※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

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第32.5話「黒とムッツリ」

『トーナメントは中止。ただし今後の個人データ指標と関係するため、全ての1回戦は行います。場所と日時の変更は各個人端末で確認の上――』

ピ、と寮に設置されているテレビを消す。疲れ切った今の状態でトーナメントという単語を聞きたくなかった。

「っぁ……痛ぇ」

少しでも痛みを和らげるためにベッドに倒れる。デュノアもボーデヴィッヒも帰ってきていない室内は静かで、一人である事を実感できる。

織斑、デュノアに続いて治療を受けながら教師陣からの事情聴取を受けていた。やっと解放された頃のにはボーデヴィッヒが目を覚ました。俺よりも容態は悪くなかったので一安心だった。

(ボーデヴィッヒには、あとでしっかり謝らないといけないな)

そんなことを思いながらサポーターを外しシャワールームへ向かう、アリーナの土や火薬の匂いを取って少しでも身体を綺麗にしておいた方が良いだろう。

今回の件で身体に大きなダメージを受けてしまった。しばらくは絶対安静とまで言われたがシャワーの時間だけは絶対に譲れない。

本来であればこういった時間には自由に行動できるのだが、それも現状難しい。ISの修復もしたいところだが俺が復帰しない限り、ISの修復も止まったままだろう。

「あっ……ぐっ……」

ぬるま湯を浴びながらなんとか使える右腕で身体を洗っていく。左腕が使えないのがここまで辛いものだったとは思わなかった。今回の怪我は外傷として身体に痕が残らないものだったのでそこだけは助かっている。

「千冬に手伝って貰った方が良かった……か?」

千冬に助けを求めたとしても貸し一つと言うことでなにか要求されそうで怖い。流石にけが人相手にどうこうするほど落ちぶれてはいないが、少しセクハラされそうだったので今回は助けを求めなかった。それにあの一晩の件もあって千冬の事を直視しずらいという点もある。

「俺は――どうしたらいいんだろうな」

水音が響くシャワー室でぽつりと言葉を漏らす。その問いに答えてくれる人物は誰も居ないというのに……

(二人が戻ってくる前にさっさと上がって眠ってしまおう)

今の俺にはそれくらいしか選択肢がない。これからの事を考えるために目を閉じながら、俺はわずかな時間のシャワータイムを堪能することにした。

 


シャルロットside

 

ラウラに肩を貸しながら、なんとか寮室に戻ってくる。黒咲さんの姿を見ていない僕たちは織斑先生から「黒咲なら既に自室に帰っていったぞ」との報告を受けている。

「ただいま~って、あれ?黒咲さんもう帰ってるって聞いたけど……」

「制服がイスにかけられている。それにシャワールームから水音が響いている、どうやら黒咲はシャワー中らしい」

ああ、シャワー中なのか。――そういえば、確か昨日シャンプーが切れてたっけ?

最後にシャワー室を使ったときに交換しようとしてたことを思い出して、クローゼットから予備のシャンプーを取り出す。本当は使った後に交換しようとしたことを忘れてしまっていた。

(黒咲さんも困ってるよね。前見たいに届けてあげないと)

幸いなことに黒咲さんは僕が女の子だと言うことを知っているので問題は無いだろう。

シャワールームは洗面所兼脱衣所とドアで区切られているし、とりあえず脱衣所まで行けば――

「黒咲!すまなかった!」

ラウラが勢いよく脱衣所の扉を開ける。頑張って自分で開けたのは凄いと思うけど、いきなり開けたら黒咲さんびっくりしちゃうよ!

「ぼ、ボーデヴィッヒ……?」

「もう!黒咲さんがびっくりしてるでしょ!」

黒咲さんのとても驚いたような声を聞いた僕は、急いで脱衣所の方へ向かう。

「黒咲さん、これ替えの――」

「でゅ、デュノア……?」

「へ……?」

シャワールームに入っていたのは、見たことの無い「男子」だった。

どうして男子だとわかったのか。その理由は簡単。僕たち女子にはないはずのものがあったから。

濡れた髪は艶やかな黒髪で、美しさと優しさを兼ね備えている。一見スラッとした身体は筋肉質で、男子であると言われれば納得できる。

この部屋を使う上で日本人特有の黒髪茶眼は黒咲さんしかいないことは確か。黒咲さんは女子のはずであるが目の前にいるのはどう見ても男子だった。とにもかくにも男子の裸、全裸なのだ。僕たちは視線を逸らさなくてはいけないと頭の中では分かっていても目は釘付けになってしまっていた。

