真ん中のスペースをトントンと叩いた。いつもハレルヤで見せている営業スマイルとは違った、年頃の子どもを引き込むお姉さんのような笑みに、彼はドキリと胸を高鳴らせた。
この高鳴りは、アヤカを一目見て惚れた時によく似ている。自分はこうして彼女の一面を垣間見る度に、また惚れ直すのだろうか。そう、相手は自分の彼女なのだから、そして本人達が同意の上なのだから、遠慮する必要はないはずだ。
「か、彼君…………一緒に、寝よ?」
キョウカの寂しそうな表情がトドメとなり、彼は部屋の明かりを消して、彼女達の待つベッドの上に寝転んだ。
薄暗い部屋の中、締め切ったカーテンの隙間から差し込む外の薄明かりだけが、部屋の床や壁を照らしている。
そして室内は、むわむわとした空気に包まれていた。それはこの部屋で寝ているのが3人ということもあるが、大きな原因は、ベッドの中で掛布団に体を包み、身を寄せ合いながら眠っている彼らであった。
「彼君、いい匂いだね」
「すんすん…………うん、いい匂い」
彼の体は今、アヤカとキョウカの体に挟まれていた。彼から見て左にキョウカが、右にアヤカが寝ている。すぐ真横で、彼の耳に聞こえるように話していた。
2人は寝巻き替わりのTシャツと短パン姿で、彼の腕に胸を押し付けていた。どちらもすくすくと豊かに育った体つきをしているためか、彼の両腕にはそれぞれ違った柔らかさを持つ物体が潰れて広がっている。しかも、シャツの中は申し訳程度のパットがついたキャミなので、その感触はよりダイレクトに彼の腕を蝕んだ。
腕だけではなく、脚にも彼女達の女脚が絡まっている。アヤカはシュッとした太腿を、キョウカはムチっとした太腿を彼に絡ませている。
プライベートではなかなか感じ取れない2人の女体の柔らかさ。それをこうも積極的にアピールしてくるものだから、彼の理性は既に崩壊寸前だった。そもそも、こうしてくるということは、ほぼ誘っているのに間違いない。
彼は見慣れた天井を眺めながら、しっとりと濡れた髪の毛からふわりと漂うシャンプーの香りを味わった。味わいながら、このまま彼女達のことを食べてしまいたいと思った。しかし、流石にいきなり襲うなどということはできない。彼女達の同意の上でなければ、この腹辺りで渦巻くモヤモヤとした塊を吐き出すことは出来ない。
「……ねえ、彼君」と、アヤカが彼の鼓膜を擽るように囁いた。いつにも増して色気のある声色に、彼は思わず下着の中で蹲る股間を跳ねさせてしまった。
「今日はね、私達からもう1つ、プレゼントがあるんだ」
「う、うん……プレゼント…………」
「キョウカと2人でね、話し合ったんだよ。今日を彼君と私達の最高の一日にするにはどうすればいいかなって」
2人が同時に身動ぐ。気がつくと、2人の手の先が彼の纏う寝巻きの裾に伸びていて、そのままゆっくりと上に捲りあげていた。
「それでね、思いついた…………彼君に、私達をプレゼントしようって」
「……彼君は……私達のこと、受け入れて……くれたから…………だから、私達も、彼君のこと、受け入れようって…………か、体で…………」
裾が首元まで捲り上がり、そのまま彼の首と腕からすっぽ抜け、彼の上半身が露になった。
その間も彼は抵抗しなかった。する必要などなかった。
「すごい、彼君の胸板って、こんなに厚かったんだ。乳首もちっちゃくて可愛い」
暗闇の中でアヤカは微笑んだ。瑠璃色の瞳が妖しく光って彼の目を捉える。彼は金縛りにあったかのように動けなくなり、瞬きすら忘れて彼女達の体の柔らかさを感じた。
2つの女体が動く。むにゅりと豊乳を彼の肌に這わせながら、体の上に乗っかる形で、2つの雌雌しい顔が彼を見下ろした。
本当に2人はあのアヤカとキョウカなのだろうか、そう疑問に思ってしまうほどに、今の2人の表情は発情した雌のように恍惚としている。吐く息が上気して白く染まり、彼の顔に吹きかかる。
「ねえ、彼君…………私達のプレゼント」
「……受け取って?」
耳元を掠める淫魔の誘いに、彼は雄としての本能のままに頷いた。
「「…………んっ♥」」
その直後、彼の口許が彼女達の唇によって塞がれた。
左からはキョウカが、右からはアヤカが、それぞれぷっくりと潤い膨れた女口を押し付け、彼の唇を取り合うかのようにチュッと口つけた。
これが、3人のファーストキス、異性として初めて交わしたキスの瞬間だった。
「ん、んちゅっ♥ンンっ、はむっ……ちゅっ♥」
「んふ、あ…………んれぇ、んんっ♥」
アヤカの積極的なキスが、キョウカの優しく相手を労るキスが、彼女達の性格を表すように口付けの音が静かに響く。
男となんて初めてなものだから、2人のキスはどこかぎこちない。しかし彼を求めているのは明らかで、貪るように彼の唇に吸い付いている。
「んちゅっ…………♥んんっ♥…………はむっ……♥(あ、溶けそう♥)」
「ん、あっ♥…………ぇぁ♥(これ……ドキドキ……初めて♥)」
3人でキスをしているので、顔は密着し合い、お互いの鼻先を擦り合う。彼女達に至っては、2人で仲良く彼の口許を分け合っているため、頬と頬をぺったりと合わせながらチュウを交わしている。狭そうにしながら、彼の唇を求めているのだ。
「(彼君のお口、美味しい♥)」
「(うん、すごく……えへへ♥)」
細く開いた瑠璃色と紅色の視線がそう答えているように思えた。
こんなことが現実で体験できるなんて。思春期に一度は抱いた幻想がこうして叶うだなんて。
彼は胸中に湧いた幸福感をさらに満たそうと、舌先を突き出した。
それを待っていたかのように、アヤカとキョウカも舌先を出して彼のものと絡め始めた。
「んれ、ちゅる♥あ、れろ♥」
「ん、はぁ、あ、ぇぁ♥」
アヤカのさらついた肉ついた赤い舌が、キョウカのちょっぴり長めな細い舌が、くねくねと波をうち、彼の逞しい舌肉と蛇の交尾のように絡まる。肉の絡まりはグチャついていて、尚且つ唾液がねっとりと粘ついていた。
にゅる♡にゅる♡ぢゅる♡
唾液がたっぷり浮き出た舌肉が卑猥な粘着音をたてながら混じり合う。時々タイミングが合うと、彼の舌横を同時に舐め上げ、ペロンと舌先を付けあった。
あっ、と消えそうな声を上げながら、2人は口許を離した。そのまま間髪を入れずに、今度は彼の両耳を攻め始めた。
──レロっ♡レロっ♡レロレロ♡♡
──ちゅるるっ♡♡ち゛ゅるるるっ♡♡
にゅるんと身を畝らせながら、2人の舌先が耳穴の中へと潜り込む。さっきのような貪り合う攻め方とは異なり、2人で仲良くタイミングを合わせるように彼の耳孔を愛撫する。
鼓膜に直接響く粘ついた音、このまま耳の奥まで侵入して行き、脳まで到達してしまうのではないかという恐怖感、それを宥めるように胸元で蠢くふにゅりとした巨乳、うずうずと尻尾のように振っている巨尻。
それら全ては、彼の内側に押さえつけていた性欲を掻き立てるには充分すぎた。
「……キョウカ。彼君のあそこ、超モッコリしてるよ」
「うん……モッコリしてる…………」
「私達のキスで、興奮してくれたんだね」
「うん……嬉しい」
「……じゃあ、気持ちよく、させないとね」
ヘラァと口許を弓なりにさせた2人は、腹這いになりながら彼の胸元に顔をやった。その間も、重みのある巨乳は彼の肌を擦った。
「苦しそうだねぇ、早く気持ちよくなりたいよねぇ」
2人の指先が股間部の膨らみを掴み、ぐにゅっと潰すように握る。ぐにゅぐにゅと弾力のあるボールを潰すかのように、アヤカとキョウカは揉みくちゃに彼のモッコリを嫐っていく。
服越しとはいえ、他人の手加減を知らない奉仕は彼に咆哮を上げさせる。これから先、まだまだ長い夜は続くというのに、今が最高潮になってしまう。睾丸を解されているだけなのに、このまま出してしまいそう。そんな感覚が彼のピンクの脳みそに走った。
「……脱がせよっか」
キョウカが囁くと、2人は息を合わせて半パンをずり下ろした。
…………ぶるんっ!!
抑えていたものを解放するかのように、彼のモッコリとしていたものが身を振るいながらその姿を露わにした。
ずるりと剥けた皮と、体のどの部分よりも赤黒く汚れたボディ、ぷくっと丸く膨らんだ尖端と、縦に割れた鈴口から溢れる我慢汁。それはまさに、子種を排出する人間の雄としての象徴とも呼ぶべき
「見て、キョウカ。彼君のちんぽ、太くて大きいよ」
「うん…………お、玩具なんかよりも、ずっと生々しい…………」
「私も、男の人のおちんぽ、初めて見た」
暗闇に慣れた瞳で、2人はペニスに視線をやった。思わず淫笑を零してしまうほどに、彼の陽物は猛々しく存在感を放っていた。
「ねえ、もしかして、私達でオナニーしてたりした?」
アヤカは甘い香りの吐息を浴びせながら訊ねた。
彼は恥ずかしさを感じながらも、時々、アヤカとキョウカ、両方と交わっている想像をしていたと白状した。
「……えへ……嬉しい…………わ、私なんかで、興奮してくれて…………」
「じゃあ、本物の私達で気持ちよくしてあげないとねぇ」
そう言うと、アヤカとキョウカはペロッと舌を垂らして、溢れた唾液を手のひらで受け止めた。そしてそれを手のひらに広げると、そのまま彼の下半身に手を伸ばし、ペニスを包むように掴んで擦り始めた。
敏感な感覚が彼に走る。アヤカの右手とキョウカの左手、それぞれの綺麗な指が絡まりながら1つのオナホールになって自分の肉棒を、いつも1人で扱いていた硬い身を、唾液のローションでぬちゅぬちゅと扱いている。
ぬちゅっ♡ねちゅ♡
「はぁ、はぁ♥熱い、彼君のおちんぽ、熱すぎて手が溶けちゃいそう」
「彼君……お、おちんぽ…………おっきい……」
「ねえ、こんなに大きいんじゃ、私達、壊れちゃうかも」
「…………はむっ♥」
シコシコと手元を上下に揺らしながら、キョウカは彼の小粒な乳首を咥えた。生暖かい感触が彼の小さい乳輪を包み、吸い上げていく。チュウチュウとしゃぶりつきながら、舌先をぺろぺろと猫のように畝らせて、彼の乳首を攻める。
ぬちゅ♡しゅこ♡しゅこ♡
「んっ……んちゅっ♥むっ♥」
「キョウカったら、熱入りすぎ。そんなに彼君の乳首を食べたかった?」
アヤカの問に、キョウカは夢中で喰らいながら頷いた。
なんて可愛らしい、飼い猫のように好物に喰らうその姿に彼は癒され、思わず彼女の頭を撫でた。キョウカは嬉しそうに目を細めて声を漏らした。
「じゃあ、私も…………んっ♥」
アヤカも、キョウカに続いて彼の乳首に吸い付いた。キョウカとはまた違った噛み付くような吸引に、彼はうっ、と声をあげた。上げながら、キョウカと同じようにアヤカの頭も撫でた。
「ん゛っ、あ、れろれろ♥」
「は、あぅむっ、んん゛♥」
普段は感じにくい乳首を、彼女達の唇が摘み、母乳を求める赤子のように搾乳する。
2人は彼に色づく視線を向けながらも、手元は休めずにペニスを奉仕し続ける。我慢汁が多量に溢れ出し、唾液に混ざって潤滑剤の一部になって、2人の手元を滑らせる。時々睾丸を指先で突いてしまうことがあり、その痛みに彼は呻き、青い筋をドクンと打たせた。
ぬちゅっ♡ぬちゅっ♡ぬちゅ♡ぬちゅ♡ぬちゅ♡
しゅこっ♡しゅこっ♡しゅこ♡しゅこ♡
卑猥な音が、時折漏れる彼女達の姫声とともに大きくなる。じんわりと汗が毛穴から排出され、3人の肌を伝う。
そして2人は彼のペニスが充血を始め、ビキビキと硬さを増していくのを感じ取った。
海綿体が膨らみ、2人の指圧を跳ね返す。
種主である彼は、玉袋に収まった睾丸から繁殖のために溜められている子種達が這い上がっていくのを感じた。
「(いいよ、彼君♥)」
「(びゅ〜びゅ〜……して♥)」
乳首を貪る淫魔達の淫らな微笑みが、視覚を通して彼の脳髄から興奮物質をドバドバと垂れ流しにさせた。
────びゅる♡びゅるるるるっ♡びゅぶぅぅぅ〜〜♡♡
刹那、彼は腰を浮かせ、悶えるような声を上げながら、勢いよく精液を放った。白濁色をした特濃ザーメンは、鈴口から飛び出すように放たれ、宙を舞ったあと、彼女達の体に降りかかった。
「ん……イったね、彼君。男の子の射精する瞬間なんて、初めて見た」
「…………ドクドクって、してる……♥」
顔を上げた2人は、視線を彼の下半身へと向ける。淫女による手こき奉仕を初めて受けた彼のペニスは、激しく脈を打ちながらザーメンを漏らしていた。後手に回った精液は飛び出すことはなく、彼女達の手のひらをたらりと滴り、根元の方へと落ちていく。
「こんなにドピュドピュしちゃって、そんなに気持ちかった?」とアヤカか訊くと、彼は2人の頭を擦りながら頷いた。
2人はぎゅっと握ってから手を離す。ねばーっとザーメンの糸を引かせながら、アヤカは指に着いたそれをぱくりとしゃぶった。キョウカは一瞬驚くが、彼女も真似て指先を咥えた。
「んっ……美味しい♥」
「うん……彼君のおちんぽミルク♥…………もっと食べたい♥」
「ダメだよキョウカ。彼君のザーメンは体の中にピュッピュしてもらわないと。勿体ないよ」
「あ、うん……ごめんね」
「……じゃあ彼君、今度は私達のこと、気持ちよくしてくれる?」
そう言うと、アヤカとキョウカは体を起こし、彼からズボンをスポンと引き剥がした。彼が体を起こすと、2人は彼に下半身を向ける姿勢で仰向けになった。まるで以前から練習したかのような動作だ。
「ほらほら彼君、早く脱がして欲しいなぁ。もう私、おまんこぐしゃぐしゃだよ」
アヤカは笑みを浮かべて彼を誘う。キョウカはむず痒そうにしながら、ご褒美を待つペットのような瞳を向ける。
彼は2人の履いているズボンを掴み、するりと脚から脱がした。言う通り、アヤカの纏う白色とキョウカの纏う黒色の薄いショーツには、特に陰部部分には漏れたようなシミができていた。
ツンと指先で触れると、ねちょっと生地から蜜が染み出した。そのねちょり具合を堪能しながら、そのまま太腿に突っ返させながらショーツを脱がした。
…………そして、彼女達の肉まんこがその姿を現す。
毛が整えられた恥丘と、下った場所にある綺麗な縦線の入った割れ目、唇のようにビラビラとした肉ビラ、ピンと目立つ桃色のクリトリス。獣のように冴えた彼の目は、薄暗闇の中でも濡れそぼるそれらを捉えることができた。
「私達ね、ずーっと考えてたんだ。彼君とのセックスってどんなに気持ちいいのかなって。そしたら、もうお汁が止まんなくなっちゃった♥」
アヤカは脚を広げ、両手でしっぽりと濡れた淫唇を開かせた。ピンク色の肉々しい媚肉とヒクヒクと蠢く膣穴が姿を現し、早く来てと招いている。
「……彼君」
キョウカも遅れて、アヤカ同様に脚を広げてまんこを左右に開いた。アヤカのものと比べて濃い色だが、ムッチリとした肉付きとあって、まんこの肉は彼女の方がより肉厚そうだった。
アヤカは細身だが胸と尻に豊かな肉が、キョウカは太っているわけではなく、男が釘付けになる部位にムチムチっと肉が詰まっている。体型は違えど、どちらも人間の雄を虜にしてしまう体つきをしていた。
これを彼女達は今まで隠してきたのだ。アヤカは明るさで、キョウカは暗さで、自分達の秘密の花園を男達から死守してきた。
それをこうして自分に見せてくれている。そう思うと、彼の中に一種の優越感が湧いてきた。
くちゅっ♡
「「あんっ♥」」
彼は己の中にある醜い部分を晴らすように、彼女達の陰部をなぞる。たっぷりと愛蜜が溢れる秘裂は、彼の乾いた指先をすぐさま潤した。
ぐちゅっ♡ずちゅっ♡ずちゅっ♡
「ひゅくっ♥んあ゛っ♥すごい♥彼君の指、私達のおまんこグチュグチュッて弄ってるぅ♥」
「お゛っ♥、ぉお゛♥おっ……っ!」
彼の両手は生き物のようにその身を捻らせ、彼女達の敏感な箇所を的確に刺激する。外側をなぞり、唇をすーっと愛撫したかと思えば、膣穴の中へと潜り込み、見えない媚肉をぐちゅぐちゅと掻き混ぜた。
「つっ……ん゛んっ♥あぁ♥」
「あ゛……あ、彼くぅ……んっ♥」
あまりの快感に2人の体がビクンビクンと跳ねる。その度にベッドが軋み、シーツがしわくちゃに乱れる。
「キョウカぁ、私、目の前がクラクラするよぉ♥」
「あ、アヤカ……大丈夫ぅん♥」
アヤカは今にも泣きそうな瞳で、しかし表情は立派なアクメ顔を浮かべた。キョウカも彼女のことを心配しながらも、抑えられない悲鳴を漏らした。
ずぷっ、ずちゅっ!
