「はあ?催眠術?」
休日の昼下がり。雑誌を読んでいた姉こと、
「友達にやっても、かからないからつまんねーんだよ〜だから姉ちゃんにもやらせて」
「いや、意味わかんないし」
「後でアイス奢るからさ〜」
「え〜」
催眠術の能力の注意。催眠術とはどれだけ貴方に心を開いているかで効果が変わります。なので知り合いや友達。もしくは身内等にはかかりやすいですね。しかし知らない人は勿論警戒心があります。故に初めてのハードルは高いでしょう。しかし後述する事から、身内、知らない人、何方からでも構いません。貴方がやりたい方からやりましょう。
「3個?」
「うーーん…まあはい…3個出します…」
「そこまでしてやりたいのか……はぁ…分かった分かった…けどかかんないと思うよ?それ」
「ものは試しってね」
よく分からない事に何故男とは燃え上がるのか。姉である美海は溜息を吐く。しかし適当にあしらうだけでアイスを貰えるならば付き合っても良かろう。そう考えて、雑誌を一旦閉じ、弟の方を向いた。
「うわ…コテコテじゃん…」
「うっせ」
目の前にあったのは白い糸につけられた5円玉。催眠術を知らない人でも大体イメージしそうなあからさまな手法に、美海は呆れた表情を隠そうともしない。弟は余計なお世話だとでも言いたいのか、口を尖らせて不満そうな顔。
「じゃあ始めるよ〜力抜いてね」
「はいはい」
(アイス何にしようかな〜)
キーワードはコックリクリクリコックリクリ。です。これを唱えたまま相手の目を見ると、相手は催眠状態へと陥ります。しかし─
「…コックリクリクリコックリクリ」
「………」
(ア……イス……?)
弟の瞳から不思議な魅力を感じる。そしてこの言葉を聞いていると、何だか頭がボヤーッとしてくる。美海は不思議だなーと思いながらも、その感覚に抗う事はしなかった。
「姉ちゃん…?」
「……」
「…美海?」
「……はい」
(良し!第一段階成功!)
「コホン…さてと。美海は正興の姉ですね?」
「…はい」
「ではその正興が、オナニーをしている光景を見たらどう思いますか?」
「…気持ち悪いと思います」
(こ、この野郎…!…冷静に冷静に…)
しかしこの催眠術。かなり制限が多い。エロ漫画みたいに催眠術をかけたら直ぐにセックスとは行かないのだ。それをしようとすると、違和感を持たれて催眠術が解除されてしまうとの事。故に最初は軽い催眠からかけていくのがベストらしい。
「正興君も男の子です…それも仕方ないのでは…?」
「…でも…気持ち…悪い」
「…別に貴方を性の対象にしている訳ではないのですよ?」
「…それは……そう…ですね」
そしてこの催眠術。これには催眠深度というものがある。催眠深度とは催眠対象が、どれほど正興の催眠術にかかりやすいかの目安。これはどれだけ正興に心を開いているか、催眠術をどれだけかけたかで決まる深度。つまりは催眠術を上手く掛けれは掛ける程に。催眠術の範囲も広がっていくのだ。
「だから許してあげませんか…?彼のオナニーを…」
「………はい」
(少し抵抗したな…まあ良いか)
少し嫌そうな顔をしたが、美海は正興のオナニーを許した。催眠術成功である。一度の催眠術でかけられるのは一つの事だけだ。故に正興は此処で終いにする。
「コックリクリクリコックリクリ…はい、目を覚ましました!」
「……?あれ…?私…」
「イエーイ姉ちゃん眠ったー!俺の勝ち!」
「は!?…うわ…本当に時間経ってるし…え?嘘?マジで?」
同じ呪文を呟きながら瞳を覗く。そしてぱちんと手を叩くと、美海は催眠状態から立ち直る。近くの時計を見ると数分は経っていた。無邪気にはしゃぐ正興を見て、悔しそうに美海は歯噛みしていた。
「アイス奢りは無しな!」
「いやそれは違くない!?」
「じゃあ一個ね。姉ちゃん催眠術掛かったし」
「ぐっ……」
そういう取り決めは無かったが、そう言われると強く言えない。なので渋々と美海は、弟の条件を呑むのだった。早く買ってこいと腹いせに弟をパシる。それに文句を言う正興だが、そんな事は今の美海の知った事ではない。少しでも胸のうちの悔しさを晴らす為に弟を使った。
(はぁ…何か嫌な感じ…)
風呂から出ても弟に負けた事実がまだ心に残っている。むしゃくしゃしながらも、部屋へと向かう美海だったが、階段を登り、弟の部屋のドアが薄っすらと空いているのに気が付くと、ドアに近づいた。
(また開けっぱにして……!)
よくある事だが、爪の甘い弟だ。偶に音楽とかが流れてきて五月蝿いので、そうなる前に閉めようとドアに手を掛けると、
「!」
(オナニーしてんの?アイツ…)
隙間から見えた景色に驚く美海。何時もならば不快な気持ちを抱き、そのまま見なかった事にするのだが。
「正興、オナニーする時は五月蝿いからちゃんと閉めて」
「あ、ごめん姉ちゃん」
「全く…」
大きくドアを開けると、オナニー真っ只中の正興に注意する。
「本物だ…!」
去っていった姉を見た後、正興は喜びを露わにした。興奮が収まらない。かなり緊張していたが、姉の反応から見るに、催眠術は成功だ。催眠状態になった時にも凄いとは思ったが、更に凄いものを見せられると感想も変わる。
「次はどうするかな…」
悪辣な笑みを浮かべながら、姉にどのような催眠を掛けるか妄想する。これが想像ではなく、何れは実現するものだと思うと、更に自分のモノが硬くなるのを感じた。最早痛いくらいだ。
「次は…」
「えー…もう一回?」
「姉ちゃんも悔しいかなーって」
「…余計なお世話よ」
「じゃあ俺の勝ちなままで良いかな?」
乗り気ではなかった美海に、挑発的な態度を取る正興。弟に舐められたままなのは癪に触ったのか。美海はもう一度受けてやると息巻いて正興の5円玉を見つめた。
「行くよー」
(掛からない掛からない…私は絶対に─)
「コックリクリクリコックリクリ」
「かか……らな…」
催眠術自体は必ず掛かります。しかし内容にはお気をつけを。一度でも催眠状態を解かれた場合。その方には二度と催眠術を掛ける事は出来ません。今まで掛けていた催眠も解けます。なので再三にはなりますがお気をつけを。
「美海は…弟に負けたくないですよね?」
「…はい」
「ならば勝つまで催眠術に付き合うのも自然…ですよね?」
「………はい、勝つまで催眠術に付き合います…」
これからの布石のため、正興は催眠術を掛けようとしても不審に思われないように催眠を掛けた。負けず嫌いの性格が幸いしてか、前の催眠よりもスムーズに行った。
「あー!また負けたー!!もう一回!もう一回!」
「1日一回だけでしょ?姉ちゃん」
「うっ…そ、そうだったわね……なら明日ね!」
1日一回。二人きりなると勝負をする。それが新しく追加された催眠だ。催眠と口に出してしまわないように、明日はそれについて催眠を掛けるか。まだまだ時間は沢山あるのだ。焦らず、じっくりと。先ずはこの姉を思うがままにしようと、内心でいやらしい笑みを浮かべる正興であった。
弱い催眠で頑張るのも良いよね。