女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「――はい、フィッティング終了~さすが私。超速い」
無駄話をしながらも束さんの手は休むことなく動き続けている。それはもうキーボードを打つと言うよりもピアノを演奏しているに近いだろう。
態度はふざけていても、やっぱり超がつくほどの天才だと、改めて実感させられる。
ちなみにIS《紅椿》はというと、あらかじめデータを入れていたこともあって、白式の時のように派手な形態変化はしていない。せいぜい、今の箒の体格に合わせたサイズの微調整をしているくらいだった。
それにしても――
「(この機体も近接特化っぽいよなぁ。腰に左右一本ずつの日本刀型ブレード以外、何も装備していないし……)」
「なんでわかったんだ?」
「織斑くん結構表情に出やすいよ?」
そうなのか……だから思ったこと全部言われたのか、これから気を付けよ。
ふと《白式》に似ているような気がしてそんなことを考えていた。
しかしさっき束さんは「自動支援装備がある」とか「近接戦闘を基礎にした万能型」と言っていたから、もしかしたら〘ブルー・ティアーズ〙の様な装備があるのかもしれない。
「あの専用機って篠ノ之さんがもらえるの……?身内ってだけで」
「だよねぇ。なんかズルイよね」
ふと、群衆の中からそんな声が聞こえた。それに素早く反応したのは、なんと意外なことに束さんだった。
「おやおや、歴史の勉強をしたことがないのかい?有史以来、世界が平等であった事なんて一度も無いよ?」
ピンポイントに指摘を受けた女子は気まずそうに作業に戻る。それを別段どうでもいいように流して、束さんこちらを見てくる。俺――ではなく黒咲をずっと見ていた。
黒咲の方はどこか思い当たる節があるのか、少しバツが悪そうに視線を下に向けていた。そういえば黒咲の昔話とか聞いたことがない、もしかしたら過去に何かあったのかもしれないな。機会があれば黒咲の昔の話を聞くのも良いかもしれないな。
「あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるね。あ、いっくん、白式見せて。束さんは興味津々なのだよ」
「え、あ。はい」
全てのディスプレイとキーボードを片付けて、束さんが俺の方へと歩いてくる。ひらひらとなびいたスカートが、子供っぽい性格とは正反対に淑女を連想させる。
束さんが近づいてくるや否や、黒咲は何処かへ行ってしまった。苦手なのかもな。
ともあれ、俺は右腕のガントレットに左手を添えて意識を集中させた。
(頼む来てくれ、《白式》)
その念に応えるように強い光を放つ《白式》。さらに空中の光の粒子が発生し、それらが集まって輪の形になる。そしてその光の輪が全身に幾重にも重なって、やがて形を形成していく。
俺の専用機《白式》。近接戦闘に特化した機体で、武器は格闘ブレード《雪片弐型》が一本。後付装備お断りのわがままボディ――それは意味が違うか。
「データ見せてね~。うりゃ」
言うなり、装甲にブスッとコードを刺す束さん。すると、またさっきと同じようにディスプレイが空中へと浮かび上がる。
「ん~不思議なフラグメントマップを構築してるね……なんだろう?見たことないパターン。いっくんが男の子だからかな?」
そのフラグメントマップというのは、各ISがパーソナライズによって独自発展していくその道筋のことらしい。人間で言うところの遺伝子だそうだ。
「束さん、そのことなんだけど、どうして男の俺がISを使えるんですか?」
「ん?ん~……どうしてだろうね?私にもさっぱりだよ。もう一人動かせる男が出たら、ナノ単位まで分解してみたいね~」
恐らくだが、きっとこの分解の対象には俺も含まれている。
「良い訳ないでしょ……」
「にゃはは、そう言うと思ったよん。まあ、わかんないことはわかんないでいいんだけどねー。そもそもISって自己進化できるように作ったし、こういうこともあるんだよ。あっはっはっ!!!」
なんの解決にもならなかった……
「ちなみに、後付装備ができないのはなんでなんですか?」
「そりゃ、私がそう設定したからだよん」
「えっ……そうなんですか!?《白式》って束さんが作ったんですか!?」
「そーだよ。って言っても欠陥機としてポイされてたのもらって動くように弄っただけだけどねー。でもそのおかげで第一形態から〘単一仕様能力〙が使えるでしょ?超便利、やったぜ投稿者――。でねー、なんかねー、元々そういう機体らしいよ?日本が開発していたのは」
「機密事項をペラペラバラすな」
ぺしん!と手加減の無い打撃が束さんの頭にクリティカルヒットする。もちろん手を出したのは我らの鬼教師こと千冬姉。
「いたた。は~ちーちゃんの愛情表現は今も昔も過激だね」
「やかましい」
「ちーくんにからかわれたとき、躊躇いも無くゲンコツ落としてたのは何処の誰かな~?」
「う、うるさい!」
ちーくん?聞いたことの無い人だ。もしかして束さんと千冬姉の知り合いなのか?
