※この作品はR-18です。

オリジナルエロ話   作:歩輪気

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催眠要素あり、飲尿描写少しあります。ご注意ください。


晴と雨

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 屋上へ繋がる階段を、僕は登っていた。

 人の気配がない中で、1段ずつ、ゆっくりと足を踏み出す。普段なら、階段なんてものは1、2段飛ばしでさっさと駆け上がってしまうものだけど、今日の僕はそういうわけにはいかなかった。足が実際に重いのだ。

 まるで鉛か鉄の重りを付けているように、これから行う所業がどれだけ愚かなのかを、愚か者になった僕の足を止めるように重い。

 

 けれど、だからといって引き返す気にはならなかった。それほどまでに僕の心は欲に負けてしまっていたのだ。

 

 そして、とうとう階段を上がりきり、屋上扉の前までたどり着く。時刻は午後4時、この高校のこの曜日のこの時間帯は、校舎に殆ど人は残らない。僕は何度も確認したことを反芻して、意を決して扉のドアノブに手を触れ、押し開けた。開けた瞬間から、強い一瞬の風が僕を通り過ぎた。

 

 校舎4階のさらに上にある屋上部分、四方が3mより高い、先が内側に45度ほどカクっと曲がっているフェンスに囲まれている。学園モノによく出てくる屋上のイメージに近いものだ。

 空は雲ひとつない快晴で、まるで水色の絵の具で塗りつぶした絵が天に登ったかのように青い。ずっと見上げていると、真っ逆さまに落っこちてしまいそうな幻覚に襲われる。

 

 この時間帯、この曜日、ここには人は殆ど来ない。やはり狙い通りだ。もし居たとしても、こちらには対処する術があるので心配はない。

 

「…………」

 

 目と鼻の先、正面のフェンスからグラウンドを眺める形で、彼女は背を向けて立っていた。膝丈程度の長さのスカートが風でふわりと揺らいでいる。

 きっと、談笑をしたこともない相手から、理由も書かずに屋上に来るよう手紙で呼び出されて苛立っているに違いない。けれど、無視せずに来てくれただけでも僕は嬉しかった。

 

「あ、あの、雨原さん」

 

 僕が名前を呼ぶと、彼女はゆっくりと頭を捻って、僕に目を向けた。

 

 黒髪のショートヘア、やや長めに伸びた横髪が揺れ、前髪に隠れ気味な両目がこちらを見る。他人への興味がない真顔、そしてどこまでも虚空を見つめていそうな淡色の瞳が、僕の身体を硬直させた。

 

 けれど、僕は前に進む。クラスで話したことのない彼女に、プライベートで初めて声をかけた僕は、肝から汗を流しながら歩み寄る。その間も、彼女は瞳を向け続けた。そのまま闇に飲まれてしまいそうだ。

 そして、丁度1mほどの間隔をあけて止まった。

 

「…………あなたが、私を呼び出したの?」

 

 気だるそうな、冷徹な声色の言葉が投げられ、僕は肯定する。そして自分の名を告げ、彼女は「知ってる。同じクラスだから」と軽い返事をした。名前を覚えてもらっていたことは地味に嬉しかった。

 

「で、何の用? わざわざ理由も書かずに屋上に呼び出すなんて」

「それは、ですね……」

 

 彼女は体を向き直し、僕と面と向かう形でこちらを見る。青いブレザーのポケットに両手を突っ込み、僕をやや見上げる形で見つめる。僕の方が身長が高いのでそれは仕方のないことである。

 僕は理由を話そうとするが、あまりの緊張に言葉が続かない。それでも彼女の目は僕を見続けた。

 

「なに、何もないなら帰りたいんだけど。私も余計なことに時間は使いたくないの。要件があるなら早く言って」

 

 彼女の言葉に少しの苛立ちが生まれ始めたところで、僕は口を開いた。

 

「雨原さん、いきなりで悪いんだけど、ちょっとこれを見て貰えますか?」

 

 そう言うと、僕は学生服のポケットから、とあるものを取り出した。

 五円玉硬貨に細い糸を通した、ただそれだけのもの。そして今も尚『催眠』というイメージの中で皆が思い浮かべる道具を、僕は取りだした。

 

 そう、僕は今から彼女に催眠術をかけようとしていた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 僕の名前は『晴山(はるやま)耀太(ようた)』、A高等学校に通う一般生徒の1人だ。

 友達は程々にいて、成績も中間、部活は入っていない。言い方を変えるなら、帰宅部に所属している。

 

 僕は毎日、正確には両親が最近喧嘩が多いこと以外は平凡な日々を送っている。

 数学の課題で夜中まで机と向き合うこともあれば、苦手な英語の小テストで友達と問題を出し合って答えを覚えているかどうかを試すこともある。4限目に腹を空かせて、昼休みに弁当を食し、5限目で眠気に襲われる。何とも平凡で平和で味のない日々を過ごしている。それは小学校、中学校の時から同じで、そうやって平凡を保つことで、僕は当たり障りのない人生を送ってきた。

 

 そんな僕の運命を変えることになったのは、学校帰りに偶然立ち寄ったとある古本屋でのことだった。その日は疲れのあまり、電車内で眠ってしまい、家から2つ先の駅に降りてしまったのだ。

 初めは向かいの駅の電車に乗ろうとしたが、次の電車までまあまあ時間があった。乗り降りが激しい駅のためか、待つ人も多く、たった2駅でも帰宅の波に飲まれてしまうのが容易に想像できた。

 だから僕は、寄り道感覚でその駅を出て、家に向かって帰ろうと考えたのだ。家までの道は、線路を沿っていけば目的駅に辿り着けるので心配はない。それに家に早く帰っても、不仲気味な両親の空気にストレスを抱えるだけだ。

 

 その道中で、僕はあの古本屋に立ち寄った。駅からまあまあ歩いた狭い道の左手に、それはひっそりと佇んでいた。

 入口正面から見て、縦に置かれた背の高い棚が3つほど並べられている。左右の壁にも本棚がある。レジは奥にあり、店主が本を読みながらのんびりとしていた。しかし中は特別広いわけではなく、棚と棚の間も人1人がやっと通れる程の幅しかない。

 

 まるで釣られた魚のように僕は中に入り、以前に先生がオススメしていた小説を探した。やや古い年代に発売された小説のため、一般での新刊は出回ってはいない。かといって、そこまで希少価値のあるものでもないので、ネット通販を漁れば直ぐに手に入る代物だった。僕は別に興味津々というわけではない、ただあったらいいなと思うレベルで探していた。

 

「あった」

 

 そして暫く散策したところで、目的のものを発見した。壁の棚の1番下の段の端っこに、まるで気づかれないように身を潜めていた。

 それにしても、何ともめちゃくちゃな並びなのだろうか。作者順かと思いきやジャンル別でもない、かといって出版社順でもない。この本屋の棚の本は全て適当に並べられていた。唯一、実用書と官能小説が分けられていたのは救いだと思った。官能小説の場合は見ただけでも分かるから分けているだけだと思うが。

 そんなことを考えながら、僕は小説を手に取った。

 

「……?」

 

 手に取った瞬間、小説の隣に、何か薄い本があることに気づいた。あれだけぴっちりとしていた列にあるというのは、相当薄い。

 僕は気になりその本も手にした。文庫本サイズで背表紙がない、紫色の紙表紙が毒々しい雰囲気を出している。

 気になり中を覗くが、頁数は無いに等しく、ペラペラと捲るうちにあっという間に裏表紙にたどり着いてしまった。

 海外の本なのか、タイトルも中の文章も全て英語だった。古いもののようで、頁の端が所々切れていた。しかも小説ではないようで、何かの解説書のように図表とともに英文が羅列していた。分かるのは、五円玉らしきコインが糸に吊るされていることだけだ。海外に穴の空いた硬貨があるかは分からないが。

 

 得体の知れない不気味な本。だが僕にはその不気味さに興味を惹かれ、店主に値段を尋ねた。裏表紙に値段が書かれていなかったのだ。

 しかし、店主はそんな本は知らないと首を傾げた。どうやら店主も買い取った覚えはないらしく、存在自体も今知ったようだった。何とも不思議な本だ。

 僕がこの本を貰えないか聞くと、店主は二つ返事で承諾してくれ、僕はオススメ本を購入して持ち帰った。

 

 戻って早々、母から帰りが遅いことを指摘され、適当に答えた僕は自室に入り、カバンから例の本を取り出した。発見した時から思ったが、やはり薄い。本と言うよりは冊子と言った方が正しいレベルだ。タイトルには『HYPNOTISM』とだけ書かれており、英語が苦手な僕は早速端末を取りだして英語の意味を調べた。

 

「『催眠術』?」

 

 どうやらこの本のタイトルは日本語で『催眠術』と言うらしい。催眠術というのは、あの薄い本や叡智な本で頻繁に使われるあの催眠術のことだろう。実際は催眠術だからといって卑猥なことを指すわけではないらしいが、詳しくは知らない。

 それにしても、なんて直球なタイトルなんだ。直球すぎて思わず吹き出してしまった。

 

「あほらしい」

 

 そう言い捨てて、僕は椅子の背もたれに背中を任せて天井を見上げた。タダで譲って貰えたものとはいえ、とんだものに僕は興味を惹かれてしまった。こんなものは親に見つかる前にさっさと捨ててしまった方が身のためだろう。

 

 しかし、あの毒々しい雰囲気に惹かれてしまったのは確かだ。それに、頁の途中に描かれていたあの五円玉の振り子のような図、もし本当に催眠術について載っているとしたら、果たしてどんなものなのだろうか。

 僕は体を起こし、早速催眠本を開いた。が、全てが英語で書かれていたため、直ぐに本を閉じた。歩いた疲れもあるので、とりあえず今日のところは辞めておこうと机の引き出しに隠した。

 その後、僕は夕食を食べ、風呂で数を数え、先生のおすすめ本を読んだ。つまらなくて30頁ほど読んだところで寝落ちした。

 

 

 次の日、高校から足早に家に戻った僕は、親からの声掛けにすぐさま適当に返し、部屋の中へ閉じこもった。

 そして机の引き出しから例の催眠本を取り出し、早速翻訳に入った。本自体は古いが、中身の英語の単語は検索すれば直ぐに出るようなものばかりだった。たまに不明なものは辞書を引けば出た。分かったものには直接翻訳を書き込み、分かりやすくした。どうせ誰も見ないのだしいいだろう。

 

 数時間後、夕食と入浴を挟み、加えて睡眠時間を削った僕は、なんとか催眠本の翻訳を終えた。ところどころに自信がないものがあるけど、大方あっているだろう。

 

 さて、その内容だが、簡単に纏めると、

 

 ・真ん中に穴の空いた小さい円上のものを糸で吊るし、催眠をかけたい対象に視線を集中させた状態で、約5秒間振り子のようにして一定のリズムで左右に動かす。

 

 ・催眠にかかった対象はかけた者の言いなりになる。

 

 ・解く方法は対象の聞こえる範囲でかけた者が手を叩く、または催眠をかけてから6時間が経過する。

 

 ・催眠をかけられた対象は、催眠が解除された時点で、催眠状態だった時の記憶、及び催眠をかけられる直前の記憶は抹消される。

 

 というものだった。

 翻訳して今更だが、なんというか、なんともベタベタな叡智な催眠術だし、内容もかなり思っていたものと違った。

 催眠術というのだから、相手が一生服従するとか、効果が継続するとか、もっと凄いものを想像していた。しかし、効果はたったの6時間で、催眠をかけたこともかけられた最中の記憶も一切消えてしまうのだ。せめて12時間は欲しいところだ。

 いや、むしろ相手の記憶が抹消されるという点では、6時間の効果は釣り合っているのかもしれない。けど使い道なんてそうそうないだろう。

 読み終えた僕は少しがっかりしながら、布団に潜った。

 

 

 また次の日、両親とともに夕食をとっていた僕は、ふとあの催眠術のことを思い出していた。そもそもの話で催眠術というのはアホらしいが、どうせ胡散臭いのなら、やっても構わないだろう。この場の空気もなんだか重苦しくて耐えられない。そう内心で呟くと、僕はトイレに行くと言って一旦リビングを後にし、部屋に戻って五円玉振り子を作って席に戻った。

 

「父さん、母さん、ちょっといい?」

 

 何だという両親を横に、僕はポケットから振り子を取りだし、2人の前で5秒間、視線を集中させながら左右に振った。

 5秒後、あれほど表情を作っていた両親が揃って真顔になり、瞳を振り子に釘付けにしていた。

 あまりの変貌ぶりに僕は2人に声をかけることができなかった。催眠術が成功したのだろうか? いや、まだ分からない。声をかける代わりに僕は試しに「左手を上げて」と言った。

 父も母も左手を上げた。

「次に右足で床をトントン2回蹴って」と言う。

 2人とも同時に右足で2回、床を蹴った。

「次は机を回って。母さんは右から、父さんは左から」と言う。

 両親は立ち上がり、それぞれ僕が指示した通りに机を3周した。

 僕は驚愕のあまり、声が出なかった。催眠は成功したのだ。しかもこんなにあっさりと、たったの5秒振り子に視線を集中させただけなのに、今や両親は僕の思い通りに動いている。まるで劇で使われる糸で操られる人形のようだ。

 その後も、僕は両親に簡単な指示をした。ご飯を食べる、おかずの唐揚げを食べる、30回ご飯を噛む、猫の泣き真似をするなど、細かく指示を出した。僕は目の前の光景に驚愕しつつ、人を操る催眠術が現実に存在し、しかもそれを自分が手に入れたという実感に興奮した。

 

「最近、2人とも仲が悪そうだけど、どうしたの?」

 

 ふと、僕は今まで気になっていたことをそれとなく聞いた。最近の父と母はあまり仲がよろしくない様子で、言葉はないものの、その空気のピリつきは僕でさえ察していた。

 僕からの質問に、2人は代わる代わる応えた。何でも、最近父は仕事で母に構ってやることができず、それが母にとってはかなり不満らしい。父は父で、自身に対して冷めた態度を取る母が癪に障るらしい。催眠状態でなければ、今頃激しい喧嘩をしていただろう。

 