「え、えっとね?えっと……」

目の前の裸の男子はどこかで見たことがあるはずなのに、混乱していることもあって思考がうまくまとまらない。えっと、とりあえず――

「しゃ、シャンプー、ここに置いておくから……」

「う、うん……」

シャワールームのドアの前にボトルを置いて、僕たちは脱衣所を出た。

えっと、何がどうなっているのかな?シャワールームには黒咲さんがいたはず……ってことはさっきのは黒咲さん!?

「あれは、間違いなく黒咲だ」

ラウラにそう言われてしっかりと思い返してみれば、黒咲さんに見えないこともない。普段通りの短い髪を上げていればあんな感じなんだろう。だけど問題はそこじゃない。

「で、でもあれはどうみても男子だよ?なんで黒咲さんあれが生えてるの!?お、おち――」

さっきの光景がまだまぶたに焼き付いて離れない。

(おっきかった……)

「お、落ち着けデュノア。同じ男子だろ!?」

「そうだけど……そうだけどさ!?」

ベッドに移動して二人ともなんとか落ち着きを取り戻そうとする。

ガチャ……

「「っ!」」

気持ち控えめに響いた脱衣所のドアが開く音。しかし僕たちにはそれがなにより大きく聞こえて、思わず身体がこわばってしまう。

「あ、上がりました……」

「う、うん」

背中越しに聞く声は確かに黒咲さんのものだった。僕たちはばくばくとなる胸の鼓動をなるべく意識しないよう、そっと振り向く。

「」

男子が、そこにいた。


「……」

「……」

「……」

かれこれこうして1時間ほどはこうしているだろうか?僕とラウラと目の前の男子――というか黒咲さん本人なんだろうけど。お互いにベッドに腰をかけて向かい合い、そのくせ視線はそれぞれ彷徨ったまま無言の時間を過ごしていた。

「ひとまず確認したいんだが、黒咲で良いんだな?」

らちがあかないと思ったラウラが声をかける、黒咲さんはもうどうしようもないとでも言うような表情を浮かべる。

「……ああ。俺は黒咲千春だ」

顔を伏せたまま言葉を呟いた彼の姿は、とても小さく今にも消えてしまうのではないかと感じてしまう。普段の性格は黒咲さんを演じていたもので、本来の性格が今目の前に座っている彼なのかも知れない。

ひとまず僕はさっきから疑問であったことを聞いてみることにした。

「なんで女子のフリをしていたんですか?」

「それは……言えない」

「言えない、だと?貴様そんな言葉が通用すると思うか!」

僕の問いに対して「言えない」か。僕よりも面倒な状態で女装しこの学園に入っていたのかもしれない。それはともかくラウラが黒咲さんを拷問してるのを止めないと!

「さっさと言え黒咲!お前はどうして――」

二人とも身体がボロボロの状態なのに!ボーデヴィッヒさんは黒咲さんに馬乗りになって詰責してしまっている。軍人時代の拷問方法が少し身についていた分たちが悪そうだ。

「ぐっ……がぁ!?」

「黒咲さん!どいてラウラ!」

上に乗っていたラウラを強制的に退かす。横たわってしまった黒咲さんの身体を上げるために、ゆっくりと左腕を掴む。よく見ると血が若干滲んで来ていた。

「っぁ……デュノアそっちはヒビが」

「なっ……それ以外は!」

「……言わないとダメそうだな」

「当たり前です!そんな苦しそうな表情して、あれだけの攻撃を受けてまともな状態な訳がない!」

少し興奮状態に入ってしまったラウラを抑えながら、ゆっくりと黒咲さんが体勢を戻す。ラウラの顔を見て少し考えた後、彼の口からゆっくりと今の身体状態を話してくれた。

「全身に浅い切り傷が12箇所、左腕にはヒビが入っていて、肋骨が数本折れている。全治には最速でも一ヶ月以上はかかると聞いた」

その言葉を聞いたとき、僕たちは目の前に座っている男子がそこまで身体を酷使してしまっていることに驚いてしまう。特にラウラは酷く追い詰められてような、悲しいような……なんというか言葉では表せないような表情をしていた。

