※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

56 / 106
第47話「篠ノ之箒」

「ここから三十キロ離れた沖合上空に目標を確認。ステルスモードに入っているみたいだけど、光学迷彩は持っていないみたいだよ。衛星による目視で発見した」

ブック端末を片手に持って部屋の中に入ってくる黒咲。恐らく千冬姉から渡された物なのだろう。

「セシリア、鈴、シャルロット、ラウラそして私はもう準備万端。後は貴方たち二人の気持ち次第だよ」

真っ直ぐ真剣な目でこちらを見ている黒咲。いつになく真剣な黒咲に少し押されそうになる。

「俺は行く!今度こそ!無駄にはしない!」

「わ、私は……」

勢いよく立ちあがる俺とは違い、その場で座り込んだままの状態の箒。対の状態になってしまった。

俺には箒をどうやって奮い立たせれば良いのか分からない。一度折れてしまった心はそう簡単に戻りはしない。

そんな箒にゆっくりと近づいていく黒咲、目線が合うように正面へと座り箒をじっと見据える。

「篠ノ之さん」

「……」

沈黙が続く。黒咲の問いに答えが出ないまま時間はゆっくりとすぎていく。

「……はぁ。織斑くん皆と一緒に先に作戦室に向かってて。篠ノ之さんは私がなんとかするから」

「で、でも!」

「………」

黒咲の無言の圧に耐えられなくなった俺は、セシリア達と先に作戦室へと向かう。

箒を立ち直らせることが出来ない俺が情けなく感じる。

(俺じゃダメなのか?)

 


箒side

 

一夏達が部屋から離れたのを確認した後、再び黒咲は私と向かい合う。放っておいて欲しい、今はその気持ちでいっぱいだった。自分で望んだ専用機が、今はどうしても嫌で仕方なかった。

「もうISに乗りたくないって感じだね?」

「……」

黒咲の言葉に応えることなく私は沈黙を貫く。少しの沈黙が続いた後、黒咲の雰囲気が一気にがらりと変わったような気がして、ふと顔を上げる。

「甘ったれるな小娘、専用機持ちというのはそんなワガママが許されるような立場ではない」

口調も雰囲気もがらりと変わっていた黒咲の言葉は重かった。いやそれよりも黒咲の口から男性の声が聞こえるのに頭が追いつかない。

「俺の知っている篠ノ之箒は随分と弱くなったんだな?昔のような強さはないのか?」

「あ、あぁ……」

「お前が俺と何度も立ち会い、負けても何度も立ち向かってきた箒はもう居ないのか!?あの時の勇気、強さはお前にはもう無いのか!?」

私は知っている気がする。この雰囲気を、何処かで……っ!!

 


X年前

 

いつものように一夏と剣道に励んでいたとき、千冬さんがある人物を連れてきた。無理矢理連れてこられた所、姉である篠ノ之束と親しく話している所を見ると二人の親友である事は明白だった。

彼の名前は黒薔千春。特に特徴という特徴もなく、強いて言うのであれば千冬さんよりも姉よりも身長が小さかったくらいだろう。そのくらいパッとしなかった。

しかしそう思っていたのもつかの間だった、彼は凄まじい勢いで剣の腕を上げていき当時の千冬さんと渡り合えるレベルだった。そんな強さが少し羨ましかった時期がある。

千冬さんと千春さん、似た名前の二人による試合は常に息を呑むものがあった。空気は常に張り詰めていて、一撃一撃が必殺の間合いだった。

そんな千春さんと一戦交えたいと思った私は、小学生である身でありながら千春さんに試合を申し込んだ。

結果など言わなくても分かるだろう。惨敗だった。

悔しい思いでいっぱいだった私は、その日から何度も千春さんに試合を申し込んでは負けてを繰り返していた。その期間は約二年続いた。

また明日、明後日と千春さんに試合を挑めるものだと思っていた。小学四年生になったとき、私は一身上の都合で引っ越す事になってしまった。その前日、それが千春さんとの最後の試合になった。

「これが最後になるのか……時ってのは残酷だな」

「……行きます!」

「ああ、来い!箒!」

その二年で築き上げた剣術を、私は真っ直ぐに千春さんにぶつけることしか出来なかった。下手な小細工は通用しないのはわかりきっていた、だからこそ今私が出せる全力で千春さんを追い詰めた。

結果は引き分けだった。私と千春さんが使用していた竹刀が同時に折れてしまっていた。

「引き分け……いや俺の負けだな」

やれやれと首を横に振る千春さんに、私は戸惑いが隠せなかった。

「箒の意志の強さに負けたよ。この約二年、諦めることなく俺に挑んできたからな。その意志の強さは本物だ」

「……」

「納得できないか?まぁ実際ちゃんと試合が終わったわけじゃないからな」

「またいつかちゃんと試合をしましょう。その時は私が――「俺が勝つよ」っ!私が勝ちます!」

ははっ!と笑い飛ばした千春さんの笑顔は、私が見た中で1番の笑顔だった。

引っ越し当日、千冬さん千春さんそして一夏が見送ってくれた。それが千春さんとの最後の顔合わせだった……はずだった。

 


現代

 