 そんな離婚の危機に片足を突っ込んだ2人の告白に、僕はあることを思いついた。何の考えもなく、唐突に思いついた「2人とも、ここでキスしてよ」という指示を下した。

 2人は無言で僕の指示に従い、お互い顔を向け合い、唇を重ねた。隙間のなく口肉と口肉を紡がせ、頬肉を動かして舌肉を啄きあい、熱の篭った鼻息を掛け合う。母は色っぽい声を出して父に胸部の膨らみを押し付け始めた。

 

 目の前で見せつけられる両親の秘め事、それを理解した瞬間、僕の全身から熱が抜けた。

 僕は手を叩き、催眠を解く。解いた瞬間に両親は正気に戻り、ハッとしたのも束の間、直ぐに自分達の行動に驚愕し、すぐさま口を離して焦りだした。

 

「え、なに、な、なんなの?」

「いや、何が何だか……よ、耀太?」

「あ、な、何も起きてないよ」

 

 何が起きたか質問する両親に、僕は苦笑をしながら誤魔化した。何も起きてないなんてことはないのだが、両親はそれ以上聞こうとはしなかった。その後の夕食の間、気まずい空気が常に流れていた。

 

 その日の夜、僕は身内に催眠術をかけてしまった罪悪感に襲われた。試しとはいえ、両親に催眠術を使い自分の思うがままに動かしてしまったという事実が、身内に手を出してしまい、卑猥なことをさせてしまったという愚行が、罪として僕の心に重くのしかかった。

 吐き気がした、苦しい、この術は二度と両親に使ってはダメだ、そう何度も心の中で呟いた。

 

 

 次の日の朝、寝付けなかった僕は目の下に黒い隈を作りながら、寝ぼけた顔で洗面台の鏡に映る自分を見ながら歯を磨いていた。

 昨日のことについて、父も母も何事もなかったかのように過ごしているつもりだった。つもりというのは、僕から見てもあからさまにお互いのことを意識していたのが分かったからだ。頬を赤らめてる。昨夜の僕の吐き気はなんだった。

 父と母に昨日のこと、具体的には催眠をかけた時のことをそれとなく聞くと、2人は何も知らない、気づいたらあんな風になっていたと話した。どうやら、催眠をかけている間とかけた直後の記憶は抹消されているようだ。

 

 けれど、この催眠術は家族には使わない。催眠術自体を極力悪用しない。使うとしても、先生にテストの答えをこっそり聞いたり、友達の好きな人を聞き出したり、その程度のことにしよう。そう心の中で誓った。

 

 

 そんな僕の誓いも、その日の昼放課に崩れることになった。窓側の席に座る彼女の姿に見蕩れていた時に、ふと思いついてしまったのだ。どうせなら、彼女と一度、短い時間だけでもそういう関係になりたいと、悪の欲望が湧き上がってしまった。

 

 彼女とは、同じクラスの女子生徒『雨原(あめはら)(あきら)』のことである。黒髪のショートヘアで、耳前から垂れる横髪がやや長めに伸びている、前髪も目がやや隠れる程度に長い。全体的に暗く、ダウナーな雰囲気を纏う人だ。容姿は淡麗で、初めて彼女を目撃した男子生徒は必ず視線をその姿に奪われてしまう。

 

 けれど、彼女には誰も寄せつけない、見えない壁を張っているかのような空気が漂っていた。そんなんだから、周りは彼女のことをまるで割れた硝子細工に触れるかのような扱いをしていた。別に悪い意味ではなく、少しでも指を傷つけないように慎重に触れるようなものだ。

 

 初めの頃は、男女問わず親しくなろうと彼女に声をかけた生徒は何人もいた。しかし、彼女は最低限の返事をするだけで、それ以上の会話を繋げようとはしなかった。彼女の会話をさせまいと言いたいような態度に皆は口を噤んでしまい、去ってしまう。

 しかし彼女は何も気にせずに自分の時間を再開する。常に1人を好み、休憩時間は常に顔を伏せて寝ているか、窓の外を見てぼーっとしているか、スマホを弄っているかのどれかだ。前に消しゴムの臭いを嗅いでいたのは僕の見間違いだろう。

 

 以前、彼女にしつこく声をかけていた男子がいた。彼女の周りの空気が読めないのか、単なるナンパなのか、新手のいじめなのか分からないが、高校生にもなってあれはないという印象を持った。ある意味羨ましいし、その力を僕に分けて欲しいとも思った。そんな彼を彼女が相手をするはずはなく、ぼーっと適当に聞き流していた。

 そんな彼だが、ある日一方的な会話の途中で彼女の地雷を踏んでしまい、低い声で睨まれた。常に真顔な彼女が、あれほどまでに人を睨み、表情を歪め、殺意を向ける姿は初めて見た。今にも首を絞めて来そうな勢いだった。

 その件以降、彼は彼女の前に姿を現すことはなかった。ついでに彼女に声をかける生徒もいなくなった。彼女の激怒した姿を目撃した生徒達は揃いも揃って恐怖し、彼女を避けるようになったのだ。

 内容を聞いていた者の中には根も葉もない噂を流す輩もいて、『実は人を殺している』だとか『ヤリマンでコンドームを持ち歩いている』だとか、失礼極まりないものばかりだ。

 しかし彼女は気にする素振りはなく、変わらず孤独を満喫していた。

 

 そんな雨原の姿に、僕は惚れてしまったのだ。

 今思えば、初めてドキリと胸を鳴らした小説のヒロインが彼女に似ていたことも、惚れた要因なのかもしれない。おそらく、あれが僕の好みを決定付けてしまったのだろう。

 

 

 彼女とは深い関係になりたい。けれど目立たない一般男性な僕が彼女に告白したところで、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなるのがオチだ。第一、僕は彼女とプライベートで話したことはない。プリントを渡した時か、消しゴムを拾った時に声をかけた程度だ。

 それに、たとえ告白したとしても、彼女から罵詈雑言を浴びせられるかもしれない。彼女がそんなことをするかは分からないが、そんな被害を妄想をしてしまうこともあって、彼女に踏み出せずにいた。

 

 けれど、僕には催眠術がある。短時間だが、効果のある術が。

 

 悪の欲望が湧いてしまった僕は、その日から数日間にかけて、催眠術の練習と実験を行った。勿論、疚しいことには使っていない。近所で縄張り争いをしていた地域猫に仲良くしろと命令したり、コンビニでよく見かけるタチの悪いクレーマーとして名を馳せていた中年を路地裏に呼んで謝罪しろと命令したりと、実験的なことをした。

 結果は全て成功。猫達は喧嘩をやめて仲良くし合い、中年は店員や客に土下座をしていた。動物にまで効果があるのは驚いた。

 また、催眠解除の効果についても確かめた。手のひらを叩くと仲良くじゃれあっていた猫達は再び喧嘩を始め、6時間が経過すると、中年のクレーマーはいつものように理不尽で理解不能なクレームを始めた。けど、みんな僕がすぐ近くを通っても、振りむくことも反応することもなかった。猫達には謝罪の意味も込めて猫缶を振舞った。美味そうに食べていた。

 

 そんな実験を繰り返していくうちに、僕は催眠術を扱うことに自信がついていた。たとえ時間制限があったとしても、この力があれば、少しだけ恋する彼女を思うがままにできる。

 成就しないであろう恋心をたったの6時間で済ませてしまおうという疚しい気持ちが湧いてしまった僕は、最早手の付けようがない愚か者になっていた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 そして冒頭に戻る。

 

 念入りに練習を重ねたため、かなりの自信がついている。そのはずなのだが、やはり本番となると、手の震えが抑えられない。しかしここで失敗するわけにも、引き返すわけにもいかない。どの道、進んでしまっては逃げることなんて出来ないのだ。

 

「…………なにそれ、巫山戯てるの?」

 

 雨原は首を傾げながら、無表情で至極当然な言葉を返した。むしろ怒ってどこかに立ち去ってくれた方がマシなくらいに、淡い瞳が僕を睨む。

 

 だが、止まるわけにはいかない。僕はとにかく見ててと言い、彼女の前で振り子を振った。ゆっくり、一定のリズムで左右に、5秒間。その間、彼女の視線は振り子に向いていた。

 そして5秒後、僕は手を止めた。体感としては10秒も長く感じた。

 

「……雨原さん、1つ聞いていいかな? 君にとって、僕は恋人かな?」

「…………なに言ってるの」

 

 催眠にかかったのか分からない無の顔が僕を見つめる。まるでおかしなことを言っていると言いたいような顔だ。

 額から汗を流していると、雨原はため息をついて口を開いた。

 

「私にとってあなたは『大好きな恋人』よ。何を当たり前なことを今さら聞くの? 熱でもある?」

「あ、そ、そうだよね。うん、ごめん、確認してた」

 

「しっかりして」と、さも前から付き合っていたかのように雨原は言った。どうやら、無事彼女に催眠をかけることができたようだ。絡まっていた重りが解けたかのように急に足元が軽くなり、後ろへ倒れそうになる。それを後退りで何とか耐えながら、僕は一咳き込んで彼女と向き合う。

 

「きょ、今日は僕の家で遊ぶ予定だったよね」

「……ええ、今日はあなたの家でゆっくりする予定よ」

 

 無論、そんな約束はしていない。僕の言った言葉を、彼女の頭は前から約束していたかのように思い込んでいるのだ。

 

 この後の流れは大体決まっている。今は午後4時、タイムリミットは6時間で、午後10時になれば催眠は解ける。その前に彼女を家に返さなければならない。

 幸いにも、彼女の家は僕の実家からそう遠い場所にあるわけではないらしい。この前の調査(ストーキング)で確認済みだ。(もう二度とあんなことはしない)

 となると、催眠が解ける1時間前、午後9時には彼女と別れなければならない。

 今から僕が家に帰るまでの時間、そしてこの後の電車の時間を考えると、午後5時までには必ず家に辿り着ける。

 となると、正確なタイムリミットは4時間ということになる。その間に、彼女と事を済まさなければならない。

 

「なに深刻そうな顔してるの」

「え、あ、ごめん。少し考え事をしてたんだ」

 

 いつの間にか、彼女が僕の顔を覗き込んでいた。目の前まで近づいていた彼女の瞳は、不思議なものを見るかのように僕を突き刺してくる。

 

「……ほかの女のこと、考えてた?」

「いや、そんなことないよ」

「ふーん、ならいいんだけど。ねえ、今日はなにをするの?」

「え? あー、そうだね。うち今両親が旅行に出かけててさ、明後日まで帰ってこないんだよね。だから、好きなことができるよ」

「そっか」

 

 彼女の一言一言が、僕を追い込むように襲ってくる。

 あれだけ疚しい気持ちが湧いていたというのに、彼女の淡い瞳が、僕のことを本気で恋人と思い込んでいる彼女の姿が、その気持ちを罪悪感へと変えていく。

 

 よく考えれば、別にわざわざ僕の家に呼ぶ必要なんてないのではないか。事を済ませるとは言っても、彼女と2人きりで話したり、手を繋いだり、キスや甘えると言った程度のことをしたいだけで、それなら別に僕の家でなくても、公園や路地裏でできるはずだ。なんなら、すぐそこの死角になっている場所で、そういうことをしても良いのだ。

 それに、彼女の家は果たして夜遅くまでの遊びを許す人なのだろうか。もし門限付きなら、初めから計画は破綻していたことになる。

 あれだけ練っていた計画が、実は遠回りで穴だらけなことに今更気がついた僕は、このまま催眠を解いて帰ってしまった方が良いのではないかと思い始めた。逃げるわけには行かないとほざいていたわりにこのザマだ。

 

「ねえ、そう言えばさ」

 

 自分の忸怩りに唸っていると、ポケットに入っていたはずの彼女の左手が僕の頬を撫でた。彼女に触れられたことなんて1度もないため、初めての細い指先と柔らかい感触に僕の背中はビクンとはねた。

 と思っていたら、いつの間にかポケットから出ていた彼女の右手が僕の胸元を掴み、グイッと自分に引き寄せた。目の前まで彼女の瞳が近づいた。

 

「なんで私のこと、苗字で呼ぶの? 私たち、恋人だよね? なら、アキラって呼んでよ。それとも、たっくんは私が嫌いなの?」

「そ、そんなことない。アキラ」

「……好きって言ってよ」

「……好きだよ、アキラ」

「大をつけて」

「…………大好きだよ、アキラ」

「…………うん」

 

 僕の返事に、雨原、いや、アキラは頬を撫でながら満足そうに頷いた。無に見えた表情には、微かに感情が読み取れた。

 晴山耀太と恋人であるという偽りを彼女に植え付けたのは僕本人である。しかし、これほどまでに効果があるとは思わなかったし、まさか彼女から名前で呼んで欲しいなんて言われることなんて、想像すらしていなかった。

 それに、命令もしていないのに僕のことを『たっくん』と呼ぶだなんて。

 

 彼女は僕から手を離すと、再びブレザーのポケットに手を入れた。

 

「それで、今日はどうする?」

「そうだなー。家に誰もいないからいいかなと思ったけど……やっぱり外で遊ぶ方がいいかな? うち来てもやることなくてつまらないし」

 

 さり気なく家以外の選択肢を出したが、アキラは「別に、私はたっくんと一緒に居られれば何でもいいよ」と返すだけだった。

 

 ──どうする耀太、逃げるなら今のうちだぞ

 ──手を叩け、今なら彼女を解放してさっさと逃げれば何も起きずに済む

 ──大丈夫だ、聞こえる範囲でなら効果はあるはずだ、屋上の出入口で叩いて逃げてしまえ

 ──彼女の純情と貞操を守ることができる

 ──もしやりたくなったらまた日を改めてやれば良い

 ──けれど彼女と話す機会なんて早々ないし、次に彼女と二人きりになれるのはいつになるか、同じ手は2度も通用しないぞ

 ──ならこのまま彼女との短い時間を満喫すれば良いんじゃないのか

 ──ほら、そこに死角があるだろうに。そこで致してしまえば良い。今なら彼女はこちらの言いなりだ

 ──しかし、1度進めばもう後には引けないぞ

 ──彼女を汚したという事実は一生背負うことになるぞ

 

 直進派と逃走派に別れた僕の感情が、心の中で渦を巻いて絡まり合う。こうしている間にも、タイムリミットは刻々と迫っている。背中の汗が白シャツに染みて、気持ちの悪い感触を肌に伝える。