「ふぁ、あ、頭の中♥おかしくなる♥これ、すごく気持ちよくて、おかしくなっちゃうっ♥あ、あぁ♥」
「ぅん゛……あっ♥あっ♥あ゛っ♥」
アヤカは両手でシーツを掴みながら、自身の肉穴に走る異物感に耐えようとした。一方のキョウカは、卑猥な自分を受け入れたかのようの手を口に当てて刺激を感じていた。
こんなにもイヤらしくて、雌の声を上げる彼女達に、彼の興奮はさらに増した。自分の手が、彼女達に快感を与えている。ぐちゅぐちゅぐちゅと出入れさせる度に、中の肉が引き締まって飲み込もうとしている。
彼は、改めて自分が2人の彼氏であることを自覚した。自覚した上で、先程の手扱きの礼を返さなければならないと考えた。
「んやぁぁ♥そ、そこはらめぇぇ♥」
「おぉ゛!? あぁんっ♥」
指の動きを、よりリズミカルにさせる。1本1本を関節を使って脚のように動かし、時折手首を左右に回転しながら内肉を撫でる。その動きは何かの生物かのようにリアルで、実行している彼でさえ、自分がどう意識して動かしているのか分からなくなるほどだ。
「あぅ、あ、な、なにかくる、くる、くるぅぅ♥」
「あ、い、い……ちゃう……いっ、いっちゃう……♥」
経験浅はかな2人の腹の奥から何かが飛び出そうとしている。形のない塊のようなそれは、赤い部屋から産道を通って、膣穴の前で止まっていた。
──2人とも、イキたい?
彼はペットの飼い主のような優しい声で訊ねた。
「うん、いかせてぇ♥」
「か、彼君の指、ぐちゅってさせて……♥」
ガクンガクンと体を跳ねながら、彼にご褒美を強請った。
…………ぐちゅん、と指先が深くにある美肉を突き上げた。
「「あ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁ♥」」
甲高い悲鳴が部屋中に響き、同時に彼女達の秘部から塊が吐き出され、透明な淫水を噴射した。
ビクビクと女体が背を反らしながら痙攣を繰り返す。弾けた視界が落ち着きを取り戻し始めたところで、上げていた脚をベッドに下ろした。
「あ、あぁ、いっちゃったぁ……」
「……へへ…………へへへ♥」
大絶頂にすっかり淫酔してしまった2人。
彼は肉穴から指を引き抜き、滴る愛液をそのまま咥えた。それぞれ酸味の異なる蜜の味は舌の上で転がり、やがて喉の奥へと消えていった。
「彼君……どうしたの?」
額から汗を流すキョウカが、不思議そうに首を傾げた。彼は喉仏を動かし、顎先から汗を流しながら、2人のおっぱいを吸いたいと話した。
「……うん、いいよ……」
「彼君が欲しいのなら」
そう言うと、彼女達はTシャツとキャミソールの裾を掴み、寝ながら上へと捲り上げた。
臍、クビレ、下乳、それらが露わになりながら、隠れていた果実が現れた。
────ぷるんっ♡
躍動感のある音とともに揺れた丸みに、彼は思わず瞠る。
薄い色をした桃色の乳輪と、ピンと立った彼のものよりも太くて大きな乳首、彼女達しか持ちえないそれらは、まだ汚れてすらいない。特に豊満に育ったその乳房は、世の女性の中でもかなり大きい部類に入るだろう。
「ほら、彼君♥」
「どうぞ……♥」
服を脱ぎ捨て、赤子と同じ姿になったアヤカとキョウカは、腕で自分達の片胸を寄せ合い密着させた。立派に実った豊乳が、たゆんと音を立ててくっついた。
彼はそれぞれの手で彼女達の乳房を掴む。アヤカの胸は柔らかいながらも弾力を跳ね返す。キョウカの胸は、アヤカのものと同等かそれよりも大きく、どこまでも受け入れてしまうように指を沈ませた。
…………ぱくっ♡
充血した乳首同士を擦らせると、彼は口を大きく開いて2つ同時にしゃぶりついた。
ちゅう……ちゅうぅ♡ちゅうぅ♡
ふっくらとしていて、溶けてしまいそうな甘い味が口の中で広がる。吸い上げる度に、大きな乳首が彼の口腔で引っ張られる。
「あっ♥やぁん♥彼君ったら、赤ちゃんみたい……んん゛♥」
「あ、あっ♥…………可愛い……っんあん♥」
自分達のおっぱいを貪り食らう彼の姿を、アヤカとキョウカは母親のような眼差しで見つめた。乳首をコリっと転がされると、ツンとした刺激が2人の体を跳ねさせた。
「ふぁ♥……もう彼君ったら、甘えん坊さん」
「……まだ赤ちゃん、できてないから……ぼ、母乳、出ないよ?」
「キョウカ、もうそこまで考えてたの?」
「え? ……あ、違う違う……彼君、おっぱい飲みたいのかなって思って……あぅ♥」
「んっ……でも、キョウカの気持ち、分かるよ。私も、あんっ♥早く母乳ぴゅうぴゅう出して彼君に飲んでもらいたいなぁ。そしたら、キョウカにも飲ませてあげる」
「ふぁ……じゃあ、私のミルクも……アヤカにあげる」
艶女2人の卑猥な会話が飛び交う。そんなものを耳元で聞かされてしまった彼は、頭の中でボテ腹になって母乳を垂れ流す彼女達の姿を想像した。きっと彼女達から溢れる母乳は、大人の自分が飲んでも美味に違いない。そしてそれを飲ませる彼女達の姿は艶やかに違いない。
彼は一時的に醒めていた己の性欲をふつふつと湧き上がらせる。気がついた時には、萎れた股間部の獣は再び勃起を始めていた。
ちゅうぅぅ…………ぽんっ♡♡
という栓を抜く音と共に、唾液に濡れた2つの乳頭がふるんと揺れる。そして彼は、早くお前達が欲しいとバキバキに屹立するペニスを揺らし、彼女達に見せつけた。
「わぁお♥バッキバキぃ♥」
「え、へへ……♥」
雌顔を浮かべて見蕩れる2人。これが今から自分達の体を抉り、突き上げ、種付けする、想像するだけで淫肉は酸蜜を溢れさせる。
「……アヤカ……いい?」
「うん、いいよ。キョウカが先に彼君のザーメン、ドピュドピュさせてあげて」
キョウカは起き上がると、彼に背中を向けて四つん這いになり、飼い犬が尻尾を振るように臀を振った。ぷるんぷるんと、雄が求める部位に豊満な肉が付いた恵体が彼の肉棒を求めている。
「彼君……いいよ……」
彼女の言葉を聞いた彼は、鼻息を荒くしながらキョウカの双尻を掴み、充血した尖端を蜜穴にあてがった。
蜜で亀頭をぬるりと濡らしながら肉唇を啄く。そして狙いを定めて、そのままずむりと膣穴の中へと挿入した。
「あ゛、あぁ♥……は、入ってるっ、彼君の、な、中にぃ……っ♥」
芯の通った肉棒がキョウカの肉壺を掻き分けて進む。淫唇が左右に開き、咥え込むように膣内へと誘う。たっぷりと前戯を嗜んだのもあって、彼女の中は蕩けてしまいそうなほどに濡れ濡れになっていた。
ずぶんっ♡
「んお゛っ……♥」
ズンっと腰を押しつけた瞬間、彼の股間部が彼女の尻肉とぶつかり波を打たせる。太い亀頭が秘肉の奥を突き、彼女の喉から濁った声を釣り上げた。
溶ける、溶けてしまう、もし先程出していなかったら、早々にキョウカの中へ種付けをしていたかもしれない。
彼は肉壺の柔らかさを陰部で感じながら、腰を揺らし始めた。
「ん、ぁ♥あぁ……っ! あっ、あっ♥」
みっちりと肉襞が張り付いた膣道の中を、熱を帯びたペニスが容赦なく掻き分ける。じゅぷぷと愛蜜がペニスを滑らせ、肉壺の中へと誘う。
じゅぷっ、じゅぷっ! じゅぷっ!
「お、お゛っ♥あぁあっ……♥か、彼君のちんぽ、しゅごい♥お、おまんこ、ずぼずぼしてるぅ♥」
膣内にびっしりと生える肉襞を肉頭で擦り上げ、腰を引くと共に深い鰓首でずるりと引っ掛け引きずり出す。肉棒を離すまいとキツく絞める彼女の肉欲に、彼は獣のように呻いた。
ぐちゅっ、ぐちゅ、じゅぶっ♡♡ずぷんっ♡♡
ビクビクと体が揺れる。彼の腰使いに合わせて、キョウカの女体が淫らに動く。
「ふぁっ♥……あぁ、っ゛、うっ……んぅう゛んっ♥」
逞しい腰を打ち付ける度に、恵まれた尻肉がぷるぷると白波を打って揺れる。発情する雄の激しい肉の接吻でさえも、キョウカの尻肉は優しく受け止めた。
「ぅんんっ♥あ、あぁ〜゛♥あぅ♥ぁ♥あっ、うんんっ! はぁ♥」
剛直で肉の詰まったペニスが熟した濡れ肉を突き上げ、キョウカは四肢を震わせながら善がり声を鳴らした。重量に負けて垂れ下がった2つの巨乳は、体の揺れに任せて前後にぶるんぶるんと揺れている。その様は、世の男性ならホルスタインと揶揄するほどに魅惑的で、搾乳してくれと言わんばかりに自己主張している。
ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡
肉蜜が弾けて我慢汁と混ざり合う。ペニスと後孔の結合部から漏れ出した愛液は、雫になってシーツに垂れ落ちて染み込む。甘酸っぱい匂いが彼らの周りを包み込み、鼻腔を擽って思考を低下される。
…………むにゅんっ♡むにゅっ♡もみっ♡♡
彼は彼女の背中に覆い被さると、両手で彼女の豊乳を揉み掴んだ。
「はぅぁっ♥や……やだ……く、擽ったいよぉ……ぁんっ♥」
キョウカの実る豊乳は、揉めば揉むほどマシュマロのようなふわふわとした弾力を彼の掌に跳ね返す。揉みしだくと手のひらから乳肉が溢れて指を深くまで沈め、根元から乳輪にかけて乳腺をマッサージするように搾り揉むと、大きめの乳首がピンと張ってふるんと揺れた。
「はぁ、あっ♥あぁ♥気持ちいい……彼君、おっぱい好きなんだ……♥」
女性の胸はこんなにも柔らかいものなのだろうか。いや、これはキョウカだからこその柔らかさなのだ。ずっと暗い衣装に潜め続けてきた彼女の女体は、それとは正反対に白い乳白色の色気を持っていた。
パンッ♡パンッ♡パンッ♡パンッ♡
「ふぁ、あぁんっ! あ、あ゛ぁ♥きゃぁん♥」
交尾中の雌犬のようにキョウカは喘声を部屋に響かせる。普段の籠った声からは想像もできない乙女しい叫びは、彼だけでなくアヤカの耳も震わせ、催淫を施したように顔を緩ませた。
「すごぉい、キョウカったら、こんなにエッチな顔もできたんだ……♥」
気がつくと、アヤカは自身の指で肉穴をほじくっていた。ぐちゅぐちゅと解れた蒸れ肉からは、染み出た蜜がとろりと糸を引いて溢れている。
ああ、なんていやらしい光景なのだろう。ペニスでふわトロなキョウカの肉穴の快感を覚えながら、視覚でアヤカのオナニーを眺める。こんなに淫蕩な光景に、彼の脳は白く茹だった。茹だった頭は彼の低下した思考を1つのゴールへと導き、背中に擽ったいものを流した。
馬のように彼は嘶き、腰振りを早めた。肉棒と秘肉が擦れ合う水音が、体の揺れが激しさを増していく。肉幹に熱い感覚が走ると同時に、ビキビキと血液の筋を浮かべはじめる。
「あ、か、彼君、出る…………?」
キョウカの質問に、彼は咆哮を漏らしながら肯定した。
「んぅ♥いいよ……中に……びゅ〜びゅ〜してぇ♥」
キョウカの甘い声色に答えるかのように、彼は揺さぶっていた腰を叩きつけた。
ぱちゅんっ! と尻肉が弾ける音が鳴った。
────びゅるるるるるるるるっ♡♡!!!