「……ごめんなさい」

「ボーデヴィッヒ?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――――」

壊れた人形のように言葉を繰り返す。自分の仕出かしてしまったことが彼をここまで傷つけてしまっていた現実を叩きつけられたことで、彼女の心は壊れてしまったのだろう。

「……ラウラ」

「ボーデヴィッヒ」

ゆっくりと重い腰を上げてラウラに近づいていく、バランスを崩しそうになるところを補助しながら、ゆっくりと黒咲さんを彼女の目の前まで運ぶ。

涙でぐしゃぐしゃになってしまったラウラを優しく右腕で抱きしめる、その光景を僕はどこかで見たことがあるかも知れない。いや見たことがあるんじゃない、実際にしてもらったことがある。そうあの時みたいに。

「落ち着けボーデヴィッヒ。大丈夫だ、俺はこうしてちゃんと生きてる」

「でも……でも!」

「あれはボーデヴィッヒが原因じゃない。あのシステムが発動してしまったのがいけなかった、俺はもう少し君の事をしっかり援護していればこんな事にはならなかったんだ。それに俺がここまでしないと止められなかったシステム、もしデュノアだったら、織斑だったら……そんなの考えたくないだろ?」

もしもアレと一人で戦えと言われたら、僕は間違いなく無理だと答えるだろう。織斑君にエネルギーを移動させている間、黒咲さんとアレの戦闘を見ていた。距離を離そうと弾幕を張れば、銃弾を弾き最短距離で詰めてくる。近距離戦においては一撃一撃が即死級の攻撃、盾を装備していたとしても連撃を受けてしまえば即座に破壊されるだろう。

それにISもまともに装着していない織斑君がアレと戦っていたら――考えたくない。

「だから落ち着け……な?」

「うん……うん……」

二人を第三者視点から見ていると、まるで兄妹のような感じがする。妹を泣き止ませようと必死に頭をなでる兄。何も知らない人から見たらそう見えるだろうけれど、実際は殺しかけた人が必死にその張本人をなだめている絵になる。

ラウラさんが泣き止むまで、彼はずっと優しく抱きしめ頭を撫でていた。僕はその光景が少しだけ羨ましいと感じていた。


「落ち着いた?」

「ああ……すまない。黒咲」

涙と鼻水でドロドロになってしまった寝間着を着替え、再びベッドに腰を降ろす黒咲さん。その隣には恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めているラウラさんが座っていた。

「黒咲さんが織斑先生と良く話していたのは、黒咲さんが女装していたことに関係があるんですか?」

「ああ。織斑先生、いや千冬だけが俺の正体を知っていたからな」

織斑先生を下の名前で呼ぶ。黒咲さんはあの人とかなり親密な関係であることがこの言葉ですぐに分かった。

「細かいことは伏せるけど、俺はある人物を監視するためにIS学園に入学したんだ」

「それって?」

「それ以上は話せない……今はな」

今は。多分手遅れになる前には話してくれるよね?

「今は話せない事の方が多そうだし、今日はここまでにしておこうか」

「そうだな……ボーデヴイッヒ、もう大丈夫か?」

「一つだけ、これだけは聞いておきたい」

「……何?」

「黒咲と教官はどんな関係なのだ?」

「関係か。俺と千冬は幼馴染みだ、それ以上の関係はない」

「「お、幼馴染み!?」」

「そう幼馴染み」

僕達が会話を続けている中、ラウラはずっと彼の手を握っていた。嫌われていないか不安なのかもしれない、そんなこと彼は全く思っていないだろうにね。

「しかし、まさか二人同時にバレるとは……なんともな……」

先の光景が脳裏に浮かび上がる。スラッとした身体に大きな……そこまで思い出さなくて良いから!?

「二人とも顔が真っ赤になってるが、大丈夫か?」

ラウラも同じ光景を思い出してしまったのか、僕と同じように顔を真っ赤にして顔を下げていた。僕たちの内心を知ってか知らずか黒咲さんは顔をのぞき込んでいる。黒咲さんはいつものように露出の高い寝間着に着替えているので、視線を何処に向ければ良いのか分からなくなってくる。

顔は当然見れないし、胸部は痛々しい話を聞いた後に見れなくなった。そのまま下の方へ視線を動かす――気がつけば僕は彼の腰をずっと見ていた。

「デュノア……えっとな?そんなにじっと見られると恥ずかしいんだが……」

恥ずかしそうに股を抑える黒咲さん。自分がずっと彼のを見ていたのに気づいたんだろう、それを指摘されたこっちまで恥ずかしくなってくる。ラウラに至ってはこっちをジト目で見てくる、仕方ないだろう!?そこくらいしかまともに見られるところが無いんだから!

