※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

53 / 106
第44話「白騎士事件」

「せっかくだから黒咲?だっけ、説明してみてよ」

「え?あ、はい」

『白騎士事件』──。

おそらく、この名前を知らない人間は世界にいないだろう。

十年前束さんが発表したISは、当初その成果を認められなかった。

『現行兵器全てを凌駕する』という束さんの言を、誰も信じていなかったのだ。

それは同時に、そう信じるわけにもいかなかったということでもある。

「いやー、世界があんなにもバカだとは思わなかったよね。うふふ、私の才能を信じなかったくせに神様を信じてるなって、偶像崇拝にもほどがあるよ。束さんは実像なのにね」

ISの発表から一ヶ月後、事件が起きた。

いや、それは事件と言うにはあまりにも異常で、これ以上無いほどに大規模で緊急事態であった。

日本を攻撃可能な各国のミサイル二三四一発。それらが一斉にハッキングされ、制御不能に陥り、発射された。

誰もが混乱と絶望のまっただ中にあった。

そこに現れたのが、白銀のISを纏った一人の女性だった。

顔は〘初期バイザー型ハイパーセンサー〙で隠れてわからない。しかし、なんというか――あまりにもヒーロー漫画のような展開で、それを見ていた人間全員が唖然としていた。

中世の騎士を思わせる出で立ちをしたその英雄は、なんと、

「ぶった斬ったんだよねぇ。ミサイルの約半数一二三一発を。あれはかっこよかったな~」

女性が手にしていたのは、剣としかいいようのないものだった。それをまさか、超音速で飛翔する人間が振るい、近代兵器たるミサイルを撃墜したのだから滅茶苦茶だ。

さらに距離的に離れているものに対しては、当時試作型だった大型荷電粒子砲をいきなり空中に召喚して打ち落とした。

超音速による格闘能力。大質量の物質を粒子から構成する能力。さらにはビーム兵器の実用化。これらのどれをとっても、匹敵する現行兵器は存在しなかった。

しかし世界は突然の驚異にして脅威に対して、愚鈍ではなかった。日本周辺各国は直ぐさま国際条約を無視して現地へと偵察機を飛ばした。

彼らの任務は「目標の分析。可能であれば捕獲。無理ならば──撃滅」。

当時最新鋭だった機体も数多く投入されたらしい。

けれど、まったく歯が立たなかった。

「バルカンだろうがミサイルだろうが、ISの装甲には傷一つつかないよん。エネルギーシールドもあるしね」

戦闘機は急速な旋回を行えない。乗っている人間が急激なGについてこれないからである。

しかしISには保護システムによって守られた操縦者はいかなる機動においてもブラックアウトすることもなければ、呼吸困難に陥ることも無い。

ハイパーセンサーから送られてくる情報によって、コンピューターより早く思考と判断を行い、実行へと移せる。

各国の戦闘機を撃破しながら、けっして人命を奪うことはなく戦う《白騎士》、それはもは絶望的なまでの戦力差の証明でしかなかった。

つまり。「相手を生かしたまま無力化するほどの余裕がある」──と。

それでも躍起になって部隊を導入する各国だったが、《白騎士》は日没とともに忽然と姿を消す。まるで出現したときのVTRを逆再生したかのように、突然の消失。まるで幻であったかのように白騎士はかき消えた。

レーダーでも捉えきれず、目視でも確認できない、〘完全ステルス能力〙。

ダメ押しとばかりに見せられた性能に──そして世界は完全敗北者となった。

たった一機でミサイル二三四一発、戦闘機二〇七機、巡洋艦七隻、空母五隻、監視衛星八基を撃破、あるいは無力化した『究極の機動兵器』としてISは一夜にして世の中の人々が知ることになった。

例え一機でもあれば他国の軍事力を凌駕すると言う事実は、急速なIS運用制限条約の締結と開発普及を全世界へと促した。

『ISを倒せるのはISだけである』という篠ノ之束の言葉と、その事実を、敗北者である世界は無抵抗に受け入れた。受け入れざる得なかったというのが正しいだろう。

「とまあ、こうして私のISはあっという間に広まっていったんだよね。女性優遇は、まあ、どうでもいいんだけどね、私はねー。でも隙あれば誘拐・暗殺っていう状況はなかなかにエキゾチックだったけどね~」

凄い楽しそうに話をする束さんは、まるで我が子の晴れ舞台を自慢する母親のようだった。

「しかし、それにしても。《白騎士》って誰だったんだろうね~?ね?ね?黒咲考えてみてよ?」

「し、知りませんよ」

「うむん。私の予想ではバストは八八センチの──」

グシャァ……酷い音がした。千冬姉の出席簿アタック、もとい情報端末アタック。

あれ、ガワが金属で出来てるのに……

「余計なことを言っていないで話を戻すぞ。束、《紅椿》の調整にはどれくらい時間がかかる?」

「お、織斑先生!?」

驚いた声を上げたのはセシリアだった。専用機持ちの中でも高機動パッケージを持っているのが自分だけだったため、当然作戦に参加できるものだと思っていたらしい。

「セシリアさん、そのパッケージは量子変換してありますか?」

「い、いえまだですが……」

「最低でも一五分はかかりますね。でも篠ノ之博士なら《紅椿》の調整時間を七分、いえ三分もあれば余裕ですよね?天・才ですから」

少し睨みつけるように束さんの方を見る黒咲、それに対して天真爛漫な笑顔で口を開いた。

「面白いね~いいよ、三分で完璧に調整してあげる」

ふっかけられた束さんは少し口元を引きつらせながら、笑顔で黒咲の挑発に乗っていた。

笑顔ではあるもののその目は一切笑っていなかった。

「よし、では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による目標の追跡及び撃墜を目的とする。作戦は三十分後。各員、ただちに準備にかかれ」