「あ、あの、ちーくんって誰なんですか?男の人ですか?」
気になってしまったので束さんに直接聞いてみる。こちらの会話を聞いていたのか、周りの女子達もこちらに耳を傾けていた。
それは箒も鈴もセシリアもシャルロットもラウラも傾けていた。ただ気になったのは黒咲だけが興味の無いように淡々としていた事だった。
「んー?そうだけど、知りたいの?もういっくんは何度もあってるのに?なんども話してるのに?」
「え?」
何度も会っている?そんなわけ無い。そもそもIS学園に来てからほとんど男の人とは会っていない。仮に休日に会っていたとしても話を同性としたことなどない。束さんは俺に教えないためにからかっているのだろう。
「いや、そんなこと無いと思いますけど……」
「……鈍感なのは相変わらすだね」
「……それでいいのだがな」
二人とも俺を見る目が残念そうな物を見る目になっていた。な、なんだっていうんです!?
それに本当に俺と話しているのであれば……女装していることになるんですよ!?この中から男を捜せって言うんですか!?無理ですよ!それに万が一間違ってたらどうするんです!空気最悪なのは間違いないでしょ!これ以上何をどうしろって言うんです!
「まあいいや、とりあえず箒ちゃんの方がもう終わったね。んじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」
「わかりました。それでは試してみます」
ブシュッ、ブシュッ、と音を立てて連結されたケーブル類が外れていく。それから箒がまぶた閉じて意識を集中させると、次の瞬間に《紅椿》はもの凄い速度で飛翔した。
「おわっ!?」
その急加速の余波で発生した衝撃波に砂が舞い上がる。それから箒の姿を追うと、200メートルほど上空で滑空する《紅椿》を《白式》のハイパーセンサーが捉えていた。
「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「え、ええ、まぁ……」
束さんもISを装備しているのだろうか、〘オープン・チャンネル〙での会話がこちらにも飛んでくる。
「じゃあ刀使ってみてよ。右のが「雨月」で左のが「空裂」ね。武器特性のデータも送るよん」
そう言って空中に指を踊らせる束さん。武器データを受け取った箒は、さっと二本同士に刀を抜き取る。このあたりの身のこなしはさすがとしか言いようがない。
「親切丁寧な束おねーちゃんの解説付き!雨月は〘対単一仕様〙の武装で打突似合わせて刃の部分からエネルギー刃を放出、連続して敵を蜂の巣にする武器だよ~。射程距離は、まあアサルトライフルくらいだね。スナイパーライフルの間合いでは届かないけど、《紅椿》の機動性なら大丈夫」
束さんの解説にあわせているのかわからないが、箒が試しとばかりに突き放つ。周囲の空間に赤いレーザー光がいくつもの球体として現れ、そして順番に光の弾丸となって漂っていた雲を穴だらけにした。
「次に空裂ね。こっちは〘対集団仕様〙の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよー。振った範囲に自動で展開するから超便利。そいじゃこれを打ち落としてみてね、ほーいっと」
言うなり、束さんはいきなり十六連装のミサイルポッドを呼び出す。光の粒子が集まって形を成すと、次の瞬間一斉射撃を行った。
「箒!」
「――やれる!この《紅椿》なら!!!」
その言葉通り、右脇下に構えた空裂を一回転するように振るう箒。またあの赤いレーザー光が、今度は束さんの言うとおり帯状になって広がり、十五発のミサイルを撃墜した。
爆煙がゆっくりと収まっていく中、その真紅のISと箒は威風堂々たる姿をしていた。
全員がその圧倒的なスペックに驚愕し、そして魅了され、言葉を失ってしまう。そんな光景を、束さんは満足そうに眺めていた。
「すげえ……って!箒!まだ一つ残ってるぞ!」
「ちっ……一回では上手くいかないか」
再び空裂を振るおうと構えた瞬間、横から緑色のレーザーが放たれミサイルに直撃した。レーザーが放たれた方を見ると、片手でビームライフルを構えている黒咲の姿があった。一極限定モードの構成、俺があの時の事件で使用した状態だった。
「黒咲……」
「……ふぅ」
厳しく束と箒を見つめている黒咲は、何処か恐ろしかった。
「あの時と同じですわ……」
「そうね……」
「いや、違う。あれは……」
セシリアと鈴そしてラウラ、この三人は何処かであの黒咲を見たことがあったらしい。穏やかさは完全に消え、冷徹さだけが黒咲に感じられる。ほとんど破壊されてしまった黒咲の専用IS《ノワール》に装備されているショーティーライフルの銃口は、ただただ紅椿を纏った箒に向いていた。
ゆっくりと銃口を下げると、ライフルは光の粒子となって消え、黒咲の手元には別の銃が握られていた。あれが黒咲のIS待機状態なのだ、物騒だからと何時も専用のホルスターに入れて隠し持っている。最初に見た時はびっくりしたが、IS待機状態が銃ってちょっと魅力的じゃないか?