「……もう夜も更けてくる、早く寝て明日に備えましょう」

時刻は既に11時を回っていた。それから少しして他愛ない会話をした後、眠りについた。そのあたりをよく覚えていないのは、きっと疲れていたからなんだろう。たぶん。

そういうことにしておこう。


深夜二時。誰かの物音と共に目が覚める。

暗い部屋の中を見回すと、隣のベッドで眠っていたはずのラウラはいつの間にか居なくなっていた。

もしやと思い千春さんが眠っているベッドを見ると、そこにはラウラが一人で眠っていた。

まだ彼女が眠っているのは良いとして、そこで眠っていたはずの千春さんはどこへ行ってしまったのだろう?

部屋を見回しても彼の姿は無く、不安になってしまった。

1度心を落ち着かせた僕は、目を閉じて音で何処にいるのかを感じることにした。

耳をすませて音を聞いていくと、シャワー室の方から水音が微かに響いているように感じた。

もしかしたらまたシャワーを浴びているのかもしれないと思った僕は、ゆっくりと脱衣所へ向かいそっと扉を開けた。

僅かな隙間から中を覗いてみると、千春さんはじっと立ったままシャワーを浴びていた。

もしかしたら1人で考える時間が欲しかったのかもしれない、僕の存在やバレてしまった事などをどう説明するのか。

報告先は間違いなく織斑先生、幼馴染というのはそれだけ信頼出来て話もできる存在なのだろう。

僕は千春さんに気づかれることのないように、そっと脱衣所に入って寝間着に手をかけて脱ぎ始める。

少しでも音を立ててしまえば、千春さんに気が付かれて怒られてしまう。

ヒヤヒヤしながらなんとかバレることなく、寝間着を脱いだ僕はそっとシャワー室の扉に手をかけてゆっくり開けた。

「───ん?なっ、あっ、デュノア!?」

鏡に映った僕に気がついた千春さんは驚いて声を上げる。

こちらに振り向きそうだったので、僕は思わず彼の身体を後ろから抱きしめた。

「そのまま前を向いていて、千春さん」

心臓の鼓動が高鳴っていくのを感じながら、僕は振り向かないように伝えた。

僅かに小さな彼を抱きしめて、自身の胸を押し付けていく。

そうしてみると、千春さんは少し驚いた声を出しながら顔を真っ赤にしていた。

女の子との裸のスキンシップはそこまで体験していないのかな?織斑先生という幼馴染がいても、やっぱり織斑くんみたいな関係なのかなと思ってしまった。

「デュノア、その、あ、当たってる……」

「うん。わかってるよ、当ててるからね」

千春さんの身体に響かない程度にそっと抱きしめると、アワアワと落ち着かない様子で顔を赤く染めていた。

(可愛い。やっはり慣れてないんだ)

「ど、どうして入ってきたんだ?」

「千春さんにどうしても聞きたかった事があったんだ、でもラウラがいるところでは聞けないことだったから……」

「それが今だと?い、いくらなんでも急すぎるだろ……」

「今聞きたかったんだ。ごめんね」

僕の勝手な想像だけれど、普通に聞いたところで話を逸らされて肝心なことは聞けなくなりそうだった。

だから絶対に逃げられないこのタイミングが一番最適だと思った。

「そ、それで……聞きたい事って?」

「うん。千春さんってさ、昔僕と一度会ってるよね?」

「……どうだろうな?フランスには何度も渡ったことはある、だけどデュノアとは会ったことがないよ」

「ダウト。僕知ってるんだよ?父親と千春さんが親しげに話している所、そして話してた内容もね」

「……」

僕があの場面を見ていたことを伝えると、千春さんはため息を漏らした。

何故あの場所に父親が来ていたのか最初は分からなかった。もしかしたら僕の事を連れ戻しに来たのかと思って影に隠れて様子見をしていたら、治療された千春さんが現れて親しそうな様子で僕のことについて話をし始めた。