 

「たっくん?」

 

 目の前では、小首を傾げたアキラが、今か今かと返答を待っている。飼い主からの指示を待つ忠犬のような彼女の姿は、普段の暗い雰囲気からは想像できないほどに愛おしく、撫で回したい衝動に駆られる。

 そんな変態的な衝動を抑えることに必死になってしまい、僕は答えを出せずに口を閉ざしたままになった。

 

「…………そう、悩んでるんだ」

 

 何も言わぬ僕を横に、アキラはポケットからスマホを取りだし、何処かに連絡を取り始めた。そして一言二言、僕が止める隙もなく話し終えると、彼女はスマホを戻し、僕に向き直した。

 

「今、お母さんに電話した。今日は友達の家に遊びに行くから帰りが遅くなるって。あとそのまま泊まるかもしれないことも伝えたよ」

 

 悩んでいる間に、いつの間にか家で遊ぶという選択肢に固定されてしまったようだ。おそらく、僕が家で遊ぶか、外で遊ぶかを悩んでいたと勘違いしたのだろう。

 いや、それはそれで問題だが、問題は後半のセリフだ。

 

「あの、泊まるって? ……アキラ?」

 

 聞こうとした瞬間、僕の体に何かが抱きついてきた。何かの正体はアキラであり、彼女は身体を密着させた。柔らかい彼女の感触にたじろぎそうになるなか、彼女は頭を上げて、上目遣いで僕を見つめた。

 

「たっくん、耳貸して」

 

 彼女に言われるがまま、僕は彼女に耳を傾けた。

 

「……私、たっくんの言うことなら何でも聴くよ。そういうことだって、なんだってする。たっくんは、私とどうしたい?」

 

 普段の彼女からは出ない、蠱惑的な声が僕を誘い、耳もとで囁いた。

 彼女からの甘い誘い、それは僕がやりたかったことのさらに先へと手招きするかのような、まるで僕が催眠術をかけられているかのような。

 

「ねえ、たっくん。どうしたい?」

 

 回答を迫るように、彼女の囁きの息が耳穴に吹く。

 僕の心の天秤は偏り、誤った答えを出した。

 

「…………エッチなこと、したい」

 

 その答えのあとも、彼女はじっと僕を見つめた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 僕の家はA高校から電車に乗り、最寄り駅を出て、歩いて十数分の場所にある。家族構成は僕と両親の3人暮らし、昔シーナと名付けた白猫を飼っていたが、彼は老衰で数年前に既に他界している。常に高い場所から人を見下ろしていた彼のことは、今でも忘れていない。

 

「可愛いね、シーナちゃん……ああ、オスだから、シーナ君かな」

 

 そんな我が家のヒエラルキートップだった愛猫シーナの額縁に収められた写真(去勢手術後で激太りした、かなり不貞腐れた顔のもの)を、アキラは手で持ちながら撫でた。

 

 アキラに催眠術をかけることに成功した僕は、彼女を自宅に連れ込んでいた。彼女は僕の答えを聞いて早々、手を繋いで帰ろうとしたり、腕を組んで帰ろうとした。流石に人目が着く場所でそんなことをされるのは困るので、最寄り駅まで他人のフリをし、降りてから家までの道のりの途中で手を繋いだ。彼女は無表情だったが、不服そうなことは伝わった。

 

 今日、我が家には父と母はいない。明後日まで夫婦水入らずの旅行に出かけているからだ。というのも、あの件以降、2人はモジモジした様子ですれ違うようになり、まるで初々しい男女のような空気を作っていた。そこで僕は、2人に旅行に行くことを提案した。いつまでももどかしいものを見せつけられるこっちが辛いということもあるが、彼女をこうして家に招く環境を作る為にも都合が良かったのだ。

 

「ここがたっくんの部屋か……初めて来たけど、何だか思ってた通りだね」

 

 アキラは立って、シーナの写真を机に戻し、再び僕の隣に腰を降ろした。

 初めて来たというが、当たり前のことだ。だって本当に初めて彼女を家に呼んだのだから。『思ってた通り』という言葉が引っかかったが、別に気にしなくて良いだろう。

 僕の部屋は、フィクションでよく見るキャラクターの部屋そのまんま、といった方が早いだろう。

 棚が数台あって、そこに趣味の本や漫画が並べられている。脇の隙間にはミニテーブルが折り畳まれて収納されている。窓もあって、小学生の時から使っている勉強机も置いてある。机の上のミニ棚には、高校の教科書がずらりと並べられていた。引き出しには文房具の予備、テストのプリント、そして例の催眠本が片付けられている。

 そんなシンプルな部屋に置かれたベッドの縁で、僕と彼女は並ぶように座っていた。初めて女子を家に招くというのもあって、僕の体は緊張で硬直していた。それに対して、彼女は普段のように表情一つかえず、観察するように辺りに目を向ける。

 

「あのさ、アキラ。門限とか大丈夫なの?」

「まあ、一応7時って決まってるけど、うちのお母さん、ちゃんと連絡を入れたらOKな人だから。友達の家に泊まるのも、相手が良いなら良いって」

「そっか、結構緩いんだね」

 

 適当な会話でこの場の空気を誤魔化そうとする僕。笑顔を作っているが、心の中ではこの状況に焦っていた。

 

 さっきまでは、彼女が家に連絡したことをそれほど問題視はしていなかった。しかしよく考えると、彼女が家に帰宅した時には催眠が切れ、僕との記憶は忘れる。

 となると、もし彼女の親が今日のことを質問したら、彼女は何それ知らないと答える。それはおかしいと彼女の母親は────兎に角、状況が悪いことには変わりない。

 

「ところでさっきの電話、僕の名前は出した?」

「うん、晴山さんの家に遊びに行くって言ったよ」

 

「そっか」と僕は答えた。

 もう駄目だ。終わった。名前を出された時点で詰んでいる。少なくとも、僕と同じ苗字の生徒は聞いたことがない。誤魔化しようがない。後戻りなんてできない。母親に名前を知られては、逃げようがない。

 

 ──いや、今の彼女は僕の言いなりのはずだ。なら、今日のことは話さないように命令を出すか、そうすれば親には適当に誤魔化す。そして催眠が解けても、結局なんだったのか分からずに終わる。

 それか、晴山じゃなくて羽山の間違いだったと言うように命令を出せば、どこかにいる羽山さんのせいにできる。今からでも電話をさせて、けどそれだけのために電話をさせるのは怪しいのでは。

 なら、今からでも帰らせて遊びが中止になったと言わせれば良い、そうだ、そうすれば──

 

 僕は頭の悪い脳みそをフル回転させて考えた。この先、これ以上に自分の頭の悪さを呪うことはないだろう。

 やはり、あの時逃げればよかった。そうすればこんなことにならずに済んだのだ。そもそもこんな馬鹿げた行動をとるべきではなかった。後悔が今になって襲ってきた。

 

「……もしかして、名前を出されたこと、気になる?」

 

 項垂れていると、彼女が声をかけてきた。顔を上げると、彼女の淡い瞳がすぐ目の前に来ていた。彼女が顔を寄せていたのだ。

 

「たっくん、私たち、付き合ってるんだよ。なら、別に名前を出されても気にする必要はない。なんなら、お母さんに付き合ってることを話したって、私は構わないよ」

「いや、それは困るから」

「どうして困るの? たっくんは私のこと、嫌いなの?」

「いや、大好きだけど。流石にみんなにバレるのは早いというか、アキラも周りから質問攻めにされるのは嫌でしょ? だからみんなに内緒にしてるんだよ」

「…………そう」

 

 …………おかしい。何かがおかしい。

 

「……アキラ、今日はもうやめて解散にしよう。お母さんには中止になったって話してさ。あと、晴山さんじゃなくて羽山さんの家に遊びに行く予定だったって話してよ」

「……なんで偽名を言う必要があるの」

「そうして貰わないと困るからだよ」

「何をどう困るの」

「いや、だからバレると周りから……」

「……絶対にやだ、私は帰らない。どうしても帰れっていうなら、お母さんにたっくんと付き合ってること、話すから。嘘だってつかない」

 

 果たして彼女は本当に催眠にかかっているのだろうか。実験では皆、僕の言う通りのことをしていたし、僕に不利になるような余計な行動は取っていなかった。

 なのに、彼女は僕の命令とは関係ない行動を取っている。屋上での誘いといい、親への連絡といい。

 いや、どれも僕のためにやっていることなのだろうし、それが僕の恋人であるという暗示によって引き起こされたことなら──

 けど、明らかに彼女は両親や猫達、クレーマーとは違う。糸に操られる人形ではなく、意志を持った人形のように動いている。いまさっきも、僕の提案を拒否し、半ば脅してきた。

 これは催眠術の暴走なのか、それとも彼女の中にある僕への気持ちが暴走しているのか……けど、そうなると彼女は僕の事を……ありえない。あるとしたら、きっと僕の彼女への気持ちがこの暴走を引き起こしているのだろう。それか、この催眠術自体が不完全な物なのかもしれない。

 

「帰らなくて良いよね?」

「……うん」

 

 催眠をかけているはずの彼女から発せられる無言の圧に負けて、僕は萎れるように頷いた。

 

 もう、この先のことなんて考えるのも疲れてしまった。こうしている間にも、時間は流れて行った。

 

「……たっくん、いつやるの?」

 

 気がついた僕は時計に目を向ける。針は既に6時を指していた。短針が6を、長身が12を指して、1本の線になっている。

 タイムリミットは既に3時間。いや、ここまで来たら制限時間なんてものは無駄な事だ。

 

「……私はいつでもいいよ」

 

 アキラは、無表情ながらも待ちわびている様子で僕の袖に手を触れると、そのまま肩に頭を擦り寄せた。上目な瞳が僕を見続ける。猫にも似たその姿に、僕の視界はアキラのみを映した。

 

 ──たとえどんな命令を下しても、彼女は気に食わなければ反対するだろう。

 ──どちらにしろ、僕は終わりだ。もうこのまま底まで落ちてしまおう。最後に、彼女との一時を味わって逝こう。

 

「……そうだね。やろっか」

 

 呟くように言うと、アキラは「わかった」と言い、長袖のブレザーの牡丹に手をかけ、一つ一つ外し、するりと脱いで床に落とした。

 ネクタイを結んだ、長袖のブラウス姿。胸に出来た膨らみは、ブレザーを纏っている時には目立たなかったものだ。

 その姿が酷く厭らしくて、僕の性欲を刺激した。

 

「たっくん」

「……おいで、アキラ」

 

 僕の手招きに、アキラは誘われるように体を密着させる。シャツの擦れる音が耳に届き、彼女の体が僕に触れていることを実感させる。

 アキラは体を擦り寄せながら、僕の太腿に跨る。そして両膝で支えていた体を下ろし、対面する形で僕の上に座った。卑猥な言葉で云うなら、対面座位というやつだろう。

 恋心を抱いていた雨原が、いつも遠くから見ているだけだった明が、今、すぐ目の前に、しかも体を密着させながら座っている。この事実だけで、頭に渦巻いていたものが全て吹き飛び、純粋な性欲だけが肥大した。

 

「あなたが何に悩んでるか知らないけど……そんなこと忘れるくらい、気持ちよくなろ?」

 

 そう囁くと、アキラは僕の肩に両手を回し、瞳を閉じて顔を近づけ、僕の唇に自身のものを押し付けた。同時に、ブラウス越しに彼女の柔らかい乳袋が押し付けられた。

 

「んっ、ん……ちゅっ、ん…………♥」

 

 初めは表面を啄きあい、お互いの味を確認し合う。彼女のキスは情熱的で、無感情な印象からは想像できない程に積極的だった。ぷっくりと膨らんだ彼女の口肉は、とても柔らかい。

 

 ちゅぷっ、ちゅる♡ちゅう♡

 

「んっ、はむっ♥んんっ♥」

 

 小さな水音が響かせながら、アキラと僕は口端に唇を押し込み、隙間のないキスを交わす。密閉された口内の中では、彼女の舌が僕の口に伸ばされ、歯茎を舐めている。上の歯、下の歯と、味わうように交互になぞりあげる。

 

 ちゅっ♡ちゅぷっ♡ちゅぷっ♡

 

 初めての女性とのキス、どこかの誰かはレモンの味と言っていたが、彼女の口内からは、仄かにイチゴの匂いが吹き込んでくる。甘い誘惑的な匂いが、僕の脳を溶かし、思考を鈍らせる。

 

 ちゅぷっ、にゅるんっ♡

 

 そして歯をいじめていた彼女の舌は、歯をこじ開けるように暴れ、とうとう僕の口の中へとねじ込みながら侵入した。苦いのか、無表情が多い彼女の眉間が歪む。

 

「ん、んふっ♥んんっふ……♥」

 

 ねっとりとした舌先が畝り、僕の口内を縦横無尽に動き回る。相手を探すような舌先は、やがて僕のものと出会い、その身を絡め始める。苺の匂いがより強くなり、呼吸をすると肺の中へと潜り込み、頭どころか全身を甘く染める。

 

「んふ、れろっ♥はむっ♥れぇ、んっ♥」

 

 アキラの舌が僕の舌を捕まえ、唾液を塗りたくりながら絡む。ざらついた肉舌が僕を誘い、いつの間にか僕も彼女の口と中へ舌先をねじ込み、暴れさせていた。アキラの中は甘く、ほんわりと苦い味わいだった。

 

「あ、れぇ♥れろっ♥あふっ♥あー♥」

 

 にゅるっ♡にゅるる♡

 

 十分に口内を味わうと、今度は唇を少し離し、舌先のみを絡めあった。唾液で表面をぬめらせた2つの舌肉が、唇の間で螺旋を描くように絡まり会う。時折唇にぶつかり、乾いた表面を潤わせた。

 

 薄目で彼女が僕を見つめる。僕も彼女を見つめる。

 

 にゅる♡にゅぷっ♡れろっ♡

 

 ねっちょりとした響きが狭間で起き、卑猥な音楽として奏でられる。溢れた唾液がたらりと垂れると、彼女の胸元へと落ちて染みになる。

 

「んんっ……」

 

 ちゅうぅぅ……♡

 

「ぁ…………♥」

 

