女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
『…………』
『…………』
部屋の前、それも入り口のドアに張り付いている女子が五名。
「皆そろって何やって――」
「しっ!」
シャルロットがそう言うなり俺の口を塞ぐ。
状況が分からず頭の上に疑問符をうかべていると、ふとドアの向こうから声が聞こえた。
『千冬姉、久しぶりだからってちょっと緊張してる?』
『そんな訳あるか、馬鹿者。――んっ!す、少しは加減をしろ……』
『はいはい。じゃあ、ここは……と』
『そ、そこは……やめっ、つぅっ!!』
『すぐに良くなるって。だいぶ溜まってたみたいだし、ね』
『ああぁっ!』
…………?
「えっと、これは何を?」
困惑しながら尋ねる。しかし、帰ってきたのただただ沈黙だけだった。
『………………』
凰も篠ノ之もセシリアも、ずーんと沈んだ表情をしている。その様子はまるでお通夜さながらだった。
『じゃあ次は――』
『一夏、少し待て』
二人の声が途切れる。あれ?とおもってドアにぴったりと耳を寄せた五人が――
バンッ!!
「「「「「へぶっ!」」」」」
思い切り、ドアに殴られた。
打撃の刹那、反射的に漏れた声は十代女子にあるまじき響きをしていた。
「何をしているか、馬鹿者どもが」
「は、はは……」
「こ、こんばんは、織斑先生……」
「さ……さようなら、織斑先生っ!!!」
脱兎の如く逃走開始――が、すぐに捕まった。篠ノ之と凰は首根っこを取られ、セシリアとシャルロットは浴衣の裾を踏まれる。ボーデヴィッヒは俺が捕まえた。IS戦はもとより生身の肉弾戦でも勝てる気がしない。
「盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入っていけ」
「「「「「えっ?」」」」」
予想外の言葉に目を丸くする五人。……こっそりその場から離れるために気配を消す。
「逃げるなよ黒咲」
「ア、ハイ」
「全員好きなところに座れ。黒咲、お前は私の膝の上だ」
「「「「「!?!?!?」」」」」
「えっと……どうして?」
「良いから来い」
ちょいちょいと手招きをされて、おずおずと黒咲は私の近くによる。
そうして大人しく膝上に座った瞬間、ガバッと腰腕を回され逃げられないように抱きしめる。
「???」
どうして膝上で抱かれているのかまったくわからず、宇宙猫になってしまっている黒咲。それをどうしていいのかわからない女子が五人。言われたまま座ったところで止まってしまっている。
ちなみに織斑は汗をかいたので風呂に行った、邪魔だから部屋から出したとも捉えられる。
「おいおい、葬式か通夜か?いつもの馬鹿騒ぎはどうした?」
「い、いえ、その……」
「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと……」
「は、はじめてですし……」
「く、黒咲さんはもう訳が分からなくて固まってますし……」
「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう。篠ノ之、何がいい?」
いきなり名前を呼ばれて、篠ノ之はびくっと肩をくすませる。言葉がすぐに出てこずに、困ってしまっていた。
そうこうしていると私は黒咲を抱えたまま、旅館の備え付けの冷蔵庫を開け、中から清涼飲料水を六人分取り出していく。
「ほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、紅茶にレモンだ。それぞれ他のがいいやつは各人で交換しろ」
そう言われたものの、順番に箒、シャルロット、鈴、ラウラ、セシリア、黒咲と受け取った全員が渡されたもので満足だったために交換会は開かれなかった。
「い、いただきます」
全員が同じ言葉を口にして、そして次に飲み物を口にする。
女子そして黒咲の喉がごくりと動いたのを見てニヤリと笑った。
「飲んだな?」
「は、はい?」
「そ、そりゃ、飲みましたけど……」
「な、何か入っていましたの!?」
「失礼なことを言うな馬鹿め。なに、ちょっとした口封じだ」
黒咲が「そういうことか……」と呟く。それを聞いた私は新たに冷蔵庫から飲み物を取り出す。取り出したのは星のマークがキラリと光る缶ビールだ。
ブシュッ!と景気の良い音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを唇で受け取って、そのままゴクゴクと喉を鳴らした。
「………………」
「全く……」
黒咲を除いた五人が唖然としている中、私は上機嫌な様子でベッドにかける。
「ふむ。本当なら一夏に一品作らせるところなんだが……それは我慢するか」
いつも規則と規律に正しく、全面警戒状態の「織斑先生」が目の前の人物とが一致せず、女子全員がまたしてもぽかんとしている。特にラウラは、さっきから何度もまばたきを繰り返して、目の前の光景が信じられていないようだった。
「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」
「い、いえ、そういうわけでは……」
「ないですけど……」
「でもその、今は……」
「仕事中なんじゃ……?」
ラウラはぽかんと開いた口からは何も言葉が出てこない。代わりに、ブラックコーヒーをゴクリと嚥下する。
「飲み物を配ったのは口止め料……そういうことですね?」
黒咲の言葉でニヤリとする、全員の手元をざっと流し見る。そこでやっと女子一同が飲み物の意味に気がついて「あぁ」と声を漏らした。
「さて、前座はこのくらいでいいだろう。そろそろ肝心の話をするか」
二本目のビールをラウラに言って取らせ、また景気の良い音を黒咲の頭の上で響かせて続ける。
「お前ら、あいつの何処がいいんだ?」
あいつ、と言っているが全員誰を差しているかわかっていた。一夏しかいないだろ?