もしかしたら千春さんが連れ帰るように報告したのかと思ったけど、そんな様子は一切無く最近の僕の様子などを笑顔で話していた。


「久しぶりだな」

「あぁ……」

「シャルロットにどう説明するんだ?」

「今はまだなんとも……」

「……はぁ、とりあえずこっちは任せろ。お前は連中の様子見をして問題があればこっちに伝えろ」

「……すまん」


少し離れていたせいで肝心なところは聞こえなかったけど、僕のことについて話しているのは間違いなかった。

「千春さん。素直に答えて、僕と、会ってるんだよね……?」

「はぁ……全く油断も隙も無い」

やれやれといった感じでため息を漏らした千春さんは、ゆっくりと口を開けて話を始めた。

「俺は過去にアルベール・デュノアから一つの依頼を受けることになった、その依頼内容は護衛……ではなく一日子供と遊んで欲しいという依頼だった。当時の俺の事は控えるが、何故こんな依頼を俺にしてきたのかが分からなかった。だが初の依頼内容だったこともあり俺は興味本位でその依頼を受理した、そしていざ依頼元に行ってみれば目に光を宿さない小さな子供を任されたよ。本当に戸惑ったよ、一体どうすれば笑顔に出来るのかとね」

僕と千春さんの初対面はそんな感じだったのかと、僕が覚えていなかったいなかった事もしっかりと話をしてくれた。

「いろんなところを回ったよアイス屋に服屋にアクセサリー店とかね、気がつけばあっという間に夕方になって時間も残り僅かになっていた。その子も離れる時間が近いって分かってたんだろうね、抱きつかれて離れようとしなかった」

む、昔の僕はそんな事をしていたの!?でも昔の僕は本当に幼かったし、仕方ないんだ。仕方ないんだよ。

「だから俺はその子と一つだけ約束をした。もしまた遊びたくなったら、父親に俺の名前を言えばもしかしたらまた会えるかもなって。もし会えたらその時は今よりも楽しい思い出を作ろうってな」

「そう、なんだね……」

僕自身も忘れかけていたことをしっかりと話をしてくれた。

「それにしても本当に困ったな。その時の子供が立派に成長したかと思えば、俺がシャワーを浴びているときに忍び込む変態になってしまったなんて。シャルロットはえっちだな……」

痛い指摘をされてしまった。確かにこの行動はやり過ぎだと自分でも思っていたけど、このタイミングしかなかったのも事実だった。

「アルベールにどう報告しろってんだよ……貴方の娘はシャワー室に忍び込む変態ですって説明すれば良いのか?」

「お、お願いだからそれはやめて……」

そんな事を報告されたらなんて言われるか分かったものじゃない。

「とりあえず離れてくれるか?色々と……当たってるから」

「あ、うん。ごめんね」

ゆっくりと彼の身体を離した僕は二歩下がった。千春さんはこちらを見ることなく泡立てたタオルで自身の身体を綺麗にしていく。

だけど怪我の影響でほとんど動かすことが出来ない身体、腕を動かすのにも一苦労で痛みに顔を歪ませていた。

「っ……」

痛みに耐えられなかったのか、手からタオルが落ちる。

僕はそのタオルを拾って千春さんの背中を優しく洗い始めた。

「背中は届かないでしょ?僕が洗うからそのままでいてね」

「……助かる。だけどそれは背中だけにしてくれ、前の方は自分でも洗えるからな」

「ダメだよ。もし倒れちゃったら大問題だよ?だから僕が隅々まで洗うから。あの時の感謝の気持ちだと思ってね?」

「いや、それはそれでどうなんだ……?」

困惑しているうちに背中を優しく洗う。痣になっている所は細心の注意を払いながら綺麗にしていく、身体をよく見てみると洗い切れていない所がいくつかあり、砂が付着しているヶ所がいくつもあった。

この様子だと髪の毛も絶対に砂だらけになっている可能性が高いね。

「前も洗うから、えっと目を閉じていてくれると嬉しいな」

「ならせめてタオルを巻いてくれ……」

千春さんが不満を漏らしながらもそっと目を閉じる。

その間に僕は彼の上半身を洗っていく、鍛え磨かれた肉体に痛々しい打撲痕に細かい切り傷がいくつも刻まれている。どれだけあの戦闘が激しく厳しいものだったのかが理解出来た。