 最後に唇を重ねて吸い込み合うと、僕達は唇を離した。舌先の間で銀の糸が繋がれ、部屋の明かりを跳ね返して輝く。それは意外と丈夫で、糸が途切れる瞬間まで、僕とアキラは視線を交わしあった。

 

「悩み、吹っ飛んだ?」

 

 僕は頷く。もう僕の頭の中に、この後のことなんて考える組織も、逃げなかったことを後悔した思考もいない、逃走派もどこかに消えてしまったようだ。

 彼女は少しだけ体を離すと、ネクタイを緩め、するりと首元から抜いた。そして両手でブラウスのボタンに触れ、首元、胸元と、順番に外していった。

 そして、へそ辺りまで開けたところで、彼女は前を開き、中に収まっていたものを露わにさせた。

 

 黒く、花の刺繍が施されたブラジャー。高校生にはまだ早い、大人の女性が身につけるようなそれは、大きめな彼女の胸を包み、形を整えていた。ムワッと蒸れた汗の匂いが、僕の鼻腔を刺激する。

 この大きなものが、彼女の中に眠っていた。そして、この胸が僕に押し付けられていた。叡智一色に染まった僕の思考が、卑猥な妄想を加速させた。

 

 僕は手を彼女の左手胸へと伸ばし、指を沈ませながらゆっくりと揉んだ。

 

 むにゅっ♡

 

「あんっ……♥」

 

 一揉みした瞬間に、アキラの喉から高い喘ぎ声が1つ漏れた。顔は緩み、眉が下がる。頬が火照り、目が潤んでいる。これほどまでに表情の崩れた彼女は見たことがない。

 

 むにゅっ♡むにゅり♡♡

 

「あっ、はっ♥あっん♥」

 

 僕は追撃するように指を動かし、彼女の胸を揉み続けた。ブラ越しだが伝わる、彼女の豊乳の柔らかさ、黒いブラジャーに指が沈み、摘む度に形を変える。下乳に触れれば、彼女の胸はブラを纏ったままふるりと揺れた。

 彼女は喘ぎ声を漏らし、後ろへ倒れそうになる。それを僕の肩に手を置いてなんとか耐えている。

 

「あ、あっ♥あっ、んんっ、あっ♥」

 

 なんて色っぽいのだろうか。孤独を好み、誰も寄せつけようとしない彼女が、こんなにも雌を出して喘いでくれるだなんて。そう考えるだけでも、僕の手の動きは激しさを増した。

 

「あっ、はぁ、あっ、あぁっ♥」

 

 揉みしだかれる指の動きに合わせて、彼女の体はピクリと跳ねる。走る快感に必死に耐えるように彼女は顔を上げ、荒い吐息を吹きかける。

 気がつけば、アキラは体を微動させて、下半身を僕の股間に押し付けていた。スカートに包まれて見えないが、この中では、彼女の下唇が僕の勃起した股間部にグリグリと押し付けられている。

 

「はぁ、はぉ、たっくん……んぁっ♥ああっ♥はぁ♥」

 

 色っぽいアキラの声をもっと聞くために、僕は持て余していたもう片方の手を彼女の背中に伸ばし、ブラウス越しに背骨の窪みを愛撫した。それが気持ち良いようで、アキラの姫声は声量を増した。

 

 手はアキラの背を撫でると、流れるように臀部へと降りていく。スカート越しだが、彼女の尻の谷間は直ぐに分かり、撫でるように掴み揉んだ。

 

「はぁん♥あっ♥あんっ♥……ぁ……♥」

 

 掴んでいた手を下乳に潜り込ませ、ブラジャーの下にある隙間に指を突っ込み、そのまま中へと侵入させる。侵入した手は隠れている彼女の豊乳を直接掴み、肉に指を沈ませる。

 見えなくてもわかる、彼女の乳輪と乳頭の大きさ、そして本当の彼女の胸の柔らかさ。手に収まる胸を挟んで、彼女の鼓動が伝わってきた。

 

「たっくん、ダメ……あっ♥」

 

 僕は手を動かしながら、彼女の谷間に顔を埋めた。ブラウスによって収められていた豊乳の狭間は汗で蒸れており、より彼女の匂いを強くしている。舐めると、塩っぱい味が味覚を刺激した。

 

「……たっくん、本当はどうしたいの」

 

 震えを止めながら、アキラは聞いた。

 

「……アキラの、おっぱいが吸いたい」

 

 正直な気持ちを答えると、アキラは僕の肩を押して一旦離れさせ、着ているブラウスを脱いで床に落とす。

 上半身がブラジャーのみとなった彼女は、背中に手を回し、ブラホックを外し始めた。

 

 …………ぷるんっ♡

 

 ブラを脱ぐと同時に、眠っていた彼女の豊乳が零れた。予想通り、やはり大きい。制服姿では分からなかったが、女子高生の中でもかなりの大きさだ。こうやって生で見ると、よく制服の中に収まっていたと思わせてくる。

 

「いいよ、吸って……あっ♥」

 

 彼女に誘われるまま、僕は両手で彼女の体を抱き寄せ、左乳に顔を埋めながらしゃぶりついた。

 とても柔らかい、たとえでマシュマロが挙げられていたが、あながち間違いではない。沈むような乳肉が顔を包み、口に含んだ乳房を噛むと、弾力をはね返してくれる。

 

 ちゅっ♡ちゅうっ♡ちゅうっ♡

 

「は、あっ♥んんっ♥」

 

 僕は赤子のように乳房に吸い付く。吸われた乳房の先に着いた乳首が引っ張られて口内へと招かれ、それを舌先で虐める。すると、彼女はか細い声を上げて鳴いてくれるのだ。

 

「あ、ダメ、引っ張ったら……ぁぁ♥」

 

 たまに食らいついたまま頭を後ろに逸らし、彼女の乳先を引っ張る。大きな乳は伸縮率もあるらしく、アキラのものは伸びた。

 

「たっくん、たっくん……♥」

 

 乳を吸う僕の頭を優しく抱きしめながら、アキラは腰を畝らせ、股間部をさらに刺激する。吐息とともに、彼女の喘ぐ声まで漏れていた。

 

 …………カリッ! 

 

「あぁっ!! ……♥」

 

 歯で乳首を噛み挟んだところで、アキラは大きな痙攣をし、声を高く上げた。

 僕は数回吸い付いた後、栓の抜けるような音を出して唇を離した。

 

「アキラ、大丈夫?」

「……大丈夫、軽くいっただけだから。それよりも、さっきからあそこ、凄く跳ねてるよ?」

 

 彼女の言うとおり、僕のズボンは既にテントを張っていた。パンパンになった僕の股間が、外に出たいと震えている。

 アキラの目は、次の指示を待っているかのようだ。

 

「……アキラ、君の口でスッキリさせて欲しいな」

「…………うん、わかった」

 

 僕のお願いに頷くと、アキラは僕から離れ、ベッドから降りて、縁に座る僕の脚の間に入り込むようにして、ぺたりと床に座った。椅子に座っている状態で、足の間に入るのと同じ姿勢だ。

 

「……うん、凄くビンビンになってる」

 

 目前で疼くものに、アキラは見たままのことを言った。ズボンの股間部は大きく盛り上がり、不自然なテントを張っている。アキラを求めて暴れているかのようだ。

 アキラは表情を変えぬまま僕のズボンのベルトやチャックを解き、床へずらす。そして中に収まっていたパンツも、邪魔なものを退かすようにずらした。

 

 ぶるんっ!! 

 

「あ…………」

 

 そしてとうとう僕の肉幹姿を現した。アキラとのキスによって興奮しきった肉幹は、下着がズレた瞬間から大きくその茎を揺らして、亀頭で彼女の顔を指した。

 

「……凄くバキバキだね。これを舐めればいいの?」

「そう、だね。うっ」

 

 僕の濁った答えを聞くや否や、彼女は僕の太腿に手を当てて開けさせ、肉亀の顎下にある裏筋をひと舐めした。人一倍黒い肌の味にアキラは顔を顰める。

 

「んっ……れろっ♥」

 

 アキラは唾を飲み、もう一度舌を伸ばして肉棍を舐める。僕でさえ、自分の陰部の臭いを嗅いだことなんてない、味なんてものも知るはずがない。

 

「れろっ♥れぇっ♥ぇっ♥んれぇ♥」

 

 そんな肉幹を、アキラは細い舌先をチロチロと畝らせ、ぺろぺろとキャンディのように舐め、汗で蒸れた表面をぬるりと撫でている。

 僕の知らない僕の苦さを、憧れの彼女は味わっていた。そして、僕が女性にペニスを奉仕してもらうのは、彼女がはじめてである。これだけでも、僕の愉悦感は満たされていく。

 

「んれろっ♥たっくん、んぷっ♥」

 

 アキラが裏筋から肉亀の顎下にかけてざらついた肉舌を走らせる。支えているわけではない為、舌がつるりと舐め上げる度に肉幹は上下に震えた。

 

「んあっ、あっ♥れろっ♥」

 

 アキラの舌先が鈴口で止まり、うねうねとその身を畝らせながら口を啄く。先程のアキラとのディープキスと陰唇により、僕の尿道には既に我慢汁が待機していた。その待機分が、アキラのによって鈴口から煽り出され、彼女の舌をゆっくりと伝う。

 

「んっ…………♥」

 

 アキラは舌を口内へ引っ込めると、くちゅくちゅと口を鳴らしながら我慢汁を味わう。その間も、彼女は僕に視線を向け続けていた。

 我慢汁が彼女の喉を通ったところで、僕は口を開いた。

 

「どうかな、アキラ。美味しい?」

「…………うん、美味しい」

 

 真顔。しかし、頬を紅くした湿っけのある瞳が、彼女が興奮していることを教えてくれる。

 良く考えれば、彼女は今、スカートとショーツ、学校指定の靴下のみを着用しており、上半身は何も着ていない状態だ。女性らしいラインを持つ体も、十分な膨らみを持つ豊かな乳房も、丸出しな状態だ。

 そんな彼女の姿は、肉幹をビキビキに屹立させるには十分すぎた。

 

「良かった。けど、ザーメンはもっと美味しいよ」

「そうなの?」

「ああ、それにザーメンを出せば、僕も気持ち良くなれる。だから、アキラの口で気持ち良くして欲しい」

「……分かった」

 

 アキラは両手で陰部に触れ、茎の根元と胴体を掴む。彼女の柔らかい指の感触が、表面に浮き出る血管を通して僕に伝わってきた。

 

「熱い……これが、男の子の温かさなんだ」

 

 舌舐めで塗りつけた唾液を指で軽く馴染ませながら、アキラは亀頭に顔を近づけ、白い吐息をかける。

 

「んっ」

 

 ちゅっ♡…………じゅぷぷっ♡

 

 アキラは口先で肉亀にキスを交わすと、そのまま口の中へと飲み込んでいく。一気に咥えるのではなく、亀頭先から肉根にかけて、水音を出しながら頭を僕の股へと沈める。

 

「あ、アキラ……!」

 

 肉幹が少しずつ肉の筒の中へ呑まれる感覚が、僕の背中をびくつかせる。ベッドから外に出された両足が、ピンとはねてしまう。一気にやってしまった方がいっその事楽だろうに、それをしない彼女は、とても意地悪だ。

 

 ぢゅぶぶっ♡ぢゅぶっ♡♡

 

 僕の悲鳴を無視して、肉幹が湿った肉壺の中へと消えていく。茎が彼女の奥へと進むにつれ、亀頭は中の柔らかい肉を擽る。

 

「んっ…………♥」

 

 そして、肉幹がアキラの口に収まり、彼女は眉を引くつかせてくぐもった声を漏らした。人肌よりも暖かい彼女の口内は唾液で満たされていて、臭いペニスを潤すように染み込んでいく。そんな感覚が僕を襲った。

 それを分かっているのか、アキラは前髪から淡い両目を覗かせながら、口の中をわざと狭め、肉棍に柔肉を密着させ、緩やかな締め付けを行った。

 

 ぢゅるるる♡……ぢゅぷっ、ぷぷっ♡♡

 

 口を尖らせながらゆっくりと吸い付くと、アキラは頭を後ろへ引く。肉が深いカリをぬるりと擦り、緊張の垢を拭う。

 

 ぢゅぽっ♡ぢゅるっ♡ぢゅる♡

 

 黒い髪が、股間部で前後に揺れ動く。窄められた唇が肉竿の皮を滑り、隙間から唾液を溢れさせる。

 

「んっ♥んふっ♥ふっ♥」

 

 アキラは艶のある籠り声を鳴らしながら、両手で根元を掴んで肉幹を扱く。頭が引くと彼女の口まんこに肉亀が引っ張られ、前へ進むと喉奥へとぶつかる。飲み込まれるギリギリの場所で亀頭を攻める彼女のやり方は、僕をより淫らな思考へと誘うような、刺激の強いものだ。

 

 ぢゅぽっ♡じゅるっ♡じゅるるっ♡

 

 子どもがアイス棒を噛まずに口の中へ出し入れする、その食べ方と同様に、時にアキラは僕の肉幹を味わうかのようにしゃぶり、水気のある音を立てて吸い込む。吸い込んだあとは、再び頭を動かして陰茎を奉仕した。

 

「ふっ、んむっ♥ふぁっ♥んんっ♥」

 

 アキラの口内で混ざった唾液と我慢汁が、彼女の嬌声とともにペニスを包む。それは彼女にとって十分な潤滑油になり、艶のある髪の揺れ具合がより激しくなる。

 

「あ……!」

「んっ、ぉぇ♥んうっ♥」

 

 その快感に僕は声を上げつつ、アキラに視線を向けた。彼女は苦い表情を取りながらも、小さな口で必死に肉幹を咥えている。膨れた亀が喉奥に当たり、吐きそうな嗚咽をあげているが、決して離そうとはしなかった。

 苦しさで目尻に涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだった。僕は無意識に手を伸ばし、指先で涙を拭った。

 

「…………」

 

 肉幹を咥えたまま、アキラはじっと僕を見ている。一見すると睨んでいるかのようだが、僕には彼女が嬉しそうにしているように見えた。

 

 …………れろっ♡

 

「あっ!」

 