「わ、私は別に……以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけなので」
とラムネを傾けながら箒。
「あたしは、腐れ縁なだけだし……」
スポドリのフチをなぞりながら、もごもご言う鈴。
「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりして欲しいだけです」
さきほどの行動の反発か、ツンツンした態度で答えるセシリア。
「そうか。ではそう一夏に伝えておこう」
しれっとそんなことを言う千冬に、三人はぎょっとしてから一斉に詰め寄った。
「「「言わなくていいです!!!」」」
その様子をはっはっはっと笑い声で一蹴して、また缶ビールを傾ける。
「僕――あの、私は……優しいところです……」
ぽつりとそう言ったのはシャルロットで、声の小ささとは裏腹にそこには真摯な響きがあった。
「ほう?しかしなあ、あいつは誰にでもやさしいぞ」
「そ、そうですね……そこがちょっと、悔しいかなぁ」
あははと照れ笑いをしながら、熱くなった頬をぱたぱたと扇ぐシャルロット。
なんだかその様子が羨ましいのか悔しいのか、前述の三名はじっと押し黙ってシャルロットを見つめた。
「で?お前はどうだ?」
先ほどから一言も発していないラウラに話を振る。どうもそれ自体は警戒していないようで、ラウラはぴくっと身をすくませながらも言葉を紡ぎ出した。
「つ、強いところ、でしょうか……」
「いや弱いだろ」
にべもないな。何でもないように反発する私に、珍しくラウラは食ってかかってきた。
「つ、強いです。少なくとも、私よりも。あの時の私を必死に止めてくれたから……」
そうか……?二本目のビールを空ける。
「く、黒咲さんは……どうなんでしょう?」
セシリアがそう呟くと、瞬時に視線が黒咲に集まる。IS学園内で織斑と最初に接触した黒咲が一夏に対して、どういった気持ちを持っているのか聞いたことが無い。正直気になるといった感じで女子五人の視線が黒咲に収束する。
「で?お前はどうなんだ?黒咲」
口を閉じたままの黒咲に話を振る。
しかし返事はなく、ずっと手元の清涼飲料水を見つめていた。
「……黒咲?」
「――――――ふぇ?」
帰ってきたのはなんとも情けない声だった。どうしたのかと黒咲の顔色をうかがってみれば、目はどこか虚ろで頬は赤く染まっている。ビールを空けている私よりも赤くなったその顔を見て、どうしたのだろうと不安になる。
「どうした?黒咲――」
「んー」
手元の清涼飲料水を置いたと思ったら、次の瞬間には私に対して頭をこすりつけていた。
普段の黒咲からは全く感じられない仕草をしているのを、私を含む六人は珍しい物を見るように目を見開いていた。
「眠いのか?」
「んーっ」
問いに対して答えることはなく、ずっと甘えたような声色を出して身体を擦り続けている。
いくらなんでもおかしいと思ったセシリアが、先ほどまで黒咲が飲んでいた飲料水に目を向ける。
「お、織斑先生……」
「どうした?」
「あの、黒咲さんが飲んでいたのレモン
レモンサワー基本的にビールよりも度数は低く設定されているが、黒咲が飲んでいたレモンサワーの度数は8とビールよりも高い物だった。
私よりもお酒に弱い黒咲が酔っ払ってしまうのは時間の問題だっただろう。
「……よしよし」
眠そうにうとうとし始めた黒咲を優しく抱きしめながら頭を撫でる。幸せそうな黒咲の顔を見て、驚く三人と鼻から愛が漏れそうになっている二人。反応は二つに分かれた。
しばらく黒咲の頭を撫でていると寝息が聞こえ、眠りについたのが確認できた。
「んんっ、まぁ黒咲の事は置いといてだ。一夏は役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだって上手い。というわけで付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」
え!?と全員が顔を上げる。それからおずおずと、箒が尋ねた。
「く、くれるんですか?」
「やるかバカ」
えぇ~……と心の中で突っ込む女子一同。
「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、小娘ども」
三本目のビールを口にする私は、実に楽しそうな表情を浮かべていただろう。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」