「お゛おぉぉ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛っ♥♥」
肉先が子宮口を突き上げた瞬間、鈴口から2発目のザーメンが弾ける。たっぷりと時間をかけて肉棒を擦り撫でてのもあって、彼女達の手こき以上の量が放たれた。
電撃のような快感が陰部を通して迸り、キョウカは絶頂声をあげながら白目を向き、彼に抱きつかれたまま背中をのけ反った。
びゅぶるるるっ! びゅるっ、びゅうぅぅッ♡♡
「あ、ぁぁ……出てる……彼君の…………赤ちゃんミルク……♥」
濃厚な白濁色の子種は、脈を打つと共にポンプのようにびゅるびゅると排出される。それを補助するように、無数の肉襞が蠕動して肉棒を搾り上げる。
キョウカは肉棒の熱とゼリー状のザーメンの灼熱を感じながら、全身の力を緩めてベッドへ沈めた。豊乳がむにゅりと形を変えてベッドに潰れる。
「キョウカ、幸せ?」
「うん……彼君に、中出しされて…………幸せぇ♥」
乱れた黒髪に隠れた紅色の瞳を細め、ニヘラと淫た顔を浮かべたキョウカに、アヤカは蜜がたっぷりと付着した指先を差し出し、彼女の口元へと押し込んだ。キョウカはパクリと口を閉じて、親友の粘り気のある愛液を味わった。
ぬぷんっとペニスを抜くと、キョウカは「あうっ♥」と抜けた声をあげ、へたりとベッドに下半身を寝かせた。肉穴からは吐き出されたザーメンが愛液と混ざりながらごぽっと漏れ出していた。
「お疲れキョウカ。次は私がやるから、休んでて」
アヤカはキョウカをベッド脇に移動させる。そして端麗な体をくねらせながら、射精に放心する彼の裸体に自分の柔らかな肌を貼り付け、乳頭を擦らせた。
「はい、次は私にびゅーびゅーして♥」
そんな連続に出ない、そのはずなのに、彼の肉幹はキョウカの蜜を纏いながら、萎えずギンギンと肉身を張ってアヤカの腹部を押していた。
ねえねえ早くーと、キョウカは彼の背中に腕を回して抱きつき、豊乳をむにゅりむにゅりと押し付けた。キョウカのものよりも張りがあるそれは、彼の首元に密着し、蒸れる谷間を彼の鼻先につけた。加えて吹きかけられる吐息が、彼の残った人間的思考を徹底的に奪っていく。長身のペニスに血が巡り、我慢汁がちょろりと漏れ始めた。
準備万端だねぇ。アヤカは妖気に微笑みながら、屹立する彼の陽物を縦割れの淫口に擦り付け、ぷにゅりと穴の寸前まで押し付けた。ねえ、入れて欲しい? 気持ち良くなりたい? アヤカのおまんこの中に入れたい? 彼君のおちんちん、どちゅりってしたい? アヤカの厭らしい囁きが彼の耳を撫でる。はぁ、はぁ、と荒い息を吐いて、彼の亀肉をぶにぶにと屠る。
──アヤカが欲しい。アヤカも食べたい。
彼は後ろに手をやり、彼女の重さに倒れそうになる体をなんとか支えた。ここまで煽られてしまっては、断るなんて事はできるはずがなかった。なんて意地悪な女性なのだろう。明るい彼女はこんなにも淫乱で人を弄ぶことが好きなのか。そんな彼女に自分は見蕩れている。喰らいたい、キョウカとはまた違った愛する彼女を喰らいたい。あの喫茶店で出会った時から密かに中の中で考えていたかもしれない慾望が浮上し、頭の中の侵す。
「よく言えました……じゃあ、ご褒美に私をプレゼントするね♥」
そう言うと、アヤカは膝立ち腰を下ろし、陰部にあてがっていた肉棒を自分の濡れる体内へと押し込んでいく。
ずむりと、ずぷぷと、押し広げる音を立てながらペニスが陥穽に堕ちていく。キョウカよりもきつい熟肉は、熱に魘される雄を飲み込み、長い膣道の奥へ奥へと誘導する。
「んぁ、はぁッ♥……あ゛ぁ゛っ♥」
進む、初めて受け入れる男の肉棒が自分の体の中を突き進む。アヤカは初めて味わう快感に秘裂を開き、骨盤を震わせ、体を唸らせた。
ずぷぷぅ〜……ずっぷんっ♡
「ぉ……ッ♥」
笑顔と容姿に魅了された男達を尽く拒絶してきた彼女の雌体が、彼のことを受け入れた。あのアヤカの体が、である。これには彼も目の前をぼやけさせ、陰部を包む快感に彼は力の抜ける声をあげた。
「すっごく、熱い……手でなんかよりも、全然熱いよ……♥」
皮膚とは異なり、体の内側に直接ペニスを挿入したアヤカの肉壺。初めて迎え入れた彼の体を、アヤカの小さな無数の舌はチロチロと吸い付き、その形を記憶する。十分に記憶し、肉襞が締め付け始めたところで、アヤカは腰を上下に動かした。
ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡ぢゅぼっ♡
「ふあ、あ゛ッ♥あっ♥あっ♥あっ♥んぁ゛ん♥」
アヤカの雌声をバックに、2人の体は陰部と陰部を擦れ合う水音を奏でる。キョウカの愛液で濡れ濡れになったのもあって、彼の肉幹は滑らかにアヤカの中を出入りする。肉襞が深い鰓の下まで吸い付き、愛液でじゅるりと舐め上げる。
「はぁ♥はぁ♥彼君、私でぇ♥興奮してるんだぁ♥嬉しぃいいんっ♥」
スレンダーな体に実るたわわを揺らしながら、アヤカはペニスに纏いつく熱に身を溶かしそうになる。キョウカのふわトロな名器とはまた違い、空気の侵入を許さないほどに締め付ける。
「んぉ゛っ、しゅ、しゅ♥すごっ♥ちんぽっ♥太いっ♥あつっ♥焼けるっ♥ん゛お゛ぉ゛っ♥」
なんて汚い喘ぎ声、これが本当にあのアヤカなのか。いつも店員としてスマイルを絶やさず、プライベートでも眩しさで周りを照らしてきたあのアヤカなのか。
彼は普段の彼女と今の雌犬のように喘ぐ彼女のギャップに衝撃を受ける。受けたものは性的な興奮へと繋げ、彼の自制心をも喪失させていく。
「あ、ひぃっ♥あひっ♥あぁっ♥彼くぅんっ、いく゛ぅっ♥」
当のアヤカは、普段のキャラなど忘れたかのように思うがままに喘いでいる。はへはへと舌をだらしなく突き出しながら、身を善がらせて腰をくねらせている。尻を彼の腰に叩きつけ、ぱちゅんぱちゅんと卑猥な音を鳴らしている。
こんな彼女を見てしまっては、彼の自信を抑える意志など必要ない。いや、そもそもキョウカを抱いた時点で、そんなものは捨てていた。
──むぎゅうぅ♡♡
「ふぁぁっ♥おしりぃぃ♥いやぁぁぁん♥!!」
肉棒を震わせつつ、彼はアヤカの尻肉をその手で掴んだ。アヤカも、彼に身を任せるように足を伸ばし、彼の腰周りを太腿と脹脛で挟んだ。
さらに腰を撓ませ、巨乳を彼に押しつけ、乱れるダークブラウン色の髪から粘ついた汗を飛ばす。
優しく受け止めるキョウカと激しく求めるアヤカ、両方の快楽を味わった彼は、最早動物としての射精欲しか残らなかった。
じゅぶっ♡♡じゅぼっ♡♡じゅふ゛ぅ♡♡
「ひぐっ、お゛ぉ! おぉ゛♥おっ゛♥オッ♥オ゛オ゛ッ♥」
蒸発する汗で淀む空気をまといながら、アヤカは濁る声をあげ続け、数の子のような肉壁でペニスを扱き続けた。じゅるじゅると、女穴と男棒の結合部から蜜が漏れ出す。
「はぁ♥はぁ♥はぁ♥ハァ♥……んぁ゛ぁ♥」
ずるっと汗で滑り、アヤカは後ろへ仰け反る。しかし彼が両手で彼女の腰周りをキャッチし、そのまま対面座位の形へと切り替えた。
「んおぉ゛っ! いくっ♥これいぐっ♥」
今度はこちらの番と、肉亀が容赦なくGスポットを突き上げる。コツコツずちゅずちゅと潰すように刺してくるその刺激に、アヤカは背を反らし、アクメ顔を晒す。ぶるんぶるんと胸を揺らし、悦びのままに喘いだ。
「や、やだっ♥これ、こわれる♥あたま、おかし、くぅう♥」
頭が変になりそう、しかしアヤカは止められない。くねらせた腰つきをいやらしく披露し、だらしのない顔を彼に曝け出す。
驀進するペニスがぶるりと震える。彼はもう出そうだと腰を揺らしつつアヤカに伝えた。
「ん、いい、私の中にも出して♥キョウカと同じプリプリザーメン、アヤカのシキューにそそいでぇ♥」
ああ、もう我慢できない。彼は腰つきを早めて槍のようにペニスを突き刺す。内側から脳天にかけて突き刺される感覚に、アヤカは脳を揺らした。
ずちゅっ♡♡ずちゅ♡♡ズチュッ♡♡────ずちゅんっ!!!!
──びゅぶるるっ♡♡ヒ゛ュルル゛ッッッッッッ♡♡
「ん゛ぎぃぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛♥♥いく゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛♥♥」
背中を反らし、喉も反らしながら、アヤカは絶頂声を部屋中に響かせた。コツンと子宮口を突いた亀頭からは、またもザーメンがたっぷりと輩出され、彼女の腹の中側を白く染めていく。彼女もまた、彼に染まっていく。
「あ、あぁ…………ぉ゛♥」
ビクビクと痙攣する体、白い世界に包まれた視界、弾けた思考。アヤカは意味不明な声を漏らし、そのまま後方へ体を沈めた。
しかし尚も彼の肉幹は脈動を止めないため、お腹は灼かれ続ける。彼は蛸の吸盤のように締め付けながら密に吸い付く襞の蠕動に腰を震わせ、思わず雄の喘ぎをあげた。
「アヤカ…………幸せそう♥」
「うん……私も、彼君のミルクびゅーびゅーされて……幸せ♥」
絶頂の痺れから回復したキョウカは、目を剥いて倒れるアヤカの頭を膝の上に乗せえ撫でた。彼女のふわふわな膝枕は、アヤカの後頭部を優しく受け止めた。
ぬぷりと、肉棒が引き抜かれる。アヤカの膣穴からどろっと精液が溢れ出し、シーツへと垂れ落ちた。
「彼君ったら……あんなに出したのに、まだこんなに出るんだ。お盛んだなぁ」
「…………彼君、すごくエッチ……」
だが、それだけで終わるはずもなかった。
解放された彼の性欲は鎖を解かれた獣のように凶暴化し、枯れたペニスを早くも剛直にさせていた。玉袋は次の子種を吐き出したいとビュクビュクと蠢いている。
「…………まだまだ、いけるみたい……」
「うーん……こりゃあとんでもない人を彼氏にしちゃったなぁ」
困り顔の2人、しかしその表情は蕩けており、子種の泳ぐ子宮は再びきゅんっ♡と疼いた。
◇
「あ、あぁ♥ん……あぁ♥」
「そうそう、上手だよーキョウカ。そうやって動いてあげて」
「う、うん……あんっ♥♥」
アヤカに教えてもらいなから、キョウカは寝かせた彼の下半身に跨り、屹としたペニスを擦り上げる。
背後からのホールドを味わったキョウカは、今度は彼と向き合いながら、自分から腰を動かしていた。
彼の快楽に浸る表情を見ながら自分の腰を揺らす、抱かれながらやるのとはまた違った刺激が彼女の子宮を通して全身に伝わった。
ちゅぼっ! ぢゅぼっ! ぢゅぼっ!
「ふぁ……つ、突いてる……彼君の……私の奥……キスしてるよぉ♥ああん♥」
ふわふわのトロトロなキョウカの狭窄は、硬さを増していくペニスを包み込む。蚯蚓のように這った肉壁は、一つ一つの凹凸が彼の竿とカリ裏を轢いて屠る。
むにゅっ♡むにゅっ♡
「ふぁ……彼君、おっぱい、気持ちいい?」
膝を上手く使って体を上下に揺らし、彼の顔を谷間に埋めさせる。この世のどの枕なんかよりも柔らかく、汗で蒸れながらも人肌が通った温かさを持つ、そんな彼女の2つの果実に包まれた彼は、頷く以外の選択肢はなかった。
「あ、良かった……いつでも揉んでいいからね……お゛っ♥」
彼はアクメするキョウカを上目で見ながら、彼女の谷間に舌を這わせた。ぬるりぬるりとさせる度に、しょっぱくて甘さの混ざった味が舌の上を転がる。
「あー、ほんともう、彼君はエッチな男の子だなぁ」
彼の背中を支えていたアヤカは彼のおっぱい好きな一面に微笑みを零した。施設にいた頃も、よくこうやって年下の子どもたちをあやしていたっけ、今の彼はまるで甘えん坊な幼児のようにだ。そう思うだけで、アヤカの本能的に植え付けられた母性は刺激された。
「それじゃあ、これはどうかなー?」
彼の肩に手をやり、アヤカは彼の後頭部に巨乳を押し付けた。
「ほーら、おっぱいサンドイッチだよ〜♥暖かいよ〜♥」
「ふ、んっ♥」
4つの豊乳の海に彼の頭は揉みくちゃにされる。ねばっとした汗が覆い、息苦しく暑苦しい、そんな海の中、彼は天に昇るような快感を覚えた。もうこのまま包まれながら死んでしまってもいいと、言葉が頭のてっぺん辺りで浮かんできた。
「ふぁ、い、いく……ま、またいっちゃう♥彼君のおちんぽミルク……びゅ〜ってされちゃう……うぅぅ♥」
乳によって塞がった耳元にキョウカの喘ぎが聞こえる。
「い、いく、またいく゛っ♥あ゛♥」
……びゅぐるぅっ!! びゅぐるる!! びゅぶっ!!