 突然走る刺激に僕は声を上げた。彼女の肉舌がカリ首部分を包み、愛撫するように舐め回したのだ。

 その攻撃は収まることなく、硬直したペニスを容赦なく攻めている。

 

 ぢゅぶっ♡ぢゅぶっ♡♡ぢゅるっ♡♡♡

 

 それに加えて、アキラは頭を動かして肉幹を弄ぶ。2つの猛攻によって引き起こされる刺激が僕に襲い掛かり、頭の中を白く焼いた。

 

「あ、アキラ……もう、でそう……!」

 

 睾丸から這い上がる子種達を受け止めた精液が、尿道を通ってもうすぐ外へ出ようとした。

 

「んっ、はひへ……んぐっ♥」

 

 モゴモゴとしながら、アキラは射精を促すために裏顎全体を肉舌の表面でさらりと撫でる。蛇のように前後に動き、たまに横に動いてベロベロと唾液を塗りたくる。

 頭の揺れが激しくなり、同時に僕へ伝わる快感も増してゆく。

 

「あ、アキラ……飲まずに、頬に溜めて……僕に見せて……!」

 

 ぢゅぶっ♡ぢゅぶっ♡…………ぢゅるるるるっ♡

 

 咄嗟に命令を出した直後、アキラは茎の中間で頭を止めて、口を窄めて肉幹を吸い出した。ぢゅるるという大きな水音が響き、勃起した肉亀全体が震える内頬肉に包まれながら、バキュームのように吸い込まれる。

 

 ──どびゅるっ♡どびゅるるるるぅぅぅぅ♡

 

「んんっ! …………♥」

 

 瞬間的な爆発。

 絶頂を迎えた肉幹が、亀頭の鈴口から待機していたドロドロのザーメンを一気に吐き出す。その勢いは凄まじく、破裂したかのように真っ直ぐと飛び出す。本人である僕でさえ驚く程に量が多い、自分で慰めるときでさえここまで吐液したことはなかった。

 

 びゅぐるるっ♡びゅるるるるっ♡

 

「んっ♥…………んんっ♥」

 

 アキラは生臭い味と臭いに顔を顰めつつ、口に雪崩るザーメンを受け止める。僕の指示通り、彼女はザーメンを一滴も飲まずに口の中に溜めていく。肉棍が射精で脈を打つ度に、窄めていた頬が、餌を貯めるリスのように少しずつ膨らんでいく。

 

 ……どぷっ♡

 

 射精が終わったところで、アキラは口からペニスを引き抜く。ザーメンが外に漏れないよう、ぷっくりと赤く色づく唇をとじている。

 

「…………あーっ♥」

 

 くちゅくちゅと舌で掻き混ぜた後、アキラは大きく口を開いた。彼女の口内では、肉幹から吐き出されたザーメンが濁り池を作っていた。舌が沈んで姿が見えなくなるほどに量が多く、今にも口から零れ落ちてしまいそうだ。

 

「いいよ、吐き出して」

「……あぇ♥」

 

 僕の指示に頷くように、アキラは両手を受け皿替わりにして、口に溜まるザーメンを上に垂らし落とす。粘着質な子種は白い糸を引きながら、彼女の舌先から手の平へと落とされていく。

 ある程度吐いたところで、アキラは口を閉じ、残ったザーメンをごくりと喉を鳴らして嚥下した。

 

「……これが精液の味……ううん、たっくんの味なんだね」

 

 アキラは手の平に小さな白濁の池を作る子種の群れを愛おしそうに眺める。ほんの少しだけ頬を上げる薄らとした笑みは、慈愛に満ち溢れる母親のようだった。

 

 …………ぢゅるるっ♡

 

 彼女は受け皿に顔を近づけるとゆっくりとそれを上げ、汁物を吸うように白濁液を啜る。卑猥な音が僕の下半身から響いた。

 その姿はとても卑しい、しかし、僕の目は、腕の間に挟まれて谷間を作る2つの丘に釘付けになった。この場面だけで、僕の肉幹は十分に充血した。

 

「アキラ、実はまだ尿道にザーメンが残ってるんだけど……」

「んくっ♥…………おっぱいで挟んで欲しい?」

 

 僕は頷いた。催眠にかかった彼女は、僕の欲求を直ぐに察することが出来るようだ。

 アキラは粘ついた両手で自身の下乳を持ち上げ、軽くぷるんと揺らす。ピンと立った桃色の乳頭と乳輪が弾むように動いた。

 

「……えいっ」

 

 アキラは持ち上げた豊乳下の谷間に肉亀をあてがい、ずぶりと下ろして中へと誘う。ねっとりと濡れそぼった陰茎全体が、ふんわりとした柔らかな肉の海へと飲み込まれる。汗で蒸れているせいか、中はしっとりと湿っていた。

 

「たっくんの、熱い……」

 

 谷間の上部から顔を覗かせる亀頭を見ながら、アキラは息をふっと吹きかけた。暖かい彼女の吐息が肉の詰まった亀の頭を掠め、出したばかりで敏感になった肉幹を跳ねさせる。

 

「んっ……♥」

 

 色っぽい曇り声を出すと、ゆっくりと豊乳を上下に揺らす。マシュマロのような弾力を持った2つの果実が根元から亀頭にかけてペニスを搾る。柔らかいながらもアキラの胸は僕の茎をキツく締め付け、口とは違った肉質のある感触で襲ってくる。

 

 むにゅっ♡むぎゅっ♡

 

 ムニュリというたわわの潰れる肉感が肉幹越しに僕へと届く。また、唾液と我慢汁でペニスがたっぷりと濡れていたおかげか、やわ胸が揺れる度に、胸と陰部が擦れる瑞々しい卑猥音が鳴った。

 

「んっ……あ……んっ♥」

 

 むぎゅりと豊乳が形を変えてぷるぷると潰れる。乳が引き上げられるとカリ首がずるりと擦られ、鋭い快感を突く。

 時折、乳頭が肉幹や乳頭同士で掠れあい、その都度アキラは湿った声を漏らした。

 

 まるでチューブのように丹念にペニスを搾る豊乳によって、尿道に留まっている残滓たちは強引に出口へと這い上がらせられる。

 

「あっ」

 

 アキラは口を大きく開き、細い舌先をだらんと垂らした。乳房がムギュっと潰れた瞬間、肉亀の縦長な口から残滓がぴゅるっと飛び出し、彼女の口の中へと飛び移った。

 

 これでザーメンは全て出し切った。

 

 はずだったが、彼女のたんわりと実ったやわもちに弄ばれたせいか、睾丸からは新たな子種達が精菅を上がっていた。

 僕はアキラに命令を出そうと、視線を彼女に向けた。

 彼女は口を開いたまま、熱の篭った視線を僕に向けていた。

 瞳が交わる中、彼女は豊乳に指を沈ませ、むぎゅりと形を変えて肉幹を圧迫した。どうやら僕の言いたいことを理解したようだ。

 

 2つの果実が、互いに行き違うように上下に揺れる。その間も谷間に挟まれた剛直なペニスは動くことを強いられ、蛇のようにうねうねと茎を畝らせた。

 手で揉みしだくには少しばかり大きいアキラの乳房、それに挟まれても肉亀を出せているのは、彼女に奉仕されたことで眠っていた僕の獣が肉幹を大きくしたのだろう。性に支配された思考は、あほらしい結論導き出した。

 

 むぎゅっ♡ずるっ♡

 

 乳房に翻弄される中、肉幹と擦れ合う猥褻な摩擦音がさらに大きく響いた。どうやら追加で溢れた我慢汁がぴゅるりと谷間に漏れ出て、潤滑油となって溶けたようだ。

 

「あーっ♥」

 

 まだまだ足りないと、アキラはだらんとさせた舌先から唾液を垂らして谷間へと注ぐ。ぷくっと膨らむ赤黒い亀頭が彼女の愛の口汁によって包まれる。

 

 肉幹と豊乳が擦れ合う猥褻音は激しさを増し、それに合わせて乳を揺らす彼女の手も速さを増した。夢の詰まった2つの肉玉がゆさゆさと波を打って揺れ、僕の体全体を快感で震わせた。

 

「アキラ、また…………あっ!」

 

 僕が叫び声をあげる刹那、アキラは舌先を鈴口に挿して畝らせた。グリグリとした攻めが突如として襲い、僕に白い閃光の幻覚を魅せた。

 

 ぶびゅびゅっ♡どぷっ♡どぴゅ〜♡

 

 幻覚とともに、僕は2度目の絶頂を迎え、鈴口からザーメンを吐き出した。露出した肉亀から活きのいい白濁液が水鉄砲のようにぴゅっぴゅっという音を出しながら開放される。

 

 べぢゃっ♡びちゃっ♡

 

 そして、それらは全て彼女の体へと降りかかった。整った顔はもちろん、口内にも、黒いショートヘアにも、豊乳にも、細い指にも、アキラの体を白く汚した。

 

「あっ♥」

 

 そんな精液の雨にも、彼女は口を開けたまま受け入れた。脈動する度に彼女の白い汚れは増していく。

 射精が終わると、アキラは乳房から肉幹をぬぷりと引き抜く。白い糸が橋を引いた。

 

「ぁ…………いっぱいピュッピュしたね……」

 

 僅かな微笑みを浮かべながら、アキラは谷間を開いた。粘ついた白い液が横糸を引き、汚れたカーテンを作っていた。彼女の黒髪や顎からねっとりと滴るザーメンも相まって、余計に淫乱に魅せた。

 

 ふと、ぶるりと僕の背中が震えた。これは快感によるものではない、何度も経験してきたあの感覚である。

 目の前でうっとりと頬を赤めるアキラに目を向ける。その時、頭の中にとんでもない案が思い浮かんでしまった。

 

「アキラ…………おしっこ、飲んで」

「……たっくんのなら、大好き」

 

 頷いてくれたアキラは再び肉幹を口に含むと、軽く頭を前後させる。

 僕は力を抜き、下半身で尿意を抑えていたものを緩めた。

 

 ……じょろろろろろろっ♡

 

「んっ…………♡」

 

 肉幹がある程度萎んだところで、溜まっていた黄色い尿が亀頭先から排泄された。ザーメンとは違ってアンモニア臭いであろう排泄液をアキラは嗚咽を漏らすこともなく、喉をゴクゴクと鳴らして飲尿していく。その間も、淡い瞳は僕を見つめていた。

 

「…………ご馳走様」

 

 足をペタンとさせて床に座るアキラ。キョトンと首を傾げるその姿は、正に猫のようだ。

 そう、彼女は今だけ、僕の恋人なのだ。

 そう思うと、肉幹は活気を取り戻し、3度目の勃起を果たす。もうここまで来たら止められない、僕は自分で自分を止めることの出来ない愚者に成り果てた。

 

「アキラ……そろそろ本番、しよっか」

 

 告白にアキラは珍しく目を見開き、ぽっと顔を紅潮させてこくりと頷いた。窓際の孤独を愛する、狂気を裏に隠した彼女とは思えない新たな表情だ。

 

「こっちに来て」

 

 僕は足にまとわりついていた衣服を床に脱ぎ捨て、アキラを誘う。

 

「待って……下、脱ぐから」

 

 彼女は立ち上がり、中に履いていたショーツを右足、左足の順で脱いだ。色は黒色、恐らくブラジャーとセットのものだろう。陰唇を覆っていたであろう箇所はびしょびしょに濡れていた。

 

「……スカートの中も見せて」

 

 僕の意地悪にアキラは微かに照れたように目を細め、スカートの端を捲りあげた。

 黒く、丁寧に陰毛が整え剃られたアキラの陰部。絶頂で愛液が漏れだし、太腿を伝っている。

 なにより目を引くのは、ムチムチと肉のついた太腿と臀部である。彼女の容姿は淡麗だ。しかしそれだけでなく、たわわも大きく、太腿も太い。これほどの女子高生がいるだろうか。そんな彼女と僕はこうして交わっている。それだけで愉悦が抑えられない。

 

「アキラ、こっちに来て」

 

 僕はアキラを招き、目の前まで来させた。

 

 じゅるるるっ♡

 

「あっ…………ぁ♡」

 

 目の前の器に耐えきれなくなった僕は、彼女のスカートの中に顔を突っ込み、割れ目に唇を密着させて中の聖水を吸い出した。甘酸っぱい風味が僕の口内に広がり、喉を通って潤した。

 

「……さあ、本番だ」

「スカートは?」

「履いたままでいいよ。その方が興奮するからね。ほら、そのままうつ伏せでおしりを出して」

 

 急かすように、僕はべとついた彼女の手を握り、ベッド上へと座らせる。

 穢れて生臭くなった彼女の体が近くまで寄りかかり、僕の興奮はより高まった。

 アキラは数回ほど僕の頬にキスをしてから、指示通りに尻を突き出した状態でうつ伏せに寝そべった。

 僕は彼女のスカートを捲り上げ、露わになった肉尻を目で舐める。両手で左右の尻を掴むと、胸よりも固く、しかし指が沈む程度に柔らかい肉つきをした臀部を堪能した。

 

「んっ、ふっ♥」

 

 その間も、アキラは声を押し殺して微弱な快楽に身を震わせた。姿勢のせいで顔は見えないが、きっとアクメな顔をしているに違いない。

 

 尻肉を開け、潜んでいた陰唇を露わにさせる。縦に裂けた色の薄い割れ目は、指で押すとぷにぷにとした弾力を返す。僕の股間に押し付けられていたものと同じ感触だ。

 小さな二丘を左右に開くと、初々しいピンクの膣穴がその姿を見せた。穴からは透明な愛液が溢れ、ベッドシーツに向かって滴り落ちる。

 

「ふぁっ、あっ…………」

 

 僕は顔を近づけ、汗の籠る下唇を嗅いだ。酸味の強い風味が鼻を通して味覚にも染み込み、僕の脳を痺れさせる。鼻先が膣穴をこしょぐり、彼女は喘ぎを零す。

 

「あっ…………んぁ♥」

 

 僕は尖舌でぐじゅりと濡れそぼった肉穴を啄く。酸っぱいながらも甘い味が舌肉に流れ、舌先を自然と蠕動させる。敏感な箇所を擽られ、アキラは零した声を紡いだ。

 

