女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
『なんだよ……あれ!?』
織斑が無意識にそう呟いていた。おそらく、それを見ていたであろ全ての人間がそう思ったに違いない。
ISは原則として変形をしない。厳密には出来ないと言った方が正しいだろう。
ISが形状を変えるのは「初期操縦者適応」と「形態移行」の二つだけだ。パッケージ装備の変更で多少見た目が変わったとしても、基礎の形状が変化することはまずない。あり得るはずが無い。そう出来ている。
そのあり得ないことが、今目の前で起こっている。
変形などと言うものではなく、1度ぐちゃぐちゃに溶かして再度作り直している。まるで粘土人形のようだ。
シュヴァルツェア・レーゲンだったもにはボーデヴィッヒの全身を包み込むと、その表面をまるで心臓の鼓動のように脈動を繰り返し。ゆっくりと地面に降りていく。
それが大地にたどり着くと、急激な速度で全身を変化、成形させていく。そして成形されたものは、黒い全身装甲のISに似た「何か」。しかもその形状は先月の無人機とは似ても似つかない。
『まさか……』
最小限のアーマーが腕と脚に付けられている。そして頭部にはフルフェイスのアーマーに覆われ、目の箇所には装甲の下にあるラインアイ・センサーが赤い光を漏らしていた。
そしてその手には見慣れたある武器が握られていた。見間違うわけが無い。あれは――
『雪片……!』
織斑千冬がかつて振るっていた刀。それによく酷似していた。似ているというレベルでは無い、まるで複写。
気がつけば織斑が「雪片弐型」を握りしめ、突撃していった。黒いISはそれにすぐさま対応し、居合いに見立てた刀を中腰に引いて構えていた。範囲内に織斑を捉えると、必中する間合いから放たれる必殺の一閃。あれは間違いなく千冬の太刀筋だった。
『織斑くん!下がって!』
アンカーを射出し強制的に織斑を下がらせる。既にエネルギーが底をついていた白式に織斑を守るすべは無く、軽く刃に触れていたであろう左腕からじわりと血が滲んでいた。
『離せ黒咲!アレは千冬姉の!』
『織斑先生のブリュンヒルデ時代のデータだろうね。雪片を握っていたのは知ってるけど、あのシステムは……』
『分からない。だけど間違いなくろくな者じゃ無いでしょう。そしてこの試合も中止ですね』
『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』
『離れましょう、少なくともあの黒い塊はこちらを攻撃するつもりはな――っ!?』
織斑をデュノアに預け緊急回避行動を行う。先ほどまで一切動いていなかったそれが、突如こちらに飛び込んできた。標的は織斑やデュノアではなく俺の方だった。すぐにナイフを展開し防御態勢に入る。
『黒咲さん!』
『ぐっ……一撃一撃が必殺か!流石ブリュンヒルデのデータ!』
それの一撃を防ぐたびに後ろに吹き飛ばされる。瞬時に間合いをあけようとライフルなどで牽制しても全弾たたき落とされる、実体剣を投げて爆破させようとしても変わらず同じようにたたき落とされる。ブリュンヒルデ時代に刀一本で世界最強になった実力は伊達では無いということだろう。
『離せデュノア!あれは俺が!』
『暴れないで織斑くん!』
視線を2人に映してみると、デュノアの手の中で織斑が暴れていた。自分の姉の力が訳の分からないシステムに利用されるのが許されないのだろう。その気持ちはとても分かるが今の織斑では足枷になるだけ、ISのエネルギーがあれば話は別だろうが……
『黒咲さん危ない!」
『ぐぁ!?』
一瞬の隙を逃さない相手は容赦なく一撃を叩き込んでくる。判断が遅れてしまった俺はその一撃を受け流す事が出来ず、アリーナの壁まで吹き飛ばされる。
絶対防御がなんとか身体を守ってくれたが相殺しきれなかった衝撃が背中から伝わってくる。
ナイフはあの一撃に耐えられず真っ二つに破壊されていた。その隙を逃さんと連撃を浴びせてくる。気がつかなければ間違いなく死んでいたかも知れない。
『デュノアさん!織斑くんを一旦アリーナから出してエネルギーを回復させてあげて!』
『――分かったけど!そんなことしたら黒咲さんが!』
『私のことは良いです!織斑くんが生身で暴れるよりマシですから!急いで!』
残された装備である刀を展開し黒いISと対峙する。今ならはっきり言える。
俺はアレには勝てないだろう。