「お前は戦うときに戦えない臆病者なのか?違うだろ!」

「私は……」

「答えてみろ!篠ノ之箒!お前はこんなところで立ち止まってしまうやつなのか!?」

ぎゅうっと拳を握りしめ顔を上げる。それは先ほどまでの迷いとは違う、決意の表れだった。

「違う!私はこんなところで立ち止まるわけには行かない!戦う!戦って、勝つ!今度こそ……負けはしない!」

「……決まりだな」

先までの雰囲気が一気に消え、千春さんから千春へと変わる。がらりと戻った雰囲気に少し戸惑ってしまう。

「千春……いえ、千春さん」

「なんだ?」

「……ありがとうございます」

「何時までも沈んだ箒なんて見ていたくないからな」

私は千春さんの一歩半後ろを歩いて一夏達が待つ作戦室へと移動するのだった

――ん?あれ?千春さん、作戦室を通り過ぎてそのまま砂浜に?ちょっと待ってください?千春さん?え?どうして一夏達も砂浜に?千春さん!?千春さん!?!?


「あ、来たみたいだよ」

「こっちこっち!」

先に砂浜で待機していたシャルロットと凰がこちらに気づき手招きをしてくる、セシリアは準備万端だと態度で示していた。そのなかでアワアワと落ち着かない様子の織斑、後ろについてきている箒と同じように困惑していた。

「ようやく揃いましたわね」

「そうだね」

全員ISスーツを身につけて待機していたようで、軽くウォーミングアップを終わらせたと言った様子だった。

「え、えっと……?」

「織斑くん、まだISは起動しないでね」

「あ、あぁ……」

「千春。先の情報と変わらずここから三十キロ離れた沖合上空に目標を確認している。ステルスモードも変わらずだ。動いている様子はない」

「ありがとうラウラ、流石ドイツ軍特殊部隊。やるね」

「ふん……当然だ」

「鈴とセシリア、シャルロットは準備出来てるよね?」

「当然!《甲龍》の攻撃特化パッケージは量子変換済みよ。セシリアもシャルロットも同じ」

「いつでもいけますわ」

「同じく」

胸を張る二人。十代の若々しい胸が強調されているのをなるべく意識しないようにしながら、黒咲を私を見る。

「箒さん。今度は失敗は許されない、絶対に成功させるよ」

「あぁ!今度そこ!負けはしない!」

高らかに宣言する私の口を慌てて押さえる黒咲、困惑していると黒咲はそっと自身の口の前に人差し指を置いた。

この作戦、実は教師陣の許可を一切取っておらず、黒咲筆頭の身勝手な行動だった。

そのことに私は少し頭を悩ませてしまうが、いまさら引き返す気もなかった。

「約束して。どんな状況になったとしてもけして焦らず、落ち着いて状況判断をすること。いいね?」

そういって黒咲は待機状態の《紅椿》を私に差し出す、無言でうなずいた私は黒咲の手から《紅椿》を受け取り、決意を決めたように少し強く握りしめていた。

「黒咲のISはどうするんだ?」

「大丈夫。私のは予備パーツで組み上げたから。それにパッケージもあるしね」

専用機持ち全員が円になったところで、真剣な表情で黒咲が口を開く。

「作戦を説明するよ。《福音》は海上で停止中、といってもこちらを察知した瞬間に動き始めるのは確実だろうけどね。アレを墜とすのに必須なのは織斑くんの〘零落白夜〙、そして《白式》を運ぶ《紅椿》の超高速機動力。まあ基本的には変わらないね。だけど今回はセシリアも私も超高速機動が出来るようにパッケージを量子変換してある。セシリアにはシャルロットを、私はラウラと凰を運ぶ係になる。福音と接触し次第戦闘開始、今私達の持てる全力で……《福音》を墜とす!!!」

「「「「「「了解!」」」」」」




全員がISを起動させ、いざゆかんとしているとき。黒咲が注射器を自身の身体に打ち込んでいる光景が見えた。
「ち、千春さんそれ……」
「ん?これ?耐G用薬剤だよ。初手から最大稼働状態にするからブラックアウトしないようにね」
「〘超感度ハイパーセンサー〙を搭載しているはずだよね?それなのに?」
「……まだ全快じゃない状態であの時の二倍のGを素の状態でまともに受けたら、間違いなく私はブラックアウトしてしまうだろうね」
「……千春」
「まあ任せてよ、ちゃんと送り届けるからさ。シャルロットは防御パッケージでの織斑くんの援護頼んだよ。ラウラは少し離れたところから砲撃。いいね?」
「うん」
「黒咲、無理はするなよ」
「当たり前。じゃあ行こうか!」
『織斑一夏、《白式》行きます!』
『篠ノ之箒!《紅椿》参る!』
『凰・鈴音、《甲龍》〘崩山〙行くわよ!』
『セシリア・オルコット、《ブルー・ティアーズ》〘ストライク・ガンナー〙参りますわ!』
『シャルロット・デュノア、《ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ》〘ガーデン・カーテン〙行くよ!』
『ラウラ・ボーデヴィッヒ。〘パンツァー・カノニーア〙《シュヴァルツェア・レーゲン》出るぞ!』
『黒咲千春、《デスティニー・ノワール》出る!』

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。