 機は熟した。

 そう感じた僕は、股間で反り立つ硬直した肉幹をアキラの尻に向けて揺らし、赤黒く充血した肉亀の口先を秘部に当てた。

 

 ふと、アキラが振り返り、横目で僕の方を見た。その顔はいつものような無表情とは少し違い、不安を孕ませていた。

 

「……大丈夫だよ」

「…………うん」

 

 僕が慰めるように言うと、アキラは小さく頷いて顔を戻した。

 彼女の奉仕で十分に濡れた肉幹の先で陰唇の縦ラインをなぞり、ぷにゅっとした肉感を味見する。そして膣穴に押し当てたところで、僕は腰を前へと倒した。

 

「はっ、あっ……ぁ」

 

 きつい、指すら通るか分からないほど狭い膣穴だ。このまま押したら亀頭が折れてしまいそうかもしれない。

 けれど、僕は早く彼女と繋がりたいという自身の欲求を優先し、肉亀で秘穴を押し続けた。

 僕は処女膜というものがどんなものか知らない。けれどこの狭さは、恐らく彼女が未経験であることを証明しているのだろう。

 一、二と肉亀を押し付けたまま小さく往復すると、膣穴は亀の頭に沿って広がり、少しずつ飲み込むように肉幹を受け入れ始めた。

 

「ん、んん゛…………」

 

 ブチブチと、張っていた膜が鈍い音を出しながら破れていく。その痛みに耐えるかのように、アキラは僕の匂いが染み付いたベッドシーツに顔を埋め、両手でギュッと握りしめた。

 そして亀頭が膣口に包まれたところで、ぶちりと切れる音が密かに響く。侵入を拒んでいたものが完全に破れたのだ。

 

 じゅぶぶっ♡

 

「んはっ、んっ♥」

 

 陰茎が汁を啜るように擦り、彼女の中へと進む。キツキツだが愛液によって潤っているため、肉幹は滑らかに奥へと進み、襞の隙間をこじ開けていった。

 

 コツンっ♡

 

「あ……たっくんの……全部入ったね」

 

 肉窟にペニスが根元まで収まり、奥の肉疣をノックした。アキラの肉襞は、初めて侵入してきた男の陰部の正体を探るように小さな先っぽをチロチロと畝させる。

 

 ずるるっ♡…………ずんっ♡

 

「んん゛♥」

 

 僕は彼女の双尻を掴んだまま腰を引き、勢いをつけて叩きつけた。尻肉がぷるんと波を打ち、くぐもった喘ぎをあげさせた。

 それを皮切りに前後運動を始める。ゆっくりと、まずはねっちょりとした筒の中身を解していく。

 

「んっ、んんっ♥んぁ♥」

 

 まだ雄の味を知らない肉道を醜い肉杭が出入りする。太い肉亀を詰まる肉達の狭間に強引に捩じ込み、硬い茎で閉じないように押し広げる。そして抜け出す際には、深いカリ首で凸凹の肉壁を引っ掛けてじゅるりと擦る。

 

「んんっ♥……ふぅ♥」

 

 口とは異なる生暖かな膣道、じわりじわりと溶かすようなほろ熱に陰部は跳ねあげ、僕の思考はチーズのように蕩けていく。

 蕩けた思考は僕の体を無意識に動かし、ピストン運動をさせる。

 

 じゅぶっ♡じゅぶっ♡じゅぶんっ♡

 

 肉壺に溜まった甘酸っぱい蜜が猛々しいペニスを滑らせ、心地良いみずみずしい水音を奏でる。動く度に蜜壷内がぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ、愛液が白く泡立って外へと漏れる。

 

「ふぁっ♥あっ♥ん゛っ……♥」

 

 禍々しい赤黒の獣が中を抉る、そして膜を破られた痛みと快感で、アキラは甲高い嬌声を上げた。シーツに顔を埋めて耐えようとしているが、それすらも無意味にするくらいに彼女の声は透き通っていた。

 

「アキラ……!」

「は、あっ、激し……んんっ゛!? ♥」

 

 両手で尻肉を引き寄せ、瞬時に腰を深く密着させ、勢いをつけてさらに奥の性感帯を肉亀で突く。強い一撃がアキラを襲い、ふるりと体を震えさせた。

 

「あっ、んふっ♥はっ、ぁ♥んぅぅ♥」

 

 僕はその勢いのまま腰振りを続ける。先よりも激しく、奥の奥まで突きあげようと肉幹を暴走させる。猛撃にアキラの傷のない裸体はゆさゆさと揺れ、抑えきれない雌の喘ぎを上げさせる。

 

「アキラ、凄く気持ちいい……!」

「あっ、んふっ、あっ♥」

 

 あまりの快感に僕は雄叫びをしてしまう。

 憧れのあの子の雌の声が僕の雄を煽り、余計にペニスを充血させる。

 

 ぱんっ! 

 

「んぐぅ♥」

 

 両手を叩くわけではない、僕は彼女の尻肉を叩いた。

 

 ぱんっ! ぱんっ! 

 

「んぐぅっ♥ふぅ♥」

 

 1回叩く事に、心地の良い肉の音が響き、皮膚が綺麗な波を打つ。アキラの耐える姫声がシーツに消える。

 聞いてるだけで心地よい、もう絶頂はそこまで来ている。

 

 けど、何か物足りない。

 

「アキラ、向き合ってしたい。一旦抜くよ」

「……うん♥……ぁ」

 

 僕は動きを辞めて肉幹を引き抜く。ぬぷりと生々しい音を立てながら抜かれた雄棒は、アキラの泡立った愛液と赤い血によってグロテスクにテカっている。それはアキラの膣口からもとろりと垂れていた。

 

 アキラは仰向けになり、しなだれるように体をベッドに任せた。

 白い息を荒く吐きつつ、瞳から涙を流す。うっすらとした淡い瞳が涙で光り、呼吸に合わせて二丘が僅かに揺れる。表情は崩れ、今にも僕のものを求めていた。

 

「……開けて」

 

 そう一言告げると、アキラは両足を開き、陰唇に手を伸ばして、両手で開帳させた。

 

 ずんっ! 

 

「あぁぁっ♥」

 

 僕は彼女の太腿を掴み、開かれた膣穴にもう一度ペニスをぶち込んだ。より深く、子宮口付近を肉亀が突き上げた。敏感な箇所を叩いたことで、アキラは声を抑えることができず、いやらしい叫びを上げた。

 

 ぐじゅっ♡♡ぐじゅっ♡♡

 

 僕は先程の勢いを殺さないように初っ端から激しく腰を動かす。肉肉しいちんぽの形を覚えたアキラの肉まんこは、僕の雄棒をすんなりと受け入れ、肉道を広げて捕まえるように締め上げた。

 

「あっ♥んぁっ♥はぁっ♥あぅぅんっ♥」

 

 黒髪を揺らし、豊乳を前後にぶるんと揺さぶるアキラから聞いた事のない雌の声が聞こえた。必死に耐えようと手を口元に当てているが、最早無駄だ。

 

「アキラ……アキラ!」

 

 僕は興奮そのままに、彼女に覆いかぶさって腰を上下に揺らす。絶対にアキラに種付けをすると宣言するように太腿ごと彼女の体をプレスする。

 

「たっくん……たっくん……!」

 

 度重なる性技と秘部への刺激にとうとうアキラの顔は崩れた。数時間前まで真顔を決めていた表情は、涙と涎でぐちゃぐちゃに濡れている。頬は緩み、卑猥な喘ぎ声を抑えることなく放出させる。

 縋るように僕の名前を呼び続ける彼女に、普段の孤独は残っていない。寂しさを訴える猫のように鳴き声をあげる。

 

 彼女の扇情的な姿は僕の性をより荒くさせた。

 プレスする速度があがり、肉幹が肉襞達を縦横無尽に掻き回す。海綿体が膨れ上がり、まんこをキツキツ埋める。

 

「あっ♥ぁぁあっ♥はぁっ♥」

 

 詰められた状態から放たれる一撃一撃がアキラを喘がせ、より愛液を泡立たせる。獣のような僕達の交尾にベッドが軋む。

 深く深く、蟄する膣肉を掘り出し、アキラの全てに自分を刻む。

 ペニスは更なる熱を帯び、大きく膨らみ始めた。

 

「アキラ」

「うん……♥」

 

 これ以上の言葉は要らない、2人で待ちに待った瞬間を喜び、催眠をしていることも、されていることも忘れて微笑んだ。

 僕は彼女の両手を合わせ、指の一つ一つを握らせる。アキラも両脚を僕の腰に回して離れないように固定する。

 溢れる汗と精子が体をより生臭くする。

 

「アキラ……アキラ……」

 

 ぶじゅっ♡ぶじゅっ♡ぶじゅっ♡

 ぱんっ♡ぱんっ♡パンパンパンパンパンっ♡

 ぱちゅんっ♡

 

「ぁ……!」

 

 ──びゅるるるぅぅぅ〜♡♡!! 

 

「あっ……ぁぁぁぁぁぁぁ♥♥♥」

 

 肉亀が子宮口をコツンと突き上げ、せき止められていた白濁のザーメンを放出させた。

 アキラは快感と熱に脳をショートさせ、背中を仰け反らせながら絶頂声を響かせた。ぎゅうっとしがみつく脚がより腰を深くまで挿しこませ、的確にザーメンを子宮内へと運ばせた。

 

 どびゅる〜♡♡ぶびゅ〜♡♡

 

 3度目だと言うのに、ザーメンの勢いが止まる気配はない。寧ろ、今日出した中で1番の量を吐き出している。ぷりぷりとした塊状のザーメンが子宮内にとくとくと注がれていくのを、アキラの腹部の脈動を通して伝わってきた。

 

 どぴゅっ♡♡どぷっ♡♡びゅ〜♡♡

 

 まだまだ止まらない。僕自身が自らに暗示をかけているのではと疑うほどに、肉幹が脈を打つのをやめない。栓の役割を担っているおかげか、肉幹と膣口の隙間からはザーメンが漏れ出ず、全て彼女の中に収まる。目で見ずとも、彼女の子宮は白いものが泳いでいることが想像できる。

 僕は言葉が出ず、腰を震わせることしかできない。彼女も体の痙攣を抑えることができないようだ。

 

 びゅ〜っ♡♡びゅる〜♡♡どぴゅ〜っ♡♡

 

「たっくんの…………あつい…………♥」

 

 僕の目の前で、アキラは熱に溶けた笑みを浮かべた。

 未だ濃厚なザーメンを放つ肉幹の熱を感じつつ、彼女の姿を最後に、僕の意識は暗闇に落ちた

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 視界がぼやけている。長い冬眠から覚めたかのように光が眩しい。冬眠なんてしたことがないから分からないけど。

 つけっぱなしにした明かりをぼんやりと見ながら、僕は今の自分が置かれている状況を寝惚けた頭で考えた。確か、僕は雨原明に催眠術をかけて、自宅まで招き入れた。そして、そのまま彼女と初体験をして、あまりの気持ちよさに気を失ってしまった。

 

 ぼやけた視界が戻り始め、白い円状の明かりがハッキリと見えるようになった。同時に寝惚けた頭も目を覚まし、僕は飛び起きるように上半身を起き上がらせた。

 

 針時計に目を向ける。時刻は11時、短針が11を、長針が12を指していた。僕は疑った。午前の11時ではない、午後23時の11時だ。彼女にかけた催眠が解けるのは午後10時、既に1時間もオーバーしていた。

 その事実が何を意味するのか、それを考えるよりも先に、本の頁を捲る音が耳に届いた。

 

 恐る恐る、顔を右に向ける。

 机とともに小学生の頃から愛用していた、6つの脚部の先にキャスターを付けた学習チェア。思い出も悲しみもシーナがゲロを吐いた過去も、様々なものが染み付いた椅子の上に、彼女は腰掛けていた。

 スカートとソックスのみ、ではなく、床へ脱ぎ捨てたブラウスを身につけていた。あれだけ僕の名前を呼んで喘ぎ捩ってくれたのが嘘かのように、彼女は無表情で『HYPNOTISM』とタイトルが書かれた薄い紫色の本に目を通していた。黒髪には、拭き取れしれなかったであろうカピカピに乾いたザーメンがついていた。

 

「ふーん……道理で何も覚えてないわけだ」

「あ…………」

 

 本を閉じるとともに、雨原は首を動かして顔をこちらに向けた。隠れ気味な前髪から虚無を見つめるような暗く淡い瞳が覗いて僕を睨みつける。あからさまな怒りや蔑みが混じった視線を向けられていたらどれだけ楽だっただろうか、そう思わせてしまうほどに、彼女の目から感情というものが読み取れなかった。

 唯一分かるのは、声色が人を追い込もうとするそれだということだ。当然だろう。

 

「こんなもの、本当にあったんだ……ちょっと意外」

「……あの、その」

「心配しなくても、警察には連絡してないよ」

 

 淡々と応える彼女の言葉に、僕は無意識に姿勢を正した。

 

「それで……一体どうしてこんなことになったのか、最初から話してよ。晴山耀太君」

 

 僕は俯きながら全てを話した。僕が彼女に仕掛けた愚かな行動を、それから彼女に様々なことをさせて、果てには性的なことに利用してしまったことを、彼女の特殊な行動を伏せて。そんなことを話しても、僕が彼女に催眠術を使用したことには変わりないからだ。

 僕の告白を、彼女は表情一つかえずに黙って聴いていた。

 

「…………最低」

 

 一通り話し終えた僕に、暫くの沈黙の後に雨原がそう言った。初めての罵倒、しかし底に何があるか分からない無機質なものだった。

 

「……私にかけた理由は?」

「…………好きだったからです」

 

 それだけ答えた。今さら、告白をする勇気がなかっただとか、ほんの少しだけ恋人として過ごしたかったとか、最低な言葉は言い訳にしかならない。

 雨原は「そう」と興味を示さない声を返した。

 

「……いいよ。今日のあなたの行動、許してあげる」

 

 彼女から出た言葉に、思わず顔を上げてきょとんとした。驚きで声が出ないの方が近いかもしれない。

 

「それって、僕を警察に渡さないってことですか?」

「渡したところで、催眠術で操られました、なんて信じてもらえるわけないから……それに、周りが変に騒ぐから、面倒なことが増えるだけ。私も、そういうのはできればやりたくない。目立ちたくもない」