織斑の〘零落白夜〙を使用すれば破壊することは出来るだろうが、その織斑が戦闘不能状態になってしまっている現状。一旦下がらせてあいつに戦わせた方が良いだろう。
『僕のISならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う!だからそれまで時間を稼いで!』
『黒咲!頼んだぞ!』
その言葉に返答はない。最大限持たせたとしても2分が限度、教師部隊が介入する時には既にエネルギーが底を尽きている可能性がある。そもそも何故こちらに攻撃を仕掛けてきたのか分からない状態だ。
『黒咲!?何故避難していない!』
『出来るのであればとっくに行動に移している!』
千冬の形をしたそれと刃を交えながら叫ぶように答える。無駄に図体がデカいそれによる洗練された動きを繰り出してくるのを必死に避け、弾きながらダメージを最小限まで抑えてはいる。
『デュノアが織斑のISにエネルギーを移してる!ただ全快は出来ないだろうからなるべく早めに頼む!』
『何故そんなことに――』
織斑のこだわりがあるんだよ。実の姉があんなのに利用されているなんて弟として許しはしないってね。言葉に出す前に目の前のそれに会話を遮られる、本格的に不味くなって来ている。
過去に千冬と刃を交えたことはあるが、それもかなり前であり俺の方が圧倒的に劣っていた。その実力は現状変わって居らず、防戦一方を強いられる状態になってしまった。
『それでもダメだったら……頼む』
『クソッ!やられるなよ!』
重たい一撃を何度も受け止めていると腕が痺れてくる、少しでも気を抜こうものなら壁際に追い込まれる。こちらに勝機はない!
「くぅぅ……!」
相手は意志のない真似事の千冬、それにも関わらず押されてしまっている。そんな自分に嫌気が差してきそうだ!何度も刃を交えては弾き飛ばされ、装甲でなんとか致命傷は避けている。気がつけば脚部と胸部以外の装甲は無くなっていた。
「がっ!?」
胸部に強烈な一閃が入る。衝撃に耐えられず立ちあがることが出来なくなってしまう。
装甲が完全に無くなりISスーツが露出している。シールドエネルギーは残りわずか、なんとか展開しているのが奇跡と言えるだろう。織斑早く来てくれ……!
『黒咲!待たせたな!』
顔を上げ声のした方に視線を動かすと、右腕と武器のみを展開した織斑がたたずんでいた。デュノアの残量エネルギーを全て渡しても、全て構成することは出来なかったのだろう。〘一極限定モード〙での再構成。絶対防御は発動しない。
『っ!隙をつくります、織斑くんはその瞬間に!』
『わ、わかった!』
何度も刃を交えて隙をつくろうとする、千冬もどきに遅れなど取ってしまっては笑われるからな!
黒咲が隙をつくろうと懸命に戦っている。ISの装甲などほとんど無い状態で戦う事が出来るのは奇跡に近い、ミスは絶対に許されないだろう。俺は居合いの構えをとり集中しはじめる。
千冬姉の教えに習い、箒の姿に学んだ「一閃二断の構え」。
腰を落として構え、刀を持つ手は己が身の背へと導く。その目はただ真っ直ぐに見据え、消して揺るぐことの無い穏やかな水面を心の中に思い浮かべる。
そして、全ての動作に反応できるように、己の感覚をその意識を、ただ一点、正面の敵のみにと閉ざしていた。
『せりゃぁぁ!!!!』
二本の刀が宙に舞う。一つは「葵」もう一つはあいつが持っていた「雪片」だ。黒咲がつくったこのチャンス無駄にはしない!
『織斑!』
『うおおおお!!!』
腰から抜き放って横一閃、そして直ぐさま頭上に構え縦に真っ直ぐ相手を断ち斬る。
これこそが一閃二断の構え。一足目に閃き、二手目に断つ。
ぎ、ぎ……ガガ……ジジジジッ……と紫電が走り、黒いISが真っ二つに割れる。そして、気を失うまでの一瞬であろう間に、黒咲とボーデヴィッヒの目があったような気がした。眼帯が外れ、あわらになった金色の左目と。
ひどく弱っている彼女を黒咲がやさしく受け止める。捨てられた子犬のような眼差しに助けを求めているように見えた。
「……ぶっ飛ばすのは勘弁してやるよ」
力を失って黒咲に抱きかかえられているボーデヴィッヒを見て、俺はひとりそう呟いていた。それが果たして聞こえたかどうかは、ボーデヴィッヒ本人だけが知ることだろう。
『後の処理は織斑先生達に任せましょう』
ボーデヴィッヒを抱えた黒咲、よく見るとISスーツか裂けている箇所が所々確認できる。どれだけ恐ろしい相手と戦っていたのかを物語るには十分だろう。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」