「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛〜〜〜……ぁ♥」
腰を深く下ろしたと同時に、彼のペニスが彼女の子宮口をごつりと突き上げ、尖端からザーメンを放った。脈動するペニスに膣壁がぎゅっとしがみつき、ずる〜っと根元から千切る勢いで引っ張り上げる。一滴も残さないように、肉ついた唇は彼の雄をしっかりと咥えて離さない。
ドクンっ! ドクンっ! ドクンっ! ドプンッ♡♡
「うわぁ、あんなに出したのに、まだまだ出るんだ」
鈍い粘り気のある音とともに、這い上がる精汁が注がれる。キョウカは腰をビクンとさせつつ受け止めた。
「こ、こんなに……出されたら…………ホントに、母乳、出ちゃうよぉ♥」
「キョウカったら、そんなに彼との赤ちゃん欲しいんだ。ねえ? ホント一途だよね」
笑いながら、アヤカは彼の頭を撫でた。その顔は、戯れる男女を端から傍観する淫女のように意地悪なものだった。
◇
「お゛ぉおっ♥お゛、おまんこらめぇ゛っ! ♥ぐぅ! ♥」
そんな余裕をぶっこいていたアヤカの笑みは、マングリ返しの姿勢にされて陰部を屠られることによって崩れた。腰と背中を浮かせながら、両脚を頭の方へと持っていくその姿は、陰部を晒し者にされ辱めを受ける罪人のようだ。
ぢゅるっ! ぢゅるる! ぢゅるる♡
「な、舐めちゃらめ♥あ、ぁあ♥お゛ぉ……ぁ゛、あぁっ! あぁん♥」
ベロベロと這う舌肉の擽りに、アヤカは悶える。しかし暴れようにも、臀部は彼にホールドされているため、抵抗すらできない。アヤカはただ目の前で自分の陰部を彼が啄むのを見守ることしかできなかった。
ぢゅるっ、ぴちゅっ、ぴちゅる♡
「ひぃんっ♥そ、そこはおまんこじゃなくておしりぃ♥」
舌先で割れ目を愛撫しつつ、彼はそのままケツ穴にもチロチロと肉を這わせた。当然ながらまだ未貫通な彼女の尻穴は、レロレロと舌が掠める度に皺をヒクつかせた。
「あ、ダメ♥そんな場所舐めたらダメだよぉ♥き、汚いからぁ♥あ゛ぁ!? ♥」
あまりの恥ずかしさに赤面しながら叫ぶアヤカ。しかしその顔は、目も口元も蕩けさせただらしないアヘ顔を浮かべていた。
「アヤカ……大丈夫?」
彼の背中に豊乳を押し付けていたキョウカが、心配そうに声をかけた。
「だ、大丈夫じゃない♥こんなの、大丈夫じゃないよぉ♥」
「そっか……苦しい? 私、手伝うね?」
意地悪なのか、本心なのか、キョウカは彼の背後から手を伸ばし、代わりに彼女の臀を支えた。
「キョ、キョウカ? そ、それ、どういうことぉぉぉ゛♥」
自由になった彼は、早速ゴツゴツとした指をアヤカの膣穴と尻穴に突っ込んだ。奥のものを抉り出すように、指先は2つの穴をグチュグチュと掻き回す、
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡
「お゛ぉ!? だ、ダメぇ♥おまんこもおしりもぐちゃぐちゃしないでぇ♥何かでちゃうぅぅ♥♥」
「へへ、あ、アヤカ……凄くエッチ…………♥」
長年連れ添ってきた彼女が、こんなにも攻めに弱い人だったなんて。初めて垣間見た親友の淫売な姿に、キョウカの背筋はゾクゾクした。今度2人きりの時にでも何か突っ込んであげようと、加虐的な考えを浮かべた。
「ひぐっ! ふぐぅ! んぐぅ♥♥ぉ゛お゛お゛!?」
無様に弄られる自分の秘部。ただ眺めることしかできない美人顔を崩したアヤカの姿。なんて心を唆るのだろうか。このまま彼女1人にイカせるなんて勿体ない。エロい思考に従うままに、彼は絶頂前の彼女から指を引き抜く。2つの粘液がとろりとした糸を引いた。
…………ずぶんっ!
そしてそのまま立ち上がると、彼は彼女の膣穴にペニスをあて、一気に挿入した。
「お゛おぉぉ゛ぉ゛ォ゛ォ゛ォ゛お゛お゛ォ゛ッッッ゛♥♥♥」
突然襲ってきた刺激にアヤカは張り裂けそうな声をあげた。
「お、や゛♥これ、ダメ♥ダメぇぇ♥んぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛♥」
ちんこの激進に従い、彼は腰を振り下ろし続けた。こんな姿勢でやったことなど無論ない。だからこそ、彼自身も未知の感覚に腰を抜かしそうになっていた。
「お゛ぉ♥ちんぽぉぉ♥彼君のちんぽ♥すごすき゛ぃ♥♥」
そして何より、こんなにもアヤカがマゾっぽい一面を持っていたことには、驚きと興奮を隠せないでいた。きっと彼女は、首輪とリードを付ければワンワンと四つん這いで歩くかもしれない。おしっこと命令すれば、電信柱に元気よくふっかけるだろう。後ろからバックをかませば、ぶるんと胸を揺らしながらキャンキャンと媚びた雌声をあげるに違いない。
そんな真似は絶対にできないが、彼のチリチリパーンと弾け続けた頭は勝手に想像させてしまうのだ。
ずぶんっ! ずぶんっ! ずぶんっ! ずぶんっ!
「い゛、ま、まんこ潰れりゅっ♥アヤカのメスまんこ潰れちゃうぅぅぅ♥」
杭を打つハンマーの如く、彼はピストン運動を繰り返し、彼女の腰を砕いていく。子宮内に残るザーメンがタプタプと波をうち、張りのある豊乳が縦横無尽に弾み続ける。
ずちゅんっ♡ずちゅんっ♡ずちゅんっ♡ずちゅんっ♡
「いぐぅ♥♥またいぐぅ♥♥アヤカの中からお汁飛び出るぅ♥♥」
…………ぐちゅんっ♡♡♡
ペニスを子宮口を突き刺すと同時に、彼はチン先からぷりぷりと鮮度を保った精液を吐き出した。下に向かって指す姿勢なため、結合部から溢れることはない。
「い゛く゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ぅぅうううっ!!!!!! ♥♥♥」
ぷしゅうぅぅぅぅっ♡
灼かれる熱さとともに、アヤカは甲高い絶頂声を上げて潮水を噴き出し、自身の体を汚した。
「…………えいっ♥」
ずぼっ、と彼の尻穴に突然の異物感が襲った。1人眺めていたキョウカが、彼のケツ穴に指を挿入したのだ。
「……へへ、彼君も……こうした方が出るかなって…………びゅ〜、びゅ〜っ♥」
キョウカは前立腺目掛けて彼のケツ穴をほじくる。まさか自分がやられる側だとは思わなかった彼は、しかしこのまま腰を抜かすわけにもいかず、脚を震わせつつも、なんとかそのままの姿勢を保った。
ぎゅうぅぅっ♡
びゅぶっ♡どぴゅ♡どぴゅるっ♡びゅぷるるっ♡とぷんっ♡
ケツ穴マッサージのおかげか、止まりかけていた彼の射精は勢いを取り戻し、まだまだアヤカの中へと精汁を流していった。アヤカは肉壁を捻らせながら、それらを一滴残らずごきゅごきゅと搾り取り、子宮の中へとぷんと溜めていく。
「ま、まだ出てるの……♥もう入んないよぉ……♥」
目端から涙を零しながら、アヤカは舌を垂らしたアヘ顔を浮かべた。
◇
じゅるっ……! じゅるるっ! じゅぼっ♡
「んっ、んふっ♥」
2人の肉壺で潤いを得た肉幹を、キョウカは彼の股座に顔を突っ込みながら頬肉で覆う。人肌よりも高く、膣肉とはまた違った温かさに、彼は投げ出した脚を震わせた。
ちゅるっ♡ちゅぼっ♡ぢゅぽっ♡
「ふぅ、んん♥はむっ♥……んち゛ゅ♥♥ち゛ゅるるる♥」
キョウカは股間部に顔を埋め、ゆったりと頭を動かしてペニスを奉仕していく。頬を窄めて茎の黒い肌をぬるぬると、しっとりと濡れた内頬肉がカリの裏側を擦りあげる。
「ふんっ、ちゅるる♥れろ…………れろれろっ♥♥」
単に頭を動かすだけでない。キョウカは揺らしつつも、時に舌肉を用いて裏筋を撫でるように舐めた。少し長めなのもあって、キョウカの舌先は尿道を擽るように畝り動いた。
ごりゅ♡ごりゅ♡ごりっ♡
さらに余裕が生まれると、今度は亀頭を頬肉に押し付けた。指で押せばぷにゅりとした柔らかさを跳ね返す彼女の可愛らしい頬が内側から盛り上がる。包まれながらも押し潰されるような悦楽に、彼は思わず下腹部に力を込めた。
「ふっ、はへふん♥……きほひい?」
頬張りながらキョウカは訪ねた。幾数回も射精を迎えた彼のペニスは全身が敏感な状態になっており、それこそ、今の彼女の籠もり声から発せられた振動ですら、彼にとっては雄の声を漏らしてしまうほどの快い感覚だった。
「んっ、ちゅ…………ん゛ンっ!」
キョウカの肉厚な陰唇に、ヌメリを持ったアヤカの舌が這い上がった。ペロペロペロペロ、まるで女の股下を舐めるバター犬のような舌使いで、アヤカはキョウカの愛の蜜を味わう。
「れろっ、キョウカのおまんこ、トロトロしてて、美味しい♥」
彼の股座に四つん這いにならながら顔を入れたキョウカ、その彼女の突き出した臀の谷間にアヤカは顔を埋め、彼女の蜜と膣穴から溢れる彼の精液を舌の上に轢き伸ばし、飲み込んでいた。
「んちゅっ♥れろっ♥……あっ♥」
「ん゛ン゛っ! んっ、……んふぅ、ふぅ♥」
肉尻をくぱりと開かせ、アヤカはキョウカを味わう。大きな唇を口で包み込み、じゅるりと吸い込み、尖端で小さな唇をなぞり遊んだのち、蜜穴の中へ潜らせ痴肉を解す。もどかしい刺激にキョウカは臀をうずらせながらも、彼のペニスはしっかりと包み込んだ。むしろアヤカに攻められたことで、キョウカの頬の締まりは良くなった。
キョウカ、キョウカのおまんこ美味しいよ。こんなにも濡れてて酸っぱくて、苦くて、口の中で蕩けてるよ。
もしも口を開けていたのなら、アヤカは恥ずかしさの欠片もなくそう言っていただろう。そしてキョウカもまた、すごく気持ちがいいと答えてくれたに違いない。
なんてエロティックな光景。彼は自分の肉棒を求めるキョウカと、そのキョウカの臀に顔を埋めるアヤカの姿に興奮を覚えた。
──どびゅるっ!!!
「んぐぅぅぅ゛っ♥」
ぷしゅうっ!
根元まで咥え込んだ瞬間、彼は腰を浮かせた。濃厚で生臭い味わい深いザーメンがキョウカの口いっぱいに広がり、一部は頬に袋のように堪り、また一部は喉奥へと滑り落ちていく。
それと同じタイミングで、アヤカの口の中に濃い味の水が広がった。キョウカの穴から排出されたその水は、彼女の口腔内を酸味で埋めつくした。
「んっ……んっ……♥ンクッ♥ンクッ♥ンク゛ッ♥」
キョウカは目尻から涙の雫を伝わせつつ、彼からのプレゼントをゆっくりと飲み込んでいく。少しずつ、少しずつ、口の中に溜まった分を胃の中へと落とし、頬肉を窄ませてちゅうぅぅ、と高い音を立てた。そのまま食べてしまうかのような勢いに、彼はああ、と声を荒らげた。
キョウカはこの数時間で彼の性感帯と弱点を把握した。どこを攻めれば彼が快感で悶えるのか、どう性技を使えば彼が咆哮するのか。受け身を取りながらも、彼女はその全てを理解してしまったのだ。
「んくっ……キョウカ、ホントに彼君のことが大好きだねぇ」
キョウカは上目遣いのまま、頬を膨らませたり萎ませたりしつつ、彼の陽物を咥えたまま舌肉を走らせる。
そんな彼女の姿に、アヤカは肉尻を掴みながら淫笑した。
◇
ごちゅっ! ごちゅっ! ごちゅっ! どちゅっ!
「ふごっ! ♥んぐぅぅ♥ん゛ぇ゛ぇ゛♥♥♥!!」
そしてアヤカもまた、彼の獣のような逸物を細い喉で受け止めた。しかもキョウカのように優しく抱擁するのではなく、彼が頭に跨りながら口許に挿入する逆さフェラの姿勢で、一方的に喉奥を突かれていた。
「ふぐっ、んぇ♥ん゛ん゛っ♥」
激しく喉を出入りする水音と共に、アヤカは悲鳴に近い呻き声を漏らす。圧倒的な太さと長さを誇る肉棒は彼女の気管支を容赦なく塞ぎ、喉仏をボコっと盛り上げ、咽頭を焼く勢いで擦り上げる。
「(じ、じぬっ♥こ゛れ゛♥し゛んじゃうぅ♥)」
本来なら食べ物を咀嚼し嚥下するか、呼吸をするために付いている人間の部位。そんな箇所を、肉幹という汚く醜いものが無理やり押し広げているため、アヤカは白目を剥いて失神しかける。
しかし彼女は苦しさとともに、この姿勢での攻めに快感を得ていた。さらついた赤い肉したは彼の潮っぽい味を逃すまいとまとわりつき、喉はもっと欲しいと弛緩した。
「んぐぇ! んぐっ! ふぐっ、ぅ!」
激しく顔にぶつかる彼の陰部、そして鼻先にどしっとのしかかる玉袋。まだまだ精子がたぷんと詰まっている丸い睾丸が、彼女の鼻の穴を塞ぎ、唯一の抜け道さえ雄臭い匂いで覆ってしまう。球筋がドクンドクンと脈を打ち、彼女の顔肌にぴくりと当たる。
「んん゛っっ! んぉ゛ぉ゛ぉ! こ゛ぉ゛ォォ゛っ!!!」
彼には分かる。アヤカが苦しみ悶えながらも、喉を焼く快感に細かな絶頂を迎えているのを、自分が手加減無用にペニスを奥へ奥へと挿入させることで、彼女が悦びに喘ぐのを。
「あ、んっ♥れろっ♥レロッ♥」
その証拠に、くぱぁと開かれたアヤカのピンクの肉ビラからは、蜜と潮が垂れ流しにされていた。ぷしゅっ、ぷしゅっ、と、細かい潮が微かな音を立てながらじわりと溢れ出す。
それらは肛門を通って臀溝へと伝い落ちようとし、彼女の股間部へ顔を埋めたキョウカは、その全てを細舌で舐め嚥んだ。彼の股間を味わった時と同じように、アヤカのおまんこと恥丘、桃色のクリトリスを唇で啄み、むしゃぶりついた。
ごちゅっ♡ずち゛っ♡じゅふ゛っ♡ずちゅっ♡ずるつさっ♡
「んこ゛、ぉ……ぉぇ゛え! ふ゛ふぅッ♥」
苦しい、苦しい、息ができない、窒息する、なのに、自分は興奮している。苦しいのは嫌なはずなのに、今の私は彼にこうして攻められ、キョウカに太腿を開脚させられ、身動きひとつ取れない状態で好き勝手に弄ばれている状況に喜びを感じている。
精液のように白く茹で上がるアヤカの頭は、催淫したようにエロ思考一色に染まりきっていた。人前で晒したことなど、それどころか自分自身でも知らない淫らな自分の姿に、アヤカは彼の子種を収めた子宮を疼かせた。
「んっ……彼君…………アヤカの中に、びゅ〜ってしてあげて……♥」
キョウカの願いに答えように、彼はずぼりと肉棒を喉奥深くにまで突き刺し、喉をボコりと盛り上げさせた。
──びゅぶるるるっ♡♡びゅぶぅぅぅぅ〜〜っ♡♡
刹那、咽頭で太さを増した肉幹が脈を打ち、子種玉を弾けさせた。精子を大量に含み、絶えず濃厚さと量を維持したザーメンは、直に食道へと流され、アヤカの喉を灼熱が雪崩込んだ。
「う゛ぅ゛ぅ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ぅぅぅぅぅッッッッ♥♥♥」
息もできない、気管支を閉じることに必死で、ただ只管ドロドロどびゅどびゅと放たれる精液汁を飲み込むしかない。
段々と意識が遠のき、唇の隙間から涎がタレ落ちる。しかし焼けるような熱さは容赦なく胃袋目掛けて流れ込んだ。
びゅっ♡びゅぶっ♡びゅろろっ♡ぶびゅっ♡…………ぬぼっ♡
「お゛………………♥」
肉棒が引き抜かれ、アヤカはようやく肺に空気を送り込んだ。意識はまだ浮遊したままなのか、彼女は白目を剥きかけながら、口許をぽっかりと空けたまま朦朧としていた。
びゅぶっ♡びゅるっ♡びゅるるっ♡
彼は放心するアヤカの顔面に向かって、残滓をぶっかけた。上気した彼女の顔を汚したいという衝動を抑えることなど不可能だった。
「んっ…………アヤカ……♥」
顔を上げたキョウカは彼女の体に被さり、顔を見合わせ、真上から落とすように舌先から唾液を吐き出した。
キョウカの唾と彼の精液、アヤカの蜜が混ざった特製の愛の液体を、アヤカは舌の表面で受け止め、ゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ。
「元気、出た?」
アヤカは体を微弱に痙攣させるだけで頷かない。
その代わりに、口許を弓なりにさせた。
◇
彼女達という誕生日プレゼントを渡されてから既に数時間、N回目の射精を終えた彼は、足を伸ばして干からびそうな体を休めていた。
「んちゅっ、はむっ♥」
「ん…………あっ♥」
しかし、そんなことは彼女達が許さなかった。
彼女達は仲良く脚の間に潜り込むと、彼の股間にまたも顔を埋めてペニスをペロペロと舐めた。早く元気にな〜れと
「ん♥……彼君、私達、まだ足りないよ」
「れろ……もっと……欲しい♥」
上目遣いで瞳を潤ませながら懇願する2人。くうんとした声を上げるものだから、彼の肉棒はいやでも硬さを取り戻してしまう。しかも気のせいか、始めたばかりの頃よりも硬さも長さも増している気がした。
再度固まった陽物を、2人は頬で挟んだ。浮き出た血管の脈動を肌で感じ、まだまだヤレることを確認した。
「ドクドクってしてる……まだいけるって」
「うん……バキバキ……♥」
「じゃあ、あれしよっか」
「あれ? ……あぅ」
アヤカはキョウカを押し倒し、仰向けの彼女の体に覆い被さるように寝転び、陰部と陰部を重ねた。その光景は、彼から見ると一輪の肉の花のように見えた。
「彼君、今度はここに入れて欲しいなぁ」
「……うん、入れて……」
フリフリと2段重ねの肉尻が揺れる。淫猥めいた瞳が彼を見つめ、早く来てと誘っている。
彼は立ち上がり、とろりと粘液が滴る割れ目に勃起した肉先をあてた。
じゅぷぷぷっ!