 

 雨原はため息を吐く。

 

「その代わり、もう二度と催眠術は使わないこと。私にも、他の人にも。もし使ったら、あなたの人生、終わってもらうから」

「……はい」

 

 縮こまって僕が頷くと、雨原は「じゃあ、これはもういらないね」と言って、手に持っていた催眠本を開いた状態で両手で持ち、僕の目の前で2つに引き裂いた。薄い上にかなり年期が入っていたせいで、本は彼女の腕力でビリリと音を立てて引き裂かれた。その際に紙の粕が散らばり、ハラハラと床に落ちた。

 僕は「あ」と言うのみで、目の前で本が破られるのを動けずに見るしかなかった。

 十分に破り終えると、雨原は紙ゴミをゴミ箱へ落とした。

 

「……で、私の体を好き勝手に弄んだ罪はどう償って貰おうかな」

 

 彼女は立ち上がり、ベッドで正座する僕の前まで来た。僕は顔を上げられなかった。

 僕のしたことは到底許されることではない。それ相応の対応を求められるだろう。

 ぽすんと雨原がベッドに腰を下ろした。

 

「…………じゃあ、セックスしてよ。今日は泊まってくから朝までやれる。それで体の相性が良かったら、私の彼氏になって」

「…………へ?」

 

 雨原の要求に僕は目を点にして彼女を見た。

 一生奴隷としてこき使う、金を巻き上げ続ける、ならまだ理解出来た。なのに、彼女からの要求は予想していたもののどれにも当てはまらなかった。

 

「私のこと、好きなんでしょ? だったらあなたにとって悪い話じゃないはずだよ。私も、あなたを見張れるし」

「いや、けど……」

「勘違いしないで……私にしたこと、一生をかけて償ってもらうつもりだから」

 

 胸がドキリと鳴った。

 

「ほら、分かったらこれ、付けて」

 

 そう言って、彼女は鞄から何かを取りだし、僕の膝に投げた。

 

「……え、コンドーム?」

「何か問題ある?」

 

 問題はない、たとえ彼女がコンドームを持っていたとしても何も問題はない…………噂の半分が当たったのか? 彼女は初めてのはず、なのに何故コンドームを持ち歩いていたんだ? もしや彼氏がいるとか? 

 

「彼氏はいない。分かったら付ける…………て、そっか。まずは興奮しないとダメなんだっけ」

 

 そう言うと、雨原はベッドに乗り上がり、四つん這いで僕に迫ってきた。寝落ちする前に名前を呼んでいた彼女とは違うため、下半身丸出しな僕は思わず後退りをしてしまう。

 その隙を逃さずに、彼女は股の間に入り込み、虚しくへたり込む陰茎に顔を近づけた。

 

「そう、これが私を汚した汚いちんぽなんだ」

「あ、あの、自分でやれるから……あ」

 

 拒否をする前に、陰部が彼女の口内へと吸い込まれ、僕の視界から消える。今見えるのは、僕の股に顔を埋める雨原の姿だけだった。

 

「ん…………」

 

 目には見えない。けれど、萎れたペニスを彼女の舌肉が螺旋を描くように嬲っていることは分かる。カリ首が彼女の舌で流すように撫でられた際の少しばかり鋭い刺激が、僕に快い感覚を与えている。

 

 彼女は感情の読めない瞳をこちらに向け続けながら舌を畝らせる。それが余計に卑しく見えて、僕のペニスは彼女の口内で海綿体を膨らませていく。

 

 肉の槍が硬くなったことを確認した雨原は、ちゅぽんと音を立てて肉幹を引き抜き、我慢汁を唇から垂らした。

 

「ん…………ほら、コンドーム、つけて」

 

 舌なめずりをする彼女に急かされるまま、僕は固まったペニスに必死にコンドームを装着させた。油のようなもので滑るせいで、意外と手間取ってしまった。

 

「じゃあ、始めよっか」

「あの、準備が……ぁ」

 

 コンドームの違和感に慣れないまま、僕は彼女に押し倒された。

 

 その後、彼女から合格を貰った僕は、正式に交際することになった。死にかけた。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 あれから、どれほどの月日が流れただろうか。

 

 学生だった僕も、気がつけば成人を向かえて幾数年。独り立ちを始め、慣れない生活に翻弄されたのも今や昔、ここでの生活に順応した僕は今、ふかふかのソファに腰を掛けながら、熱々の珈琲を飲んでいる。

 

 今頃、刑務所の中に放り込まれているはずの僕が、こうして週末の夜にゆっくり珈琲を飲めているのは、間違いなく、目の前で同じく珈琲を嗜む彼女から許しを貰っているからだろう。

 

 ショートヘアの黒髪は昔と変わっていない。黒いセーターと黒いスカートが、彼女に影のような雰囲気を漂わせている。ただ、昔よりも大人になったことで、周りを寄せつけない空気はかなり和らいでいた。

 

「たっくん? どうしたの?」

「あ、いや、なんでもないよ」

「……他の女のこと、考えてた?」

「そんなことしてないよ。アキラ」

「……ならいいけど」

 

 目を薄めて、ジト目を作ってアキラは僕を睨んできた。相変わらず真顔気味だが、昔と比べれば、表情はかなり豊かになった。けれど、毎度のように他の女性のことを考えていたかを聞くのは何故なのか、僕には分からない。

 

「…………」

「…………あ」

 

 ふと気がつくと、アキラがこちらをじっと見つめていた。いや、正確には僕が彼女を見ながら考え事をしていた。

 はっとした僕は、誤魔化すように笑った。

 アキラは不思議そうに首を傾げる。黒い横髪が揺れた。

 

「……私は『恋人』なんだから、別に見てていいよ? それとも、たっくんは私のこと、嫌い?」

「そんなわけないじゃないか」

「うん、知ってる」

 

 意地悪を言ったアキラは、高校卒業の記念に購入したマグカップに口をつけて黒い珈琲を飲んだ。

 

 催眠本と出会い、催眠術を覚え、片思いの相手に術をかけて、家に連れ込んで行為に及んで──1ヶ月どころかより短い期間で、僕の運命は大きく変わった。

 

 あの日、合格を貰った次の日から、僕、晴山耀太は雨原明と正式に付き合うことになった。付き合うと言っても、監視のようなものであり、二度と催眠術で悪さをしないように近くで見張っているというのが大きい。

 

 僕たちの間では、基本的に彼女の言うことには必ず従うことが絶対的なルールとなっていた。面倒くさいから学校では付き合ってない、あくまで他人であることを装うのはもちろん、迎えに来るように連絡が来たら迎えに行く、家に泊まりたいと言えば泊まらせる、遊びに行きたいと言ったら遊びに行く、セックスを求められたらセックスをする、無理な範囲でなければ、彼女の言うことを叶えなければならなかった。

 どれも拒否するほどではないため、僕は彼女からの欲求を断ったことはない。ただ、もし断った場合はどうなるか、僕にも分からない。

 しかし、そんなルールの中でも、僕と彼女の関係は第三者から見れば普通のカップルに見えるくらいに平凡なものだった。事実、彼女から無理な要求はされたことはないし、逆に僕が求めれば彼女も答えれるものは答えてくれた。罪人の僕にとって、彼女との関係に不満はなかった。

 

「そうだ。今度、実家に戻っていいかな? 実は母さんから部屋の片付けをしたいから、いらないものをまとめてくれって言われたんだ」

「……私も行く。久々にお義母さんとお義父さんに挨拶したい」

「分かった。一応伝えておくよ。けど、母さんのことだから、また買い物に付き合ってなんて言われそうだな。言われたらごめん」

「いいよ、別に。お義母さんとのショッピング、飽きないもの」

 

 初めに僕たちの関係を知ったのは、父と母だった。家に向かう道中で手を繋いでいたところを運悪く目撃されてしまい、その場で問い詰められてしまったのだ。

 けれど、彼女は動揺することなく、腕を組んで堂々と僕の彼女だと言い、母は驚愕でレジ袋を落として卵をお釈迦にした。後から帰ってきた父は僕を3度見した。

 ちなみに、お釈迦になった卵はオムライスに生まれ変わった。真顔の彼女の書いたケチャップ文字のギャップの照れくささと緊張で味がしなかった。

 

 というのは置いておいて、とにかく僕達の関係は父と母にバレた。旅行で艶々になって帰ってきて以来、夫婦関係が回復していた両親は、茶化しながらも僕たちのことを素直に応援してくれた。母は女性が不満に思うことを、父は女性を怒らせないための、それぞれの知識を僕に厳しく伝授してくれた。

 一方でアキラのことはかなり可愛がっており、今では彼女から『お義母さん』『お義父さん』と呼ばれる程に懐かれている。2人とも満更でもなさそうにしていた。

 

「ご馳走様」

 

 彼女は立ち上がり、キッチンに向かった。

 

 初めての女子と、しかも恋した女性との連絡先の交換。

 校内では親しくない他人を装いつつ、学校帰りでは堂々と並んで手を繋ぐ緊張感と幸福感。

 寝るまでスマホでトークを続ける毎日。

 家に招いて恋人らしいことをする休日。

 少し遠出をした帰り、疲れた彼女を背負った時に感じた温もり。

 20歳になって酒を飲み、猫のように甘える彼女に甲高い姫声を喘がせた思い出。

 前にハマったアニメのヒロインが僕の好みであることが何故かバレてしまい、怒られるかと思いきや、彼女がそっくりなコスプレをしてくれたサプライズと夜の営み。

 

 アキラとの恋人生活、始まりは犯罪だったが、今はこうして2人で生活するほどの仲に進展している。

 

「たっくん?」

 

 こんなセリフは言えた立場じゃないけど……僕は、アキラを愛している。愚か者である僕のことを許し、名前で呼んで、恋人として接してくれている彼女のことを。

 告白もできず、姑息な手を使って彼女を傷つけた。そんな僕のことを、彼女は見捨てずに傍に居てくれている。

 もし、あの時、自分の弱い腰を引っぱたいて素直に告白できていたら、彼女との関係はどうなっていただろうか。もっとより良いものになっていたのではないか。そんなことを考えてしまうことも未だにある。

 けど、悔やんでも過去は変えられない。

 僕にとって、彼女は女神様だ。一生をかけて、彼女を幸せにしなければならない。それが僕の断罪なのだ。

 

「おーい」

 

 ──それでも僕の頭から疑問は消えていない。

 

 どうしてあの時、彼女は催眠にかけられていながら、僕の命令に背くような行動を取れていたのか。

 なぜ、僕のことを初めから『たっくん』と呼んでいたのか。

 そもそも、どうして彼女はあんなにも怪しい僕の誘いに乗ってくれたのか。

 ああ、分かっている。全ては僕が悪い、彼女の行動を追求する権利なんてものはない。そもそも、催眠状態のことを今更聞いても、彼女は覚えてはいないのだ。

 

 けど、僕は時々考えてしまう。ここまで彼女のことを愛しているのは、もしや僕自身が何かしらの催眠に──

 

 ──────ぱんっ! 

 

 突然、目の前で両手の平が重なり、拍手が部屋に響いた。猫騙しを食らったかのように、僕は体を跳ねた。

 

「たっくん、さっきから呼んでるんだけど」

「え? あ、ごめん。考え事しててさ」

「……私、何か悪いことした?」

「そんなことしてないさ」

 

 僕は背後にいるアキラを見ようと振り向こうとする。が、その前に彼女が僕の体にハグをした。

 首元で彼女の腕が組まれ、頬に彼女の温かい頬っぺたが密着する。黒髪からいい匂いがしてきた。

 

「たっくん……愛してる」

 

 ねっとりと湿った囁き声が耳を撫でる。珈琲特有の苦い匂いが、僕の疑問を甘く溶かした。

 

 僕も、愛してる。

 

 そう告げると、アキラは暫く満足そうに頬擦りをした。

 僕は、甘んじてそれを受け入れた。

 

「たっくん、好き」

「僕も好きだよ」

「……大をつけて」

「大好きだよ」

 

 何度目になるのか分からないこの会話。しかし今夜、おそらく彼女は僕を誘ってくるだろう。なら、僕はそれに答えるんだ。

 

 もう、くだらないことを考えるのはよそう。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 酷い雨が、町を濡らしていた。

 バケツをひっくり返したような、表現が難しい土砂降りが、道路や建物を水浸しにしていた。

 お使いで遠くまで来ていた私は、運悪く雨に打たれてしまい、知らない店先のテント屋根の下に避難していた。

 天気予報だと夜から降ると言っていたので、その前に帰れると思って傘を持ってこなかったのが運の尽きだった。

 

「…………」

 

 なんて酷い雨なんだろう。これじゃあ少し出ただけでもびしょびしょになってしまう。けれど、私のような存在にとっては、それがちょうど良いのかもしれない。

 私は、自分の名前が嫌いだった。雨なのに明るい、まるで暗い性格の私を皮肉っているかのような名前だった。けど、お母さんにそんな文句を言えるわけがなかった。

 

 このまま、雨に濡れてしまえば、体は解けて無くなるんじゃないだろうか。そしたら、私はこんな世界から消えて楽になれるんじゃないか。

 

「…………」

 

 そう考えても、私には踏み出せる勇気なんてなかった。

 

「…………あの」

 

 ふと、横から声をかけられた。目を向けると、私と同じくらいの年齢、小学4年生くらいの男の子がこちらに傘を差し出していた。

 

「……なに?」

「これ、良かったら使ってください。傘、無くて困ってそうだったから」

 

 余計なお世話、そんな言葉が出る前に、男の子は私の手に傘を押し付けた。

 

「じゃあ」

 

 男の子は雨の中を走り出し、大量の雨粒の中に消えていった。白い線が彼を打つ、その背中を、私は見えなくなるまで見続けていた。

 どうすることも出来なかった私は、仕方なく傘を広げて帰った。お日様の模様が描かれた傘は、私の体を守って家まで届けてくれた。その時、モヤモヤした気持ちが私の中に湧いた。

 

 平日、私は彼に傘を返そうと学校中を探した。けれど、どこにもいなかった。先生に事情を話して聞いてみても、そんな子は見たことがないと言った。それはそうだ、あの男の子に傘を貰った場所は、私の家から離れていた。学区が違う、通っている小学校が違うんだ。普通に考えればわかる事だ。