先ほどまでの冷徹なイメージから一転して普段の黒咲に戻る。そうして興味を無くしたのか、ラウラ達の方へと歩いて行った。
(一体何だったんだ?)
頭の中では黒咲が何故瞬時に行動できたのか、何故あんな視線を二人に向けていたのか考えるばかりだった。それに――
(千冬姉まで……なんであんな顔してるんだ?あれじゃあまるで敵でも見ているような――)
「たっ!た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」
いきなりの山田先生の声に、千冬姉は鋭い視線をやめて向き直る。
いつも慌てている山田先生だが、それにしても今回は様子が尋常じゃない。
「どうした?」
「こ、こっ、これをっ!」
渡された小型端末の、その画面を見て千冬姉の表情が曇る。
「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし……」
「そ、それが、その、ハワイでムググウg」
「しっ。機密事項を口にするな。生徒達に聞こえる」
「す、すみませんっ……」
「専用機持ちは?」
「ひ、ひとり欠席していますがそれ以外は……黒咲さんは厳しいかと」
なにやら千冬姉と山田先生は小さな声でやりとりをしている。しかも数人の生徒の視線に気がついてか、会話ではなくなんと手話でやりとりしはじめた。
(普通の手話じゃない……もしかして、軍関係の暗号手話なんだろうか?)
昔、千冬姉が日本代表だった時に数回だけ見たことがあるものに、それは似ていた様な気がした。
「……はぁ?」
その手話が分かるのか、黒咲が聞いたことも無い声を出す。それにかなりキレている様子だった。どう考えてもおかしいと思った鈴、セシリア、シャルロットが黒咲の元に集まっていた。
険しい表情をした黒咲はしばらく黙っていたが、ゆっくりと口を開けその場に居た四名にもっと寄るように言った。そこから先は俺も聞こえなかった。しかし黒咲の言葉を聞いた四人は、顔を青ざめて焦っている様子だった。
「そ、それでは、私は他の先生達にも連絡してきますのでっ!」
「了解した!――全員、注目!」
山田先生が走り去った後、千冬姉はパンパンと手を叩いて生徒全員を振り向かせる。
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ、連絡があるまで各自室内で待機すること。以上だ!」
「え……?」
「ちゅ、中止?なんで?特殊任務行動って……」
「状況が全然わからないんだけど……」
不測の事態に、女子一同はざわざわと騒がしくなる。
しかしそれを、千冬姉の声が一喝した。
「とっとと戻れ!以後、許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する!いいな!!」
「「「はいっ!?」」」
全員が慌てて動きはじめる。接続していたテスト装備を解除、ISを起動終了させてカートに乗せる。その姿は今までに見たことのない怒号に怯えているかのようであった。
「専用機持ちは集合しろ!織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!――それと篠ノ之も来い!」
「はい!」
妙に気合いの入った返事をしたのは、今し方俺の隣に降りてきた箒だった。――そうか、箒もこれで専用機持ちになったんだよな。
(黒咲は……ISがダメだから呼ばれなかったのか?)
「黒咲さん、それでは」
「行ってくるわね」
「頑張ってきます」
「こちらは任せておけ」
「…………うん。任せたよ」
五人の会話はまるで戦場に送り出される兵士と、帰りを待っている人の様な雰囲気だった。
(でも、大丈夫なのか……?)
五人の会話を聞くと、俺は不安に駆られて、一人胸がざわつくのだった。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」