「ふぁん♥」
「あ、あぁ……♥」
精液と愛蜜でしっぽりと濡れた肉の花弁が、パクパクと開閉しながら彼を吸い込んでいく。膣穴でもないのにぎゅっと絞めるその感覚に、彼は唇から雄叫びを上げた。
じゅぼっ……じゅぼっ♡じゅぼっ♡
「あ、これ、なに♥中を擦るのと全然ち……きゃあん♥」
「はっ、あっ♥熱い、熱いよぉ♥」
陰部の秘裂を熱された棒のように熱い肉棒がズボズボと前後に擦り動く。彼によってたっぷりと開発をされてしまった彼女達の陰部は、最早外側を掠めるだけでも感じるようになってしまっていた。
じゅぼっ♡じゅぼっ♡じゅぼっ♡じゅぼっ♡
ぱくりと開いた肉貝は、竿に沿って柔らかく形を変えて締め付ける。そこをずるりと引いたり押したりしているため、亀頭の首下はダイレクトに擦りあげられる。
ずりゅ♡ずりゅ♡ずりゅ♡
「あ、く、くり♥くりぃぃ♥」
「うん、あ……クリトリス……うんぅぅ♥」
さらに亀頭はぴょんと勃起した突起を引っ掛け、ずるりと擦る。指先で弄る敏感な箇所が、太い幹によって摩耗される。
膣内とはまた違った快感に、彼は思わずアヤカの尻肉に指を沈ませ、爪をくい込ませた。
「んぎぃぃ♥ひぎゅぅうぅ!? ♥」
ぎゅうっと肌に沈む痛みにアヤカは悶え喘いだ。
もういっその事認めてしまおう。自分は攻められるのが好きなんだ。彼に攻められるのが好きなんだ。やだ、なんて卑猥なんだ。私、こんな自分がいたなんて。ああ、ダメ、狂っちゃう。
目を剥きながら、アヤカはピンクな思考を開花させた。
「アヤカ…………♥」
キョウカはそんな彼女を見上げながら、滴る涎を口元で受け止めた。彼もアヤカも、キョウカは2人の快感と重さをその包容力のあるボディで受け止める。
私がいるから大丈夫だよ、ねえ、慰めてあげるから、身を任せて。
「キョ、キョウカぁ♥」
「あ、あっ♥……んちゅ♥」
アヤカは甘え声をあげて、キョウカの唇を塞いだ。
「んっ、ちゅっ♥んれっ♥んっ、ちゅっ♥」
「あっ、あぇ♥んんっ♥んぇ、はっ、んん♥」
ぴちゅっ、れろっ、淫女2人のリップ音が響き渡る。恋愛感情があるわけではないが、狂った性的な思考に拍車がかかった今の2人は、互いの唇を求めていた。親友の唾液を欲して只管にレロレロと舌先を絡めた。
むにゅりむにゅりと4つの豊乳が潰れ、お互いの峰を擦り合わせる。粘つく汗でぬるりと滑り合う体がギシギシとベッドを軋ませる。
「お゛ぉ♥おぉォォ゛♥んおォ゛゛♥」
「あ、あぁ♥あっ♥」
3つの男女の裸体が混ざり合う。今日という日を祝うかのように、3人は気持ちのままに喘ぎ、涎を垂れ流し、汗と粘液を飛沫させた。
「く、くる♥またお腹があちゅくなって、あれくりゅぅ♥」
「わ、わらひ、もう…………♥」
彼の腰揺れが激しさを増す。ペニスは身を引き締め、静かな膨張を始めた。
──うっ……っ!
苦しむ声が轟く。
「「あ゛ァァァァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ♥♥♥」」
甲高い姫声が重なり、部屋の中を震わせた。
同時に彼の肉幹からN回目のザーメンが解き放たれ、彼女達の腹部に飛び散った。もう既に何回も放っているせいか。初めのような量は出ない。だが背中を駆け巡る痺れるような電撃に似た快感は、変わらず彼の脳髄にドバドバと興奮物質を出させた。
「はぁ……ねえ、キョウカ……私ね、彼君のこと、好き♥」
「うん……私も…………彼君のこと……好きぃ♥」
荒い息を吐き、上気する声を漏らすアヤカとキョウカ。2人の女体の熱を感じながら、彼は疲れきった身体を再起し始めた。
もう自分でも止められない、絶倫に目覚めてしまった彼は、果てることを知らない己の性欲に身を溺れさせる。白く茹だった頭の中で、彼はただ彼女達の体を求めた。
「彼く〜ん♥」
「……まだ、やろ♥」
そして彼女達も答えるように、肉の花弁をぎゅっと締め付けた。
◇◇◇
朝特有の白い光がカーテンの隙間から入り込み、部屋の中を薄暗く照らす。どれだけ遮ろうとも、朝の青々とした色はどんな小さな隙間からも中へと入り込み、寝ている者の目に意地悪く痛みを与える。
アヤカとキョウカとの初夜を終えた彼もまたその1人だった。幸せな夢に浸っていた最中、幸福な気分で目覚めた彼を待っていたのは、現実に引き戻す外光だった。
しかし、枯れ果てた体は睡眠を取ったことで水を吸った植物のように瑞々しさを取り戻し、目元はパッチリと、スッキリとした目覚めを得ていた。
ずりゅっ♡ずりゅ♡ぬぷんっ♡
そして彼の逸物もまた、瑞々しいふかふかな柔らかさに包まれて目を覚ましていた。いや、彼が目を覚ますより先に勃起していたようだ。
「あ、起きた?」
「お、おはよう……」
起きた彼に、アヤカとキョウカは甘い声をかけた。肉棒を自分達の豊乳で包み込みながら、上下にたぷんたぷんと揺らして擦る。世の男性ならそうそう味わえないダブルパイズリを、早朝から仲良くやらかしていた。
「びっくりした? うん、そうだよ。彼君のおちんぽが朝立ちしてたから、折角だしやろうってキョウカと話し合ったの」
「ぱ、パイズリ……2人でやれてなかったから……やってあげよって」
昨夜のバースデープレゼントは、彼女達からの贈り物に加えて彼女達自身も捧げるという驚きのものだった。彼は肉欲のままに彼女達と繋がり、嫐り嫐られのプレイを楽しんだ。
「昨日の彼君、本当に獣みたいだったね。私、自分があんなに淫乱だったなんて初めて知ったよ」
「私も……エッチが気持ちいいって……初めて感じた」
ピンと屹立する薄色の乳首を擦り合わせ、2人は姫声を漏らす。谷間は唾液で既に濡れており、ペニスは2人の隙間をずるりずるりと蠢いていた。
むちゅ♡むぎゅ♡むぎゅ♡むにゅう♡♡
「んっ♥あ゛っは♥はぁ♥」
「ん、レロッ♥レロッ♥」
肉圧を与えつつ、2人は両側から彼の物を舐め上げた。側面から鰓の裏に向かって舌先を這わせ、透明な唾液を塗りたくるように赤黒い体にコーティングしていく。
チンコ特有のチンカス臭さに鼻奥を犯されながら、アヤカとキョウカは無我夢中に、しかし視線は彼に向けたままむしゃぶり、舐め続けた。
「ん……ん♥」
「はぁ……あむ♥」
絶景、一言で言うならその言葉が当てはまる。
こんなにも愛らしい2人を、彼は抱いた。これからも先、彼は2人のことを抱き続けるだろう。嫌いになるなんてことはない。そんな不安なんて、考える必要もなかった。
──びゅるるるるっ♡ドビュっ♡びゅぶっ♡♡♡
「「あっ……♥」」
朝一番の、眠っている間に睾丸で生成された新鮮なプリプリザーメンが鈴口から迸り宙を舞う。鼻先を掠めたそれは、2人の艶々と光を跳ね返す長髪にふりかかる。
びゅぶっ♡びゅぶっ♡びゅぶるっ♡♡
さらに勢いは止まず、目元や額、頬や鼻先と、顔の至る所にも飛びついて、彼女達を白く染め上げた。一部は谷間の方へと落ちて、胸の間で粘り気のある湖を作った。ドクンと玉袋の血管が脈打つと、精液はみるみるうちに溢れ出した。
アヤカは亀頭をパクリとしゃぶり、溢れる子種を吸い取る。つんと鈴口に舌先を押し付けて、栗の花の臭いがする精液を舐め取り、それが終わると、今度はキョウカが同じように亀頭を覆う。おかげで彼も獣も朝から萎えることすら許されなかった。
「相変わらず凄い量……あんなに出したのに、もうこんなに♥」
「……うん……美味しい♥」
ぺろりと唇に付着した分を舐め取り、恍惚とした表情で彼を見つめた。薄暗さの中で潤んだ彼女達の瞳は、淫妖さを秘めながらも、彼のことを愛してやまない、そんな気持ちを訴えていた。
「彼君、今日は仕事、お休みなんだ」
「……だから……ね♥」
──俺もだよ。
だから、今日はこのまま1日、3人で愛し合おう。溶けて消えてしまうほどに、肉体を紡ぎ合おう。
全員、口に出さなくとも同じ気持ちを湧かせていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
──あの日、私達はあの橋の下で偶然出会った。
──1人になりたくて、人気のない橋の下に逃げ込んだのが、私達の出会いだった。
──彼女の紅色の瞳は、酷く濁っていた。ボサボサでパサついた黒髪からは、酸っぱい匂いがした。
──彼女の瑠璃色の瞳には、光がなかった。どこまでも深い闇に落ちてしまいそうな目は、まるで孤独を訴えているかのようだった。
──私達は、お互いに似た匂いを感じ取った。初めて遭遇したはずなのに、昔から知っているような、そんな感覚を持った。
──だから、気がついた時には、彼女と私は自然と話していた。目と目を合わせながら、その場で座り込んで真っ直ぐと。
──あなたはだあれ? と訊くと、彼女は名前を言った。縮込むように小さな声で、緊張で言葉を突っ返させながら。
──私が名前を言うと、彼女は自分の名前を名乗った。私よりもハキハキとしていて、けれど無感情に近い。
──私達は膝と膝を向かい合わせながら口を開いた。
──口を開いて、お互いのことを話した。
──彼女の家庭環境は、一言で言うなら最悪だ。母親と2人暮らしで、母親は彼女のことを蔑んでいた。毎日暴言を浴びせ、気に食わないことがあればすぐに叩き、酷い時は、首輪を付けて紐を壁の手すりに括りつけたりしていた。さらに、その女は自宅に男を連れ込んでいた。その男も女同様に彼女に暴力を振るい、時に殴り、時に成長途中の彼女の体を慰めものにした。しかし、女は何もしない。煙草を吸うか、酒を煽るか、笑いながらテレビを見ているか、彼女の目の前で男とセックスをしているか。聞いているだけでも吐き気に襲われるような内容を、彼女は諦めた表情で語った。
──彼女の両親は、私からしても異常だと思った。彼女の生活を常に管理して、自分達が不必要だと感じたものは取り上げ、自分達が決めたことを無理やり押し付けるようにやらせる。いい学校に入れるように、毎日毎日、何時間も彼女を拘束して、部屋の鍵を閉めてまで勉強させて、外に出ることすら許さない。気に障ったことがあれば躾と称して暴力を振るい、勉強中に眠そうにしている時は冷水や熱湯を浴びせた。その全てを彼女のためだと言い張り、自分達は間違ってないと豪語した。髪型のことでさえ、長髪にすることすら許してくれない。聞くだけでも、お腹から喉にかけて気持ち悪いものが駆け上がってきた。
──彼女は服の裾を捲ってお腹を見せた。脇腹の辺りに、黒い痣ができていた。
──彼女は長い袖を捲った。二の腕辺りに私と同じような痣があった。
──彼女は親から『愛してる』と言われたことがない。代わりに『お前なんてさっさと堕ろせばよかった』と言われていた。
──彼女は親から褒められたことがない。全て出来て当たり前で、出来なければ恥をかかせるなと怒鳴られていた。
──学校で彼女は虐められていた。お風呂に入れてないことや服を洗ってもらえてないことをクラスメイトからはからかわれ、ゴミと同じ扱いを受け、水をかけられ、貧しいという理由でやってもいない罪を擦り付けられた。教師ですら、勉強ができない彼女のことを忌み嫌い、追い込まれる姿をさも自業自得とでも云うかのように見放していた。みんなの鬱屈とした気持ちを、彼女1人にぶつけることで晴らしていた。
──学校で彼女は孤立していた。成績優秀で、教師への態度もいい、親が求める優等生を演じる彼女のことを、同級生達は表面上では仲の良さを装い、その裏では気持ちが悪い、偉そう、自分達を下に見ている、調子に乗っていると嫌厭していた。だから、友達と呼べる人は1人もいなかった。
──彼女は、母親を棄てたいと話していた。両手足を男の背中に回してアンアンとだらしなく喘ぐあの人を棄てて、今の地獄から解放されたいと。
けど、母親への情がどうしても捨てることが出来ないと嘆いた。どれだけ酷い目に合わされても、どれだけ嫌いと思っていても、幼い頃に見せてくれた唯一の笑顔が忘れられなくて、本当の意味で母親のことを嫌いになれないと。
──彼女は、両親を殺したいと語っていた。プライドとコンプレックスの塊のようなあの二人さえいなければ、自分は自分の顔を、肌を、目を、唇を、胸を、体の全てを受け入れることが出来ると。
けど、どうしても頭の中の枷が邪魔をしてくると悩んでいた。殺したくても、頭の中にある『人殺しはいけない』という植え付けられたルールがそれを阻むと。
──私は人間が好きじゃない。でも、動物は大好きだ。動物はクラスメイトみたいに虐めて来ない。お母さんみたいに殴ってこない。あの男みたいに体を求めてこない。ただ一緒にいるだけで、家にいる時よりも心は安らいだ。
──だから、私は彼女に告白した。親を殺したくても殺せないその鬱憤を、別の生命を殺めることで晴らそうとしていたことを。虫や爬虫類だけじゃなく、子犬や子猫を、無垢で悪意すらまだ知らない彼らをこの手で殺し、バラバラに解体していたことを。1度や2度じゃなく、何度も何度も繰り返していたことを。
──彼女の告白に驚きを隠せなかった。けど、かといって彼女のことを嫌悪する気持ちも、批難するつもりもなかった。彼女は、やはり私と似ている。私も彼女も、この地獄を生きている、一人ぼっちの女の子だった。
──彼女は、私を責めなかった。その代わり、友達になって欲しいと言ってきた。大好きなものを壊してきた私を、彼女は友達になろうとしてくれた。
──彼女は、私の手を握ってくれた。そして私の体を、臭くてみんなから爪弾きにされている私のこの体を、抱きしめてくれた。私も抱き返した。
──なんて暖かいんだろう。両親に抱かれるよりも、こんなにも抱擁力がある人は初めてだ。
──いい匂い。このままずっと抱きしめてもらいたい。私は、このまま彼女と一緒になってもいい気がした。
──運命の出会い、これがそうなのかもしれない。
──この地獄みたいな世界に生まれ落ちて、私達は出会ったんだ。
◇
──それから私達は、あの橋の下で話すようになった。
誰にも見つからず、かつバレてはいけない彼女との秘密の時間。バレれば引き離されることが確定している危ない関係。数十分しかない短い時間だけが、私達にとっての唯一の楽しみになっていた。
──どんなに辛いことがあっても、死ねと言われても、嫌な目にあっても、私は彼女と話せると思うだけで、その日の痛みを乗り切ることができた。
──彼女の前でだけ、私は私になれた。いい子を演じず、親に従順する必要もない。動物を殺すこともない。こんなにも解放された気分は、この世に生まれて初めてかもしれない。
──私達は話すだけじゃなく、プレゼントも渡しあった。
私は休憩時間に自由帳に描いた動物の絵を紙ごと丁寧に破り取り、彼女にプレゼントした。2匹の猫で、黒猫を私、白猫を彼女にたとえて描いてみた。