ぱん、と千冬姉が手を叩く。それを皮切りに教師陣はバックアップに必要な機材の設営をはじめた。

「手が空いているのもはそれぞれ運搬など手伝える範囲で行動しろ。作戦要員はISの調整を行え。もたもたするな!」

うぐ、いきなり怒られた。よく見ると俺と黒咲以外のメンバーはそれぞれ手伝いに行っている。

「えっと、俺は何をしたら……?」

「白式のセットアップを済ませておけ。あとエネルギーは満タンにしておけよ」

「りょ、了解」

返事をしてすぐに《白式》のコンソールを呼び出す。エネルギーは……よし。特に具合の悪いところも無いし、これならいつでも出られそうだな。

(そういえば箒は──)

「織斑くん、ちょっといい?」

箒の方を見ようとしたとき、黒咲の方から声をかけられる。黒咲は不安でいっぱいだという表情を浮かべていて、如何にこの作戦が危険なのかを物語っていた。

黒咲に連れられ、箒達とは少し離れた端の方へ移動する。

「織斑くん、これは実戦である事は重々承知だよね?」

「あ、ああ。まさか初めての実戦がこんな時になるとは思わなかったけどな」

「そうだね、それは私も思ってるよ。それでは織斑くんに一つ聞くね。《福音》と戦っている際に、イレギュラーが発生したらどうする?」

「イレギュラー……か人命が及ぼされるのなら俺は迷わず助けるかな」

「それが犯罪者、侵入者だったとしても?」

「ああ。俺は間違いなくその人達の命を守る。絶対に」

そっか……と少し残念そうに呟く黒咲。俺は間違っているのだろうか?

「織斑くんの意見は最も、だけど場合によっては見捨てないといけないときもあるんだよ。今回は残念だけど目標の無力化、撃墜を優先。もちろん納得は出来ないよね。だけど今回ばかりは失敗は許されない、もし織斑くんと篠ノ之さんが無力化された場合、セシリアさんやシャルロットさん、凰さん達が代わりに出撃すると思うよ……多分、私も」

「な、なんで黒咲も!?だって黒咲のISはまだ──!」

「専用機が無くても、残っている量産機があるからね。おそらく私はそれを使う可能性があるよ。だから織斑くん、絶対にそういったイレギュラーが発生したとしても目標を優先して。良いね?」

「わ、わかった……」

黒咲に厳重に言われたが……俺はその場で対応できるだろうか?正直不安でならない。

「織斑くんは〘超感度ハイパーセンサー〙の使用はあまりなかったよね?」

「ああ、黒咲から聞いたことはあるけど……」

「まずは注意から教えるね。高速戦闘用に調整された〘超高感度ハイパーセンサー〙というのは、使用すると世界がスローモーションに感じるようになるよ。ただしこれは最初だけ。何故スローモーションになるのかというと、〘ハイパーセンサー〙が操縦者に対して詳細な情報を送るために、感覚を鋭敏化させるから。それによって世界が遅くなったように感じるようになる仕組み。でもこれは最初だけなのですぐになれると思うよ」

「なるほど」

「それよりも注意するべきなのはブーストの残量。特に織斑くんは〘瞬間加速〙を使用するクセがついてるから、一層気を配ってね。高速戦闘状態ではブーストの残量は普段の倍近い速度で減っていくから。あとは通常時よりも相対的な速度が上がってるから、射撃武器のダメージが大きくなるよ。当たり所が悪いと、一発でアーマーブレイクになったりするから、気をつけてね」

「色々教えてくれてありがとうな。他にも注意するところがあれば教えてくれ」

「そうだね……とにかくこの作戦では織斑くんの〘零落白夜〙が鍵になってくるから、〘瞬間加速〙はあまり使用しない方が良いと思うよ。なるべく移動等は篠ノ之さんの《紅椿》にしがみついてした方が良いかな。あとは防御をどうするか……本来であれば突撃用のシールドなどを装備した方が好ましいんだけど、織斑くんは武器を両手持ちするからね……」

必死に作戦について考えを話してくれる黒咲に、運搬を終えたシャルロットも本格的に話に加わってくる。

さらにセシリアに鈴、ボーデヴィッヒに山田先生も交えての作戦会議になった。作戦のためとは言え、こうして自分の周りに人が集まってくれるのはやっぱり嬉しい。

(なんとしても成功させないとな)

俺は心の中でそう決意を新たにした。




「あとは篠ノ之さんに気をつけて」
「なんで箒に?」
「彼女にとって専用機は念願の代物だから。現行のISを凌駕する程の専用機を与えられた今、浮かれている可能性も十分ある。篠ノ之さんも織斑くん同様、実戦は今回が初めて。何が起きてもおかしくないから」
「──わかった、黒咲がそこまで言うのであれば気をつける」
「頼んだよ。織斑くん」

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。