「んっ……シャルロット、くすぐったい」

「あ、ごめん。もう少し優しくするね」

胸からお腹周りが一番状態が酷く、優しく洗っていても千春さんが苦しそうな声を漏らしていた。

(ここは最低限にして、問題は……)

腰から下……千春さんは目を閉じているから僕が何処を触っているのかは分かるけど、僕が何処を見ているのかは分からない。

そう、わからないのだ。

(これが、これが千春さんの……ペニス)

だから僕が千春さんの立派なペニスを間近で観察していることもわからない。臭いを嗅いでいることもわからないんだ。

(おっきい……汗とペニス本来の臭いが混ざっておかしくなりそう)

頭がクラクラしてきて本能的に彼のペニスを求めようとしてしまう、それを必死に抑えながら脚をゆっくり洗っていく。

(少しだけ、少しだけなら良いよね?)

それでも少しずつ、千春さんのペニスに手が伸びてしまっていた。

優しくペニスに触れると、ピクッと可愛い反応をする。

「……シャルロット、余り変なことしないでくれよ?」

「分かってますよ、分かってます……よ♡」

その言葉と共に優しくペニスを洗い始める、初めて触るからあっているのかも分からないけれど、とにかく優しく洗っていた。

「シャルロットっ、なにをしてっ……」

目を開けた千春さんは僕がしていることを目の当たりにして言葉を失ってしまった。

「ご、ごめん。嫌だったかな……」

「嫌とかじゃなくてだな……流石にそこは一人でも洗えるからな?」

苦笑いをしながら手を離すようにジェスチャーをする千春さんの言うとおりに、僕はゆっくりとペニスから手を離した。

「あのな?シャルロット、こういった事をするのであればもう少し大人になったときで尚且つ好意を寄せている相手にするんだぞ?俺みたいなのにはしなくて良いからな?」

視線を逸らして頬を赤く染めた状態で注意をする千春さんに、僕は少しだけ申し訳なくなってしまった。

「う、うん……」

(でも僕は千春さんの事が───)

「とりあえずもう大丈夫だから、俺はあと髪の毛洗って出るからな」

「あ、ならそこも僕が洗うよ。腕上げるのキツいでしょ?」

「まぁキツいと言われればそうだが……流石に全部洗われるのはちょっと」

「恥ずかしい?」

「そうだな」

やっぱり歳下の女の子に隅々まで見られた挙げ句、身体を洗われてしまうのは恥ずかしいらしい。

「千春さんも僕の裸見たからお相子だよね?」

「……そうだな」

諦めたような声を出しながら渋々といった感じで髪の毛を洗われている。

そんな態度に少しだけムカッときてしまった僕は、千春さんの真正面に立って髪の毛を洗うことにした。

「お、おいシャルロット……流石にそれは」

「あ、少し下向いてね」

「は?ちょ、待っ───」

千春さんが何か言う前に頭を下げさせて僕が髪の毛を洗いやすいようにする、耳が赤く染まって行くのを見た僕は少しだけ満足感があったような気がした。


「綺麗になりましたよ~」

髪の毛についていた泡をぬるま湯でゆっくり流していく、少し傷口に染みたのか痛そうな声をもらしていた。

「……ありがとう」

「どういたしまして」

「……もうこんなことするなよ」

そう言って千春さんはシャワー室を後にする。聞きたいことはしっかり聞けたし約束もしっかりと覚えてくれていた。

三人で出かけたときに僕たちの要望に応えてくれたり、部屋を一緒にしてくれたりしたのはこれが理由だったんだ。

優しいのは昔から変わらないんだな。

(ありがとう、千春さん)




シャワー室から出ると、千春さんは先ほどまで僕が眠っていたベッドで横になり眠っていた。
流石にラウラが眠っているベッドには戻れなかったのだろう。
(……僕はどっちで寝たら良いかな?)
千春さんには一人で眠って欲しいのもある、一緒に寝たいという願望もある。
でも千春さんの身体のことも考えると一人でベッドを使って貰った方が良いと思ってしまう。
(ラウラの方で寝よう……)
「おやすみ、千春さん」
そう言って僕は彼の頬に口づけをした後、ベッドに潜り眠りにつくのだった。

(……まだ起きてたんだが)

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
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