生まれてから友達がいなかった私は、親しい子にプレゼントを渡したこともなければ、貰ったこともない。私にとって、これが人生で初めての友達へのプレゼントだった。だから、彼女が喜んでくれた時はとても嬉しかったのだ。
──彼女からの贈り物を、私は心から喜んだ。私はプレゼントを彼奴らから貰ったことはなく、誕生日でさえ、歳を重ねるだけだから、祝う必要がないと切り捨てられた。だから、誰かから、しかも友達から貰うのは初めてだった。あまりにも嬉しくて、私はお返しに工作の時間にこっそりと作ったアクセサリーをプレゼントした。彼女は濁っていた紅色の瞳を輝かせてくれた。
──無機質な灰色の壁に囲まれた小さな小さな秘密基地。
──そこは、私達にとっての世界、唯一自由になれる世界。
──日々の恐怖を、彼女が和らげてくれる。
──日々の殺意を、彼女が抑えてくれる。
──この子と2人になれたなら、どれだけ救いになるだろうか。この子となら、一緒に生きていけるかもしれない。けど、今の私達では、一緒になることさえ叶わないだろう。
──そして、私達は考えた。このままこの町にいても自分達は彼奴らの奴隷になるだけだ。だったら、そうなる前にここから出ようと、2人でこの町から出て行こうと。
──その思いは、私も同じだった。こんな地獄にいるよりは、彼女と二人で何処までも遠くへ抜け出し、生きていきたいと。そのためなら、今ある苦痛を耐えきってみせると。
──私達の気持ちは、ひとつになっていた。
◇
──また殴られた。お母さんの誕生日だから頑張って絵を描いて渡したら、下手くそって言われた上に打たれた。こんな絵を描いて、私への当て付けかって怒鳴られた。どれだけ怒鳴っても怒りは収まらなくて、遂には包丁を顔のすぐ横に掠めるように突き刺してきた。
──また叱られた。テストで100点を取れなかったから、サボっていると勝手に決めつけて、男から熱いコーヒーをかけられた。周りの馬鹿な子どもと同じになりたいのかと、汚い唾を飛ばしながら不快な声色で怒鳴った。コーヒーの苦い匂いが頭の中を朧気にさせて、喉奥が詰まるような感覚をさらに悪化させた。
──分かっていた。この人はこういう人だって。私のことが大嫌いで、私のやること成すこと全てが気に食わないんだ。視界に入ることすら許してくれない。存在すら不快なんだ。なのに、なぜ私はこんなものを描いてしまったのだろう。未だに愛情を求めているのだろうか。
──彼奴らはこういう奴らだ。口先では私のためだの将来のためだの都合のいい言葉ばかり言って、結局は自分達のためでしかない。男は学歴のプライド故に、女はコンプレックス故に、所有物である私を自分達の理想の人間に仕上げたいだけだ。愛情なんてものは、欠片もない。あったとしても、随分と歪んでいる。
──仕事から戻ってきたお母さんが、またあの男を連れてきた。2人ともお酒の匂いが酷い。相当飲んだに違いない。お母さんは帰ってきて早々に寝てしまった。そして酔った男は、顔を真っ赤にしたままこっちを睨むと、私の腕を掴んで床に押し倒し、そのまま覆いかぶさってきた。恐くて逃げることもできない。それをいいことに、男は私のパンツを強引に脱がした。
──今日は休日。この前のテストで間違えた箇所を徹底的に見直して、その後は塾の予習と受験勉強を寝るまでしないといけない。昼食と夕食は自室、トイレ以外で部屋からは出られない。常に女が私の隣で監視して、少しでも気に食わない動作があればすぐに後ろから罵声を浴びせてくる。かなりイラついている。どうせまた、あの男に点数が取れなかったのはお前の教育がどうとか言われたのだろう。似たもの同士だから、この女も自分は間違ってないのにと腹を立てているのだろう。片手に持った長細い物がたんっ、たんっ、と肩に当たって音を鳴らしている。耳障りだ。
──私の体重よりも重いものが体にのしかかる。下半身の感覚が殆どない。けど、何かが体の中を出入りしているのは分かる。男の動きに合わせて、私もゆさゆさと前後に揺れる。男は私を見下ろしながら、アルコールの匂いが染み込んだべとりとしたものを口から垂らして頬を汚してきた。
──女の煩わしい声が聞こえる。片手に持ったもので背中を啄いてくる。眼窩に嵌め込まれた眼球がぎゅるりと私を見下ろす。目障り。けど、声自体はただ単に鼓膜を震わせるだけで、言葉は何も聞こえない。夏の騒がしい蝉と変わらない。こいつは人の形をした何か、少なくとも虫以下だ。
──男は私の口の中に玩具を押し込んできた。棒状で見たことがないそれは、私の口を出たり入ったりを繰り返して、唾液でベトベトに汚れた。男は気持ちの悪い笑顔を浮かべながら、それをゆっくりと私のお尻の穴に入れた。苦しむ私を見ながら、男は気持ちの悪い声かけをしながら、気持ちの悪い笑顔を浮かべていた。
──始めて数時間、眠気に襲われたところを、後ろから殴られた。掴まれて、引っ張られて、そのまま服を着たまま浴槽で冷水を浴びせられた。早く目を覚ましなさいと、体を何度も何度も叩かれた。
──随分と上手いな、こういう所は母さんとよく似ている、将来有望、もう少し成長したらいい稼ぎ頭になれる。苦いものが口いっぱいに広がり、喉をどろりと滑り落ちる中、ゴミ袋に囲まれた部屋の中で男の野太い声が響いた。体が浮いている気がした。
──反省が足りない、誰のためにここまでやってきたと思ってるの、あなたを死んだおじいちゃんみたいな学のない出来損ないにしないためなのよ、こんなんじゃいい大学に入れないでしょ。冷たい無数の水粒が頭頂から足先にかけて私を冷やすなか、女の穢らわしい声が聞こえた。
──早く終わらないかな。
──早く終わって、明日になって欲しい。
──明日になれば、また彼女と会える。
──それだけが、今を生きる理由。
──彼女に会えると思うだけで、この苦痛を耐えることができる。
──早く、会いたい。
──この地獄から飛び立ちたい。
◇
──そしてあの日、私達は夜中にこの町を抜け出すことを決めた。時間は親が寝静まった後、待ち合わせ場所はいつもの橋の下。子どもながらに無計画で、ただ出て行きたい一心の、無謀なものだった。
──けれど、私達は本気だった。本気でこの町から、親達から逃げ出そうとした。
──深夜、彼奴らが寝静まった頃合を見て、私は行動に移した。起こさないように、必要なものだけを手提げカバンに詰めていく。生憎、必要な場合にのみお金を渡されていたので、お小遣いというものを貰ったことがない。お金に関しては諦めるしかなかった。
──私は酔い潰れるお母さんとあの男の鼾を背中に、玄関のドアノブを回して外へ出た。どうせ私がいなくても、あの2人は気づくことなんてない。手荷物はボロボロになった手提げに、お母さんの財布からくすねたお金を少しと、絵を描くための紙と色鉛筆を詰めた。これで少しの間なら食べ物はなんとかなる。そしてこの先に待ってる景色を、この紙に描こうと思った。
──部屋の明かりを消して、時を待つ。彼奴らが寝てからの時間を数えて、夢を見始めた頃に、私はゆっくりと部屋を出た。
──私は一番に橋の下についた。秘密基地の中で、両膝を抱えながら、息を潜めて彼女が来るのを待った。夜の川は、昼間と違って真っ暗で、黒い絵の具をそのまま溶かしたかのような色をしていた。向こうの方には電灯の灯りが反射している。風がないせいか、まるで鏡のように、波ひとつない逆さまの電灯が水面に綺麗に映っていた。
──私はそっと、忍び足で階段を降りた。彼奴らに見つからないように、踏み面を軋ませないように。下まで下がりきった後も、今度は廊下を軋ませないように歩いた。緊張で汗が毛穴から溢れる。首筋につぅっとしたものが滴り、襟に染み込んだ。
──この時間帯になると、この川付近に人は来ない。遠くから、自動車の走行音が聞こえる。こんな時間でも、走ってるんだ。
──玄関までもう少し…………というところで、私の肩を何かが掴んだ。この家にいるのは限られているから、その正体について考える必要はなかった。
私は掴まれたまま廊下を引っ張られるように歩き、彼奴らの寝室に投げ倒された。明かりがつく。眩しさに目を細めた。そして慣れた頃に、彼奴らの顔が目に入った。仁王立ちで、目元を暗くしながら私を睨んでいる。女は私から剥ぎ取ったカバンを男から受け取った。もう二度と見ないと決めていた奴らの顔が、私を見下ろしている。
こんな時間に、しかもこんな物を持ってどこへ行こうとしたと、男が言った。当然答えられるはずがなく、私は目を逸らして黙った。
いつもなら善し悪し関係なく返事をする私が黙る。父親である自分に向かって、自分の所有物である子どもの分際で。だから気に入らなかったのだろう。男は私の胸ぐらを掴むと、思い切り左頬を右掌で叩いた。
──急に頬っぺにジンジンとした痛みが走った。数日前に声をかけた罰でお母さんから叩かれたけど、その痛みが遅れて来たのだろうか。けど、だったらどうして胸騒ぎまでするのだろう。彼女になにかあったのだろうか。
──バカ野郎、俺の言うことが聞けないのか、言え、言え、言うんだ、一体どこへ行くつもりだった。
唾を吐きながら男は掌で何度も叩く。強く叩かれる頬が赤く腫れて感覚を失っていく。たまに耳を叩くこともあり、耳から何かが垂れ落ちるような感覚に襲われる。それでも私は口を結んで、男を睨みながら黙り込んだ。これでも、心臓は破裂しそうなくらい激しく鼓動している。私の態度が気に入らなかったのか、今度は床に投げて、腹の辺りを蹴ってきた。死なない程度に加減してるとはいえ、痣ができるほどだから、痛いものは痛い。胃から消化しかけたものが這い上がって吐瀉しそうになる。それでも私は口を開かなかった。
──お腹が痛い。トイレとかそういう痛みじゃないけど、何だか、痛い。
──ここまで育ててきてやった恩を仇で返すつもりか、どれだけ俺の金をかけていると思っているんだ、そう怒り狂いながら男は爪先を私の腹に何度も何度も、腹の膜を突き破るかのようにめり込ませる。そんな怒りで我を忘れた男を、女は制止させた。腕を振り払って続けようとしたのを、無理やり腕で体を引き下げた。
あなた、どこへ行こうとしたの。本当にここから出ていこうとしたの? 女の問にも私は口を噤んだ。女は苛立ったように眉を釣り上げて、早く言いなさいと怒鳴り、持っていた手提げカバンを床に叩きつけた。衝撃で中の物が吐き出されるように、寂しく床に散らばった。カバンの中には、彼女と2人きりのときに大切にしていたものを積めていた。此奴らに見つからないように、今まで隠していたものだ。
なんなのこれ、なんでこんなゴミを持ってるの。女は私達の大切なものを平然とゴミ扱いしながら、床に散らばったものから1つ、A5サイズの紙を摘み上げた。それは、彼女がくれた、私の生まれて初めてのプレゼントだった。
なに、こんな下手くそな絵、どこで手に入れたの? 誰かから貰ったの? 女がそう言っている最中に、私はそれを取り返そうとした。けど、女はひょいと腕を上げて絵を高く持ち上げた。私自身、蹴られた痛みで起き上がることができなかった。
私の言動を見て、女は察したのだろう。なるほど、この絵を描いた子に唆されたのねと、知ったような口で薄笑いを浮かべた。男がそうなのかと睨む中、私は黙ったまま2人を睨んだ。それを肯定と受け取ったのか、女は深いため息を吐いた。
これだから公立の学校は嫌なのよ。素行が悪い子が群がるものだから、この子にこんなことをさせたのよ。きっと相手の子も、ろくな家庭環境じゃないに決まってるわ。親なんか、大学どころか高校を卒業したかどうかも怪しい、日中遊び回っているろくでなしよ。なに、その目。あなたが黙ってても無駄よ。ここいらで公立の学校なんて限られてるんだから、学校に問い合わせればすぐに分かるわ。どうせ問題児だから、聞けばすぐに教えてくれるわよ。あと、今度から帰りは私が迎えに行くようにするから、荷物を変えたらそのまま塾に行きなさい。いいわね。もう二度とこんなものを渡すような子とは付き合っちゃダメよ。
全く、やっぱりお前はダメだな。娘の管理すらまともにできない役立たずだなんて、母親として失格だ。俺のおふくろはもっとちゃんとしてたっていうのに、生きてたら今頃、お前は嫌味のひとつでも言われてただろう。
何よ、まるで私一人に責任があるみたいな言い方。そもそも、あんな学校に通う羽目になったのだって、あなたが下手にプレッシャーを与えて小学受験を失敗させたのが原因でしょ。私1人のせいにしないでよ。それに、この子が夜逃げなんてしようとしたのは、こんな汚い絵でこの子を誑かした子が悪いんだから。お金を集るために仲良くしたんでしょ、この子が自分よりも頭が良いのに嫉妬して、揚げ足取ろうとしたのよ。
全くだ、どうせ水商売で身体を売ってるろくでなしの親の子どもだ。将来、マトモな職なんざつけやしない、売春で金を稼ぐか、誰かに寄生して生きる人間のクズになるのは決まっている。絵を見ただけでも分かる。頭が悪い、学のない遅れた餓鬼だ。
──誰かが、私の悪口を言ってるような気がする。でも、悪口なんて言われ慣れてる。
──ふざけるな。
第一声がそれだった。
ふざけるな、お前らが彼女を侮辱するな。彼女のなにが分かる。彼女のなにを知っている。何も知らないくせに、我が子すらまともに愛せないお前らに彼女を貶す資格はない。その汚い粘ついた口を閉じろ。今すぐ切り落とせ。
なんだその口の利き方は。
黙れ、黙れ黙れ黙れ。死ね、死ね。死ね。死ね。死ね。
鋭い蹴りとビンタが襲う中、私は呪詛を吐き続けた。
殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、死ね、消えろ、お前らなんか死んでしまえ。
なんて口の利き方、きっと唆した子の影響ね。だからこんなにも汚い言葉を覚えたんだわ、と女が言った。
こんなものがあるからこいつは狂ったんだ、目を覚まさせてやらなきゃならんと、男は怒りに任せて彼女の描いた絵を女からひったくり、紙端の真ん中辺りを両手で持って、左右に開いた。
ビリビリビリッ。
紙の破れる音が無慈悲に響く。
私が人生で初めて貰ったプレゼントが、彼女からの最高の贈り物が、私を食おうとする男によって、止める間もなく破られた。
──ズキリと、胸の辺りが痛くなった。周りから音が消える中、私は小さく呻いた。
痛みと怖さを拭うために、彼女から貰ったアクセサリーを手提げカバンから取り出した。
私と彼女との繋がりを証明するそれは、いつの間にか、カバンの中で壊れてしまっていた。いつ壊れたのか、分からなかった。
──壊した。こいつらは私の世界を壊した。私と彼女の繋がりの証であるあの絵を容易く破り捨てた。
こいつらは人間か?