 いつか返そう、あの町に行って、あの子に返そう。そう思っていたけど、なかなか返せず、気がついたらあの傘は玄関の片隅に放置されてしまった。

 

 

 

 幼い頃から出来上がってしまった性格故に、人に対して冷めた態度しか向けられなかった私は、いつしか孤独を愛するようになった。その方が圧倒的に気が楽だったことに気づいたのだ。そんなんだから、中学では友達ができることはなく、言い寄ってくる周りの人間はいつの間にか声をかけなくなる(私は容姿が良いらしいが、そんなこともどうでもよかった)。けれど、私はそれで構わなかった。死にたくなるよりマシだと思った。

 

 そして高校に入学してからも、何も変わることはないと思っていた。偏差値が一定の人が集まったとしても、結局は1人が1番いい。

 

 でも、高校であなたの事を見つけた時、私は思わず目を見開いた。あの時の男の子によく似ていたからだ。1度しか見ていないのに、どうしてこんなに明確に覚えているのだろう。

 初めは、まさかと思った。名前なんて知らないし、単なる人違いだと思った。でも、私は目が離せなかった。もしあなたがそうなら、なんてことを、話しかけてくる周りの人間の騒音を聞き流しながら思っていた。

 

 ある日、天気予報で午後から雨が降ると予想された日に、私はあなたの後をつけた。あなたがあの時の男の子なのかを確かめるために、盗まれたていであなたの傘を隠した。あなたは盗まれたと思って怒りながら雨の中を帰って行った。私は、お日様の模様が描かれた傘を差してあなたを追った。

 

 そして、あなたはあの店先のテント屋根の下で雨宿りをした。濡れた頭を濡れたタオルで必死に拭っていた。私は遠くからあなたの横顔を見た。

 

 ──ああ、そうなんだ。

 

 その時、私は確信した。あなたがあの時の男の子だって。ずっとモヤモヤしていたあなたへの思いが、嵐が過ぎ去った後の空のように晴れ晴れとした。ザーザーと音を鳴らして降る雨ですら、輝く無数のキラキラに見えた。自分の瞳に輝きが芽生えたのを感じた。

 

 私は、あなたに恋をしていたんだ。そして、私はあなたが欲しかったんだ。

 

 

 

 その日以来、私はあなたのことを目で追っていた。周りに群がる人たちの声を雑音に変えて、私はあなただけに集中した。クラスメイトと仲良さそうに話すあなたを、友達とテストの点で勝負して負けて落ち込むあなたを、英語の授業で分からなくて眠そうにしていたあなたを。先生オススメの小説を退屈そうに読んでいるあなたを。片時も目を離すことができなかった。

 

 私は、あなたのことを想像しながら、自分を慰めていた。

 あなたから貰ったプリントの匂いを嗅ぎながら、あなたが拾ってくれた消しゴムの匂いを嗅ぎながら、あなたとのそういったことを妄想をする。それだけで、私の絶頂には十分だった。

 前にあなたの消しゴムと全く同じものを、同じ削り量まで削って、こっそり入れ替えた時は、思わず歓喜してしまった。どうしても抑えられない時は、それを嗅いであなたへの爆発しそうな思いを発散させている。そして、私の消しゴムを使うあなたを見て、ホッコリしているの。

 

 

 一時期、私に執拗く話しかけてくる男子がいた。見るからに明るそうな人で、言葉選びも下品、私とは反りが合わないタイプだった。私が無視を続ける中、そいつは何度も話しかけてきた。けれど、私はそんなことは気にしなかった。それが、余計に付け上がらせることに繋がったのだろう。

 

 ある日、あいつは好みの男子について聴いてきた。私は当然無視した。そうすれば、あいつはどこかへ行くだろう。そう思っていた。

 

 けれど、あいつは言ってはいけないことを、あなたを蔑むような発言をした。だから、私は耐えられなくなって、あいつを睨みつけた。本気で首を絞める勢いで、本気であいつを殺そうと考えた。

 

 その日以来、あの男も、ついでに周りの皆も誰も寄り付かなくなった。結果、より居心地が良くなった。一連の件を目撃していた輩が、私に対して変な噂を流していたけど、そんなものは気にする必要はなかった。

 

 

 けど、半分は当たっているものもある。

 

 

『実は人を殺している』

 

 私は人を殺したことがない、けど、殺しかけたことはある。

 

 小学1年生の時に、近所の猫を虐めていたいじめっ子を階段から突き落とした。その子は私の住んでいた町ではどうしようもないいじめっ子で、常に自分が上だと考えて、弱い人ばかりを虐める子だった。親に訴えようにも、親がそういう奴だったから、泣き寝入りするしかない人が多かった。そんなあの子にとって、私は格好の獲物だったのだろう。標的にされて、物を隠されることが多かった。

 

 夏の暑い、蝉が寄って集って泣き喚いていたあの日。神社に続く階段に住み着いた猫に餌を持っていった時、あの子はいち早く猫達に餌をあげていた。食べていた猫達は痙攣していた。あの子は悪魔のように笑っていた。うん、それだけで何があったのか、すぐに察した。

 だから、私はあの子を突き落とした。両手で勢いをつけてポンって。あの子は階段を転げ落ちて、弾んで、道路に飛び出して、車に轢かれた。

 幸い、あの子は死なずに済んだらしい。けれど、怪我が酷すぎたようで、親子共々どこかへ引っ越していった。あの子を押した犯人を探していたけど、誰も協力しようとはしなかった。それほど周りから恨まれていたのだろう。

 その後は、みんな何事も無かったかのように平和に暮らしている。けど、私は悲しかった。お母さんや近所の大人と一緒に猫達の墓を作っていたからだ。死んだ猫たちの命は二度と戻ってこないんだ。

 

 

『ヤリマンでコンドームを持ち歩いている』

 

 私はヤリマンじゃない。男の子と付き合ったことも、エッチなこともしたことはない。

 けど、コンドームを常に持ち歩いているのは本当だ。ドラッグストアで年齢を偽って購入した。偽ったと言っても、正確に年齢確認をされたわけじゃないので、買うのは意外と簡単だった。

 0.01ミリの極薄を、男の子の熱を感じ易い物を買った。

 もちろん、あなたといつでもそういうことができるように、いつかあなたと結ばれた時に、あなたと体を交わらせるために。

 

 

 ある日、私は気づいてしまった。あなたが私のことを目で追っていることに。10分の休憩時間、あなたはチラチラと私に視線を向けていた。あなたはバレていないと思っていたけど、私は気づいていた。だって、見ていないふりをして、私もあなたを見ていたもの。

 

 あなたは、帰り道に私の後ろを追いかけることもあった。本当なら振り向いて私から声をかけて、告白をしてみたかった。けど、私が気づいていることを知ったら、きっとあなたは逃げてしまう。だったら、せめて私が何処に暮らしているかだけでも教えてあげよう。いつか、私の元に来た時のために。

 

 あの日、私の机の中に一通の手紙が入っていた。白い封筒には『雨原明さまへ』と律儀に書かれていた。普通ならこんなものは無視していただろう。

 でも、字の特徴ですぐに察した。中の手紙を読んで、確信した。この手紙はあなたが書いたものだって。あなたの字は、拝借したプリントとかできっちり覚えていたから。

 

 ああ、あなたに呼ばれる日が、こんな素敵な、夢に見た日が現実になるだなんて。

 私は心を弾ませながら、屋上で待っていた。

 水色の絵の具を塗ったように青い空が、雨なんてものを降らせないと言っているようだった。

 あなたが私の名前を呼んだ時、振り向いてあなたに抱きつきたいと思った。大好きって伝えたかった。けど、あなたは逃げてしまう。だから、素っ気ない態度であなたからの告白を待つことにした。

 恋仲になれたら、あなたのことは『たっくん』って呼ぼう。耀太の『た』でたっくん。私のことは、アキラでもあーちゃんでも、好きに呼んで良い。

 それで、まずは2人で電車に乗って、また明日って言い合う。明日の朝は電車の中で合流して、休日の予定を決めて、一緒にデートにでかける準備をして。帰りにあなたの家によって、そこで初めてを捧げて。次の日にお母さんに紹介して。

 

 私にとって、あなたとの2人の時間は至福のときだった。

 

 …………だから、目が覚めた時に、私は理解が追いつかなかった。

 

 気がついたら、上半身を裸にして、知らないベッドの上で仰向けになっていた。股間もスースーして、穴が破られたようにジンジンと痛む。全身も口の中も生臭くて、胃からアンモニアみたいな匂いが這い上がってくる。お腹が温かくて、中でタプタプとしたものが泳いでいる。

 何もかもが、わけのわからない現状で、私は隣を見た。

 

 隣では、私と手を絡ませながら、あなたが気絶するように眠っていた。

 

 ずっと繋いでいたかったけど、とりあえず手を解き、痛む体を起き上がらせて、ベッド下に置かれていた自分の鞄からスマホを取り出した。

 時刻は午後10時、お母さんから『泊まるのはいいけど、帰る時は連絡ちょうだいね』とメッセージが来ていた。

 

 泊まるとはどういう意味だろう、そう思いながら、私は部屋の中を見渡す。訳の分からない状況に混乱はしていたけど、それ以上に、あなたの部屋に入れていることへの興味が先行して、私は中を散策した。

 あなたの名前が書かれたノート、手垢が着いているだろう本、座っている椅子、そして机。どれも全てあなたのもので間違いなかった。

 

 そして、机の引き出しに入っていた、古く薄い本。中を開くと、直接翻訳が書かれていた。所々間違っていたけど、間違いなくあなたの字だった。

 それを読んだ私は、大体のことを理解した。あなたがこの本に書かれている催眠術を使って、私を操ったことを。そして性的なことをして、私を汚したことを。

 凄く悲しくなった。私の大事な初めてが、好きな人にこんな形で奪われるだなんて。あなたが望めば、私はいつでも相手をしていたのに。

 私も、もっと早くあなたに思いを伝えられていたら。

 何より悲しかったのは、あなたと2人で刻みたかったモノが、私の知らないうちに既に終わってしまったことだった。きっと催眠状態の私は、あなたの名前を呼びながら、初めての痛みと快感に喘いでいたに違いない。けど、私にはその記憶が無い、夢が潰れてしまった。

 

 だから、私は決意した。

 

 大好きなあなたに、人生をかけて償ってもらうことを。告白を惜しんで、私の儚い夢を奪ってた責任を取ってもらう。たとえ歪んだ愛のカタチになったとしても、私はあなたを離さない。

 

 …………それはそれとして、私は眠るあなたを横に、あなたの部屋の中の探索を再会した。タンスの中にあるあなたの服を顔いっぱいに埋めて嗅いで、押し入れにあるあなたの卒業写真や昔の写真を見ながら笑って、あなたの好きなキャラのポスターに嫉妬して、あなたの使っている机の角や色んな場所に私の匂いをつけて回った。

 本当はあなたを食べたかったけど、それは目が覚めてからの楽しみに取っておいた。

 

 

 

 ………………ねえ、知ってる? 

 

 あの催眠本に書かれている催眠術には、もう1つ秘密があるってこと。それはね、

 

 ・催眠をかけた対象に、刷り込みたい言葉を思い浮かべながら、30秒間深いキスをする。すると、その暗示は対象者の脳内に直接刷り込まれる。

 

 例えば、クラスのマドンナに催眠をかけて『あなたは〇〇を愛している』って思いながら深いキスをしたとする。すると、催眠が解けたあとでも、その子は名前も知らない、話したこともない〇〇のことを愛するようになる。本人は単なる一目惚れ程度にしか思わないけど。

 

 つまり、相手はずっと催眠にかかった状態と同じになるってこと。6時間経っても、手を叩いても、消えることはないんだよ。解きたいなら、同じ手順で別の暗示で上書きするしかない。

 

 きっと、この術を編み出した人は、相当な臆病だったのだろう、裏表紙の端っこに後書きみたいに小さな文字で書かれていた。それをあなたは無視したか、気づかなかったのだろう。もし知っていたら、あなたは私に同じような暗示をかけていたかもしれない。そんなことしなくても、私はあなたが大好きなのに。

 

 

 ………………ごめんね。私、あなたに謝らないといけない。

 

 私、あなたに1度だけ、催眠を使ったんだ。あの本の内容は、全部暗記してたから。

 

 あなたには催眠を使わないって決めてた。私があなたを好きである気持ち、あなたが私を好きである気持ちを、少しの嘘なんかでも誤魔化したくないから。これだけはありのままの気持ちでいたいから。

 

 けど、あの時は、どうしてもダメだった。

 

 覚えてるかな? 大学生の頃に、講義で一緒になったあの子と仲良くなった時のこと。

 あなたは、私とは真逆なあの子とウマが合って、楽しそうにしていた。あの子も、あなたと話している時は嬉しそうに微笑んでいた。

 私にも、悪意のない笑みを向けて話してくれていた。こちらが睨んでも、あの子はなんにも気づきやしない。

 ああ、なんて優しい子なんだろう、暗い私とは違って、人の心を溶かしてくれるような子、私が男だったら、間違いなく惚れてしまう、そう思った。

 

 だからね、私はあなたとあの子に催眠をかけたの。あなたが昔、私にしたのと同じように。

 あなたにはあの子のことを異性として好きにならないように、あの子にはあなたのことを異性として好きにならないように、深い深い30秒間のキスを、あなた達にした。

 あの子は、良い子だった。きっと、あなたと結ばれたら、あなたもあの子も幸せになれただろう。

 

 けれど、そんなことは許さない。

 

 あなたは誰にも渡さない。

 

「たっくん……愛してる」

 

 そして、許さない。

 

 だから、今日もお腹の中がタプタプになるまで出してもらうから。

 

 あ、そういえば、今日はあなたが催眠術をかけた日だね。

 じゃあ、その記念に私のおしっこ、飲んでもらおうかな。あなたも私に飲ませたんだから、お相子だよね。

 

 大丈夫、もし拒絶したらその時は……………………ね? 

 

 

 

 

 




催眠術を使わずにそのまま告白した場合、(比較的)純愛ルートに突入、両親は2人のラブラブな様子を見て旅行に行って仲直り。何もかもハッピーエンド。
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