いや、人間じゃない。こいつらは人の皮を被った悪魔だ。悪魔が私を飼っているだけだ。私を食うために飼っているのだ。そうに決まっている。こんなの、人間がやることじゃない。
私は悪魔なんかに飼われる気はない。自由すら奪うと言ってきた。なら、どうする?
男は絵を更に細かく破り捨てたあと、それを床に落とした。紙屑が雪のようにパラパラと畳に舞い落ちる。
男は私の方へゆっくりと歩いてきた。どうせ、分かったな、もう二度とそいつとは関わるな、自由はないと思え、とか言うのだろう。
今度から付き合うお友達もこっちで管理するから、あなたは大人しく私達の言うことを聞きなさいと、女も私を見下ろしながら言うのだろう。
私に触れるな、お前のような悪魔が私に触るな。お前らのような人の形をした鬼畜が。
怒りがふつふつと湧き上がる。冷静な体とは裏腹に、脳内の何かが蠢いた。
……カチャン、と、頭の中で何かが外れたような音がした。
──彼女はまだ来ない。けど、お腹と胸の痛みは治まってきた。
──キーンという耳鳴りが、痛みを伴って耳に響く。
全ての音がごもったように聞こえづらい。
そんな中、目前では、あの男が倒れていた。
腰までの高さのタンスに背を持たれながら、足を投げ出して、首を傾げるように倒れている。目は虚ろで、タンスの角張った部分に赤いものがついていた。
さっきまで余裕の顔をしていた女が、打って変わって青い顔をしながら動揺した様子で男を揺さぶっていた。
……なんだ、こいつらも簡単にこうなるんじゃないか。
……こんな簡単に棄てられるんだ。
──鐘の音が響いている。外から鼓膜に届いているわけじゃない。私の頭の中から聞こえてくるようだった。
──目の前の景色がどんどんと濃くなっていく。
網膜、結膜、目の血管が全て切れたように真っ赤に染まる。
べっとりとした、鉄臭くて赤いものが目の前の世界を被っていく。
硬い感触が徐々に砕けて、柔らかくなっていく。白くて硬いものが割れて沈んで、中身の柔らかいものを凹ませていく。女はビクンと体を跳ねて、白目を剥いて口をパクつかせる。
私は力が強いわけじゃない。ただ、動物を殺してきたから、どこどこにぶつければどう砕けるのか、無意識のうちに分かっていた。
男の横で、女ががっくりと首をひしゃげて、力なく倒れた。昨夜作ったクソ不味いパスタのトマトソースによく似たどろりとしたものが、砕けた箇所から流れ出して、首筋を伝って衣服に染み込んでいく。体液を垂れ流す瀕死の蜚蠊のように、ピクピクと体を痙攣させている。さっきまでとは違って無様な姿だった。どうせなら子宮を切り裂いて答案用紙でも詰めてやりたい気分だったけど、そんな暇はない。
退治したかと思っていた男が薄目を開けた。
そして私を見て、男は恐怖のあまり逃げようとした。しかし、当たり所が悪かったようで、体が思うように動かないらしい。虫のように蠢きながら、これまた口をパクパクとさせている。さっき私に暴力を振るっていた奴と同一人物とは到底思えない。額から脂汗が染み出して、頬やもみあげを伝って顎の下に雫になっている。
私はじっくりとその面を見下ろしながら、女のトマトケチャップのような体液が滴る鈍器を振り上げて、目を見開いた男の頭に思い切り振りかぶった。
どうして私は今までこんな簡単なことをやってこなかったんだろう。こうしてしまえば、こいつらは簡単に退治できたのに。
けど、ようやく私の頭の中で錠が外れて、鎖がジャラジャラと音を立てて落ちた。
鈍い音が響く度に、私の内側は歓喜していた。
ドーン、ドーン、ドーン。
響く鐘の音は、まるで私を祝福しているかのようだった。
◇
──待ち合わせの時間を少し過ぎてから、彼女がやって来た。暗闇から現れた黒い影は、すぐに彼女のものだと分かった。
けれど、どこか様子がおかしかった。疲れているような、スッキリしているような。
──私は彼女に全てを話した。家を出ようとしたときから、今こうしてここに辿り着くまでに何があったのか、秘密基地の中で反響しないように、顔を近づけ合いながら。
──私は彼女の言葉を聞いて、とある感情を湧かせた。これは彼女への恐怖? いや、そういうのじゃない。これは、願いの1つを叶えた彼女への祝福の気持ちだった。彼女は、ようやく彼女の両親から解放されたのだ。でも。
──彼女は、私の罪を被ると言い出した。
彼奴らという悪魔を退治したことは、世間では許されないことだった。たとえ子どもでも、決して許されることではない。どうせ自分はこのまま生きていてもまた地獄に戻るだけ、体がボロボロになって死ぬまで働かされるだけだよ。なら、せめてお母さんを少しでも苦しめたい、あなたまで失いたくない、私に生きて欲しいと言った。
──けど、彼女は首を横に振った。あなたが身代わりになったとしても、何も変わらない。あなたの母親は痛くも痒くもない。反省することもなければ、むしろあなたのことを自分達に迷惑をかけた厄介者扱いして、自分は巻き込まれた加害者家族の面をするだけ。あなたをすぐに見捨てるか、罪の意識を利用して一生奴隷のように扱うだけだ。私も、あなたを失いたくないと、潰す勢いで私の手を握りながら言った。
──だから、私は彼女に提案した。あなたも私も、唯一逃げられる方法。
──『あなたのお母さんも、あなたを傷つける男も、棄てようよ』。
無機質な少女の声が、私の体をすり抜けた。そして一部は頭の中に留まって、反響した。
そんなことができるのだろうか。
──できるよ、だって私、もう自由だもん。カチャンって外れて、ルールから解放されたから。
◇
──人目を盗みながら道を歩き、自分の家に着く。やはり、2人はまだ泥酔していた。
お母さんは大の字になりながら、男は上半身裸で放置された服を枕替わりにしている。ゴミ袋に囲まれた部屋で寝る2人の姿は、まさに汚部屋の主のようだった。1度こうなると、朝まで起きない
──彼女に離れるよう伝えたが、彼女は隣にいると言った。最後くらい、死ぬのを見届けたいと。
私はキッチンに置かれていた包丁の柄に布を巻いて握り、女の首に刃先を躊躇なく刺しこんだ。
銀色の刃先が女の白い皮膚にずぶりとめり込み、皮膚の中で束になっていた無数の管を、一つ一つ、ブチブチと、糸を縫うように体内に潜り込む。生の感触を柄越しに感じながら、私は生命活動に必要な部品を切断していった。これも、彼女と出会う前、動物を殺すときに何度もやっていた。だから自然と、どこを刺せば一発で退治できるのか、下手に血が流れないか、感覚で理解していた。
──お母さんの目が、一瞬見開いた。
見開いた目は、ぎょっとしたまま私を見つめた。
ご飯、美味しい?
うん、おいしー。
ずっと昔、そんな会話をした。微かに残ってる程度だけど、あの頃はまだ、この人は優しかった。菓子パンを食べさせてくれたり、おにぎりを買ってきてくれたり、まだ私に優しくしてくれていた。私も、死んでやるとヒステリックになるこの人を必死に止めていた。死ぬっていうことがどういうことがどういう意味なのか、当時は分からなかったけど、良くないことだということは理解していた。
そんな昔のことなんて忘れて、男とお酒に溺れたこの人は、裂けてしまうと思うくらいに見開いた目で私を見つめたあと、すぐにぐったりと全身の力を抜いて、口端から赤いものを溢れさせた。ダラダラ、ごぼっと、泡を吹くように。
──彼女は、女をじっと見ていた。自分を産んだ母親の最後を、無償の愛を注いできた女の末路を、彼女は紅色の目にしっかりと焼き付けているようだった。
──さようなら、お母さん。多分、あなたのことは愛してたと思う。
──女を退治したことを確認してから、私は柄から手を離し、別の包丁を握りしめた。男が唸るような声を上げながら、横臥していた姿勢を仰向けに変えた。瞼は開く様子はない。おかげで思っていたよりもやりやすくなった。
私は息を殺して、男の首元に包丁をめり込ませた。ちょうど顎下に向かって、血が噴き出さない箇所に1発で狙いをつけた。
ねえ、あなたを穢したこの男の死ぬ音、聞こえてる?
──私にも聞こえる。
男の首の中にある食道が、血管が、彼女の刺した刃物の切っ先で千切れていく音が。私にのしかかっていた男が、意図も容易く事切れる音が。
──部屋の中には、ゴミが溢れている。いつ食べたかも分からない弁当やカップ麺の容器、洗ってないコップ、生ゴミを詰めたまま放置した小バエが集るゴミ袋。そして今、人間の形をした出来たてホヤホヤの、喉の口に包丁を咥えた生ゴミが新たに加わった。彼奴らのときとは違って、冷静に、一瞬で終わらせた。
──呆気なく終わった。
彼女の手によって、私を苦しめていたお母さんと男は退治された。
いい? これから私は家に戻って、あることをするから。あなたはここから出て、お母さん達が殺れたって言うの。私の方は、私なりにケジメをつけるから。あなたは上手く嘘をついて、親を殺された可哀想な娘を演じるんだよ。彼女はそう言った。
──多分、二度と会えない。もし私が退治したとバレても、このまま逃げたとしても、二度とあの橋の下で会うことはできないだろう。
けど、だからと云って、私達の友情が消えるわけじゃない。私達は、いつでも繋がっている。私のことを忘れないで、あなたのこと、私は絶対に忘れないから。
──私は彼女の言葉を信じた。そして、私も彼女に返した。私達は、離れてても友達だよ。ううん、親友、秘密の親友だよ。
──彼女の言葉を聞いたあと、私は部屋から抜け出した。
カメラなんてものもない、暗闇に包まれた人目につかない道を歩いて、自宅に戻った。大方の処理を手早く終えたあとは、暗い寝室でぐったりとする彼奴らだったものを眺めた。悲しみの1つもない、ただ目の前に壊れた肉人形が落ちているだけ。私に1つも似ていないこいつらは、私をこの家畜小屋の中で育てていた。
こんな小屋は、あってはならない。
──私は助けを求めた。お母さんとおじさんが大変なんです、助けてください。思考を錯乱させた、恐怖に染った表情で。半分は本気で、もう半分は嘘で。心配した見知らぬ大人が私に声をかけてきた。念仏のように助けを求めながら、目を閉じた。
──今日が、私のハッピーバースデー、私が私を受け入れて、私という一人の人間が誕生した記念日。
大きな大きな蝋燭。彼奴らの死骸を、家具を、私の部屋を、手提げカバンを、彼女からの贈り物だった紙屑を、メラメラと燃え盛る炎が溶かしていく。悪魔の家が、私を取り囲んでいた全ての死骸と一緒に消えていく。
清々しい気持ちとは、こういうのを言うのだろう。白い煙が目の前で漂い、蛋白質がジワジワと焼ける臭いが鼻の奥で溜まる。私は小さな声で、私に向けた『HAPPY BIRTHDAY』を歌った。
──瞼の裏に、彼女が映った。短く切られたダークブラウンの髪を揺らして、私に微笑んだ。
──揺蕩う炎の中で、彼女を見た。ボサボサの黒髪から目を覗かせながら、弱く微笑んでいた。
──私達は、繋がってる。
──どこに行っても、一緒だよ。
◇
──彼女の言う通り、大人達に嘘をついた。お母さんとおじさんが知らない人に殺された。包丁を使って2人の首を刺して逃げた。
あまりにも錯乱していた私を見て、大人達は私の話を信じた。少なくとも、周りの人間は目の前で家族を殺された私のことを疑わなかった。そして私自身も、自分の発言は本当のことだと思い込むようにした。今までお母さんからゴミと呼ばれてきた私が、本当に自分のことをゴミだと思っていたのと同じ。本当にあったと思い込めば込むほど、実際に起きたことだと自分の脳内を偽ることができた。
──大人達の前で、私は平然と嘘を並べた。思い出すだけでもショックで叫びそうになって、目がぶれてしまう。炎に燃やされる両親の亡骸が、脳に焼き付いて離れないと、その場で吐きそうになった。良い子を演じてきた私にとって、嘘をつくのもフリをするのも簡単だった。
──話の中に、彼女との関係は一切話さなかった。そもそも、私達の関係を知っている人なんていないだろう。
──狙い通り、私達の事件は大人の犯行として処理された。やり方が異なる2つの事件は、初めは関連性があると疑われたものの、すぐに無関係なものとして扱われた。
──私達は、無事にあの地獄から生き延びることができた。
──運良く、彼奴らから、あの町から逃げることができたのだ。
──けれど、その代わりに私達は離れ離れになる。それぞれの世界で、彼女がいない寂しさを抱えながら生きていくんだ。
──仕方のないことだと、私は割り切った。離れていても私達は友達のまま、彼女と一緒にいる。そう思って、また私は演じていくしかない。演じることは、生きていく術のようなものだ。
──私は、ずっとこのまま、日陰の存在として生きていくしかない。ただ、彼女がいることだけを生き甲斐にして、親しい友人もできないまま、みんなから虐められる日々をまた過ごすんだ。
────……だから、彼女と再会できたのは、奇跡、運命だと思った。
──偶然、同じ施設で暮らすことになったと知ったのは、彼女と顔を合わせた時だった。こんなことが、現実でも起きるだなんて。
──ああ、なんて眩しい。暗かった世界に光が差して、世界の色が鮮明になる。こんなにも光に満ちた光景は初めてだ。
──彼女の瑠璃色の目に、キラキラとした輝きが満ちた。光を拒絶していた彼女の2つの瞳が、みるみるうちに生気を宿していく。きっと私も同じ。紅色の瞳に混じっていた濁りが取れていくのが分かる。
──きっと、運命が私達を引き合わせてくれたんだ。君達は2人で生きなさいって。解放された私達を祝福しているんだ。
──神様がいるなら、きっと、その人のおかげだ。心が晴れていく。お日様のように暖かくなっていく。
──私と彼女は、隣を歩く大人達に連れられて、ゆっくりと近づいた。
私達はこの日、本当の意味で生まれ変わった。だから、お互いに初めましてだ。
──新しい人生を始めた私と彼女は、今日初めて友達になる。また、ここから初めようという意味で。彼女と私は口を開いた。
──初めまして、今日からよろしくね
──う、うん……よろしく。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アヤカ。
暗い世界、夢見心地な気分のアヤカの鼓膜に、ふわふわとした声が優しく響く。雨は降っていないはずなのに、外からは雨粒が地面で弾けるような、サーっという音が聞こえる。その正体が一体なんなのか、隙間風なのか、寝起きの彼女にはどうでもいいことだった。
全身にスースーとした寒さと鈍い痛みが襲う。初めは何故だと疑問に思ったが、しかしすぐに、昨夜、彼とキョウカの3人でセックスをしたからだと、覚醒しながらも寝惚けた思考で思い出した。
「アヤカ…………」
名前を呼ばれ、アヤカは今度こそ瞼を開いた。暗闇に包まれていたのもあって、室内の薄暗さですら、彼女の目は眩しいと捉えた。
目が慣れてくると、既に目を覚ましていたキョウカが、自分と同じく横になりながら、向かい合う姿勢で彼女のことを潤んだ瞳で見つめていた。激しいまぐわいをしたのもあって、キョウカの白い裸体は艶めき、幾倍にも官能的に見えた。それはアヤカも同様である。
「キョウカ、もう起きてたんだ」
アヤカはベッドに頭を任せたまま言った。
「うん……彼君が、夢の中でおっぱい吸ってたみたいで……擽ったくて、起きちゃった」
「ふーん、ホント、彼君ったらおっぱい大好きだね」
そう言いながら、アヤカは自分達の間に挟まって寝息を立てる彼の頭を撫でた。
今の彼は、彼女達の大きな乳房に頭部を挟まれながら眠っている。柔らかく温かな感触が耳許を被い、無駄な雑音を遮断している。何故こんな姿勢で寝ているのかは不明だが、彼が今、天にも登るような素敵な夢を見ているのは間違いないだろう。
「ねえ、アヤカ…………私……む、昔の夢、見ちゃった……」
「……小さい時の?」
「……うん…………あ、あの人のこととか…………色々」
キョウカは俯き気味に言葉尻を小さくしていく。アヤカは手を伸ばし、彼女の黒髪を梳くように指先で撫でた。
ゴミ袋の溢れた汚物臭の酷い部屋の中。集る羽虫。腐った食べ物。空腹に悶える胃袋、鼻がもげるような臭いの染み付いた衣服。発酵臭のする頭髪。自身の首につけられた犬用の首輪。辺りに散らばる酒類。夜遅くまで帰って来ない女。顔を赤くしながら怒り、時にヒステリックに暴力を振るう女。口と陰部に玩具を挿入させてニヤニヤと粘ついた笑みを浮かべる男。下半身を揺らす男。額から流れるサラサラとした血、酒瓶を片手に形相を歪める男と、背後でテレビを見ながら笑う女。泣き叫ぶことさえ忘れてしまった自分。ゴミを投げられてもやり返すことさえしない自分。クラスメイトからの嫌がらせにも何も言えない自分。濁った瞳で地獄のような世界を見ていた自分。棄てたいと思っても尚、愛情を求め、愛そうとした自分。
引き出しに仕舞われていた数年分の過去が、たったの数時間という短い間に濃縮され、五感を伴う幻覚となって現れた。頭部には当時感じた鈍い痛みが走っており、まるで今怪我をしているかのようであった。
「大丈夫、どこも怪我してないよ」と、アヤカは彼女の額の上辺りをかきあげる。血も流れてなければ、古い傷跡さえない、綺麗な頭皮だ。
「な、なんでかな……なんで、このタイミングで……思い出したんだろ…………」
「……実はね、私も夢を見たの。キョウカと同じ、昔の自分の夢」
「ホント?」と訊くキョウカに、アヤカは「ホントだよ」と答えた。
圧力的な両親。教育のためなら暴力すら厭わない父親。仲介するどころか追い討ちをかけるように暴言を吐く母親。頭に降りかかる冷水。熱湯。部屋に閉じ込められる毎日。ゴミ扱いされる答案用紙。緊張。寝付けぬ日々。繰り返す悪夢。名前を呼ばれるだけで動悸する心臓。優等生。妬み。嫉み。束縛。暴言。罵倒。痣。枷。青い体液を垂れ流す蜈蚣。潰れた体から緑色の体液を漏らした蜚蠊。赤い鮮血を溢れさせた犬猫の死骸。くり抜かれた目玉。裂いた腹部。ドロドロと湧き出るように飛び出る赤黒い内臓。外した関節。小さな肋骨。一つ一つをバラバラにする自分。血の滴る刃物。キョウカの濁った瞳。彼女の体温。小さな微笑み。満たされる心。殴られる自分。殺意。蹴られる自分。殺意。手に響く鈍い音。殺意。内部を貫く感触。祝福の歌。焼けて溶け落ちる肉片と焦げる臭い。軽やかな気持ち。瞳に宿る光。
そして彼女は、キョウカと再会した際の幸福感を蘇らせた状態で目を覚ました。
残虐な光景が淡々と続くかと思えば、時として煌めくものに変化する。もしも、彼女の脳を誰かが、ごく普通の幸せな家庭を経験して育ったものが覗いたとしたら、その混沌とした惨状に正気を失い、狂気に走るかもしれない。
「でもね、ほら。私たち、ちゃんとこうやって生きてるよ」
あの地獄から、私達は運良く逃げ出せた。逃げ出して、生き延びたんだ。生きてまた出会って、2人で幸せになろうって誓いあって、ここまで来た。彼奴らに奪われた時間を埋めるように、彼奴らに縛られるはずだった人生を謳歌するために、こうやって生きてきたんだよ。
アヤカとキョウカは自身の額を付け合い、上目の視線を交わらせて微笑み合う。2人の巨乳がさらに彼を挟み込んだ。
「ねえ、キョウカ。私達の
「うん……楽しかった」
「私、初めて身近な大人から褒められたんだ。褒められるのって、凄く嬉しいことなんだって気づけた」
「私……は、初めて、温かいご飯、食べた……ご飯って、こんなに美味しいんだって……泣きそうになった」
昨夜視聴したドラマの犯人のように、親という呪縛から解放された2人は、運命的に再会した。再会して、新しい人生をあの場所で始めた。
毎日が、新鮮で初めてな事ばかり。毎月の行事と誕生日のお祝いとプレゼント。朝晩の美味しいご飯。死ね、消えろ、クズ、恥晒し、そんな罵倒がない当たり前。無理やり勉強をせず、大方自分のペースで過ごせる当たり前。殴られたり、蹴られたりしない、けれど、悪いことは悪いと叱ってくれる大人。褒めてくれる大人。話ができる大人。アヤカに料理を教えてくれた大人。キョウカの絵を褒めてくれる大人。
自分達にとって、施設での生活こそが平穏な日常だった。あそこにいる大人が親の代わりだった。どれだけ可哀想と言われようが、偏見の眼差しを向けられようが、あの地獄に比べれば、何百倍にも贅沢で十分な環境だった。
なにより、自分達はずっと隣にいることが出来た。
自分達は似た境遇で仲良しになった。けれど、キョウカは私よりも深く傷ついて、そのせいで人とのコミュニケーションが苦手だ。だから私が支えるからと、大人を説得して同じ部屋にして貰えた。4人部屋で、2段ベッドが2つ。上の方を他の子に譲って、自分達は下段で静かに話した。たまに同じ布団に潜り込んで、将来のことをヒソヒソと話し合った。
中学、高校では、勉強ができて明るさも持ち合わせていたアヤカは話し相手が多かった。一方、大人しくて口数が少ないキョウカは他人と話さず、話し相手もアヤカ以外の友人もいなかった。
しかし、決して寂しくはなかった。2人は親友で、常に行動を共にしていたからだ。
グループ、派閥、スクールカースト、陰キャ、陽キャ、周りがあれこれと騒がしい中、自分達の世界を作っていた。キョウカが虐めの対象にされれば、アヤカはあらゆる手段を使い、それを全力で阻止していた。自分達の世界を壊そうとする者達を、彼女は断固として許さなかった。
そして時が経ち、2人は施設から巣立ち、離れた場所で同居を始めた。アヤカは職を転々とさせて経験を積んで、人当たりの良さで社会に溶け込んだ。キョウカは得意な絵で、部屋の中にいながら熱中できるものを仕事にした。
「初めて『ハレルヤ』を見たとき、また運命だと思った。まるで神様が私達のことを賛美してくれてるみたいで、グッと心にきちゃった。きっと、出会うべくして出会う運命だったんだよ。私がキョウカと再会できたのも、私があのお店に出会えたのも、運命なんだ」
そしてその場所で、アヤカは不思議な運命の出会いを果たした。今、自分達の隣で静かな寝息をたて、少年のように眠っている彼と。
今まで彼女に声をかける男は幾数人もいたが、その全てを躱してきた。友人として1歩前進していた彼でさえ、その1人にしか過ぎないはずだった。
しかし、アヤカは珍しく迷っていた。異性でここまで親しくなったのは彼が初めてであり、奇しくも、彼女も彼のことが嫌いではなかったし、付き合うのも悪くないと考えていた。とりあえず保留にしたものの、彼からの好意を受け止めるべきかどうか、いつも通り流して良いのか、決めかねていた。
そんなときに、アヤカは彼のことをキョウカに話し、あなたとも恋人になって貰えるか聞いてもいいかと訊ねた。もしもこの先、彼と長い付き合いになるのなら、キョウカも一緒に付き合ってもらおう。それを受け入れられないなら、またはキョウカがダメなら即断ろうと考えたのだ。
あまりにも唐突な話にキョウカは仕事道具を持ったまま唖然とし、すぐさま慌てふためいた。
「キョウカったら、初めは凄く嫌だ嫌だって駄々こねてたのに、彼のこと詳しく話したら、急に興味津々になったよね」
「……そ、それは……か、彼君の名前が……昔、近所に住んでた子猫につけたのと、同じ名前だったから…………な、なんか、懐かしくなっちゃって……そ、それに彼君、なんだか、猫みたいで……か、可愛かったから」
「可愛いかぁ。そうだよねぇ。彼君、イケメンっていうよりは猫っぽいもんねぇ」
性欲とあそこはライオンだけどね、とアヤカはおどけるように笑った。
「でも、あのときの選択は間違ってなかったね。キョウカ、前よりも明るくなったし、私も、彼君と友達として付き合って、少しずつだけど、この人の事を好きになれたから。キョウカとおんなじだよ」
だから、再びあの場所へと戻った。2人は偽りを混ぜて過去のことを語り、彼が自分達を受け入れるかどうかを試した。彼女達は彼と付き合ってもいい、そのため答えを彼に委ねたのだ。
そして話を聞いた彼が出した答えは…………アヤカとキョウカ、両者への告白だった。
「ねえ……あのカーテンのお花…………特別な意味、あるんだよね?」
「そうだよ。あの花にはね、『裏切らないで』っていう花言葉があるらしいよ。私、彼君には絶対に裏切って欲しくないもん」
「……ネックレスも、そうだよね」
「キョウカの絵も、でしょ?」
肯定する代わりに、2人は静かに笑いあった。
あのネックレスには、あなたとずっと一緒にいたい、離れたくない、そういった意味を込められている。ヘッドにリングが付いているのもあって、アヤカは絶対に彼を離したくないと、プレゼントで気持ちを伝えたのだ。
そしてキョウカは、自分達の姿を猫に喩えた絵をプレゼントした。体を寄せあって眠る、両サイドで寝ている黒猫と白猫はそれぞれキョウカとアヤカを表し、真ん中の白黒模様の猫は彼のことを表していた。これから先も、ずっと3人一緒だと、彼女なりの願いが込められている。
もし、彼が2人を裏切るような行動を取った時は……。
「まあ、彼君に限ってそんなことはしないよね」
「うん……しないよ、絶対に」
「でも、したら……どうしよっか?」
「うーん……い、1回目は、許してあげよ?」
「キョウカは優しいなぁ。じゃあ、その時は二度と裏切れないように思いっきり反省させないとね」
悪意のない無邪気な2人の笑みと声色は、10歳前後の少女……出会ったあのときのままのようだった。
…………ちゅうっ♡
「「あっ♥」」
急に乳頭を吸い取られ、2人は思わず朝の第一声をハモらせた。彼女達が間近で会話を楽しむ中、彼は夢の中で彼女達との淫行を満喫しているようだった。
「んぅ、寝てるのにおっぱいなんか吸っちゃって、赤ちゃんみたい」
「……き、きっと、夢の中で私達のおっぱい……飲んでるんだよ」
「そっか。じゃあ早く飲ませてあげないといけないね」
「……あ、アヤカ……か、彼君との赤ちゃん……私が先で、いい?」
「もちろん。その代わり、私にもアヤカの赤ちゃんミルク、飲ませてね」
「うん…………」
話しているうちに、シーツすら掛かっていない彼の下半身の逸物が熱を帯び始めていた。枯れたように萎えていた体が徐々に膨張していき、固く太く長い、種付けをするための雄の棒へと変貌した。幸福な夢と外からの刺激、その両方が合わさったことで、彼は寝ながらもペニスを勃起させたのだ。
「こんな朝早くからバキバキちんぽを拝むことになるなんて……これじゃあどっちにしろ、彼君無しじゃ生きられない身体になるかもね」
「……なら……か、彼君を…………わ、私達無しじゃ、生きられない体にすれば……いいんじゃない?」
「ふふっ、いいアイデア。じゃあ早速、将来の旦那様への朝一番の御奉仕、してあげちゃう?」
「うん…………♥」
2人は起き上がり、彼の股下へと移動すると、そのまま自慢の豊乳で彼のペニスを包み込んだ。
「ねえ、キョウカ。私達、ずぅっと一緒だよね」
「うん……ずっと、一緒だよ」
胸の中で熱いものを揉みくちゃにしながら、アヤカとキョウカは頬を緩めて、誓い合うようにお互いの頬と唇にキスを交わした。
将来は3人で広い部屋に引っ越そう。
そしてそこで毎日毎日、死ぬまで幸せに暮らそう。
子どもができたら、彼奴らみたいな育て方は絶対にしない。子どもの育て方について一から勉強して、伸び伸びと自由に、毎日愛してるって言って、褒めてあげよう。
自分達のときはなかった、できなかった、してもらえなかったことを、沢山やってあげよう。
まだ見ぬ未来に、アヤカとキョウカは想いを馳せた。馳せるその姿には、再会したときの、初めて眩しい世界を見たときの面影が残っていた。
この先、幸せになるかどうかは、彼君次第です。